Fate/stay night 槍の騎士王と幼い正義の味方   作:ウェズン

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いや〜、ついに一週間投稿できなかった。待ってくださった方、もしいたら申し訳ありません。
最近は学校やFGOが忙しかったもので。言い訳ですが誠に申し訳ありません。


第五夜-不穏な囁き-

 あれから、士郎は凛の教えの元、魔術を習い様々な物を投影させて練度を上げ、それに強化の魔術も織り込み投影した物を実際に扱える様実践も兼ねて訓練もした。その結果、

 

「うっ、いつつ。う、動けない…」

 

「大丈夫ですか? シロウ」

 

 次の日には酷い全身筋肉痛になり布団の上から動けないでいた。今日は日曜日であるため、学校に行かなくても良かったのが幸いだ。

 

「…ごめんなさい。少しやり過ぎたわね」

 

 そして、筋肉痛の要因である凛は、士郎が凜に体を鍛えてもらい筋肉痛になったと、魔術の事は伏せて知った桜と大河に叱られた。一応、士郎が望んでやった事であるのでそこまで咎められることはなかったが、二人の怒りの剣幕は割と恐ろしかった、と凛は語る。

 

「全く。幾ら何でも初日から実践など早すぎるだろう、何を焦っているんだ凛」

 

「うっ、しょ、しょうがないでしょ。早く身に付けてもらわないと士郎が危険な目に遭うかもしれないんだから」

 

 アーチャーが凛を戒めるが、凛はそっぽを向いて仕方ないと言う。だが、その表情には罪悪感がきちんとある。

 

「はあ、そうか。それならいいが。それはそうと、凛」

 

「なに?」

 

「少し、あの小僧の特訓、私に任せてはくれないだろうか」

 

 ため息を吐きつつ、凜の表情を伺ったアーチャーが言ったことに凛は驚いて一瞬目を見開く。

 

「任せてくれないかって、あんたが士郎を鍛えるっていうの?」

 

「ああ。そうだと言っている」

 

 何故急にアーチャーがこの様な事を言い出したのか判らないが、凛は丁度いいかと思った。

 アーチャーは英霊だ。その力は例え下級であろうとも人間を超越した力。ならば、アーチャーに鍛えさせて貰えば、凄まじい速度で成長できるであろう。

 

「そうね。お願いするわ。けど、士郎の戦い方は特殊よ? 投影魔術にそこに強化を組み込んだ魔術の戦いに見えて実際は肉弾戦。確かに、あなたは接近戦ができるアーチャー、肉弾戦に関しては心配してないわ。けど、魔術の方はどうするのよ?」

 

「安心して構わない。もとより、私も似た戦法をしているものだ」

 

 アーチャーの言った似た戦法と聞いて凛はまた驚くが、凛が驚いたのは似た戦法をしているからではなく別のことである。それは、

 

「え、似た戦法って、あんた記憶が…」

 

「おっと、そういえば言ってなかったな。ああ、僅かにではあるが戻ったよ。と言っても、自分がどの様な戦術を編んでいたのかぐらいではあるがな」

 

 アーチャーの記憶である。

 凛がアーチャーを召喚した当初、その時召喚に不備があったのか、それともうっかりか、乱暴な召喚になってしまい一応英霊はこの様に喚ぶことができたものの、記憶に混乱が見られ自分がどこの英霊なのかも判らないでいた。つまりは記憶喪失ということだ。

 だが、今アーチャーには僅かにではあるが記憶が戻ったようだ。アーチャー曰く、前回の戦いの影響だろう、とのこと。

 

「それにしても運が良いわね。まさか、あんたの戦い方が士郎と同じだったなんて」

 

「フッ。私自身驚いている」

 

 とそんなことを言っているが、知っての通り実際のところアーチャーはもう既に記憶を取り戻していた。というより記憶を失っていない。故に、これから起こる事は大体ではあるが知っている。なのだが、アーチャーはそれは秘密にするようだ。

 なぜなら、この世界はアーチャーが知っている世界と似て似つかぬ世界であるようなので、その事を教えでもしたら混乱を呼びかねない。そんな事をして凛を危険な目に遭わせたくはないのだ。

 

「さて、それでは私に任せてもらって構わないかな? ああ、安心したまえ。奴の戦い方は同じ故教えられるが、基本的な魔術は君が教えた方が良いだろう」

 

「フフッ、なにそれ。私が出番が無くなるのを嫌がっているって思っているの?」

 

「そうではないのか?」

 

 と、アーチャーはあからさまに面白がっている顔で言う。

 

