Fate/stay night 槍の騎士王と幼い正義の味方   作:ウェズン

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よっしゃー!思った以上に早くできたぜー!
ども、武蔵ちゃんに石を使ってキングハサンの十連ができなくて絶望しているウェズンです。
少し皆様にお伺いたいのですが、今この小説の更新は不定期状態なのですが、それってタグで知らせた方がいいんですか?なんだかそういうのは邪魔な気がしまして今までつけていなかったのですが。
では、始まります。


第七夜-そこに潜むもの-

「――アルトリア・ペンドラゴン。アーサー王とも呼ばれしブリテンの王です」

 

 アーサー王、かつてブリテンという今ではイギリスのロンドンとなっている国を治めていた選定の剣を引き抜きし選ばれた王。

 

「―――――」

 

 士郎はその名を聞いて絶句してた。何故なら、士郎はここまで強いなら相当すごい人なのだとは思ってはいたのだが、完全に予想以上の人物だったのだ。

 アーサー王のことは昔アーサー王伝説の本を切嗣に読んでもらっていた時があった。士郎には難しい内容だったためにあまり覚えていなかったもの、その物語に出てくる聖剣エクスカリバーの名はいまだに忘れられない。そして、それを扱っていたアーサー王のことも。

 思い返してみれば、すでにそのヒントは出ていた。それは彼女の槍、『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』。アーサー王が持ちし聖槍。アーサー王の最期、カムランで反逆者であり、自身の息子サー・モードレッドを討つ際に使用した槍。

 士郎はなんで今思い出したんだと思ったが、『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』はあまり印象に残っておらず、むしろアーサー王の武器といえばエクスカリバーが一番有名だ。士郎もそっちしか覚えられていなかったために覚えていなかったのだろう。

 とにかく、今士郎はものすごく武者震いとは逆の震えが起こっている。

 

「――えっ、アーサー王ってあのアーサー王っ!? ウソ、本当に!?」

 

 しばらく固まっていた士郎がようやく出せた言葉はというと、正真正銘の王に対して随分と失礼なことだった。つまり、それほどまでに信じられないと思っているのだ。

 

「はい。この身は確かにアーサー王のものです。それがどうかしましたか?」

 

「うえっ!? いや、えっと、その…」

 

 どうしたも何もない。 もし本当に目の前にいるのが彼の王なのであれば、今までの自分の行いがどれほど失礼だったのかということになる。思い返してみれば、抱きつかれたり、手を繋いで歩いたり、留守を頼んだり、挙句には添い寝をしたりと…ほとんど向こうが原因だが、大変失礼なことばかりをしていたのではと思うと頭の中がスクランブルエッグのようになってしまう感覚がする。

 

「…今まで申し訳ありませんでした、王様」

 

「え、え? え!? ど、どうされたんですか、シロウ!?」

 

 とにかく、第一に謝らなければ。かつて切嗣から教えてもらった言葉を思い出し、大河から教えてもらった土下座を披露する。

 すると、ランサー改めアルトリアは突然の土下座で謝ってきた士郎に何をどうすればいいか判らず困惑してしまう。

 

「え、えっと、とにかく、(おもて)をあげてください。急に謝られては困ります」

 

 だが、士郎は上げることをよしとはしない。

 

「えっと…それでは、王として命じます。面を上げなさい」

 

「はいっ!」

 

 王命、そのように言われてしまえば上げるほかない。背筋をしっかりと伸ばしてアルトリアの顔を見る。

 

「ようやく上げてくれましたか。では、シロウ、確かに私は王ですが今はあなたのサーヴァントです。ですので、どうかそのように振る舞うのはやめてください。その、せっかくなんですし、仲良くしたいといいますか…」

 

 最後あたりは声が小さくて聞き取れなかったが、とにかくアルトリアは今までの関係がいいらしい。だが、正直それは難しい。今士郎はアルトリアの名を知ったその瞬間から自分はアルトリアよりも完全に格下の人だと思ってしまっているからだ。

 

「わ、わかり、ました…王様」

 

「いえ、ですから敬語もやめてください。なんだか違和感がありますので」

 

 畏れ多くも彼のアーサー王相手に敬語を使わないというのはなんとも言えない怖さがあるが、こう頼まれてしまっては仕方ない。

 

「わ…わかっ、た」

 

