Fate/stay night 槍の騎士王と幼い正義の味方   作:ウェズン

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今回は早めに投稿。
そして、ついに来ちゃったか…! バーサーカーアルトリア…!
では、始まります。


第十夜-正義の味方と王さま-

「ま、魔術王…!? そ、そんな、嘘でしょ。魔術を創り上げた創始者じゃない…!!」

 

 凛は上ずった声で言う。

 

「魔術を、創り上げた…!?」

 

 士郎は自らを魔術王と名乗った者を見る。名乗ってからも相変わらず中身のない笑顔でこちらを見てくる彼が、士郎や凛が使っている魔術、その概念を創り上げたヒト。

 

「いい反応だ。さすが、永きに渡る遠坂の名を継ぐ者だね。私のことはよく知っていると見ていいようだ。

 では、判っているね? 現時点で私に対抗しうる手段を持っているのは、そこにいる騎士王と君だけだと言うことに。ねえ、シロウ君」

 

 急に呼ばた士郎は体がびくりと跳ねる。その士郎を庇うように殺気が籠った目でアルトリアは前に立つ。

 

「そんなに警戒しないでくれ。大丈夫、今の私は君たちと争うつもりはない。いや、無くなったんだ」

 

 手を上げて何もしないと首を振る。

 

「…それはどう言う意味だ、魔術王」

 

「どう言う意味もなにもそのままの意味だよ、騎士王。私は君のマスター、シロウ君に興味が湧いたんだ。

 彼の人生は観させてもらったよ。不幸にも二度も命を落としかね、幸運にも二度も命を助けられた。そして、今も尚その幸運は続いていて、そして、彼は今も尚苦悩している。

 真の意味で幸運に恵まれているのに苦悩してばかり、そんな面白い人生を送っている人なんてそうそういないだろうからね、もう少し観ていたいんだ」

 

「……! 何故、貴方がシロウのことを…!?」

 

 魔術王はまるで今まで側で見ていたかのように士郎の身の回りに起きたことを話す。

 

「何故か、か。それなら私に聞くよりそこの遠坂の魔術師に聞いた方が早いんじゃないかな」

 

 そう言われ、アルトリアは凛の方を向く。

 そして、気づく。凛の顔が青ざめていることに。

 

「大丈夫ですか、リン!」

 

「…大丈夫、とは言い切れないわね。そんなことより、魔術王のことね。

 彼、魔術王は魔術師の頂点に座する人。つまり、千里眼保有者というわけ。それで士郎の過去を観たのでしょうね」

 

 千里眼。高位の魔術師のみが持つ魔眼。様々な事象を観ることができる眼であり、今現在でも優秀な魔術師が多く誕生したのにも関わらず、その保有者はソロモンと後三人しか確認されていない。それだけ希少で特別な眼なのだ。

 それから、千里眼は持つ人によって能力が若干ながら変わってくる。ソロモンの千里眼はその中でも特に高い性能で、過去と未来両方を見ることができる。

 

「なっ…! 千里眼だとっ!? では、彼はマーリンと同じ…」

 

「…確かに伝承じゃマーリンも持っているけど、なんで貴女からマーリンの名前が…。それに、さっきの騎士王とか、貴女…まさか…」

 

 花の魔術師マーリン。アーサー王伝説に出てくる魔術師であり魔術王と同じく千里眼保有者。

 

「…いえ、今はそんなことどうでもいいわ。それより、もう判っていると思うけど、あのサーヴァントに挑もうなんてしないで。あれは貴女と同じくらい規格外の存在よ。なんの策もなしに突っ込んだら死ぬわよ」

 

 凛は今の状況をまとめ上げ、ここは逃げた方がいいと判断する。相手はあの魔術王だ、ならば現在考えられる宝具は恐らく七十二柱の魔神達だろう。

 ソロモン七十二柱、これは魔術王のことをあまり知らなくともかなり有名な悪魔の一覧だ。その中にはあの七つの大罪の悪魔もいる。

 そして、もし本当にこの状況で魔神達を喚べるのであれば、それはとてもまずい。魔神達がどれほど強いのかは判らない。だが、魔神などというくらいだ、一人一人、いや一柱一柱の実力はサーヴァントに対抗しうるだろうと考える。それはつまり、ソロモンはサーヴァントを七十二人所持していることと同義だ。

