Fate/stay night 槍の騎士王と幼い正義の味方 作:ウェズン
私は、何名かチョコを貰えず少し落ち込んでいます。時間がないからね!
それにしても、もう直ぐで新章始まりますね〜。もう楽しみです。
CM見た限りではアベンジャーの二人と、あのエミヤそっくりな黒人男性、その他6章で出てきたシャーロック・ホームズも出てくる感じですか。あと最後に出てきた紳士風なおじさんはアレですかね。シャーロック・ホームズが出るならば欠かせない犯罪紳士ですかね。
とまあ、いろいろ気になる点はいっぱいあります(エドモンと戦っていた人とかアルトリア・オルタがバイクで戦っていた人とか)が、それは後のお楽しみということにしますか。
では始まります。
あれからしばらく、鍛練が終わった士郎は凜に言われたその時まで悶々としながら昼食を済ませた後、時間を買い物ついでに外に出て費やしていた。
(なんか、ちょっと緊張するな…)
子供がこんな時間に出歩いていていいのかと思うが、実のところ士郎は実質一人暮らしであるために食料を買うための時間が放課後か休日しかない。だが、買い物をするために商店街までの道は意外と遠く、子供の足では放課後から行っては夜になる可能性が大きい。夜に出歩くのは危険だ、かと言って休みの日だけではいざという時食料不足になる可能性もある。故に、学校から特例として平日でも一ヶ月に数回だけ無断欠席を許されていたりする。ただし、教師がお目付け役という名の保護者付きで。
しかし、義務教育期間である士郎が一ヶ月に数回だけとはいえ休んでしまっている状況に加え、聖杯戦争により長期休暇を取ってしまっているために、今度の春休みはほぼ無いに等しいだろう。
(…なんか、今更ながらやめたい)
と色々と深刻な問題がありそうではあるが、今の士郎はそんなこと以上に考えるべきことがあった。無論、今朝の凜が言った話だ。
士郎は今更ではあるが、なんであんなこと言ったんだと後悔している。しかし、もう凛の前であれだけ啖呵を切ったのだ。ここでやめてしまえば凛になんて言われるか火を見るより明らかだ。
(…はあ。なんでこんなことになったんだっけか)
改めて自分の行動を振り替える。思えば随分と些細な話から始まった気がする。なんでこんなことから、と嘆かずにいられないが始まってしまったのであればもうとことん最後まで行くしかない。
(…そういえば、少し忘れかけていたけど、アルトリア達って昔存在した英雄なんだよな)
ふと、そのようなことを思い出す。今までそのような素振りはほとんどなかったため忘れがちだが、彼らは全員なにかしら偉業を成した人達だ。
(…待てよ、それってつまりアルトリア達は死人、っていうことだよ、な…)
そこまで考えて、士郎は今自分はとても愚かなことをしようとしているのではと思えてきた。
「………………」
士郎は立ち止まる。額に冬場には相応しくない汗を流しながら。
(お、おれは…何をしようと、しているんだ…こんな…こと、早くに気づくはずだろ)
少しづつ、頭の中にあった想いが崩れ去っていく感覚がした。
今気づいたのだ。アルトリア達はどう言っても、もうすでにこの世を去っていった亡者。今でこそ聖杯という奇跡のおかげで存在していられるが、この戦争が終われば消える運命にある者たちだ。そんな存在に恋などしたところで叶うはずもないことだ。
(…いや、そうだ、まだ手はあるだろ)
士郎は少しゾッとするが、思えばまだ手はある。
それは、聖杯だ。聖杯は万能の願望機。ならば、サーヴァントをこの世に繋ぎ止めることができるのではと思う。
(そうだ…! そのためにおれは聖杯を使おう。そして、アルトリアとさくらねえちゃん、ふじねえちゃんとも一緒に暮らせば、いいんだ)
そう自分に言い聞かせるように言うと、幾分が気が軽くなった。
(まだ強いやつはいる。けど、アルトリアならあいつも倒せるはずだ)
士郎は今のところ一番の強敵と思われる魔術王を思い浮かべる。まだ魔術王の底は判らないものの、アルトリアならきっと倒してくれる。そう思えた、いやそう思いたかった。