 微妙ではあるが、敬語は取り外せたのでアルトリアは満足そうな笑顔で頷く。士郎はいまだに納得がいかないという顔ではあるが。

 

「それでは、今日はもう遅いですし、寝ましょうか」

 

「えっ。えっと、今日も、その、一緒に…?」

 

 と士郎が聞くとアルトリアは何を今更とでも言うような顔になる。

 

「ええ、当然です。これはマスターの身を守るためです。敵はいつ何時やってくるかわかりません。ならば、私がしっかりと見張ってなければ」

 

「え。でも、いつも眠ちゃっているような…」

 

「ご安心を。あれは油断を誘っているだけです。いざ敵が来れば寝ていようとも反射的に起きて串刺しにできます」

 

 と豪語するが、士郎としては疑わしい。何故なら、今朝士郎はアルトリアを起こそうとしても起きなかったからだ。

 だが、アルトリアの顔には自信しかない。若干の不安はあるがここまで自信があるなら信用してみようと思う。

 

「う〜ん。わかった。他にもあるけど、もうそれはいいや。それじゃおやすみ」

 

「はい。では私も」

 

 そう言って士郎は布団を畳の上にひいて、士郎が寝そべるとアルトリアも隣にそっと寝転がる。

 

(やっぱりこうなっちゃうのか。正直、名前知ってるから今までとは別の緊張感があって寝づらいなあ)

 

 と言いつつ、三十分後ぐっすりと寝るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。鳥の囀ずり、は季節が季節なので聞こえないが清々しい朝、士郎は眠りから覚める。外を見れば大分明るくなっているので時間は七時過ぎる頃だろう。

 

「…ラン…アルトリア、でいいんだよな。起きて」

 

「ん、んむぅ。んっ? …おはようございます、シロウ」

 

 欠伸をしながら起きたアルトリア。今更だが、アルトリアは寝るときネグリジェのような寝間着を着ている。ちなみに凜からもらったものだ。

 

「(今日は起きてくれたか)それじゃ、居間に行こっか」

 

 アルトリアが起き上がると士郎も続いて起き上がり居間へと歩いていく。

 

「あっ、おはよう士郎、ランサー」

 

「おはよう、りん」

 

「おはようございます、凜」

 

 居間へ行くと、凜が朝食を作って待っていた。今日はあの二人はいないのかと士郎が首を動かしていると、

 

「あっ、そういえば桜はもう来ないわよ」

 

 と突然衝撃的な事を言われ目を見開く。

 

「…え? さくら、ねえちゃんが、来ない…?」

 

「ええ。と言っても聖杯戦争中はね。この家にいたら間違いなく危険だから一時的に離れてもらったわ。藤村先生はなんだかんだ大丈夫そうだけど」

 

 淡々と理由を言うが、桜が来なくなったということが考えられない士郎はなんでと聞かずにはいられない。

 

「なに? 桜がいないのがそんなに寂しいの? でも、仕方ないわよ。さっきも言ったけどこの家は危険よ。魔術と何も関わりのない人がいていい空間じゃないの。それとも、桜を聖杯戦争に巻き込みたいわけ?」

 

 凛の言う通り、このまま桜をこの家に通わせていたら危険だ。セイバーに襲われた時だってこの家にまで侵入してくるくらいだ。あの日はたまたまいなかったから良かったものの、もしいたら遭遇して死なせてしまっていたかもしれない。ならば、凛の判断は正しい。

 ただ、士郎は桜がいない生活が想像できないために寂しく思う。幼い士郎にとってそれだけ大事なのだ桜は。だが、今は寂しく思っている場合ではない。故に、士郎は涙を飲んで切り替える。切り替えるしかないと自分に鞭を打つ。

 

「…わかった。おれだってさくらねえちゃんを危険なことにあわせたくない」

 

「ん、いい子いい子。なんだったら私が桜の代わりにお姉ちゃんになってあげよっか?」

 

 頭を撫でられながら言われ、士郎は一瞬「えっ」と驚いたような反応をする。何が驚きだったのかと思った凛は「何、もしかして私のようなレディで嬉しいの?」と都合よく解釈するが、

 

「いや、りんだとさくらねえちゃんの代わりになれないかな、って」

 

 そう視線を顔から少し下げつつ言う士郎に全てを察した凛は、

 

