Fate/stay night 槍の騎士王と幼い正義の味方 作:ウェズン
嬉しいけど、最初は十話くらいで二桁いけるように頑張ろう。って感じだったからすんごい驚いています。
結果的に士郎達は夜になってから教会に行くことになった。それは何故か? ランサーが霊体化できないからだ。何故できないのかと問われると、そこには異常な士郎の魔力量が原因であった。曰く、士郎から送られる魔力が大きすぎて霊体化しようとしてもなかなか体内の魔力を減らせないらしく、これはほぼ受肉しているような状態だ。
それだけであれば、服装などは誤魔化せば済む話だ。だが、相対していた凛がひしひし感じていたランサーから溢れ出る女神の如し神々しさはどうやっても隠すことができない。そんな状態で外に出たら嫌でも人の視線を集める。ただでさえランサーは美人なのだ。そこに神々しさを付け加えたら人の視線を集めて離さなくなってしまうだろう。そんなことになれば、民衆の噂というやつでランサーの存在が敵マスターにバレて居場所を暴かれかねない。
故に、人目のつかない夜に出向くことになった。
「それにしても、驚いたわね。でかいでかい思っていたけど、まさか天然の状態でサーヴァントをほぼ受肉したような状態まで魔力を送れるなんて」
「ええ。送られている私も驚いています」
「おれはりんがさくらねえちゃんと同じ学校の生徒だったのが驚きだよ」
あれからというものの、夜になるまで凛達は衛宮邸でくつろいでいた。そして、こんな夜遅くまでいれば昨日は来なかった大河や桜が帰ってくる。
「ええぇぇーー!? いつの間にこんなに増えたのー!? っていうか遠坂さーん!? 今日は休みなんじゃって、そこの外国美人は誰じゃーー!? そして何故に士郎を抱きしめてんじゃーーー!!」とリアクションが多くて逆にこっちが驚くぐらい驚くのに忙しそうな大河に、
「え、え!? 遠坂先輩、とあの、誰、でしょうか?」と驚いているのだろうけど、一周して落ち着いてしまっている桜がそこにはいた。
後に、凛は昨日士郎の帰りにちょっとした縁があって今日は泊まらせてもらったということにし、ランサーは切嗣の遠い親戚で彼を訪ねてきたということにした。
そんな微妙な設定に二人は最初は怪しんだもの、「切嗣さんに親戚なんていたっけなー。まあ、いっか! よく来てくださいました、ランサーさん! 歓迎するよー!」と大河、「遠坂先輩がそういうならそう、なんですよ、ね。わかりました」と桜も信じランサーと凛を迎え入れた。
「そんなに驚きだったかしら。まあいいわ。それにしても、あんたらそうしていると兄弟か親子みたいね。似てないけど」
士郎とランサーが手を繋いでいる姿はまるで仲がいい兄弟か親子のようであった。それを言われた士郎はランサーを見上げる。こうして初めて気づくが、ランサーは身長が高い。どれくらいかといえば、士郎から見れば高い凛よりさらに高い。
そして、士郎は赤面して目をそらす。目をそらしたのは、彼女を見上げた時に、つい目がいってしまうほどの大きい胸が歩く振動で揺れたからだ。衛宮邸でくつろいでいる間もずっと士郎はランサーの膝の上で抱きしめられていた。故に、その時からずっとあの身体全体で感じた感触が抜けきらずにいたのだ。何故ずっと抱きしめていたのかというと、ランサー曰く、「シロウに抱きついていると安心します」とのこと。
そのことに凛は、何故召喚して間もないうちにこうも懐いているのか疑問に思っていたが、子供好きの英霊なんだろうと気にしないでおく。