 ただでさえソロモン本人でも規格外だというのにその配下七十二柱が全員サーヴァントレベルなどと笑い話にもならない。とにかくだ、今相手に戦う意思が無いというのなら、早々に逃げた方が得策だ。

 

「…判りました。今はマスターの安全を第一に考えましょう」

 

「話はまとまったかな。って言っても君たちがここから逃げていくのは判っているのだけどね。まあ、さっきも言った通り今の私に戦う意思は無いからね。逃げても良いし追うつもりもない。だから、――」

 

 そう言った瞬間、魔術王はテレビ画面のようにブレたと思えば、

 

「――!!」

 

「――少し、見させてもらうよ」

 

 士郎の目の前で傷のある頰に手をかざしていた。

 

「――! シロウ!!」

 

 とっさにアルトリアは槍を振るう。が、また同じように消える。

 

「あはは、ごめんね。少し驚かせてしまったかな」

 

 すると、またさっきと同じ場所に移動していた。

 

「…っ!」

 

「そう殺気立たせないでくれ。さっきのは悪かった。けど、もう大丈夫。見たいものは見れたからもう十分だ。

 …と言いたいところなんだが、最後に一ついいかな?」

 

 魔術王は先ほどの一瞬の出来事で恐怖心から放心しかけている士郎に話しかける。

 

「…大丈夫かい? 今君に聞きたいんだけど」

 

「…っ」

 

 士郎はもう訳が分からなくなってしまい、とにかく返事をしなきゃと頭を縦に勢いよく振る。

 

「なら聞くけどね。君のその魔術なんだが、随分と特異なものだね。その投影は魔術王の私といえどもできない。そんな魔術、一体どうやって会得したんだい? 君の過去にはそういったものが無かった。だから気になるんだ。君はどうやってその特異で希少な魔術を手に入れたのか」

 

「どっ、どうやって、って言われても…」

 

 そう言われても、士郎に限らずこの場にいる全員が答えられないだろう。凛も、同じ能力のアーチャーでさえも自身の能力をどうやって得たのかなど知りようがないからだ。

 

「ふむ、判らないと。つまり生まれ持った能力ってことか。…面白い。君はなんて面白い子なんだ。是非とも私の下で魔術を教えたいものだ。

 …おや? もしかしたらこれは本当にいいアイディアではないかな。…うんうん、シロウ君、君は今からでも僕のところに来るといい。そしたら、君に僕の魔術を特別に伝授させてあげよう。君に潜むそれも教えてあげるし、それの制御法も教えよう。

 どうだい? 決して悪い話ではないと思うんだ。あっ、それとも彼女たちと一緒にいたいのかな? だったらいいとも。一緒にいたいのなら連れてきて構わない。面倒はこちらが全て行おう。僕は懐が大きいし、君は何より彼女が大切なんだろう? いいね、大事な異性がいるというのは」

 

 士郎が答えた途端、急に捲し立てて言う魔術王。士郎は一気に色々と言われ何を言っているのか理解しきれず混乱してくる。

 

「ああ、ごめん。もう最後だって言ったのにこんなに長くなってしまった。

 だから、返事はまた後ででいい。とにかく、ここから出たいならこの玉座と反対の方向に進めばいい。そうすればここに来たところと同じ場所に出られる」

 

「……………」

 

 最早、士郎達はこの魔術王の言っていることが理解できない。

 何故、こうも簡単に見逃す、どころかそれを手伝う。何故、敵を前にして簡単に自分の下に来ないかなど言えるのだ。判らない、判らないことだらけだ。

 今士郎達はこの魔術王の言動が何一つ理解できていない。これであればいっそのことバーサーカーの方がまだ理解できるというものだ。

 

「…行くわよ」

 