「ふう、あんたのその人を食ったような顔にも慣れてきたわ。そうね、やっぱり出番は欲しいわね」

 

 と、珍しく素直に答えた凜。凜としてもこのままなにもせずにいるのは嫌だったのだろう。

 

「なら決まりだな。私が戦闘を指導し、君が魔術を教える」

 

「ええ。私達で士郎を鍛えましょ」

 

 二人がそう決意している旁、士郎はランサーの介護のもと辛そうに唸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから次の日。士郎は幼いだけあって回復力はなかなかのため、一日で筋肉痛が回復した。

 

「う~ん。まだ痛いけど、どうにか動けるかな」

 

「気をつけてください、シロウ」

 

 少しふらふらとした足取りだが問題無く動けそうではある。だが、それでも若干不安定である。なので、今士郎はランサーに支えてもらいながら歩いている状態である。ランサーに支えられているその姿はまるで親に支えてもらっている子鹿のようだ。

 

「おはよう。大丈夫? 士郎くん」

 

 どうにか居間にまで歩いてこれた士郎は早速料理中の桜に心配される。

 

「おはよう。うん、大丈夫。それよりもごめん、今日もさくらねえちゃんに朝ごはんまかせちゃって」

 

「ううん。私は大丈夫だからね」

 

 そう笑顔で言ってくれる桜に少し安心と申し訳なさを持ちながら士郎は足を震わせながら座蒲団に座る。座ることができた士郎は支えてくれたランサーに「ありがとう」と言い朝食を待つのだが、

 

(…なんか落ち着かないな)

 

 こうしてじっとしたまま待つというのは以外と苦痛であり何かできないかと思うが、今の士郎は動くのにも体力を使ってしまうため、手伝いどころか迷惑をかけてしまうかもしれないので、動かない方が賢明であろうとじっと待つことにする。

 

(今日、学校に行っても大丈夫かな)

 

 そんな心配が(よぎ)るが、それは果たして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、行ってくるね。ランサーはここで大人しくしててな」

 

「…はい。お気をつけて…」

 

 そして、登校時間になった士郎と桜と凜の三人は鞄を持ち、出て行こうとする。のだが、その際ランサーが「シロウが心配です」と言ってついていきたがっていた。が、知っての通り彼女は士郎の莫大な魔力により霊体化ができないので、衛宮邸で待機することになる。その事にランサーは愕然と落胆していた。恨み言まで吐いていたような気がしないでもないが、余程心配なのだろうか。

 それを凜の側で霊体化して見ていたアーチャーは彼女はこんなにも心配性だったか、と疑問符を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、凜達と途中まで歩いていた士郎は別れた後、自分が通っている学校、穂群原学園小等部の学校に入る。そして、教室に入ると、クラスメイト達が妙に騒がしかった。

 いつも騒がしい教室だが、今日は一段と騒がしい。士郎はなんでこんなに騒がしいんだ? と思いながら自分の席に着き、周りの話しに耳を傾けると、

 

「なあなあ、知っているか? 昨日家の前にある店がさー爆発したんだって」

「うちもうちも、お父さんが働いているお店が爆発していたんだ。お父さん不思議がっていたな。昨日の帰りはきっちりと元栓は閉めたのになって」

 

「最近さーおれ恋ってやつをしているんだよねー」

「えー!? 誰に誰に!? 六年のあの人か!? それとも二年のあのかわいい子か!?」

「いやいや、大人の人だぜ? 綺麗な紫色の髪の毛の人でさー」

 

「ねえ、隕石が落ちたって話知ってる?」

「あれでしょ? 三日前の夜に隕石が落ちてきて辺りが瓦礫になったってニュース。たまたま見たけど、すごいよねー」

 

 と一部どうでもいい話だが、隕石については聞き捨てならない気がした。なので、その話に注意してもう少し聞き耳を立てると、

 

「なんでも新都で大きめの隕石が降ってきて小さく別れた後、いろんなところに落ちて瓦礫だらけにしたって言っていたけど」

 

(…新都、瓦礫だらけ…それって、もしかして…!)

 

 士郎はこの単語だけでクラスメイト達が何を言っているか判る。なぜなら、それは紛れもなくランサーとバーサーカーが戦っていた現場のことだからだ。

 士郎は今気づく、あんなに激しく戦っていた後、なんの事後処理もせずに帰った事に。

 故に、疑問がある。何故あれだけの事をした跡が隕石等の仕業になっているのか。普通ならもっと怪しんでいいはずだ。それなのに、なにも怪しまれず、かつ他の仕業になっているということは、

 

(誰かが隠しているってこと?)