(あ〜らら、顔赤くしちゃって。なんか妙に大人びた子だと思っていたけど、存外まだまだ純情ね)
「…………」
凛がそう微笑ましく思っていた傍で、アーチャーは何か思うところがあるのか二人をじっと見ている。
(……おかしなものだ。どうやらこの世界は私が知っている世界と大分かけ離れているな。セイバーやランサーにしてもそうだが、何より、あの小僧がまだこれ程に幼いとはな。
それはそうと、なんだ、あの小僧からくる魔力は…。私にそんなものは無かった筈だ。たとえここが完全なる平行世界だったとしてもあれはおかしい。これではまるで…)
「どうしたの、アーチャー?」
先ほどから難しそうな顔でいるアーチャーが気になった凜は話しかける。それにアーチャーは「む、なんでもない。いや、ちょっとあの小僧がな」と言うと、
「…やっぱ、あんたも気づいてるか」
「当然だな。あれで気づかんという方がおかしい」
二人は士郎とランサーに気づかれないようにマスターとサーヴァント同士の特権、念話で話し出す。
「どう思う、あれ」
「わからん。が、何かを取り込んでいるのは間違いない。でなければ、あれほどの魔力を持つなど到底不可能だ。――いや、一つだけ方法があるかもしれんな」
「何? その方法って」
アーチャーは昔の記憶を手繰り寄せ、士郎と同程度。いや、それでも尚、士郎の方が上回っているかもしれないが、莫大な魔力を持った人物を思い出す。
「――それは、ホムンクルス。つまり、人造人間だ」
「! なるほど。確かにありえそうね。あの子、あの『魔術師殺し』って言われていた衛宮 切嗣の子供って言うけど、実際は養子。それに、衛宮 切嗣は前回の聖杯戦争参加者。それもあのアインツベルン陣営に付いていたのだからそこでホムンクルスを手に入れた可能性はあるわね」
と、凛はすぐさま優秀な頭を働かせるが、アーチャーは自分で言っておきながらこれは無いなと確信していた。
(仮に本当にホムンクルスであれば髪は白くなり、目の色が赤くなっていただろう。だが、奴の髪と目の色は私が知っている通りだ)
そうだとすれば、ますます疑問が湧く。だが、アーチャーはそれよりも気になった事が一つ、
「それにしても凛、君は前回の聖杯戦争を知っているのかね」
凜の第四次聖杯戦争の知識の有無だ。
「え? ああ、まあ、少しだけ聞いたからね、あのエセ神父に。と言っても知っているのは衛宮 切嗣とあのエセ神父、綺礼が参戦していたってくらいだけど」
それを聞いたアーチャーは本当に別世界だなと思う。
(私が知っている遠坂 凛はどのような戦争だったのかはもちろん、参加者すら自分の父親以外知らなかったというのにな。まあ、かくいう、私もこの状態の私が呼ばれたことはイレギュラーなのだがな)
アーチャーは思い出す。自分が生前どのような事をしていたのか、そして、
(この
ふっ、と士郎を見ながらニヒルな笑みを浮かべた自分のサーヴァントを見て、凛はなにか気持ち悪いもので見るような視線を送る。
「…なんだね?」
「いや、急に隣で笑っていたら誰でもこうなるわよ」
なかなか失礼な物言いだと思うが、自分がこれだけ真剣に考えている傍で笑っていたらそれはおかしなものだ。アーチャーは「ああ、それはすまないな」と軽く謝る。
◇
ここは言峰教会。中は教会というだけあって神聖さが見て取れる。そして、礼拝堂の奥にこの教会の主はいた。
「―――では、聖杯戦争に参加する意志があると見ていいのだな?」
「もちろんだ!」