(アルトリアだってこれなら嬉しいはずだ。アルトリアの願いは今のところ無いようなもんだし、いいよな)
そう思うと希望が湧いてきた。アルトリアと一緒にいられる方法が判ってきたからだ。士郎の想いを知っているものであればこれがどれ程嬉しいか判るだろう。
望みはまだある。それが判っただけでも嬉しくて仕方ないのか、子供故か、嬉しさを体現するべく商店街へ向けて走り出す。
◇
(…結局、今日も来なかったか)
衛宮邸の側にある道場にて、エミヤは壁にもたれ掛かって誰かを待っていた。
(来ないということは、まだ奴は答えを見つけていないということか…。
はぁ。私事でありながらなにかと面倒ではあるな)
エミヤはもうこれ以上待っていても仕方ないと思い、道場から出ていく。
(…これ以上待っていては時間がないか。どうするか。…アレに関してもまだ解決できそうにないしな)
道場からエミヤが出ていくと、道場は静寂に包まれる。
道場から出た後、エミヤは居間に立っていた。居間には人は誰もおらず静かだ。
(…いくら違う私とはいえ、家の管理を怠っていることはなさそうだな)
台所にある料理道具一式をそれぞれ手にとって様々な角度から眺める。どれも整備が行き届いておりとても子供が管理しているとは思えないほど整理整頓ができている。
一通り見た後は元にあった場所に戻し、次へと場所を移す。
「……………」
廊下を歩いている時、アーチャークラスが持ち得る千里眼、鷹の目とも呼ばれるその目で廊下のすからすみを見渡す。
(ふむ。なかなか掃除されてはいるが、やはり子供だな。まだ詰めが甘い)
何かと辛口に評価しながら歩いた先には、士郎の寝室があった。
(生前の私はここを寝室として使うことはあまりなかったな。ここの衛宮 士郎は使っているようだが)
といっても、本来はそれが正しい寝室であり、土蔵が寝室と言う方がおかしい話なので、これに関してはどうこう言うつもりは無いらしい。
エミヤは寝室の襖を開ける。すると、そこにはアルトリアが正座で座っていた。アルトリアは既にエミヤの気配に気づいていたのか驚くことなくエミヤの方を見ていた。
「……………」
「……良いお部屋ですね」
エミヤは黙ったままアルトリアの顔を見ていたら、おもむろにアルトリアはこの部屋を褒める。
「…そうか? なんの変鉄もない和風なだけの寝室だと思うが」
「ええ。ですが、この部屋は決して蔑ろにされている所がなく綺麗にされています。この部屋の主がとても善良な人だと言うことの証です」
アルトリアは部屋を見渡しながらそう言う。
「…フッ、善良、か。皮肉なもんだな。その善良だった者のなれの果てがこれなんだからな」
エミヤは自身を嘲るようにして言う。
「…シロウ」
「…すまないが、君にその名で呼ばれるような者ではない」
まるでその名で呼ばれることそのものが罪と言うように言う。
「…いえ、ですが貴方も紛れもないシロウですから。貴方は確かに私のマスターです、そのマスターには申し訳ありませんがその申し出には応えられません」
だが、アルトリアはその申し出を首を振ってやんわりと拒否する。
「………。はぁ、判った。全くいつまでたっても君には敵う気がしない」
「フフ。では、貴方と出会った私は私とあまり変わらないのですね」
と面白そうにアルトリアが言うと、エミヤは何か引っかかったのか考え込む。
(彼女と今目の前にいる彼女の違いか。…確かにほとんど無いと言えば無い。しかし、)
目の前にいるアルトリアと自身が愛したアルトリアを思い浮かべ見比べる。
(…やはり違うな。体格などの身体的特徴もそうだが、何より、私の知っている彼女はこうも笑顔を浮かべることはあまりなかった気がする)
あくまでも気がするという範疇だが、少なくともここまで感情を顔に露にすることは少なかったと思うエミヤ。
「…? どうしました? 何かおかしなことでも?」
「ん? ああいや、気にしなくていい。少し昔を思い出していただけだよ」