 凛を合図に士郎達は後ろを向いて走り出す。

 その際、士郎は一度魔術王の方を少しだけ振り向く。魔術王は変わらず空虚な笑顔で走って行く士郎達を見ているだけで、本当に何かするつもりはないらしい。だが、逆にそれが堪らなく恐ろしい。

 ゾッとしつつも確認した士郎はもう振り向くのはやめて走ることに意識を向ける。

 すると、魔術王は士郎を見ながら少しだけ口を開き、

 

「…今の君は悪だよ」

 

 とそう言われたような気がした。

 

「…っっ!!」

 

 士郎達は走り、まだ眼前には草原しか見えないのだが、ある場所を境に結界のようなものに当たり通り抜け、再び周囲が光に覆われたと思うと、無事柳洞寺の前に出られていた。

 出て来れた彼らは緊張していたのか、ドッと疲れたようでサーヴァント達は大丈夫でもマスター達はその場に崩れる。

 

「…大丈夫、士郎?」

 

「…ちょっと、かな。りんは大丈夫?」

 

 生気のない目で、「大丈夫、だと思う」と言う凛と士郎。余程緊張したのだろう。二人の体は今休んでいる状態だと言うのに体の痙攣が収まっていない。

 

「…とにかく、移動しましょう。いつまでもこんなところにいられません」

 

 それを見かねたアルトリアは二人に提案する。それに士郎達は頷く。

 

「では、アーチャー、貴方は凛をお願いします。……アーチャー?」

 

 二人の了承を得てアルトリアはアーチャーに凛を運ぶよう頼んだが、返事がない。何やら考え事をしているようだ。

 

「…ん? と済まない、考え事をしていた。なんと言ったのかな?」

 

「…いえ、凛を運んでくださいと」

 

 そう言うとアーチャーは「了解した」とぺたんと座っている凛を軽々と持ち上げる。

 

「…ちょっと、なんでこんな持ち方なのよ」

 

 凛は怒る気力もないのか不機嫌な顔をするだけでされるがままに横抱き、所謂お姫様抱っこをされる。

 

「む? いや、すまないがこちらの方が運びやすいのだ。少し我慢してくれたまえ」

 

「ああもういいから、早く運んで。はぁ、こんなところ誰にも見せられないわ」

 

 それを聞いたアーチャーは「了解だ」と言って早速跳び上がる。

 

「では、私達も行きましょうか、シロウ」

 

 そう言いつつ、アルトリアはシロウを抱きしめるように持ち上げる。

 

「あっ、うん。判ったよ」

 

 士郎はアルトリアの温もりが来たことに安心感を覚える。そして、そのままアルトリアもアーチャーと同じく跳び上がる。

 

(…今のおれは悪だ、ってあいつ言っていたな。…そんなはずない。おれは、正義の味方なんだ。悪を倒すんだ…!)

 

 アルトリアの腕の中で士郎は拳を握りしめてそう自分に言い聞かせるが、その想いも、もう懐疑的なものに薄々だがなってきてしまっている。

 

(…そういえば、なんだか眠たい、なぁ)

 

 そう思っているうちに、重たい瞼は徐々に垂れ下がっていき、そのままアルトリアの腕の中で眠ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから士郎達は無事衛宮邸についた。凛は風呂に入ってそのまま別棟で寝るようでフラフラと覚束ない足取りで入って行った。

 一方、アルトリアはいつの間にか腕の中で士郎が眠ってしまったことに気づいたようで、仕方なくそのまま寝室まで運んで来ていた。

 

「……………」

 

 部屋の電気を点け、腕の中で眠っている士郎を起こさないよう、布団が入っている襖を開けて布団を取り出して敷き、その上にシーツと枕を置いてそこに頭が乗るように慎重に寝転がせる。

 そしたら、掛け布団をかけてそっとしておく。

 

「これで、大丈夫ですね」

 

 スヤスヤと眠っている士郎の顔をアルトリアは傍で座りただじっと見つめている。

 こうしてみると本当に士郎は子供だ。まだ顔は丸く尖っている部分がほとんどない。手足もまだ小さく、腕や脚もまだ短い。全体的に見積もっても、身長は大体140を越すかどうかだろう。