教会に着いた士郎達はサーヴァントを外に置いて士郎と凜の二人だけで教会に入っていた。何故サーヴァントを外に置いたかは周囲に警戒を敷くためだ。まだ本格的に始まってはいないとはいえ、いつ何時敵が襲ってくるかわからないからだ。
その後、凜は教会に入る前に士郎にこの教会の主の事を、仕事はマジメにこなすが侮れない信用できないエセ神父、と言っておいた。士郎に最低限でも警戒心を持たせるために。
そして今士郎達はこの教会の神父、言峰 綺礼から聖杯戦争の詳しい話を聞き、それでいて参加意志があるかを確かめられていた頃であった。
「ふむ。最初、凜がこのような子供を連れて来るのだから、てっきり迷い子を預けに来たのかと思ったのだがな。まさかこれがランサーのマスターとは」
この綺礼はとても神父と呼べるような風貌ではなかった。格好こそ、神父と言っていい神聖さを感じさせる黒い礼装を着ているが、その上からでも判る鍛え上げられた筋肉に、神父にあるまじき厭らしい笑顔を浮かべている姿からはとても神父を連想することはできない。
「冗談じゃないわ。あんたなんかに子供を預けるわけないでしょ」
凜は声を強めに言葉を放つ。ちなみに、綺礼は凜の兄弟子にあたる人だったりする。
「フフ。そうか。まあ、それはいい。それにしても、衛宮か…」
綺礼は厭な笑みを浮かべた後、先ほど聞いた士郎の性、衛宮の名を何か思い出すかのように呟く。
「なに、あんた、前の聖杯戦争の参加者の子供で驚いているの?」
「まさか。それで言ったら君もそうだろう? 凜」
二人はなんの話をしているのか士郎にはわからない。ただ、あの神父は士郎の義理の父親、切嗣を知っているようだ。
「ジイさんを知っているのか。おまえ」
「言葉には気を付けたまえよ、少年。そして、その応えには、そうだと言おう」
あっさりと肯定した綺礼。士郎は「それなら」と切嗣について何か知っていることがないか聞こうとするが、凛に遮られる。
「それじゃ、今回はこの子が聖杯戦争に参加できるかの確認だったし、今日はここまでにしてもらうわ」
凜は先程から妙な気配が漂っている教会に長く滞在したくないのかさっさと早くおさらばしたいようだ。
「そうか。それは残念だ。折角いい麻婆があるのだがな」
「あのねぇ、あんたの麻婆なんざぜっっったいお断りよ。あれで一度死にかけたんだからね」
「ククク。あれが見れないと言うのも残念であるが。まあ、それよりだ」
「何よ」
綺礼はそこで切ると視線だけで士郎を見る。士郎はその視線になんだと言わんばかりの視線を返す。
「…いや、なんでもない。もう行くのであろう。ならば教会の外まで見送らせてくれ」
「ふん。勝手にしなさい」
そう言って、士郎達は教会から出て行く。
「ランサー、少しいいだろうか」
「はい、なんでしょうかアーチャー?」
外で待機している二人のサーヴァント。その内アーチャーはランサーに気になっていたことを聞いていた。
「君は第四次聖杯戦争を知っているかね?」
「第四次? ということは前回のですか。一応知識としてはありますが」
「…そうか。ならいいんだ。すまなかったな下らない質問をして」
アーチャーはランサーの答え方で全てを察したのか、これ以上聞くことはなくなった。そして、
「ただいま、アーチャー」
士郎達が帰ってきた。帰ってきた士郎はランサーに近づいて行くと、軽々と持ち上げられ「お帰りなさい、シロウ」と抱きつかれる。抱きつかれた士郎はもう諦めたのか、顔を赤くしながらもされるがままになっている。
(ずいぶんと懐いているな彼女。あそこまで懐きやすかったか?)