「…士郎、後で即効魔術鍛錬するから、覚悟していてね」

 

 急にいい笑顔になったと思えば、最後だけ低く恐怖心に呼びかけるような声で言った凛。士郎は自分の最期を悟ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 登校時刻、士郎と凜は特に会話もなく歩いていた。

 

(…今朝のりん、怖かった)

 

(少しやり過ぎたかしら)

 

 あの後、凜は鍛練の時間などほとんどない中、笑顔のまま無理やり様々な事を頭の中に詰め込ませ、無理やり手加減なしの体術訓練もされた。そのようなことをすればもちろん疲れはてて倒れているはずだが、士郎は自前の根性と膨大な魔力により耐えきれていた。これを見越しての鍛錬らしいが、それでもそうとう堪える。

 そんな凛を見て士郎は悪魔だと思ったそうな。そして、それを霊体化で見ていたアーチャーはトラウマでも見ているかのように顔を横へ反らして祈りを捧げていた。

 それから、反省した、いやさせられた士郎は凜と共に登校時間になって今に至る。

 

「…なあ、りん。ちょっといいか?」

 

「何かしら?」

 

 しばらく無言のままだったが、士郎が少し言い澱みつつ話しかけることによってその静寂は断たれる。

 

「えっとさ、おれ少し考えたんだけど、これからしばらく学校を休もかなって思うんだ」

 

「え?」

 

 そして、士郎が言い出したことといえば、それは不良生徒が言いそうなことであった。

 なんでと不思議に思った凛が問おうとしたが、その前に士郎が理由を言う。

 

「りんがさくらねえちゃんを危険な目に遭わないようにしたようにさ、おれも何かの拍子に学校とか巻き込まないように少し離れておきたいんだ。決してサボりたいとかじゃないんだけど」

 

「…うーん。そうよね、確かにその通りといえばそうなんだけど、でも、それでもしも学校にいるマスターに勘付かれたらまずいわよね…」

 

 士郎が言ったことには一理ある。ならば凛もそうするべきかもしれないと考えているが、若干の不安もある。

 その不安というのが、学校にいるマスター達のことである。聖杯戦争という中で今も凛が学校に通っているのも自分と同じ高校に通っている生徒もしくは先生のどっちかにいるマスターに気づかれないよう、不自然な行為はしないようにと思いこんな状況でも通っているのだ。

 それがいきなり途切れたらまずいかと考えるが、もう戦争が始まって何日も経ってる。ならば、そろそろ不登校になっても怪しまれないかなと思う。

 

(そうね、士郎の鍛錬もあるし、士郎も休むってんなら私も休んで士郎を鍛えた方がいいわよね。よし決まり)

 

 これで凛は士郎と共に学校を休み、魔術鍛錬に精を出すことにすることが決まった。

 

「そうね、確かに言う通りだわ。でも、それなら私も一緒に休むわよ」

 

「え? りんも?」

 

「ええ。だって休むってんならその間に鍛えておいた方が何かといいでしょう?」

 

 つまり、一日中鍛錬の時間だということなのだろう。士郎にとってもそれはいい提案だった。

 

「…! うん! よしっ、頑張ろう!」

 

 気合い十分に張り切っている士郎は学校へ向けて走り出す。

 凜はそんな士郎を「やっぱり子供ね」と微笑ましく見ているが、途中転けた士郎を見て慌てて駆け寄っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…今日も大した収穫無しか)

 

 それから昼休みになり、凜は屋上で弁当を広げていた。

 

(このままじゃちょっとまずいわね。早急に手を打たないと。けど、今のところ判っているのは…)

 

 凜はいまだ発動していない学校中に張り巡らされているものを剥がすために動いていたが、今のところ判明しているのは張り巡らしたのがギリシャ系の英霊ということだけ。

 

「これだけじゃなんとも言えないわねー。どうするべきかしら」

 

 など一人言を言っても仕方がない。とにかく、わからないのであれば動きようがないので、悔しくはあるが今は傍観しているしかないようだ。

 

(前のように士郎を連れて行きたいけど、また足止めというか、慎二に絡まれでもしたらまずいしなぁ)

 

 あの騒動の後、凛は何故初見だと思っていた慎二があそこまで士郎を毛嫌いしていたのか気になり大河達から話を聞いた。その後で、何故桜が士郎の高校見学を渋っていたのか含めて理解した。