ニヒルな笑みでそう言うと、
「そうですか。良かったです。てっきりまた何か貴方を不機嫌にすることを言ってしまったのでは、と思ったので」
胸を撫で下ろしながらそう言われ、エミヤは一瞬「ん?」と疑問符を浮かべる。
「一体なんの話かね。私は君と話していて不機嫌になった覚えはないが」
「ああいえ、私のマスターの方ですよ。昨日話していたら急に不機嫌になられたので。
何か私の話し方にはシロウにとって嫌なところでもあったのかと」
そう言われまた考え込む。
確かに彼女の言い分で激しく怒った記憶は何となくある。あれに関しては自分も熱くなりすぎたと反省している。だが、それはあくまでも彼女の全く自分を考えていない姿勢に苛立っただけであり、こちらの彼女はそういった自己犠牲を考えている雰囲気はない。
「…? すまないが、その件もう少し伺えないだろうか」
「はあ、それは構いませんが」
そう言うとアルトリアは昨日の出来事を話す。それを聞いていたエミヤは徐々にまさか、という顔になり頭を押さえる。
「…以上ですが」
(…なるほど、これは悪いことをした。完全に勘違いしているな)
アルトリアの話から大体想像がついたのかため息を出すと同時にめんどくさいなとも思う。
「あの…頭を押さえてどうされたのですか?」
「あーいや、こちらの話だ。君は気にしなくていい」
エミヤはこれをどう解決させようかと悩む。
(…そういえば、確か宝石にも花言葉のようなものがあったな。私が渡した宝石は赤色の宝石で、名前は…あれは確か、ガーネットだったか)
ふと、自分が渡した宝石を思い出し、名前がわかればその意味も思い出そうとする。
(ガーネットは豊穣や希望の石と呼ばれている石だったな。他には確か…恋が実る、と…)
そこで思考は途切れる。不味いと思ったのだ。もし士郎がこの宝石の意味を知ってしまったらますます虚実が一人歩きしていってしまう。もう手遅れであるが。
(しかし、どうする。奴とはあの一件以来一言も話せていない状況だというのに。
全く、そんな気まずいときにそんな勘違いをされるとはついてないな。流石は奴と同じ幸運値だな)
といえども、まだどこかの青い猛犬よりはましな事案、だと思われる。
(…はぁ。仕方ない。こればかりは自ら出向くしかないか)
このようなことを凜に相談するわけにもいかず、目の前にいる自らが発端の一つだとは判っていない天然な王様にもできない。
となれば、もう自分だけで動くしかないと結論に至ったエミヤは行動を起こすことを決意する。
(しかし、そうしようにもまずはどうやって話す機会を得るかだな)
と言っても、結局はそこに突っかかってしまう。これではいつまで経っても進展は見込めない。
「あ、あの、本当に大丈夫ですか?」
エミヤはしばらくじっと黙ったままだったからかアルトリアは心配して話しかける。
「ああ。心配させてすまない。私は大丈夫だ(…ここで考えることでもないな)」
単なる見回りついでにかつての実家を堪能していたのが、思いにもよらない事件が発覚してしまうというのは一体どういう現象なのか。エミヤの悩みは尽きることはない。
「はぁ、なんでさ」
◇
「おっちゃん、これお願いっ!」
一方そのころ、士郎は元気な声で青髪で赤い目をしたまだおじさんというには少し若そうな魚屋の人に話しかける。
「おう、まいどありっ! 今日も学校休んで買い物か、大変だな~ボウズ。本当に藤村さんとこの親っさんに世話にならなくてよかったのか?」
「ああ、うん。いつまでも世話ばっかりしてもらっても仕方ないしね。一人でもしっかり生きていかなきゃってさ」
もうこの魚屋の店員とは親しいのか、完全に砕けた話し方をしている。それだけ士郎がここに来ることが多かったのだろうか。
「まだ若いってのにしっかりしてんな~。うちんとこのボウズも見習ってほしいぜ。っと、ほれ、釣りとおまけの魚一匹だ」
「ありがとう。いつもおまけもらっているけど、本当にいいのか?」
