僕と来ヶ谷さんは食堂の隅の席で昼食を取った。
その間も僕らは会話をすることは無かった。
何か喋らないと。
「理樹くん?」
「⁉︎」
来ヶ谷さんから話し掛けられると思ってなかったから驚いてしまった。
「私と二人きりだと楽しくないか?」
来ヶ谷それはもう、とても心配した様子で聞いてきた。
本人は真剣だろうし、こういう事を思うのは失礼だけど、すごく可愛いと思った。
「そんなわけないじゃないか」
「だが、ずっと黙っているし…」
そう言う来ヶ谷さんはいつもの様子はどうしたのか、普段の彼女からは考えられない顔をしていた。
こんな顔させちゃいけないな。
「別に来ヶ谷さんといるのがつまらないわけじゃないんだ」
「本当か?」
僕は来ヶ谷さんを安心させるように精一杯真剣な顔を作って強く肯定した。
「うん、ただちょっと緊張しちゃって…ごめんね」
「いや、良いんだ。それを聞いてお姉さんは安心したよ」
いつもの来ヶ谷さんに戻ってくれたようで良かった。
「ではそろそろ行こうか」
来ヶ谷さんは立ち上がってそう言った。
これから一度自分の部屋に戻って着替えて、それから来ヶ谷さんの部屋に向かうことになっている。
僕は直接行っても良いんだけど、来ヶ谷さんがどうしてもと言うから
「じゃあまた後で」
ということで、部屋に帰ってきた。
とりあえず着替えたらすぐに来ヶ谷さんの部屋に向かおう。
でもあの時の来ヶ谷さんは可愛かったな。
来ヶ谷さんの部屋に行ったらちゃんと僕から話し掛けよう。
「インカムも外そうかな」
せっかくみんな協力してくれているけど、やっぱり僕の言葉で話さないと来ヶ谷さんに失礼だしね。
一通り準備を終えて、僕は来ヶ谷さんの部屋に向かった。
コンコン。
「入ってくれ」
部屋の扉をノックすると、入室の許可が出たので僕は部屋に入った。
部屋に入って一番に目に入ったのは来ヶ谷さんの私服姿だった。
よく考えれば、彼女の私服姿を見るのは初めてじゃないだろうか?
真っ白なスカートは清楚な感じを出していて、真っ黒なトップスは大胆に左肩を露出していた。
清楚な感じとセクシーな感じがバランスよく同居していて、とても彼女に似合っている。
「…」
思わず見惚れていると来ヶ谷さんが不安そうな顔で聞いてきた。
「似合っていないか?」
しまった、またやってしまった。
「とても似合ってるよ!」
「本当か?」
「本当だよ!」
「そうか、なら良かった」
可愛すぎる…
「さあ適当にくつろいでいてくれ、今お茶を入れくる」
「ありがとう」
一人になってしまった。
来ヶ谷さんの部屋は整理整頓が行き届いていた。
他の女の子と比べれば少し殺風景な気がするけど、十分女の子らしい部屋だった。
それにすごく良い匂いがする。
誤解されると困るから言っておくけど、決して僕が変態な訳じゃない。
最初はあんまり意識してなかったけど、意識し始めると止まらない。
部屋中から来ヶ谷さんの匂いがする。
まずい、変な気分になってきた。
「お待たせ」
「ひぁいっ!」
危ない危ない。
もう少しで僕はこの右手を来ヶ谷さんのタンスに突っ込んでしまうところだった。
そんなことになったら来ヶ谷さんに何をされるか分かったもんじゃない。
「どうした?理樹君」
「な、なんでもないよ」
今ので思い出したけど、恭介はどうなってしまったんだろう?
「ねえ来ヶ谷さん」
「なんだ?」
「今日恭介がここに来なかった?」
それを聞くと来ヶ谷さんの目は急に冷め切ってしまった。
「ああ、あいつか」
「今どうしてるか知らない?」
「恭介氏ならグラウンドで遊んでるんじゃないか?」
「へえー」
今日の夕方、グラウンドの地面に恭介が突き刺さっているのを発見することになることを、僕はまだ知らない。
最近投稿ペースが落ちて来てしまってすみません{(-_-)}