 

(まあでも、士郎には弓の才能があるということがわかっただけでも収穫はあったから良かったわね)

 

 とそこまで考えたところで、凛は立ち上がる。

 

(さて、今度はどうやって探すか。…そうね、最近の噂とか聞いてみようかしら)

 

 これだけ探して見つからないとなると、先に結界を張ろうとしているサーヴァントを見つけた方がいいと思う。

 中身が空になった弁当を片付け、早速友人の綾子に最近耳にする噂を聞こうかと屋上を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーごめん、私そういうの結構疎いんだ」

 

「…そっか。ありがとう美綴さん」

 

 結局のところ、聞いてみても判らない状態が続くだけであった。知らないものは仕方ない。魔術と関わりがない綾子相手にこれ以上この話題を出してもいいわけないので、話を切ってまた学校の中を彷徨う。

 

(やっぱり知らないか。となるとどうするべきか、他の人に聞いて怪しまれたくないしなぁ)

 

 現状八方塞がりだ。何か行動を起こそうにも情報が足りなさ過ぎる。とそんな事を思っていた時だ、

 

「そこで何をしている、遠坂 凛」

 

「…あら、生徒会長じゃない」

 

 と喧嘩腰に話しかけられ振り向く。

 話しかけたのは厳格な雰囲気を漂わせる男子生徒、柳洞 一成。容姿端麗、頭脳明晰と実直で真面目な好青年。そして、この高校の生徒会長を勤めている。洞察力にも優れた人で、普段猫を被っている凛の本質を即座に見抜くことができる唯一の生徒。ちなみに、凛のことは自身の天敵と思い嫌っている。

 また、寺育ちで柳洞寺という寺の跡取り息子でもある。

 

「ここに貴様の興味を惹くものなど、どこにもありはしないぞ」

 

 どうやら凛はフラフラと歩いているうちに生徒会室前まで来てしまっていたようだ。

 

「別に用があるってわけじゃないけど…そうね、この際だからあなたにも聞いてみようかしら」

 

「ん? 俺に聞きたいことだと? あの遠坂が珍しいこともあるもんだな。で、なんだ、女狐の質問というといささか聞きたくなくなるが、答えれる範囲で答えよう」

 

 一成は警戒しつつも、凛の話を聞くようだ。

 凛はその様子に相変わらず気真面目ねと思いながら聞きたいことを言うと、

 

「最近の噂、だと? 何故そのようなことを聞きたがる。なんの意味があるというのだ」

 

 案の定怪しまれる。当然と言えばそうだが、今ここで何か勘付かれてはまずいので無理やりにでも押し通す。

 

「あー、それはまあ、色々とね。とにかく、最近気になったこととか不思議なことが起こったとかでもいいし、何かないかしら?」

 

「ふむ。質問の意図が以前判らんが、まあよかろう。貴様とて何かしら事情はあるだろうしな。と言っても、生憎そのようなことは何も…」

 

 と言われ、また何もなしかと凛が少し落ち込んでいると、

 

「…いや、そういえば一つあったな」

 

「え!? 本当!?」

 

「あ、ああ。なんだ、随分と嬉しそうだな」

 

「あっ、き、気にしないで続けて」

 

 あまりの食いつきに若干引いた一成は、今日は一段と得体の知れない奴だと思いながら話し出す。

 

「最近起こったことなのだが、何日か前にうちの寺で籍を入れた者がいてな。それは良いのだが、その相手が真に美しい女性()でな。この様な女性がまだこの世にいたとは、と感動を覚えたものだ」

 

「…………」

 

 凛は一成の言葉を聞いて思案している。

 少し引っかかるのだ。一成が言っていることはなんて事はない、ただの結婚報告だ。なのだが、今の時期に籍を入れるというには少し怪しい面がある。

 もう少し詳しくと思ったが、その時、ふと自分とは違う魔力が感じられた。

 

(…あれ? 今の何かしら)

 

 どこからと思い周囲を少し探ると、何故かそれは目の前にいる一成から感じた。

 

「…!(これって!)」

 

「ん? なんだ、どうかしたか?」

 

