僕らは死んでしまうことを知っている   作:β.A

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名高 俊

「何のジョーダンだよ、おい。嘘だろ?」

 

俺の寿命も残り半年となったある日突然、何の前触れもなく、ミシロは死んだ。

それを知ったのは教室についてから。よく話すやつらがちょっとしたニュースのように笑い半分でそう伝えてきた。

 

「名高、ずっとあのボッチに絡んでやってたろ?」

 

そう言って回りのやつらはいつものように下らない話をし始めた。

 

「ミシロ……が、死んだ?」

「どうしたよ、名高。んなマジな顔になってさぁ。」

「んでお前ら平気な顔してんだよ……!死んだんだぞ!」

「な、なに怒ってんだよ名高ー。大体まだ半年しか経ってねーしそれに話したこともねー他人だろ?」

「ふざけるな!クラスメイトだろ!」

 

怒鳴り声がクラスに響いて教室が水を打ったように静まり返る。ミシロの席にはもう早々と花瓶が置いてあってそこに生けてある雑草が目に入ってまた怒りが込み上げてくる。

 

なんでだミシロ。なんでお前、俺に寿命を伝えてくれなかった。俺に憐れまれるとでも思ったのか?

 

「わり、今日は帰るわ。センセーにも言っといてくれ。」

 

気づけば無意識の内にそんなことを口走り教室を出てしまっていた。

 

「……ここか。」

 

ミシロの家のチャイムを鳴らす。暫くしてから目を真っ赤に晴らした夫婦が出てきた。

 

「どなた?」

「俺はミシロの、」

「悠真の、お友だちね。今はなにも出せないけど……」

「ミシロの部屋に行かせてもらってもいいですか。」

「え、ぇ。」

 

一戸建ての二階の端の部屋。扉には特にネームプレートもないその部屋に入ると大きい本棚が目に飛び込んでくる、そんなミシロらしい部屋だった。

 

「……くそ。」

 

俺は思ってた以上に信頼されてなかったみたいだ。

部屋にはベッド、筆箱と制カバンと制服、そして一冊の大学ノートと大量の小説があるだけで本当に昨日までミシロがここにいたのか不思議なほど他はなにもない。全てミシロが処分したらしかった。

 

「なぁ、ミシロ……。俺死ぬのこぇーよ……。」

 

死をここまで重く考えていなかったものだから身近な人が死んだのに実感が湧かない。それに対してただ怖くなった。

ミシロは俺になにも言わずに死んだ。恐くなかったのか、忘れてほしくないなんて思っていなかったのだろうか。

 

「俺は、お前をあと半年しか覚えていられないんだな…。」

 

そう呟いてふと目についた本棚の小説の一番近いものを一冊手に取ると表紙に一枚の付箋がはってあることに気づく。

そこには一言、「これはお前に向いてない。」

なら俺に向いている本があるんだろうな、と本棚の本を一冊一冊見ていく。「馬鹿には無理だな。」「これくらいならいけるだろ。」「僕のお気に入りだ。」一冊一冊違うメッセージの付箋を一枚一枚確かめて、最後の一冊を見た時ふと机の上のノートを見てみたくなった。俺宛じゃなくてもいい、そう思いながらもどこか期待して机の上に無造作に置いてある大学ノートを手に取りページをめくる。

 

「何にもかいてねーじゃねーかよ……。」

 

何ページめくっても白紙のノート。ミシロらしいと言えばらしいのかもしれないが少しくらい俺に言葉を残してくれたっていいんじゃないのか。

 

最後の一ページをめくったとき手が止まった。

蛍光ペンで適当に書いたらしい殴り書きの一文。

 

「んなこと言うなら……もっと、ミシロと……。」

 

目の前が霞んでいく。残り半年の俺にとってこの言葉は存外嬉しいものだった。

 

 

「悪い、先に行く。」

 

 

 

 

 

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