 

「……………」

 

 そんな幼さが全然抜けきれてない士郎なのだが、一つ普段の士郎からは考えられない部分がある。それは、何度か出てきた頰の傷だ。

 そこまで大きくないが、まだ小さい士郎からすれば大きめの傷跡がある。料理か何かで失敗でもしたのだろうか、それは火傷跡にも見える。一体いつできた傷なのだろうか。

 アルトリアは改めてじっと士郎の顔を見つめる。

 

(…そういえば、あの時、シロウの身に何が起こったのでしょうか)

 

 しばらく見つめていると、ふとアーチャーと士郎の特訓を思い出す。その時、士郎から出てきた黒い液体、あれがよくないものだと言うのは明白だ。だが、今の自分では何もできずにいる。それがどうしても悔しい。この身は主人を護るサーヴァントだと言うのに。

 

「…シロウ。貴方に何が隠されているのか、私にそれを知る術はありません。アーチャーが言った通り、今の貴方には想像ができない危険が迫っているのでしょう」

 

 そう言って、アルトリアは頭を下げる。

 

「…すみません。私は貴方のおかげでこうして強くさせてもらい、楽しく温かい二度目の人生ともいえる環境を謳歌させてもらい、私の話も快く聴いてくれた。貴方はこんなこと当たり前だ、と言うのでしょうが、私は…嬉しかったです。

 なのに、私は何も貴方に返せていませんね」

 

 そこでアルトリアはまたふと士郎と昔の話をしたことを思い出す。

 

(シロウは、私の人生をどのように思っているのでしょうか。随分と素晴らしいもののように思っているようですが。

 …私の人生、それはとても虚しいものでした。王として先陣を走り、時に村を犠牲にして数々の戦いを潜り抜けた。周りも私を王としてしか接しなかった。だから、私はそれが正しい判断だと思い続けた)

 

 まだ選定の剣を抜いたばかりの時を思い出す。

 

(だが、いつしか言われた、『王は人の心がわからない』と。その時、ようやく自分がもう人の身ではないと気づき、私の信念は決して正しくはないのだと気づいた)

 

 だが、気づくのが遅かった。もう戻れないところまで来てしまっていたのだ。

 ならば、周りと違う存在でも自分を信じて進むしかなかった。そうして疑惑を持ちながら無我夢中に突き進んでいるうちに、ランスロットが離反しモードレッドが叛逆を起こした。

 その後、カムランの丘にて自身の手でモードレッドを討ったが、ブリテンは滅び、円卓の騎士もその殆どが戦死した。

 

(私は限界だった。祖国は崩壊し、円卓もほとんどが戦死し、生きていたのはベディヴィエール卿くらいなものだった)

 

 そして、アルトリアは彼に今まで使うことなど一度たりとなかった聖剣の返還を頼み、安らかに眠っていった。アーサー王最期の話だ。

 

(…思えば、私の事を唯一判ってくれていたのは彼だったかもしれない)

 

 ベディヴィエール。隻腕の槍兵であり、円卓の騎士の中では比較的貧弱とも言える騎士であったが、その心は誰よりも輝いていた。少なくともアルトリアにはそう見えていた。

 

(彼は、優しく思いやりのある騎士だった。周りの者は彼を未熟者だと蔑み、私も蔑むことはなかれ彼は騎士としては優しすぎると思っていた。

 だが、今思えば、彼のような思いやりが私には必要だったのかもしれない)

 

 彼のような慈しみのある笑顔、これがアルトリアにもあれば、ブリテンは滅びの運命を辿らず叛逆も起こらなかったかもしれない。

 だが、もう後の祭り、今更悔やんだところで時間が戻るわけではない。

 そうして思うと、士郎はベディヴィエールに似た優しさがあった。つまりは彼はアルトリアだけでなくベディヴィエールにも似ているのではと思う。だとしたら、

 

「シロウ、貴方は私に似、彼とも似ている。そんな貴方なら、きっと選択肢を間違えることはないでしょう。

 ですが、今の貴方にはアーチャーの言う通り一つ欠けているものがあります。それが判ったときに貴方は――」

 