士郎がこの魚屋へ買い物に行けば、ほぼ毎回おまけとして様々な種類の魚をもらう。このことに士郎は感謝してはいるが、こんなにもらっていいのかといつも思う。
「いいっていいって! ボウズはいっつもうちで魚を選んでくれるからな。そのお礼とでも思ってくれ!」
そう言って豪快に高笑いをする。
士郎はここの商店街の人達とは何かと交流が多く、特に寄るところが多い店などではこのように顔なじみとも言えるほど仲がいい。そのためかこうしておまけをもらったりして何かとお得な買い物ができている。
それが長く続いているためか最早、士郎はここの商店街の人たちにとって息子や孫のような存在となっている。
「ありがとな〜おっちゃん」
「おぉう! また来いよ〜」
そう言って士郎は魚屋を離れる。
士郎は今日もいい魚が手に入ったのが嬉しいのか、今日の夕飯は魚料理をしようかなと考えながら次の店へと足を運ぶ。
「……………」
そうして様々な店に寄った後、ふとある店の前で足が止まる。その店とは服屋だった。
士郎はここで少し思ったことがあった。アルトリアに服をプレゼントしたら嬉しいんじゃないかと。
(よく女の人って服とか好きだって聞くし)
だが、自分の財布の中身を見ても、そこまで持ってきておらず服を買えるだけの余裕はない。なので、今回は諦めて残りの買い物を済ます。
(…今度、アルトリアを連れて見に来ようかな)
◇
「ただいま~」
あれから士郎は全ての買い物を終わらせ帰宅していた。
「お帰りなさい、シロウ」
「…! ただいま、アルトリア」
帰宅した士郎を待っていたのは、いかにも士郎を待っていましたという雰囲気を出していたアルトリアだった。
今まで出迎えたことはあったが、このように出迎えてくれたことはあまりなかったためか、もしくはアルトリアだからなのか判らないが士郎は嬉しそうにアルトリアに返事をする。
「今日はどこへ行かれたのですか」
「今日は商店街に行ったんだ。ほら、こんなに買ってきたんだ」
士郎はまるで初めてのお使いが成功したことを親に話すかのように買い物籠を見せる。
中には様々な野菜や肉類があったが、何より目を引かれるのは一目見てわかるほど立派な魚だった。
「これは…随分と買ってきましたね。今日は魚料理でしょうか」
「うん。そうしようかなって思ってる」
士郎は買い物籠の中にあるものを台所にある冷蔵庫に入れに行く。
「これでよし」
脚立に乗り大きめの冷蔵庫を前に試行錯誤しながら入れていったら、空っぽに近かったはずがその大部分は食料で敷き詰められた。
(これだけあればしばらくは持つかな)
人も増えたこともありここ最近は消費が激しかったために買い物に行ったのだが、やはり子供の体では限界があり、いくら慣れているからと大量に持ってきてこれたものの、大変なものは大変である。そして、こちらが思う以上に消費が激しいのか、これだけあっても足りるかな、と不安に思う。
(家の大食らいといえばふじねえちゃんだけだったのに、アルトリアも意外に食べるんだよなあ)
そう言って、少し疲れたのかため息を吐き出す。ちなみに、士郎はこう言っているものの実際のところアルトリアの食べっぷりには少し嬉しく思っている。なぜなら、アルトリアは一口運ぶ度にすごく嬉しそうに頬張るからだ。その笑顔を見ているとついつい沢山作りたく思ってしまうらしい。
ついでに、大河に関してはいつも通り過ぎて大してなんとも思っていない。
「買い物も終わったし、今日はもう…そういえば、しばらくアーチャー師匠と訓練してないなぁ」
今日のやることは全て終わった。なので、これから何をしようかというところで、士郎はこの時間はエミヤのところで訓練を受けるはずだったことを思い出す。
あの一件以来訓練は途切れたまま。その成果は多少出たものの、今も受けて入ればこんなものではないだろう。エミヤから教わる訓練は全て士郎にうってつけだった。慎二と戦ったときにそれを感じた。
(…どうすれば、もう一度受けることができるのかな)
そう思ってくると、なんとも惜しく思う。もっと強ければ、覚悟ができていればまだエミヤから教わることができたかもしれない。