 まだ確証はできない。だが、今の気配、間違いなく一成から感じたもの。

 だが、一成は魔術師ではない。それは彼とは同中であった凛であるために知り得ていることだ。ならば、今の魔力は間違いない。他の誰かのもの。それもかなり強い。

 とにかくだ、これ以上の詮索は危険と思い、この魔力の主に気取られない内にこの場を立ち去るのみ。

 

「いえ、なんでも無いわ。ありがと生徒会長」

 

「うむ。まさか貴様から礼を言われようなどとは、明日は嵐かもしれんな。喝」

 

 最後にそれだけ言って二人は別れる。

 別れた後の凛はというと、これから柳洞寺に行く必要があるかもしれないと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから放課後が過ぎ、夜に差し掛かった頃、士郎達は桜がいない夕飯を済ませ、魔術鍛錬を行っていた。

 

「さて、それじゃ今日もこれを強化してみて」

 

 衛宮邸の一室、凜が借りている部屋の中で行われているのは強化の魔術。

 士郎の強化はできないことはないが、それでも必ずうまくいく確率ではない。これではいざ戦いになれば失敗して命を落としかねない。なので、その可能性を少しでも無くすために強化の魔術を鍛えていた。

 

「判った」

 

 今凜が士郎に手渡したのはランプ。それもかなり年期が入った物で、今ならそうそう売ってはいなさそうなある意味貴重なランプ。

 

同調(トレース)開始(オン)

 

 早速士郎は集中してランプの構造を解析する。

 

「えっと、こうなっているから…ここに魔力を通せば良いんだっけ」

 

 そして、解析が終われば、次に魔力を通して使われている材質の質を高める。

 

「…よし。できた!」

 

「ん、さすがね。それじゃ、まだまだランプはたくさんあるからもっとやるわよ」

 

「よっしゃー!」

 

 その後、士郎は調子に乗ってランプを魔改造できるのではとやった結果、爆発し凛に傷を治されつつ叱られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…毎日鍛錬を怠らない姿勢はいいがな、無理は禁物だ。それにお前はまだ子供なのだから、少しくらい甘えても問題は無いぞ」

 

「いえっ、おれは早く、もっと強くならなきゃいけないんです! だから、少しも休みません!」

 

 その後魔術の鍛錬を終え、休む暇無しにアーチャーの元へと士郎は向かった。

 

「全く。一つ言っておくが、無茶が過ぎては強くなろうとしても…いや、お前はそういう奴だったな。

 わかった、ならば始めるとしよう」

 

 アーチャーが竹刀を構え、士郎も構える。互いに向き合い、士郎はアーチャーの完全な隙を見抜こうと目を凝らしたとき、

 

「…そうだな。よし、では衛宮 士郎」

 

「! はいっ、なんでしょうか!」

 

 アーチャーが竹刀を下ろして士郎を呼ぶ。呼ばれた士郎はなんだと思いながら同じく竹刀を下ろす。

 

「今日は少し鍛錬の内容を変更する。衛宮 士郎、投影魔術で剣を出せ」

 

「―! えっ、それって…」

 

 アーチャーは士郎に投影魔術をやれと言った。つまり、より本格的な武器を使った訓練を開始するということだ。

 

「ああ。まだまだ未熟だが、これ以上時間もかけてはいられまい。だからこそ、今からお前にはもっとも効率が良い鍛錬をする」

 

「効率が、良い? そんなことができたなら早く教えてくださいよ」

 

「いや、これがなかなかに危険なことでな。下手をすれば命に関わる」

 

 アーチャーが言うには、投影をする際のイメージをするには極限までの集中力が必要のようだ。何故だか士郎にはそこまでの集中力がなくとも構成できてしまっているが、それはともかく、普段の状態ではイメージに集中しても未熟なうちはどうしても雑念が入ってしまう。

 そこで、アーチャーはある状態ならばそれも可能になると言う。その状態と言うのが、命の危機に瀕した時。

 人は自分の命が危険だとわかると助かりたいと思い、これならば助かるかもしれないと思えることがあればそこに爆発的な集中力を見せる。だからこそ、今から行う事は、命の危機に立ち会ってもらい、投影へ全集中力を集めることが目的となる。

 それを聞いた士郎は納得したようなしてないような顔でいるが、百聞は一見に如かず、実際にやってみた方がわかるだろう。

 