 ――また、強くなれるでしょう。

 

 そう言い残して、アルトリアは今日一日中起きているつもりなのか部屋の電気を消し外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、今日は君も見張りか」

 

「アーチャー…。ええ、少し夜風にも当たりたかったので」

 

 星が輝いている空の下、屋根の上に登ると、そこには紅い弓兵が座って見張りをしていた。アルトリアはアーチャーより少し離れた場所に座る。

 アルトリアは先ほどの一声だけでそのまま黙って座っていたが、ふとアーチャーの方を盗み見る。今アーチャーはずっと遠くを見渡すように、視線を遠くに飛ばしている。そのアーチャーの横顔を見ていると、なぜか今まで見たことがないはずだというのに、ここ最近何度か見たことがあった気がした。

 そして、まだ恐らくであるものの、なぜこのように思えるかアルトリアは一つの答が出ていた。それは魔術王と相対した時から疑問に思っていたことだった。

 

「……アーチャー、一つ訊ねたいのですが、よろしいでしょうか」

 

「…何かな」

 

 しばらくの間お互い無言だった状況も、アルトリアがアーチャーに訪ねたことで破られる。

 

「単刀直入に聞きます。貴方は、何者ですか?

 貴方はどうも彼、シロウのことをよく知っているようでした。それだけではありません。貴方のその能力は士郎と同じものと聞きました」

 

 アーチャーはアルトリアが何を言いたいか察しながら黙って耳だけ立てる。

 

「私は魔術には疎い。だから、凛があのようなことを言っていても、貴方も使うのであればシロウの魔術はさほど珍しいものではないだろうと思っていました。

 ですが、キャスター、魔術王は士郎の魔術を知らなかった。

 それはおかしい。凛が言っていたことが本当だというのであれば奴が知らない魔術など何一つないはずです。それで知らないということは、あれはシロウの固有魔術ということになります。

 …もう一度聞きます。貴方は、何者ですか?」

 

「…そこまで判っているのであれば、自ずと答えは出てきているのではないのか? アーサー王」

 

 そうニヒルな笑みで当たり前のようにアルトリアの真名を言うアーチャー。これでアルトリアの疑惑は確信へと変わった。

 

「…やはり、貴方は…ですが、どうやって。いや、それ以前に何があったのですか? 貴方がもし本当にそうなら、何が貴方をそこまで変えたと言うのですか?」

 

「…変わったか…確かにそうだろうな。ところでアーサー王。君はマスターから自身の夢を聞いたかね?」

 

 アーチャーが唐突にそのようなことを言うものだからアルトリアは一瞬惚けてしまう。

 

「…はい。彼の夢は正義の味方でしたね」

 

「そうか。ならば話は早い。そうだ、私は正義の味方を愚鈍にもなろうとし、失敗したのだ。

 …私は今まで百を切り捨てその何十倍と言う数の人を救ってきた。これが本当に私の目指した正義の味方なのか、と疑問に思いながらな。それでも、救える命があるなら全て救ってきたさ。

 だが、その先に待っていたのは批判と罵倒だけだった」

 

 アーチャーが話している内容に、アルトリアはまさに自分と同じだと共感に近い思いでいた。それと同時に、やはり似ていると再確認した。

 

「そして、いつしか俺は皆の恐怖の対象となっていた。どこを見ても俺を見る目は全てが恐怖に染まり、中には憤りが篭った目の人もいた。そのあげく、俺を指差し正義の味方ではなく『化物だ』と叫ぶ者もな。

 笑えるだろう。正しいと思った判断を続けた結果がこれだ。これこそが正義だと信じた結果がこれだ。あまりにも愚かな行為を続け、結局俺は、正義の味方になれなかったんだ」

 

「………それは、」

 

 痛いほど気持ちが判ると思った。なぜなら、本当に同じだからだ。様々な戦いで少数を切り捨てそれ以外を助ける。その方法は形や立場は違えど、全く同じだった。

 そして、その先にあったのが批判だけだということも、王に相応しくないと思ったことも。

 となれば、彼も後悔しているのだろうと思った。だが、

 