だが、そうなるとまた落ち込む。覚悟を持てと言われても、あれだけのことをされて持つことができるかと言われたら、それは士郎には無理だった。覚悟を持とうにもどうしても恐怖心が勝るのだ。
(…そういえば、アーチャー師匠はおれには足りないものがあるって言っていたな)
その時エミヤに言われたことを思い出す。
(…おれに足りないものってなんなんだろう)
そう言われても、士郎には見当がつかない。自分を完璧な人間だと思っているわけではない。ただ、これ以上何か必要なものがあるのか判らないのだ。
「………………」
「……あの、いつまでも開けっ放しにしておくのは」
と考えに耽っていたのかハッとなって、開けっ放しになっていた冷蔵庫を慌てて閉める。
「ごめん、ありがとうアルトリア」
「いえ、何か考え事をしていたようなので」
士郎はいつの間にか来ていたアルトリアを見て少し思う。アルトリアなら、今の自分に足りないところが判るかもしれないと。ただ、こんなことを人に教えてもらっていいのかと思う。こういうのは自分で気づかなければいけないのでは、とそう思うからだ。
しかし、このままでは立ち往生するばかりだ。ならば、
「……なあ、アルトリア」
「はい。なんでしょうか?」
士郎に呼ばれたアルトリアは士郎の真剣な顔を見てこちらの顔も引き締める。
「アルトリアはさ、あの時アーチャー師匠の訓練で言っていたおれに足りないものって…何か判るか?」
まだ僅かに躊躇してアルトリアに聞く。アルトリアはそれを表情を変えることなく聞いている。
「…シロウに足りないもの、ですか」
アルトリアはそう言って黙り込んでしまう。どうしようかと思っているのだ。このまま素直に教えるか、まだ教える時ではないか、と。
黙り込んでしまったアルトリアに士郎は不安に駆られていた。もしかしたら教えてくれないのか、もしくは判らないのかと。そう思っていた時だ、
「…あの、それでしたら今から私とも訓練をしませんか?」
といきなりそんなことを言ってきた。そのことに「へ?」と一瞬惚けてしまう。
「え、え? な、なんでいきなりそんなことを?」
「少し、思いまして。士郎の足りないところはこうして言葉で教えるより、訓練で叩き込むように教えたほうがいいのではと」
士郎はそれに唖然としていた。それではまるでどこかのスパルタ王の言い方みたいだからだ。
だが、それで判るというのであれば是非もない。ならば、
「…判った。それじゃ、道場に行こうか」
そう士郎が言うと二人は移動を開始する。
「それでは、よろしくお願いします」
「お願いします!」
道場に入った二人はお互い竹刀向け合い構える。
「…安心してくださいね。こちらは本気を出しません」
「う、うん(…本当に大丈夫かな。なんか、アルトリア不器用そうだけど)」
アルトリアは流石というか今まで使うことがなかった筈の剣でもその扱い方は判っているようで、セイバークラスになれてもおかしくないだろうと思われる達人の技術を感じさせる構えだ。
「さあ、行きますよっ!」
そう言って、いきなりアルトリアは竹刀を一直線に突き出してくる。
「! うわっ!」
士郎はギリギリで体を転がし躱す。どうにか躱すことができたが、士郎は冷や汗を流す。今のは少し危なかった。
「ちょっと! 手加減してくれるんじゃなかったの!?」
「何を言っているんですか! こんなのまだまだ一割程度ですよ!」
それを聞いて士郎は耳を疑う。今ので本当に一割なのか。今の速さはエミヤに勝るも劣らない突きだった。
そう考えている間にもアルトリアは竹刀を振るう。
「くっ…!(強いって思ってたけど、まさかここまでだなんて…!)」
これではまだエミヤの方がましだと思えた。アルトリアでは少し強すぎる。このままではオーバーワークで訓練にすらならなさそうである。
「ハァッ!!」
どうにか振るった竹刀も防がれ、その隙にアルトリアの竹刀が士郎の頭目掛けて降り下ろされた。
「んがっ!」