「では、お前の投影魔術、見せてみろ…!」

 

 とそう言った瞬間、アーチャーから殺気が溢れ出す。

 

「…!!」

 

 すると、士郎は体に電気が奔りあの時の状況を思い出す。

 それは、セイバーに追われていた時の光景だ。士郎はその時と同じくらい、否セイバー以上の鋭利な剣の刃を首に押し当てられるくらいの殺気を感じ取り、士郎は瞳孔が狭くなった目を見開いて冷や汗を流しながら膝を床につける。

 

「…どうした。まさか、この程度で恐怖心に襲われたか? ハッ、滑稽なものだな。戦うと言いながらいざ本当の殺気に当てられるだけでその様か」

 

「うっ…っ! くそっ…!」

 

 そう暗に立てと言われてしまえば座ってはいられない。ならば立つしかない。だが、士郎の足は立つことを嫌がっている。

 

「はぁ、はぁ」

 

「…立たないと言うのか? それでは簡単に斬られるぞ」

 

 そんな事は判ってる、と思いながらも士郎の足は震えてばかりで立ってくれない。もういっそのこと足が棒のようになってくれてればいいのに、とさえ思えるほどである。

 

「くっ、あぁ…! はぁ、はぁ…! そ、いうわけには、いかない…!」

 

 あの夜、一度剣が振るわれる度、士郎はその剣から逃げ惑うばかりだった。その時を思い出し、根性で脚の関節を伸ばし足の裏を床に張り付ける。

 

「…よくぞ立った。これでお前は戦士と戦う資格を得た。だが――」

 

 刹那、アーチャーの竹刀が一直線に士郎の頬を掠める。

 

「………!!」

 

 士郎は倒れることも叶わず痛がることも出来ず、ただ立ち尽くして何が起こったのか理解する他なかった。頬から血が一滴垂れてくる。

 

「…判ったか? 言っておくが、これでも私は三割の力しか出してない。つまり、彼女(ランサー)達は更に上の次元を行くということだ」

 

 それを聞いて士郎はゾッとなる。もし本当ならば、よく自分は生きているものだ、と自分の幸運に感謝しなければならない。

 もしそうなのであれば、あの時、あの夜でセイバーが少しでも本気を出したら今頃自分はここに立ってすらいなかっただろう。

 

「…さて、ではもう一度行くぞ。ああ、言っておくが、そのまま立っているだけでは――」

 

 瞬間、アーチャーの竹刀が士郎の目を捉える――――

 

「―――うわぁ!!」

 

「死ぬぞ」

 

 間一髪、咄嗟に避けたおかげで竹刀は空を切る。

 

「――はっ――はっあ――はぁ」

 

 士郎はあまりの恐怖に呼吸が安定しない。

 これが英霊の力、人間では到底敵わない存在の力。今それを目の前で見せつけられた士郎は挫けそうになる。

 

(そっ…んな。こんなの敵うわけない! 死ぬ。死ぬ、死ぬ、死ぬ…!)

 

 本気の殺気に襲われた士郎は頭の中が狂っていく感覚に陥る。

 無理もない。経験がほとんど無い士郎では真の戦士の殺気を当てられて正気でいられるわけがない。今までは加減をされたり、護られたりしたが、今士郎にはそのどちらもがない。

 

「どうした? そのままでは本当に死ぬぞ? 死にたくなければ、速く武器を出すがいい。…もしくは、いっそのことそのまま死ぬか?」

 

 アーチャーの言葉で少しだけ我に帰った士郎はすぐさま投影を開始する。だが、

 

「はぁ、はぁ、はぁ(ダメだ…! 安定しない…!)」

 

 頭の中が混雑しており、ノイズが入ったように頭の中が擦れ集中できない。

 

「(でも、やらなきゃ、集中しなきゃ、ダメ、だ……! な、なんで、こんなときに…! ……嫌だ、イヤだ、イヤだイヤだイヤだ、死ぬなんて…い、や…!)うぐっ…! あ、ああああああ‼︎‼︎」

 

 一瞬士郎は自分が死ぬイメージが視えてしまった。その瞬間、体から何か(・・)が士郎を蝕んでくる。それは士郎の弱い部分が露見したとき好機とばかりにそこに入り浸ろうと侵食しているようだ。

 

「!? なんだ⁉︎ …! これは…まさか…!」

 

 アーチャーはこれがなんなのかを知っている。知っているが故に、竹刀を捨て投影魔術で『干将・莫耶』を出し身構える。

 

「あ、ああ、あああアアアアァァァァ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 士郎は身体中が何かに喰われ意識が遠のいていく中、海の底から出しているような、響きがある声が聞こえる。

 

 お前の望みは、なんだ?

