Fate/stay night 槍の騎士王と幼い正義の味方   作:ウェズン

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どうも。久々に投稿です。でもって、いつもより少し短いです。


第二十二夜-続く暴走-

「それじゃ、一回目のやり直しだ」

 

「……!?」

 

 その声が聞こえた途端、風景が真っ黒な状態に戻る。それと同時にまるで払えなかった罪悪感も消えてくれた。

 今のは一体なんだったのか。何故こんなにも罪悪感が体を支配していたのだろうか。それは今目の前にいる彼に聞けば判るだろう。

 

「どーよ。中々に辛かったろ? あっ、ちなみに今のはまだクリアしていないぜ。ていうか、オレ言ったじゃねえか。殺すのはあくまでもオレだって。幻影のオレ(・・・・・)を殺したって意味ねえよ」

 

「……………げんえいのお前?」

 

「そっ。さっきお前がぶっさしたのはニセモノのオレ。なんで、クリア条件を満たしていませ~ん。残念だったな。まあ次頑張ってくれや。

 あっ、ちなみにさっきのはあのマキリの嬢ちゃんを殺していれば正解だったぜ」

 

「…マキリ?」

 

「おっと、今はマトウだったか。すまん、聞かなかったことにしてくれ」

 

 急に言葉を濁した。士郎は"マキリ"とはなんのことかと首をかしげる。桜のことなのだろうか。何となくではあるが間桐の名字に似ている気がする。

 

「さーて、お前がオレを殺すのはいつになるっかな~。ケケッ」

 

 マキリのことは結局触れなくなってしまったが、今はそんなことはどうでもいいだろう。それよりも、まさか自分の幻影まで創れるなど知らなかった。それでいて誰かに成り済ますことができることも。

 士郎はその事に卑怯だと抗議するも、

 

「ケケッ。いい眼をすんじゃねえか。いいぜ。その調子で今度こそオレを見つけて殺すこったな」

 

 いたずらが成功したというように笑って流される。そして『この世全ての悪(アンリマユ)』はまた始めようとする。

 その事に士郎はちょっと待てよ、と息切れながら質問する。

 

「教えろ。お前がどれくらい正確にあんなのを見せれるのかは判ったけど、どうやってあんな気分にしているんだよ」

 

「ん? ああ。何かと思えばそんなことかよ。どうやっても何もよ、忘れたか? ここ、一応お前の精神の中だぜ? んでもって、今その主導権はご覧の通りオレらの方にある」

 

「………! それって…!」

 

 士郎は目を見開く。今彼が言ったことがもしその通りだったら、彼は自分の意思一つで士郎の心をいくらでも弄くれるということだった。

 士郎はそのことに恐怖する。いくら肉体面で勝てても精神面で惨敗してしまえば負けてしまうと、あのエミヤとの戦いで思い知っているからだ。

 つまり、実質『この世全ての悪(アンリマユ)』はこの空間では無敵だということなのだろう。

 士郎は体が僅かに震える。心が折れそうなのだ。ここまで抗って来たことは全て無意味なのか、ここまで戦ってきたことは無意味なのかと。

 彼はまだ本気を出していないだけでその気になれば士郎の心を砕くことなど赤子の腕を捻るようなものなのだろう。

 

「おいおい、なんつー顔してんだよ。絶望するにはまだ早いぜ」

 

 だが、ここまで無敵性を発揮していると言った『この世全ての悪(アンリマユ)』は自らそれを否定するような事を言う。

 

「確かに聞けばオレはここじゃ無敵ってことになる。けどよ、忘れたか? ここを支配しているのはあくまでもオレら(・・・)だってことに」

 

「……?」

 

 一体彼は何が言いたいのか判らない。その言い分からしてまだ士郎には勝機があるということなのだろうが、一体どういう方法なのか皆目検討もつかない。

 

「まあ、とにかく頑張ってオレを探して殺すこったな。せっかく見に来ている奴もいるしさ。さっさとしねえと、お前も今外で戦っているやつもみんないずれ呑まれて死ぬぜ。ま、それはそれで面白そうだけどなケケッ」

 

「………」

 

 最後に軽い別れを告げた『この世全ての悪(アンリマユ)』はこの場から風景と共にいなくなる。

 彼のゲームはまだまだ続くと言うことなのだろう。普通であればここで挫けてもおかしくなく、現に士郎はあの罪悪感から解放されてもまだそのときの感覚が残っている上に恐怖心もある。

 だが、勝機はまだゼロというわけではないと言うのだ。ならば、いつまでも膝を付いている場合ではないと、諦めるわけにはいかないと士郎は足に力を入れる。

 

(次こそは、次こそは絶対に――!)