「――それでも、俺が後悔することはなかった」

 

「…え?」

 

 後悔はないと言った。

 

「確かに俺は最終的には処刑台に立たされ、そこで命を絶った。だが、悔いはない。その後、死後を世界に売り渡していた俺は守護者となり絶望し、本当に後悔した。だが、それも無くなった」

 

 アーチャーは何か思い出すように夜空を見上げる。

 

「なぜ俺に悔いがないのか、だがな。俺には最近気づかされた…教えられたとも言えるか。ともかく、俺は知ったんだ。この選択は決して正しくなくとも――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――決して、間違っていない、と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――」

 

 アルトリアはその言葉に心底驚いていた。

 確かにアーチャーの人生は正しいものではない。しかし、その想いは、その行いは、決して間違いなんかではないと言う。

 そして、これはアルトリアの心にも響いていた。もしそうなら、自分の人生も行いも決して間違いではないのではないか、と。

 

「――と以上が私の話だ。このようにくだらない愚かな男の話だったが、如何だったかな?

 ……アーサー王? …っ!?」

 

 ニヒルな笑みのままからかうように締め括ったが、返事が来ず振り向くと、思わずアルトリアの顔をギョッとしながら見てしまう。

 涙を流しているのだ、あのアルトリアが。表情は至って変わっていないが、それが逆に不安を煽ってくる。

 何かまずいことでも言ってしまったのではないか、と思った彼はいつものクールで落ち着いた雰囲気が無くなるほどあわふためく。すると、

 

「…ありがとう、ございます。おかげで私の心は救われました」

 

 アルトリアはいつもの凛とした声と笑顔でそう言ってきた。

 そのことに一瞬唖然となりながらも、そのアルトリアの笑顔に見惚れてしまう。

 

(…ああ。いくら姿が変わっていようとも、この笑顔だけは変わらんな、セイバー)

 

 そう思っているうちに知らず知らず自身も屈託のない笑顔を浮かべてしまう。それだけ彼女の笑顔は輝いているのだが、それ以上にかつて愛した者の笑顔は一層輝いて見えてしまうのだ。

 

(…全く、もう昔の自分とは違うと思っていたのだが、存外まだ昔の部分は残ってしまっているようだ)

 

 そのように思っていると急に周囲が明るくなり始める。

 

「そろそろ夜明けのようだ。私はこのまま見張りを続けるが、君はどうするんだ?」

 

「私は…朝食を摂りたいですから、もうしばらくしたら戻ります」

 

 アルトリアがそう言い、最後に、

 

「ですので、楽しみに待っていますよ、シロウ(・・・)

 

 そう、側にいる嘗て衛宮 士郎だった彼に言う。

 

「――フッ、それはあの小僧に言いたまえ」

 

「ふふっ、そうですね」

 

 二人は朝焼けを見ながら、どこか柔らかな空気のまま士郎の声が聞こえるまで揃って座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 夜が明け始めた頃、柳洞寺の中にある一室、そこで魔術王が何か確かめるように手から魔術による光を出していた。

 

「……先ほどからずっと思案しているようだけど、大丈夫なのかい?」

 

 そんな彼に念話で話しかけてくる人がいる。

 

「大丈夫だよ、マリスビリー。全ては順調だ、と言いたいところだけどまだ判らないかな。

 けど、大丈夫。今回の聖杯戦争でとりわけ強いのは二人だけ。それも、すでにその内の片方、ヘラクレスは片付けたからね」

 

 魔術王はくつくつと笑い出す。だが、対照的に魔術王のマスター、マリスビリー・アニムスフィアは納得がいかない雰囲気を出す。

 

「…ふう、倒したと言っても最後だけ残したじゃないか。なんで最後まで仕留めなかったんだ? バーサーカーを倒しさえすれば聖杯はこっちの手に渡るというのに。

 それに、なんでバーサーカーが撤退した後に来たランサーとアーチャーまで見逃したんだ。三騎士のうち二人を倒せば、残った三騎士は同盟を組んでいるセイバーのみの上、あんなマスターだ、簡単に倒すこともできるだろう?