 

 うっすらと目を開ければ、そこはなにもない世界。もし、『無』の世界があるとすればこんな感じではないのかと言うほど暗いのか明るいのかもわからない世界だ。

 

(望、み…?)

 

 それは士郎の奥底にあるものを探るかのように聞いてくる。

 

 お前は何になりたい? それとも、何をしたい?

 

 その声は徐々に近くなってくる。

 

(お、れがしたいこと…)

 

 そうだ。お前は何を望む? 何が欲しい? 何を求める? 何が起こって欲しい? お前ならなんでも叶うぞ?

 

 惹き込むように、それは士郎に呼び掛け続ける。

 

(おれは…な、りたい)

 

 士郎はなんでも叶うといわれ、その言葉に誘われる。

 

 何にだ?

 

 士郎が望みを言うと、煽るかのように質問を返す。

 

(せい、ぎのみかたに…)

 

 そして、士郎がそう願った途端、

 

 ひ、ひひ、ひゃ、ひゃははは、ヒャハハハハハハハハーーーーー!!

 いいぜ‼ お前の望みを、叶えてやる!! 目の前にいるもう一人のお前(・・・・・・・)を使ってなぁ‼!!

 

 そして、その世界は士郎を黒く覆い呑み込もうとする。だが、

 

 …! な、なんだ、これはぁぁぁァァァアアァァァァ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 士郎が膝をついてもがいていると、士郎の体から何か黒い靄が出てきて、それが士郎を取り込もうとする。それが見えたアーチャーは警戒し数歩士郎から下がり見据える。すぐに動けるよう構えているその時、

 

「…! なっ…! この光は…!」

 

 士郎の体から眩い光が溢れ出し、士郎はその光に包まれる。

 

「あ、ああ…うっ」

 

 そして、黒い靄と光は相殺するように消え去り、士郎はマリオネットの糸が切れるようにそのままぐったりと倒れる。

 

(…完全に想定外のことが起こったな。…不思議に思っていたが、この衛宮 士郎の中にまさかあれ(・・)があるとは…。クソッ、なんとなくそうではないかと思っていたが、まさか本当にあったとは思わなかった。そして、ここでその片鱗を見せるとはな…)

 

 アーチャーは冷静な頭でこの事を凜に伝えるかどうか考える。

 

(…いや、止しておいた方がいいな。これは、凜では手に負えん。それに今しばらくはあの二人(・・)が護ってくれているようだしな。全く、この男はついているのかいないのか)

 

 そのようなことを思いながらアーチャーは士郎を抱え、寝室まで運ぶのだった。

 

(…そうだな。せめても彼女にだけは話しておくか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …夢を見た。どこだかわからないけど、なんだか見たことがあるような、でも、どこでだろう。そんな光景。こことおれは、どんな関係があるんだろう。

 

 おれは、なんとなくそこを歩いた。不思議と足は動いた。こんなところを…そういえば、ここのような場所って何て言うんだっけ。…思い付かない。仕方ないや、今は歩いていよう。

 

 少し歩いたら沢山の人が見えた。ただ、おれのように歩いている人はいなくて、みんな太陽を寝転びながら見ている。太陽が眩しいのか、みんな顔を歪めているけど、見るのを止めるつもりはないようだ。

 

 けど、なんだろう。ここは明るいけど、なんだか太陽は暗い。なんでだろう。暗い太陽ならここも暗いはずなのに。みんな眩しく思わないのに。

 

 …ああ、そうだ、そういえば一つあるじゃないか、ここを表すのに一番いい言葉が。うん、ここは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …地獄だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで!
士郎の中にあるものとは一体…!?
知りたくば――待て、しかして希望せよ。







P.S
見事にクラスがかぶることなく当たる☆5キャラ達。あとは弓と槍だけという。
そして、最近妙に当たりやすいけど、運営さんガチャの排出率を上げてくれたんですかね。
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