 

 決意を新たにささやかな灯火を瞳に宿し立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 ひっそりとした夜。細く綺麗な弧を画く月明かりに照らされてようやく周囲は林の中だと判断できるほどの暗闇に包まれている寺の中、青年はある方向を真っ直ぐに視線を贈る。

 その視線の先はなにもない虚空が、夜空が広がっているだけなのだが何か感じるものがあるようだ。

 

「どうかしたか? キャスター」

 

 そんな暗闇を見据えるているのは、ぼんやりとした灯火で照らされている居間で座している魔術王。その向かいにはマスターのマリスビリーがいる。

 二人は今聖杯戦争でどのように行動するかを話し合っていた。魔術王はともかく、マリスビリーとしては計算外のことがあったからだ。

 その計算外のことというのは、言うまでもなく士郎とアルトリアの陣営のことだ。

 マリスビリーは魔術王さえ召喚できればもうなにも必要ないだろうと思っていた。強いても都合のよい工房を造るのに最適な場所があればなと軽く思っていた程度だ。故に、この柳洞寺を確保した時点でほとんど表には出さずとも勝利を心の中で確信していた。していたのだ、先程のイレギュラーがなければ。

 

「いや、何でもないよ。続けてくれ、マリスビリー」

 

「…そうか。判った。

 それで、このことについてだが―――」

 

 マリスビリーが今後聖杯戦争の進行について流暢に話している傍ら、魔術王は肘を台に乗せながら先程のことについて考える。

 

(…莫大な魔力の光の柱が遠くに見えてからまた妙な魔力を感じる。それもかなり異質で飲み込まれそうな…魔力だけで他者を喰らいそうな、そんな気配がした)

 

 士郎の体にある聖杯が暴走したことによる影響は早くも出始めていた。それはまだ微々たるものだが、魔力を持たない一般の人でも嫌な空気だと思える程禍々しい魔力が徐々に侵食するように空気中に広がっていっている。まだ魔術王のいる場所まではほとんど感じなく上級の魔術師でも認識も難しい程ではあるが、魔術王はそれに敏感に反応する。

 

(…ただ一方で、もう一つこの魔力に紛れている別の魔力が感じる)

 

 その魔力とは士郎の魔力のことだ。

 魔術王はこれらのことから確証はできないものの、これはもしかして聖杯の中身が士郎から溢れ出たのではないかと推測する。

 ともすれば、それは面白いことになってきたと目の前の彼にも気づかれずに口端を微かに曲げる。

 

(もしそうなら今頃シロウ君は聖杯の中に潜んでいたアレと戦っているのだろう。どこでかはさすがに予想がつかないが、少なくとも今シロウ君は危険な状態だろうね。

 是非とも打ち破ってほしいものだ。君はこんな所で死ぬような弱い人間ではないと私は思っているんだから)

 

 魔術王は士郎を大分高く評価している。一体士郎の何が彼にそうさせているのかは判らない。

 

(…フフッ。それにしても、彼は本当に私を退屈させない。ここまで予想通りに動いてくれているのだから。

 今一度彼と戦ってみたいものだ。そして、君と語り合いたい。どちらが真に正しいか、競い合おうじゃないか)

 

 士郎の姿を思い浮かべる。魔術王は士郎に何かを求めているようだった。それが何かは判らない。本人にしか、判らないことなのだろう。

 そこまで考えてから魔術王は一旦思考を止めてマリスビリーの話に耳を傾ける。既に「最後の相手は―――」と計画の佳境に入ろうとしているところだった。

 

「―――ということだ。それで、君は何か意見があるかい?」

 

「いや、特に無いかな。概ねそれでいいと思うよ。(…そろそろ彼も動き出す頃だろう。ああいうタイプはここぞというところで出てくるのが好きだからね)」

 

 耳をマリスビリーに傾けている傍らで魔術王は思い浮かべる。自身と同じ"眼"を持った男を。

 そして、その時になれば―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「AaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

「くっ、このっ! いちいち妙な雄叫び上げてんじゃないわよッ!」

 

 凛の掌打が士郎の身体に深く入り士郎の体は衝撃を食らった向きに仰け反る。その威力は普通の人間であれば身体ごと内臓も潰れそうなほどである。

 凛の打撃はいつになく強力だ。強化している分を除いても相当な威力であろうことが感じられる。しかし、いくら身体が破壊されようともすぐに治ってしまう。打撃だけではなく魔術でも応戦してみてはいるが、決定打になることはやはりない。

 

「Gaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

 そうしているうちに、一瞬だけできた隙を縫うように通り抜け、奥にいるイリヤスフィールに凄まじい速さで迫り来る。

 

「キャアッ!!」

 

 士郎の手が伸び、イリヤスフィールに触れる――かと思えば、二つの影がそれを遮る。

 

「ほっ!」

 

「ハァッ!」

 