自分の記憶にある彼女を思い浮かべ、見比べても…色々疑問が浮かぶが、アーチャーはそんなに気にすることでもないかと、思うことにした。
それに、アーチャーとしてもこの世界の士郎を険悪していないようだ。どうしてなのかアーチャー自身が不思議に思っているが、それも平行世界だからだ、と思うことにして気にしないでおく。
「さて、それじゃ帰りましょうか」
「あっ、待ってりん」
帰ろうとする凜に士郎は呼び止め、ランサーの腕から解放してもらう。
「なにかしら?」
「えっと、その、な…。今までありがとうな、りん」
士郎は少し照れたように顔を染めて凜にお礼を言ってきた。突然の事だったため、凜は驚いて目を白黒させていたが、
「ふふっ、どういたしまして。でもなんで急に?」
「あ、えっと、りんはさ、こんなおれをここまでちゃんと見てくれたからさ」
そう言われて、凜はハッとなる。思えばそうだ。何故こんなに士郎に構っている自分がいるのだろうか。目の前にいるのは子供とは言え、立派な敵だ。本来こんなに親密になるなどありえない。
敵は容赦なく討つのが魔術師だ。それがたとえ友人だったとしても敵として立ちはだかれば倒す。故に、魔術師には真に友人と呼べる者はいない。例外無くだ。
と、そこまで考えた凜はこう思い至る。
(私って、やっぱり甘いのかしらね。多分、私は放っておけなかったんだ。この小さな危なっかしい子供を。はぁ、魔術師失格ねこれじゃあ――)
「そんなことは無いと思うぞ、凜」
凜がそう思いながら士郎の頭を撫でていたら、おもむろにアーチャーが慰めた。
「ちょっと、勝手に心読まないでくれる」
「フッ、いやなに、私が読んだのではなく凜が判りやすいだけだろう」
と、アーチャーの言葉に凜は言葉をつまらせる。多少は自覚があったようだ。普段は隠せても、感傷に浸るとわかりやすくなってしまうタイプなのだろうか。
「はぁ。まあいいわ、ありがとアーチャー」
「フッ、お礼を言われるようなことは言ったつもりないがな」
と、凜がアーチャーにお礼をいい、それにアーチャーは皮肉を言うかのようにニヒルに笑う。
「それじゃ、今度こそ帰りましょうか。途中まで一緒でしょ」
凛がそい言うと士郎達は帰路へとつく。
◇
それからというもの、士郎達は無言で帰り道を歩いていた。士郎はランサーと手を繋ぎ、凜は霊体化したアーチャーを側に置いて肩を並べて歩いている。
無言になっているのは単純に話すことがないからだ。ただ、だからといって気まずいわけでもない。
「ねえ、りん」
ふと、士郎は凛に声をかける。凛は「なぁに?」と微笑みを向けると、
「おれたちってさ、これから敵になっちゃうのか?」
「え?」
どこか不安気な表情をする士郎に、凛は面食らって言葉を失う。この質問になんて応えようか迷っているのだ。ここ以前で言ったように彼は子供とはいえ敵だ。ここで敵だと言って完全に関係を断つのが本来であれば正解だが、士郎が悲しみそうだ。
そして、凛は悲しんでいる子供を捨て置くことなどできそうにない。かといって、聖杯は自分以外のサーヴァントを倒さなければ発動しない。聖杯が欲しいわけではないが、いずれ敵対しなければいけないのだ。
凜が言葉に迷い、とりあえずなにか言わないとよけいに不安にさせてしまうと、言葉を発しようとしたその時、
ドゴオオオオオオン‼︎‼︎
「うわぁ!!」
「きゃあ!!」
突然、どこからともなく近くで隕石のように落ちてきた物体があった。凜はとっさに士郎を守るように立ち、サーヴァント達は反射的に戦闘体勢に入る。
「ちょ、な、何が落ちてきたの!」
凜は焦って落ちてきた物体はなにか見ると、そこには、砂埃に隠れた大小の大きいが激しい物体の影が二つあった。すると、そのうち小さい方の影がこちらに向かって歩いてくる。
「こんにちは。リンお姉ちゃん」
巻き上がった砂埃から姿を現したのは、士郎とそう歳が変わらなそうな白髪赤目の少女だった。ただ、その纏う雰囲気が士郎とは正反対だ。
アーチャーは少女を見て驚いたかのように目を見開く。
「…! アレって」
士郎を側に押し寄せて、出てきた少女に油断なく構える凛。
「私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。ヨロシクね」
ぺこり、と一目でどこかの令嬢だとわかる丁寧な礼をする白髪赤目に少女イリヤスフィール。
「…! アインツベルン…!」
凜はアインツベルンと言う名を聞いただけで体を強張らせる。あのアインツベルンが相手となると一筋縄ではいかないと解っているのだ。そして、未だに姿を見せないサーヴァントと思われる影がそこの砂埃に隠れている。
アインツベルン。それはここに来る前、凜とアーチャーが話していたホムンクルスの製造をしている遠坂と同じく魔術師御三家の内の一つ。
(…こうして見えるステータスだけでも、あれはランサーと同じくらい、規格外だわ…!)