 それとも、思いの外バーサーカー相手に手間取ったからか?」

 

 次々と疑問を言ってくるマスターに、魔術王はそれに淡々と答える。

 

「それもあったかな。ヘラクレス、彼は確かに伝承通り強かったよ。私の魔神達を半数近くまで減らしたのだから。

 それから今あの聖杯を手に入れたところでまだ一体分の魔力しか溜まっていない。あの私が召喚し、始末したアサシンの分しかね。持っていたところでほとんど意味はない上、あのまま戦った後に連戦で騎士王相手は苦戦すること請け合いだからね。一応、保険として魔神達を残しておきたかったから見逃したんだ」

 

 そう彼が言うとマリスビリーはふむ、と言ったのち、

 

「だとしても、君にはあの宝具があっただろう? そもそも、ヘラクレス相手に宝具を使わないとはどういうことだい、キャスター?」

 

「ああ、確かにそうだけど、まだ魔力が溜まっていないんだから仕方ない。それはわかっているだろう?」

 

 そう言うとマリスビリーは黙ると思ったが、

 

「だから、何度も言っているだろう。そこまで溜める必要はないと。君が言うには、あれは溜まれば人理すら滅ぼすとか言っていたが、そんなことする必要ないし、やってはいけないことだ。せめて対城までで抑えてくれ」

 

「はぁ、そうは言うけどね。あれ対城にするまでにも時間がかかるんだよ? 全く、あれに私自身の魔力を入れればもっと早くできたんだけどな」

 

 そう言ってため息を吐き出す。

 

「そんなこと言っても、できないのであれば仕方ない。だからこそ、こうして町の人たちから集めているんだろう」

 

「と言っても、ただの人間から採れるエネルギーは少ないというのに殺さないようギリギリまでなんて余計に少ない。加えて余り採りすぎるなとなれば、どうやっても対軍宝具にするだけでも後一週間近くかかる」

 

 と言われマリスビリーはむぅ、とこの場にいなくとも難しい顔で考えているのが判る声を出す。

 

「何か方法はないのかい? こう、一気に集める方法は」

 

「…そうだね、無くはないかな」

 

 少しだけ思案して言ったことにマリスビリーは追求するするようにして、「何だって? あるのか? それなら…」と早速しようと言いかけたら、

 

「けど、はっきり言うけど、それは難しい」

 

 と遮って言う。それに「…なんでだ?」と聞くと、

 

「うん。その方法っていうのがね、シロウ君なんだ。あの子の魔力を吸いとればあの宝具は一気に対界宝具にまで登る」

 

 衛宮 士郎。彼のことは魔術王を通して知っていた。魔術王ですらできない特異な魔術を扱う少年と。

 

「…なるほど、確かに難しい。けど、君の魔術ならできるのでは?」

 

「それはもっと難しいな。彼女が側にいる限り私の魔術は察知されるだろうし、察知されないにしても何かしら報復を考え、捨て身の策をとりそうだ。そんなことになっては本末転倒だよ」

 

 もし、本当に捨て身でかかってこられては相討ちでやられる可能性がある。それだけは避けたいので、士郎のことは諦めることにする。

 

「結局のところ時間が経つのを待つしかないか」

 

「ああ。でもそれで良いと思うよ。なぜなら、彼らも私にはしばらく手出ししないだろうし、彼らなら他のサーヴァントを倒してきてくれるしね。つまりはこっちは楽に事を進めれるって訳だ」

 

 そのため、魔術王はしばらくの間自身の宝具に魔力が溜まるまで傍観を決め込むようだ。

 その事にマリスビリーは「なるほど」、と納得し、もう活動限界が来ていたのか欠伸の声が聞こえ、「では、私はしばらく眠る。君も必要ないと思うが、休憩を摂りたかったらとっていて構わない」と言って念話を遮断する。

 

「…まあ、それ以外にも、彼らがサーヴァント達を倒してくれればあの娘にある聖杯に魔力が溜まり、その五体分か四体分の魔力を使えばこの宝具はお望みの対城宝具にまで威力が上がるってこともあるんだけどね。

 それにしても、彼は今回の聖杯がどんなものかわかっているのかな。まあ、判ってないよね、見た感じ。

 あんな穢れた聖杯に願ったところで彼の望みは真の意味では叶えられないけど、彼はどうするのかな?