 遊撃し続けているのは何も凛だけではない。リーゼリットやエミヤもそれぞれ武器を振るう。

 いつの間にか事態は思わぬ展開へと向かっていた。最初こそ士郎陣営とアインツベルンの戦いだったものが、士郎の突然の暴走により二つの陣営は急遽手を組むことになった。お互い不満はあれど、今はそれどころではないとその思いは封じ込める。

 

「Aaaaaaaa!!!」

 

「くっ! まだかっ!?」

 

「もう少しお待ちを。今半分程書き終わったところですので」

 

 凛達が士郎を相手にしている間、セラはエミヤに頼まれ針金細工による行動を封じ込める魔術の準備をしていた。自身の手から血を流して床に描いていく。

 

(あと半分か…それならば保つだろう。これ以上の進展がなければだが…!)

 

 士郎は現在進行形で強さを増していっている。最初こそ子供と同程度だった。だが時間が経つとともに凛とまともに戦えるほどになり、リーゼリットを圧倒できるほどになり、エミヤと互角に渡り合えるほどにまでなってきた。これはおそらく士郎の投影魔術及び、憑依経験による急速成長だろう。

 暴走している今でも使えるあたり、この魔術はほとんど己の一部となっているようだ。だからたとえ自我がなかろうとも息を吸うかのように自然にできる。

 本来であればそれは士郎の成長だと褒めるべきことなのだが、今に限って言えばそれは一番最悪だと言えてしまえる。

 

「Aaa…! GaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

「…!! これは…!?」

 

 また一際大きく雄叫びを上げると士郎の体から赤黒い血が霧として一回噴出する。すると、そこから泥が、赤黒く一目見て判るほど危険な泥が流れ出て周囲を溶かしながら侵食していく。

 

(…! あれは、聖杯の泥か…! まずいことになったな。これでは動きを封じるだけではどうしようもない)

 

 このまま出し続けていてはこの場にいる物や人すべてを飲み込んでしまうだろう。

 せめても聖杯を内包しているイリヤスフィールだけでもこの場から逃げ出させれば最悪な事態は回避できる。

 しかし、それは一時的なもの。イリヤスフィールが逃げればアレはいつまでも追いかけるだろう。それはつまり、むやみやたらに呪いを周囲に振りまくも同然だ。そのようなことだけはできない。

 

(…くそッ。出し惜しみしていても仕方ないか。なるべく奴のためにも使用は控えていたのだがな)

 

 とはいえ、アレをこの場に止めるというのも無理があった。ならば、残された方法はただ一つ。

 

(アレを丸ごと私の固有結界に飛ばす…!)

 

 エミヤの固有結界、『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』でアレをこの世界から切り離すことのみだ。

 エミヤは覚悟する。切り離したとして、その後は自分一人で押さえつけなければいけない。他の者を巻き込むわけにはいかない。

 

「(…やるしかないか)凛、少しいいかな」

 

「なっ、何よ! 今切羽詰まっているんだから手短にしてよねッ!」

 

 少し上ずった凛の声が響く。よく見れば少しだけ顔が青い。本能的にかそれとも勘か、判っているのだろう。アレに触れれば死んでしまうことに。

 エミヤはそれほどまでに悍ましい気配を晒しているのかと思いながら凛を宥めてから短く話す。

 

「なに、大したことではない。アインツベルンの者達と共にこの場を少し離れていてくれというだけだ」

 

 そう言うと、察したのか凛の顔が強張ってエミヤを振り向く。

 

「ちょ、あんたまさかアレを一人でどうにかするつもり!?」

 

「ああ。そのまさかだ。といっても、精々押し留める程度にしようと思っているがね。なんにせよ、今は少しでも時間を稼がねばならない事態だ」

 

 冗談めかしく言っているが、いくらエミヤだろうとアレを抑え込むなど気が気でない凛は反対する。

 

「無茶よ! なんかわけわかんない泥みたいなものまで出しているし、今の士郎はあなたと同じくらい強くなっているのよ!? そんなのをあんた一人で抑え込もうなんて…」

 

 少しだけ悲しげに言う。エミヤが余程心配なのだろうが、エミヤはこれを知ってか、フッ、と口端を曲げる。

 

「甘く見られては困るな凛。なに、私には秘策というものがある。心配する必要などない。もとより私もここで死ぬつもりはない。なにも無茶してまでアレを押しとどめる気などないさ」

 

 ニヒルな笑みを見せながら前へと出る。正面には泥を出し続けながら赤く染まった目を向けている士郎がいる。

 

「…任せていいのね」

 

 凛は一瞬の逡巡の後、エミヤに最後の確認をとる。

 

「ああ。もちろんだ」

 

「…なら、任せたわよ。必ず士郎を助けるからね」

 