凛はマスターとなった者の特権とも言えるステータス確認をする。そのステータス曰く規格外。一体どんなサーヴァントなのかと思っていると、砂埃が晴れて初めてその姿を現す。
そのサーヴァントはおよそ、二メートル以上はありそうな
「…………」
そのサーヴァントを鋭い目で睨んでいるランサー。そして、ランサーは何を思ったのか、鎧と槍を出して自ら前に出る。
「! ランサー…!」
「そこにいてください、シロウ。あのサーヴァントは私が相手をします」
「…確かに、あなたも規格外だけど、勝てるというの? あれに」
凜はそう言うが、正直なところ、このランサーなら勝てるのではと思っている。というより、あれにまともに戦って勝てるとしたら未だ見ぬサーヴァントすらも差し置いて、ランサーしかいないであろう確信ができる。それほどに危険なサーヴァントだと一目でわかるのだ。
「ええ。私にはシロウがいます。負けはしないでしょう」
何故そこで士郎が出てくるのか判らないが、とにかくランサーには勝算があるようだ。
「へー。私のバーサーカーに勝てると言うの? 確かに貴女は強そうだけど」
そう言ったのはあのイリヤスフィール。彼女はどうやら自分のサーヴァントに絶対的な自信を持っているようだ。その目には敗北の二文字はないと謳っている。
「! やっぱり! あれはバーサーカー!」
「ふふ。そんな風に思っていられるのもいつまで持つかしらね。それじゃあ、殺しちゃうね。やっちゃえバーサーカー」
子供とは言えない雰囲気を出していた少女は突然、ふわりと子供のように無邪気さを出して、バーサーカーにそう命じる。すると、
「■■■■■■■■■■■ーーーーーー!!」
バーサーカーは声にならない雄叫びをあげて元々あった岩のような筋肉がさらに膨れ上がる。
「来るわよ! アーチャー、私たちはランサーの援護に回るわよ。構えて!」
「言われずとも!」
ランサーは槍を構え、アーチャーは狙撃するために黒塗りの弓と剣を出して、遠くにある高いビルを目指して去っていく。
「■■■■■ーーー!」
そして、バーサーカーが動くと思った瞬間、バーサーカーの大剣は凛と庇っている士郎を既に捉えていた。
「!!!」
あまりにも速すぎる。凛からバーサーカーまではおよそ五メートル程あった筈だ。そしてその間にはランサーがいたというのに、彼はそれを一気に通り抜けたというのだ。
神速とも思えるそれに死の覚悟も許されず二人は死ぬかと思った。だが、
「ハァアッ!!」
またもや神速の如き速さでバーサーカーの前に割り込んで来た人物が大剣から二人を護った。
「!! ランサー!」
「ご無事ですか! 二人とも!」
それはランサーであった。ランサーは槍でその大剣を受け止めている。
「え、ええ。なんとかね」
凛はここまでの状況に速すぎて、今ようやく殺されそうになったと実感した。
(なによ、今の速さ…! 想像してたけど、速すぎる…!)