 

 他の、凛やイリヤスフィール以外の誰かが隠蔽工作を行っているということに他ならない。だとしたら、それは誰かという疑問が新たに生まれるが、それにはすぐに思い当たった人物が一人。

 

(もしかして、あいつか?)

 

 士郎の頭の中ではあの嫌味な笑顔を浮かべる神父が思い浮かんでいる。

 つまりは、言峰 綺礼が今回の隠蔽工作に関わっているのではということだ。そして、それは確信を持っていいだろう。何故なら言峰 綺礼は聖杯戦争の監督役だからだ。監督ということはこの戦争の監視役ということにもなる。ならば、聖杯戦争で起こったことなどを隠す役割がある筈だ。

 知っての通り、この戦争は神聖なる儀式であり一般人に知られるのは禁忌(タブー)なのだ。だが、歴戦の猛者たる英雄同士の戦いでなんの被害も出さないでいられるかと言われるとそれは不可能だ。故に監督役がいるのだろう、隠蔽工作のために。

 

(そういえば、確かそんな事を言っていたなあいつは)

 

 士郎は教会で綺礼と話した内容を思い出す。あの時はよく理解してなかったが、自分が体験したことも合わせておおよそ理解できた。

 

(…それにしても、あれ、本当にすごい戦いだったな。…これからもあんな戦いばかりなのかな)

 

 とそこでふとあの戦闘場面を思い出す。もし、本当に神話の再現ともいえるあの戦いがこれからも続くのであれば、士郎としてはとても心苦しく感じる。

 何故なら、士郎はランサーに傷ついてほしくないからだ。士郎はあんなにも綺麗な人がいくら自分のためとはいえ、傷つき血に染まっていく姿を見ていたくない。だからこそ士郎は凛から魔術を学んで少しでも自分で対応できるようにしたいのだ。そうすれば、ランサーが傷つく回数も減らせるだろうと。

 と、そう思っている士郎だが、現実はそう甘くない。如何に士郎が規格外の存在とはいえ、それはあくまでも人間の範疇。人間などという枠をとうに超越した存在たるサーヴァントを相手になど、幾ら何でもできるわけがない。それに、士郎はまだ小学生だ。人間の大人にも勝てないその身体ではサーヴァントにしてみれば薄氷を崩すようなもの、温情もしくは慢心でもなければいとも簡単に殺されるだけだ。いつかの夜のように。

 

「(…でも、おれじゃ全く敵わなくて簡単に殺されるかもしれない。

 ――けど、なにもしないでただ殺されるより全然ましだ)…よし」

 

 とは言うものの、士郎にはそんなことは関係ない。たとえ士郎は自分では敵わないと判っていても立ち向かうだろう。そこにランサーのためという理由が有る限り。正義の味方である限り。

 そんな士郎であるので、今日も凜に鍛えてもらおうと意気込む。そして、いつの間にか時間は過ぎ予鈴のチャイムと共に担任の先生が入ってきたのでそちらに意識を集中する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、穂群原学園高等部の学校。そこの校門を凜と桜が並んで潜ろうとしていた時だ。

 

「やあ、遠坂。こんなところで会うなんて奇遇だね。運命を感じるよ」

 

「…あら、間桐くん。おはよう。何かようかしら? なにも無いならそこを通させてほしいのだけど。間桐さんも困るから」

 

 芝居がかかった言い方で凜達に近づいたのは群青色の縮れた髪型をした顔が整った少年、間桐 慎二。凜の同級生であり、名字から判る通り桜の兄だ。そして、士郎が挑んで大人気なく負かした相手でもある。

 

「いやだな、冷たいじゃないか遠坂。君と僕の仲だろう?」

 

 凜の声は比較的明るい筈なのだが、どうもその声には冷たさしか感じない。

 

「あら、いつ私と間桐くんが仲良くなったのかしら? 私は貴方と仲良くなった記憶なんてこれっぽっちもないのだけれど」

 

 慎二はモテそうな男が言いそうな台詞を並べて執行に凜と絡もうとしているが、凜は意に介さず、笑顔と冷たさを感じる言葉で突き放す。慎二と凜による一進一退の攻防、いや一方的に逃られているが、とにかく始まってしまった。

 

「とにかく、あなたのことなんてなんとも思ってないから余り付きまとわないでね」

 

 が、笑顔と共に放った辛辣な言葉が慎二に突き刺さったのか、慎二は苦虫を潰したようなひきつった笑顔で引き下がることになる。これは、凜の勝利だ。

 

「…そうかい。まあいいさ、僕だって君にいつまでも構っていられるほど暇じゃないんだ。

 それより、だ。桜!! 何度も言っているだろう! 朝練はサボるな! 何度言えば判るんだお前は!」

 