 士郎のことはエミヤに任せることにした凛はあんなものを見てもなお構えているリーゼリットを無理矢理引っ張り下がっていく。

 二人が下がったところで、魔術発動のための魔法陣を描いていたセラが私はどうすればいいか、と聞く。

 

「君はそのまま描き続けていてくれ。あんなものを噴き出している奴の動きを封じたところで何の意味もないかもしれないが、それでもないよりはマシだ」

 

「…判りました。では、ご健闘を祈ります」

 

「…フッ。本当はできればこのまま消滅して欲しい、ではないのか?」

 

 セラにエミヤは振り向かず皮肉るように言う。一瞬だけ動きが止まったセラは表情を一切変えずに言う。

 

「ええ。無論のこと消えていただければ助かるのは確かです。

 ですが、この状況は私達にとっても危険です。特に狙われているお嬢様は。そのような状況で我欲などに浸っていられるでしょうか」

 

「なるほど。いい忠誠心ではないか」

 

「当然です。私達はもとより、お嬢様をお守りするために生を授かったもの。この身が亡びようとも最期までお嬢様に慕う所存です」

 

 セラはさも当然というように胸を張る。それこそが、イリヤスフィールに従えていられるのが何よりも誇りなのだろう。

 それほどの忠誠心をイリヤスフィールに向けてくれているのが少しながら嬉しく感じつつ、エミヤは士郎を見据える。

 

「…そうか。さて、そろそろ始めようか。相手ももう痺れを切らしそうだ」

 

 士郎は最早動く必要はないというようにその場に止まり泥を出している。エミヤはそれを見つつ機会は今しかないと詠唱を開始する。

 

「―――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている )

 Steel is my body, and fire is my blood.(血潮は鉄で、心は硝子 )

 I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗 )

 

(…! アーチャーの奴何をするつもり!?)

 

 凛は初めて聞く詠唱に何をするつもりなのかと振り向く。

 

Unknown to Death.(ただの一度も敗走はなく )

 Nor known to Life.(ただの一度も理解されない )

 Have withstood pain to create many weapons. (彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う )

 

「………」

 

 この場にいる者達は何となく悲しい気分に襲われる。

 

Yet, those hands will never hold anything.(故に、その生涯に意味はなく )

 So as I pray,(その体は)―――

 ―――UNLIMITED BLADE WORKS.(きっと剣で出来ていた )

 

 エミヤの詠唱が終わった瞬間、エミヤと士郎だけがこの場から映像が切れるようにいなくなる。あの泥も消え去っている。

 

「…アーチャー?」

 

 一体彼が何をしたのか、凛には判らないが一先ず時間稼ぎだけはできたと見ていいだろうと思われる。

 その事に一息つく。エミヤは秘策があると言っていたのだ、これでしばらくは大丈夫だろう。

 ならば、後は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「Aaaa…」

 

「…こうして貴様と相対するのは二度目だな。まあ、はたして今の貴様をあの衛宮 士郎として見ていいものか…」

 

 一人言を呟きながらエミヤは二対の剣を出す。

 

「さて、無茶はしないと言ったが、貴様を抑え込むとなれば多少なり無茶をしないといかんだろうな」

 

 スッと鷹のような鋭利な目を士郎に向ける。士郎もこちらをじっと見つめたまま動かずにいる。泥は今もなお流れ回りの剣を溶かしていく。

 

(…この平行世界では既に私では予測不可能の方向に進んでいる。これからどうなるか判らない。

 とても危険なことだ。何も予測できない以上ふとしたときに死ぬ恐れだってある。無論、それは私に限らず周囲の人全員にいえることだがな)

 

 流れ出ている泥を流し目で見てから少しだけ顔を上げ空を見上げる。変わらずの曇り空に大きな歯車がリズムを刻み回っている。

 思えば、士郎はこの空の意味を理解していなかっただろうと思われる。この空はエミヤの心境を表している。かつて、明るかった空は絶望と共に曇り、何もかも喪い感情を封じ込め機械のようになりはて歯車が出来上がった。

 この世界は衛宮 士郎の絶望の集大成と言っていい。だからこそ、士郎にとってこの世界でエミヤに勝つことは重大な意味があった。

 正義の味方になるのであれば、エミヤの、自分自身の絶望に打ち勝たねばなることなど到底不可能だ。

 

「…一度貴様はこの世界に勝った。だというのに、貴様はまたこうしてこの世界に踏みいることになるとは。全く、運命というのは本当に何が起こるか判らんな」

 

 自嘲するかのように笑い、構える。

 

「さて、そろそろ暴れたいだろう。構わんぞ。この世界にあるものは模造品のみだ。いくら壊そうとも代わりなんぞいくらでも造れる」

 

「Gaaa…! 」

 

「さあ、来い‼」

 

 自身の愛弟子を助けるためにエミヤは剣を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。
次回の投稿も時間が空くと思われます。
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