 まあ、そんなことよりも、と」

 

 マリスビリーとの念話が切れた魔術王は目を瞑り、未来が見える眼で士郎のその先を見る。だが、

 

「…やはり、見えないか。過去や君が出ても大して関係の無い未来は見えても、彼が深く関わる未来はどうしても視れない。もう一人の方は視えるというのに。

 私の眼で以て視れないとなると、君の未来はまだ確定していないということになる。フフフ、ますます面白い」

 

 士郎に深く関わる未来は一切見えず、他でも士郎が出て来た瞬間砂嵐状態になったりして見えずらい。

 魔術王はそのことにまた面白みを見出し、眼を開きゆっくりと手を上に広げ高らかではないが、宣言するように言う。

 

「…もともと君には魔術の才能なんてものは、なにも無い。けど、私は君に期待している。なぜなら、君には体に宿るそれがある。それが有れば、ベクトルは違えど、いずれ私以上の魔術師ないし魔法使いになるだろう」

 

 「そして」、と魔術王は続ける。

 

「君は、死後英霊となるだろう。

 近代の英霊、それはとても珍しい英霊だ。楽しみだよ、その時が非常に。と言っても、既に一人いるけどね」

 

 最後に魔術王は穏やかで空っぽな笑顔を浮かべ、崩れるようにしてその場から消え去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジャガー「ふんふふん、ふーん♪ エミヤからのチョコおいしいな〜。ククルんのは勘弁ニャ〜。
…ニャ!? ついに始まったか‼︎ トウッ!」


ヒュウウウゥゥゥゥ、ズダン‼︎


ジャガー「やあやあ、画面の前にいるみんな! 元気〜? 私は誰だ!? 私は鳥だ! 鳩だ! 豆柴だ! いや、ライ…ジャガーだ! というわけで、みんな大好きジャガーマンだニャ! えっ? タイガー? 知らない人ですね。

 とにかく! みんな今回はここタイガー道場ならぬジャガー道場へようこそ! えっ? ゲームオーバーになってないし、これ小説だよねって? そんな細かいことは気にスンナ。てかここタイガー道場じゃねえし〜。

 そんなことより、なんでいきなりジャガー道場? なんて人のためにちょこっと解説しようではないかっ。
 今回、ここができたわけとしては〜、ズバリ言って作者が唐突に書きたくなったから、ニャ! 是非もないね。
 そ〜んなわけで、弟子もいない状況…ハッキリ言って寂しいです。けど! みんなが応援してくれる限り! ジャガーはくじけないのニャ‼︎ というわけで、本題に入りましょー。

 さてさて、ここジャガー道場で主にやることはですね、この小説に関する質問を答えたいと思いまーす。つまり質問コーナーってことよ!
 今回の小説では出番がほとんどない世界一美しい英語教師に代わってみんなの質問に答えてやるぜっ! って訳でどんどん書いてってね!

 ではでは、最後の〆にお決まりの予告で締めましょう!」

『佳境に立たされたマスター士郎達! 彼らは見事魔術王ソロモンを討伐できるのか!? 本来のラスボスの運命やいかに!? ガンバレ士郎! ガンバレジャガーマン‼︎ 内なる想いを秘めながら今ランサー陣営、最後の戦いに…!!
 次回‼︎ ランサーVSキャスター! そして、別れの時…』

ジャガー「というわけで、次回も気が向いたら書くニャー。えっ? ランサーはランサーでもあんたじゃないって? うるさーい‼︎ いいだろー‼︎ ヒロイン! ヒロインだよ!? ランサーがっ! 珍しくヒロインだよ!? てか、結局最後しまってn」プツン



…申し訳ない。なぜか急に魔が指して…。これは今回限りにする予定ですので、心配いりません。(ついでに、予告も無論のことウソです)
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