「…っ」

 

 慎二は先程から凜の影に隠れていた桜にいきなり標的を替えたと思えば、先程あった穏やかさがどこにいったのか、兄とは思えないほど乱暴に怒鳴り散らす。急に話しかけられたのに驚いたのか、もしくは怒鳴られたからなのか、桜は体を一瞬震わせてより凜を壁にして隠れる。

 

「おい! 遠坂に隠れてないで出てこい! さもないと…」

 

「やめなさい」

 

 慎二が近づいて桜の肩を掴もうとしたが、その間に凜が割り込み、慎二の手を遮る。

 

「…遠坂、そこを退いてくれないか。まだそいつには躾が足りないようなんだ。なら、兄として躾てやらないとな」

 

「あら? 間桐さんになにが足りないのかしら。料理もできて面倒見もよくて、優しさもある。十分人としても女性としても足りていると思うのだけれど。

 それから、あなた彼女が朝練に来てない事を怒っているようだけれど、弓道部の朝練は自主性のはずよ。無理に参加しなきゃダメって訳じゃないんでしょ? それに、彼女は面倒を見ていなきゃいけない子供がいるの。なら余計に仕方ないと思うのだけれど」

 

 また凜の圧勝だ。何一つ外していない。

 完全に論破された慎二は何も言えず凜を睨み付け、舌打ちをした後「いいだろう。今回は引いてやる。まったく、なんであんなガキの面倒なんかを見ているんだか」と負け惜しみでも言うように学校に戻っていく。

 

「…………」

 

「…あの、遠坂先輩」

 

 しばらく、何を思っているのか判らないが去っていく慎二を見ていた凜に桜は話しかけ、「あの、ありがとうございます」と礼儀正しく礼をする。すると凜も「いえ、あの家に棲まわしてもらっているお礼よ」と手を振って応える。

 

「それじゃ、ここら辺で。また後でね」

 

「はい。また後で」

 

 そう言って二人は別れてそれぞれ教室に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 教室に入る前、廊下を歩いている凜は周囲に気づかれないようこっそりと周りを確認する。周りには思い思いに歩いている自分と同じ高校生。なのだが、

 

「……なにかしらね、これ」

 

 凜はこの学校からなにか異変を感じていた。

 

(いつも通りの風景。誰かが欠けているというわけでもない。けど、なにかしら、この感じ。まるで、何か檻に入られているこの感じ)

 

 いつもと変わらない。変わることなんて滅多にない。そんな学校なのだが、少しだけ空気が違った。周りの生徒はそれを気にしてはいなさそう。というより、気づいていなさそうだ。

 異様な雰囲気に気持ち悪く感じながら教室に入ると、すぐに凜に気づいた女子生徒が席から立ち上がり近づいて来て、

 

「よっ! 遠坂。窓から見えていたよ。今日もあいつはうざったいね」

 

 そう旧友に挨拶するが如くに親しげな挨拶をする。

 

「おはよう、美綴さん」

 

 その女子生徒は、武に関してはあの冬木の虎と恐れられる大河に届くのではというほど武芸達者であり、凜のライバルでもある弓道部所属にして主将、美綴 綾子。

 様々な女を手篭めにしてきた慎二すら手を焼く、どころか逆らえない人物である彼女はいつも通りで少し安心する。おかしな空気の中で変わらないものがあるというのは以外と安心できるものだ。

 ただ、もちろんのこと彼女は魔術とは一切関わりのない一般人。故に、この話をしてもいい相手ではないというのが少し辛くはあるが。

 

(これは、ちょっとばかし対策を立てないと)

 

 さもなければ、この学校は何者かの餌食になるだろう。そう思った凛は普段通り穏やかに、優雅に今日の学校を過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――という訳よ。判ったかしら」

 

「………」

 

 あれから、何事もなく放課後になり、学校から帰宅した士郎は衛宮邸で同じく帰宅した凛から学校の現状を聞いて絶句していた。

 何故絶句しているのか? それは信じられないと思っているからだ。この聖杯戦争で死者が出てもおかしくないことはわかっている。だが、それはあくまでも関係者だけだと思っていたのだ。今凛が言ったことが事実だとすれば、それは関係がない人達をも殺そうとしていることに他ならない。それが士郎には信じ難く、同時に許せないでいた。

 これがまだ他の学校だったらここまで士郎が怒りを露わにすることはなかっただろう。しかし、凛が通っている学校ともなれば話は別だ。凛が通っている学校、穂群原学園高等部であれば、桜も通っている。士郎にとって姉同然の桜を危険に晒すなど許せるわけがなかった。