「ハァッ!!」
ランサーは槍を握り直し、そのまま力任せに足を踏み抜き、バーサーカーをぐんと前へ押し返す。
「…! ■■■ーーー」
「へー。バーサーカーを力ずくで押し返すなんて。やっぱり強いね。それとも……!」
そこのマスターがすごいのかな、と言いかけて止まる。イリヤスフィールは何故か士郎を見て固まっている。目を見開いて。
何故急に固まったのかと凛達が思っていると、
「っ! バーサーカー!! 命じるわ、あの子を絶対殺してっ!!」
「■■…! ■■■■■■■■■ーーーーー!!!」
イリヤスフィールは突然焦ったように命じる。命じられたバーサーカーは一瞬戸惑いを見せたが、雄叫びをあげて士郎の方へと行こうとする。しかし、
「行かせません!!」
そこへランサーが前に立つ。そして、
「■■■■■ーーーーー!」
どこからともなく矢が飛んできて、バーサーカーに被弾したのと同時に爆発する。
「! アーチャー…!」
矢を飛ばしたのは無論のことアーチャー。彼はもうビルの屋上で弓に矢を番えていた。
「ふむ。予想通り、奴にこの程度では傷一つつけられんか」
アーチャーが言う通り、バーサーカーはまるで傷ついていない。そして、バーサーカーはお構いなしに士郎へ突っ込もうとする。
しかし、何も邪魔をしているのはアーチャー一人ではない。バーサーカーと同じくらい規格外のランサーもいるのだ。故に、バーサーカーは突破できず、その槍に阻まれる。
「貴様の相手は私がしよう。来るがいい!!」
「■■■■■■ーーーーー!!!」
一対一。今まさに規格外同士の戦いが始まる。
二人の戦いは最早神話そのもの、いや、もしかしたらそれすら越えているかもしれない。そんな戦いだ。
バーサーカーはでたらめに大剣を振り回し、ランサーは一撃一撃を見切り、受け流す。士郎はこの戦いを見てわかったことがある、あのセイバーとの戦いで、まだランサーは全力を出していなかったことに。
十合二十合、一瞬一瞬が過ぎる度に増えていく剣戟。両者の武器が振るわれる度に地面は抉れ、側にあった電柱は折れていく。
バーサーカーの剣術は覚えたての子供のような腕ではあるが、体術は一つ一つの動きに無駄が無いとても狂戦士とは思えない動きだった。それ故に、剣術がなくとも振るうだけで破壊力が凄まじい。
そして、ランサーもセイバーと戦っていた時よりも速く鋭い突きが繰り出される。その一回の突きに見えるそれは三回以上も連続して出しおり、凄まじい俊敏性で動き回る。
最早、これが今回の聖杯戦争最終決戦では無いのか、と錯覚してしまいそうな最強クラスの戦い。凛は目に止まらない速さで目まぐるしく戦っている二人が信じられないでいた。今より昔、神話の時代に本当にこんな英雄がいたのかと。
(凄まじいな。これほどの戦いはサーヴァントでもできるものは限られているだろう。最早、サーヴァントの中でも規格外の戦いだ。
全く、これではもう私が出ることはかなわないな)
アーチャーはさすがサーヴァントと言うだけあって辛うじて、遠くからでも二人の状況が視えていた。そして、今の所ランサーが圧倒していることもわかる。
「ウソでしょ…!? なんで…! なんでバーサーカーが押されているの!?」
また、イリヤスフィールもバーサーカーが劣勢であることに気づいていた。
バーサーカーは確かに腕力、技術それらはランサーを上回り、他も優れている。しかし、ランサーは速さがバーサーカーを完全に上回っている。
速さだけではあるが、戦闘で速さは全ての状況に於いて重要なステータスだ。攻撃、防御も自身の速さに依存する場合が多く、それによってかなり戦況が左右される。
ランサーにとってみれば、バーサーカーはまだ遅い。更にいうなら、ランサーは平均的な身長でみれば女性の中でも大きい方であるが、バーサーカーは二メートルを超す大男。つまり自分より小柄なランサーに素早く動かれては攻撃も防御もままならないのだ。
一応、バーサーカーには確かに最強たらしめる先ほどのアーチャーの矢を耐えきった防御系、蘇生系の宝具があるが、ランサーの槍はその金剛不壊の身体をも貫く。
「くっ…! バーサーカー! 令呪をもって命ずるわ! 必ず勝ちなさい!」
仕方なく、イリヤスフィールは令呪を使う。イリヤスフィールが令呪を使うと、身体に一瞬であるが令呪の模様が浮き上がった。
「■■■…! ■■■■■■■■■ーーーーーー!!!」