竹刀を弾かれたまま、体制を整えることができなかったため、避けることもかなわず直撃した士郎は目を回して倒れる。
「一本ありっ‼︎ です!」
「イッテテ」
本当にできるだけ手加減したのだろう。しかし、手加減しても幼い士郎では敵わなかったのだ。
「どうしました! これではアーチャーとの訓練が意味の無かったことになりますよ!」
「…! くっそぉ…!」
それは嫌だった。せっかく少しでも強くなれたのに、それが全て無駄になるのが嫌だった士郎は立ち上がる。
「立ちましたね。では、もう一本!!」
「…っ! ウオオォォッ!」
またアルトリアが竹刀を振るう。淀みなく振るわれる竹刀はそのまま士郎に当たるかと思われた。
しかし、今度は防がれた。ほんの僅かにしか出していないとはいえ、サーヴァントの攻撃を士郎は竹刀で防いだのだ。
「…! いいですねっ!」
アルトリアは褒め称えてから竹刀をすぐに引き、再度横に振るう。
士郎はそれをしっかりと見る。横凪ぎに振るう竹刀を見て、軌道を読み当たるかどうかというところで素早く屈み避ける。
アルトリアはまさか避けるとはと思っていたのか一瞬驚いた顔をしたが、すぐに戻し竹刀を構え直そうとした。だが、
「っ! そこっ!」
「―!」
その間に屈んだ状態から身体をバネにして、勢いでアルトリアに向けて竹刀を突き出す。
士郎の竹刀は完全にアルトリアを捉えており、この距離でその体勢では避けられない。これは当たると、見ている者がいれば皆一様にしてそう思っただろう。だが、
「………………」
「…あっ」
瞬間、アルトリアは周りの時間が止まったのではと思えるほどの速度で竹刀を構え直し、士郎の竹刀に宿る勢いを僅かに横へと逸らして、できた隙を狙って流れるように竹刀で叩きつける。
「イデッ!」
「………一本あり、です」
あまりにも完璧な動きに見惚れる暇もなく、士郎は床に平伏した。
「イッタタ。本当に手加減する気あるのかよ〜」
「…申し訳ありません。意外にも良い動きをされていましたので。それからもう一つ申し訳ありません、アーチャーとの訓練が無駄になると言って。貴方のその動きはアーチャーとの訓練の賜物なのでしょう」
アルトリアは素直に謝り倒れている士郎を起き上がらせる。
「……………」
それを聞いて少し思う。確かに、アルトリアの竹刀を防いだり避けたり、これらは全て以前のままではできなかっただろう。つまり、これができるようになったのもエミヤから教わったからということになる。
(…やっぱり、アーチャー師匠はすげえな。こんなおれでも、ここまで強くしてくれたんだから)
改めて思うと、彼には感謝の念しかない。そう思うと、また受けてみたいと思うようになってくる。
「……………」
ただ、また彼から厳しいことを言われたらどうしようかとも思う。エミヤの言葉は全て士郎の核心をついてくる言葉ばかりだ。その彼が士郎を悪く言えば、容赦なく士郎の心を穿つ。
「…シロウ」
黙ったままの士郎に何を思ったのか、アルトリアは士郎に話しかける。
「貴方は…確かに弱いです。貴方には特別な力があります。ですが、貴方はまだ幼く臆病です。臆病ではどのような力を持とうとも、それは意味のないものとなってしまいます」
アルトリアの言葉は素直に士郎の頭に入ってくる。その通りだと思えてしまったからだ。
「…ですから、シロウ。私は貴方に一つ提案があるのです。これは、貴方の覚悟を、決意を否定することになるかもしれませんが」
そう、少し言いづらそうに、申し訳なさそうに言ってくるアルトリアに士郎はなんだろうと耳を傾ける。すると、
「――シロウ、この戦争からおりませんか?」
耳を疑いたくなることを言ってきた。
今回はここまで。
ここは正に士郎の分岐点になるところです。どちらを選ぶか、それによって士郎の今後の人生は大きく左右されます。
みなさんはどうですか? 何か重大な分枝点と思われる場所に立ったことはありますか?
その時は、どうかお忘れなきよう。自身の目前だけの幸福を求めた道は必ず後悔します。
な〜んて、無駄にカッコつけました☆