 

「……許せないのは私も同じよ士郎。けど、今はそれを抑えてね」

 

「…っ! …うん、判った」

 

 士郎から出ている怒りを感じた凛は今はダメと戒める。士郎は納得がいかなそうではあるが、一瞬だけきた凛からの威圧におし黙る。

 

「…いい子ね。さて、それじゃ対策を立てたいけど、敵は誰なのかしらね。まずはそこから探さないと。きっと、あの時見つけた刻印よね。結構大掛かりなものらしいから発動したらどれだけ被害が出ることやら。まあ、幸い、あれは時間をかけないと発動できないタイプのようだし、見積もって、後五日くらい余裕はありそうだし。慎重に探る時間はあるわね」

 

 怒りを鎮め、凛は早速対策を考案しようと今わかっている情報と現在の状況を思い出す。そして、あの日、あの夜に見た学校にあった何かの術式と思われる刻印が原因と考え、頭の中で策を巡らす。

 

「…………」

 

 そんな傍らで、士郎は何を思っているのか、ただ俯いて拳を握りしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、訓練、開始だ」

 

「はい! よろしくお願いします! アーチャー師匠!」

 

 凜はしばらくの間対策を練るために今日の魔術鍛練は中止ということになった。

 その事に士郎は心底残念に思っていたが、凜から今回は別の人が士郎の特訓に付き合ってくれるそうで、衛宮邸の敷地内にある道場へ行けと言われた。

 そして、士郎が道場に入れば、そこには少しだけ淡い黒色の道着を着たアーチャーが仁王立ちで待ち構えていた。なんでアーチャーがここにと聞けば、士郎の戦法は自分に似ているから教えるならば自分が最適だろうとのこと。

 突然のことで言葉を失っていたが、英霊に鍛えてもらうなど一生に一度あるかないかなので、嬉々として士郎はアーチャーを師事するのであった。

 

「それでは、まずはお前の投影魔術を見せてみろ。投影するものは、そうだな…ではこれを投影してみろ」

 

「はい!」

 

 そう言って士郎は早速、アーチャーが出した白と黒の双剣の投影を開始する。

 

「ん~と、ここがこうなっているから――よし、投影(トレース)開始(オン)

 

 士郎はアーチャーの双剣を観て、己の中でイメージを形作り、アーチャーより教えてもらった掛け声を唱える。すると、

 

「…ほう。見事だな」

 

 士郎の手の中にはアーチャーの双剣と同じものが握られていた。

 

(完成度は…およそ九割といったところか。さすがというべきか、異端というべきか。とにかく、これなら)

 

 凛が教えた解析はほぼ感覚的にできていると見ていいだろう。なので、アーチャーはまずは投影の練度を上げることから始めようと思った。その後は軽く実践もしてみようかと算段する。

 

「かなりの完成度だな。だが、それではまだだ。今回投影したこの剣、『干将・莫耶』だが、これは私が使う剣の中でも一番基本的な剣だ。神造兵器というわけでもない、であればこれくらい完全な投影ができ且つ素早くできなければ、まだ高ランクの投影はさせられないな」

 

 アーチャーの言葉を一字一句聞き逃さすまいと、真剣な眼差しで頷きながら鎮座している士郎。

 

「む…(こうも真剣に聞いているとはな。師匠なんぞと呼ばれているだけでも違和感しかないというのに。ま、これも私にある一つの側面の可能性なのだろう)」

 

 少しだけやりづらいという風であるが、アーチャーは一つ一つ丁寧に教えていく。

 

「いいか、投影魔術をする上で大切なことはすでに気づいているだろうが、イメージだ。投影するものを正確にイメージをするのだ。

 ただし、ただ形を思い浮かべればいいというわけではない。その中身も正確に理解し、それを全て含めてイメージするのだ。さて、ではもう一度だ」

 

 事細かに説明をしてくれるアーチャーに士郎は感動を覚えながら言われた通り投影を開始する。今度は今までよりも鮮明にイメージを膨らませ、一寸の間違いすらも無くす。

 

「―っ! よし、投影(トレース)開始(オン)っ!」

 

 こうして、アーチャーによる士郎の特訓は夜中の一時まで続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。
少し短かったかもしれませんが、そこはご容赦を。






P.S 人理修復(グランドオーダー)完了!
とてもいい最後でした。最後は悲しいことはありましたが、これもまた運命(さだめ)と思い、否定はしません。
それよか、キングハサン、あんたカッコよすぎ。なにあの絶望から救われた感。是非ガチャにきて欲しい。
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