「くっ…!」
令呪により強化され、鍔迫り合いになっていたバーサーカーはランサーを一振りで弾き飛ばす。そして、ランサーと同じくらいの速さになったバーサーカーは反撃を開始する。
「くっ…! あっ!」
「■■■■■■ーーーー!」
同じ速さになられたランサーはもう圧倒できないと、攻勢だった状態から防御の構えをとる。
「令呪を使われたか…! アーチャー、サポートできる?」
「難しいな。あれは最早神霊同士の戦いに準ずる。私のような下級英霊ではとてもじゃないが、手助けもままならん」
念話でアーチャーにサポートを頼んだところ、それは無理だと言われ凛は唇を噛む。確かにそうだ、下手にこの戦いに手を出せばこちらが不利になるのは目に見えている。
それでも、強化されたバーサーカーを倒すにはランサーと後もう一つなければ倒せない。故に、仕方なくと凛は士郎を見る。
「ねえ、士郎くん」
「! りん?」
凛はランサーが不利になっているのを見て顔が青ざめてきている士郎の両肩をがっしりと掴んで、こちらを振り向かせる。
「いい? 今から君に頼みたいことがあるの」
「たっ、頼みたい、こと…?」
「ええ。それはね、令呪を使うことよ」
バーサーカーに勝つため、凜は士郎に令呪を使わせようと言うのだ。目には目を牙には牙を、令呪で強化された英霊には同じく令呪で強化された英霊を、ということだ。
「えっ、でもどうすれば…」
だが、知っての通り士郎には令呪の使い方がわからない。
不安に言う士郎に凜は大丈夫だと言う。
「令呪の使い方は簡単、念じるのよ。そして、ランサーにお願いするのよ。勝って、って」
言われた士郎はランサーの方を見る。今ランサーはまだ完全に劣勢では無いが、少しづつ押されていっている。このままではやられるのも時間の問題だろう。
それを見て、士郎は使うことを決心する。失いたくはないから、かつての切嗣のように衰弱していくのをただ黙って見ているのが、なにもできずに失っていくのがもう嫌なのだ。
ランサーとはまだ会ってから一日しか経ってない。だが、それだけでも優しくしてくれたランサーは士郎にとってもう家族のようなものだった。だから、士郎は願う。
「念じて、お願い…! ―っ! 勝って、ランサー!!」
そう叫んだ瞬間、士郎の手の甲にあった令呪の一画が弾けるように消える。そして、
「…! ハァァァッ…! ハァッ!!」
押され気味であったランサーは溜め込むように槍に力を入れ、突撃してきたバーサーカーに向けて一気に解放する。すると、一気に解放され巻き起こった風圧と共にバーサーカーの巨体が宙高く飛ばされる。
「バーサーカー!」
イリヤスフィールが叫ぶ。
バーサーカーはそのまま落下するが、大して怪我はない。そのため、バーサーカーは態勢を瞬時に戻しまた突撃し、ランサーも構える。
「■■■■■■■ーーーーー!!」
「ハアアアァァァァッ!」
令呪で強化された二人の戦いはますます苛烈を極める。このままでは決着が着く前にこの街一帯が崩壊してしまいそうだ。
「くっ…! 早く決着付けなさいよねっ!」
そして、無論のこと側にいる凛達は一番被害を被ることになる。
凛は士郎と自身を守るため、十数年間ずっと魔力を込めた宝石を使って自分たちの周りに結界を敷き外からくる風圧や瓦礫から身を守る。
「ランサー…」
そして、凛に守られている士郎は心配そうにランサーを見ていた。
今回はここまで。と、ここでランサーのステータスを公開!
クラス:ランサー
マスター:衛宮 士郎(見た目カプさばシロウ)
筋力:A+
耐久:A++
俊敏:EX
魔力:B
幸運:A+
宝具:A++
宝具
ランク:A++
種別:対城宝具
ロンゴミニアド。聖槍。星を繋ぎ止める嵐の錨。
真実の姿は、世界の表皮を繋ぎとめる塔であるという。真名解放時にはランクと種別が変化する。
十三の拘束によってその本来の力を制限されてなお、星の輝きをたたえて輝く、最果ての柱───。
聖槍ロンゴミニアドは、世界の表層を繋ぎとめる「光の柱」を本体とする。「世界を救う星の聖剣」と同等のプロセスを有する十三拘束の存在によって、かろうじて宝具としての体を成している状態。 (pixivから抜粋)
ちなみに、槍の見た目としては馬上槍に近い。
さて、では皆様、次回でまたお会いしましょう。後、感想はなるべく返事は書きますが、あまりにも忙しかったりしたら返せない可能性もあるのでご容赦を。