「更新停止中」……。
何でそんなものから先に出来ているのかと、頭を抱えています、雪宮です。
長らく音沙汰も無しで本当に申し訳ありませんでした。
もう忘れられているかもしれませんが。
取りあえず、かけるものから書いていこうと思います。
こんな不精者ですが、それでも良いと仰る心の広い方、これからも宜しくお願いします。
俺こと越前の縮緬問屋のミツエモンと、コンラッドこと、カクさんの二人旅だったはずの船旅に、密航したヴォルフラムがついてきた。
「いや、着いてくるのは千歩譲って構わないけどさ……噂になっているあの内容って何なの? 明らかに勘違いされてるよね!? どうすんの、これから!!」
混乱極まって叫んだ俺を宥めるように、コンラッドが声をかける。
「ユーリ、ヴォルフだって、悪気が有ったわけでは無いんですから」
「そりゃそうだけどさぁ」
確かに口ではああ言ってはいるが、ヴォルフなりに心配して来てくれたのだというのは分かる。
しかし、来ても彼は船酔いによってほとんど部屋から出てこないのだから、いてもいなくてもさして変わらなかったのでは無いかというのが正直な処だ。
(そう言う意味ならあいつ……何しに来たんだって話だけど……)
そう思いながらデッキへ出るために通路を歩いていると、通路に面した客室の扉の一つがキィと開いた。
俺達のとった部屋にもほど近いその一室は、特別室に宿泊する俺達と同じ、最高級に近い船室の筈。かなり身分の高いであろう住人は、品の良さそうな中年男性と、幼い女の子だった。
そこで目にした異文化の違いに、俺は飛び上がりそうになったが。
「申し訳ございません。主人はカヴァルケードの挨拶には慣れていなくて」
俺を隠したコンラッドの背中にて、俺は先ほど見た光景を何度も反芻してしまっていた。
お洒落な帽子を取った途端、ピカリと顔を出したのは、輝くばかりのスキンヘッド。俺は内心、彼を「ぴっかりさん」と命名してしまっていた。
「……って言うか、あれ挨拶なのかよ!? じゃああれか? その国では男も女も皆スキンヘッド!? あっちでピッカリ、こっちでピッカリ!?」
混乱の余り真面目にその情景を想像してしまった俺は、思わず気分が悪くなり、口元を抑える。
異国の文化をどうこう言いたくはないが、出来れば俺はそういう国に生まれるのは遠慮したい。
そんな国生まれのピッカリ君は妻と娘であるベアトリスとの三人の旅らしい。
彼の話の中では俺とヴォルフラムは新婚さんらしく、密航紛いの事をしてまで俺の元へ馳せ参じてきたヴォルフラムの事を情熱的な人と彼は評していた。
「コンラッド……俺達この船に乗っている人達からそんな風に思われてたの?」
思わず保護者役の名付け親に問いかけるも、彼は微笑むばかりで何も答えてくれはしなかった。
それが、雄弁に答を語っているように感じられた。
「ところでユー……じゃなかった、ミツエモン坊ちゃん。「カヴァルケード」と聞いて、何か思い当たる事はありませんか?」
いきなり話題を変えてきたコンラッド……もといカクさんに、俺は首を傾げ……次いで思い出した。
「あっ! もしかして、自作自演の海賊行為やっているあの!?」
俺のあんまりな思い出し方に、苦笑を漏らしながらも、コンラッドは頷いてくる。
「はい。
思い出すのはそもそもの俺が再びこの世界に、眞魔国に喚ばれた原因。
人間の治める国、カヴァルケードが金にものを言わせて、法術士を集め、魔族との戦争に備えているのだという。
それを抑える為の方法として、俺達は今、ヴァン・ダー・ヴィーア島に眠っているという魔剣モルギフを取りに行こうとしているのだ。
「しかも彼が行ったあの挨拶は、カヴァルケードの上流階級でしか行われていない物です。つまり、我々と同じ最高級の船室に乗るだけあって、彼はかなり地位の高い相手なのかもしれません」
遠回しに警戒しろと言われている俺だが、第一印象はどう見ても子どもと旅行を楽しむ気の良いお父さんだ。
いきなり親の敵のように警戒は出来ない。
まぁ、そこら辺は付き合いの長いコンラッドも分かっていることなのだから、彼に任せれば問題はないだろう。俺達は取りあえず、当初の予定通り、海の眺めを満喫するために、船上へと向かっていた。
中学三年生としての初めての登校日だったあの日、俺は帰ってきた所を珍しく母さんに呼び止められた。
あの時の母さんの顔は、とても真剣そうで、こちらも何故か恐ろしく感じたのを覚えている。
リボーンには先に行っていて欲しいと、母さんが伝えて、ビアンキも空気を読んでいてくれていたのだろう。ランボに、イーピン、フウタにビアンキと、居候が多くいるこの家で、母さんと二人だけになったのは、本当に久しぶりなことだった。
「つっ君……あなたに、渡さなければいけない物があるの」
そうして母さんは、小さなケースに入れられた一つの指輪を差し出した。
形は原形に戻る前の……不完全であったボンゴレリングに似ているように思う。
真ん中に嵌められている石は大空のリングのように円形に盛り上がっていて、その色は茶色、いや、日の当たり方によって、琥珀や薄金色にも見えるようだった。
「これって……?」
取りあえず、はっきりと分かるのは、これがかなりの値打ちものではないかということ。
今までの経験から思わず、マフィア関係のリングではないかと思いはしたが、それらしき紋章は見あたらない。
しかし単なる指輪とは言えないような何かがあると、超直感は訴えた。
「これはね……母さんが大切な人から頂いた物なの。そして、母さんがたった一つだけ、生まれ育った場所からここへ、もって来られた物でもあるわ」
遠い昔を懐かしむように目を細めた母さん。その言葉に偽りの色は見えない。
しかし、それを聞く俺の方は、突然打ち明けられる話の意図が見えなかった。
この指輪は、母さんの大切な物。
しかしそれを俺に見せて、母さんはどうしたいのだろうか。真剣みのある表情や、僅かに硬さのある声音から、これが単なるでもこの様子は単なる思い出話とはどうしても感じられなかった。思えば俺の知る限り、母さんから俺が生まれる以前の、……いや、正確には、父さんと出会う以前の昔話は聞いたことはない。
この指輪のことも、聞いたのは今が初めてだ。
それらが全て、偶然と言うにはリボーンや、ビアンキ達居候の者達を遠ざけた……人払いとも言えるべき所行に、敢えて今まで話さなかったのだろうと考えられてしまう。
何より己だけに、まるで秘め事のように話す母の姿に、自然と俺も周囲に視線を向けてしまう。
「……つっ君」
僅かに生まれた静寂。それを破った母の声は、僅かに涙で滲んだ物だった。
「つっ君……ごめんなさい……っ! でも……っ、でもね? あなたは……」
母さん自身も、どう言えば良いのか分からないと言うように、何度も何事かを口の中で呟いていた。
しかし、途切れ途切れで紡がれたそれは、この時の俺にはよく分からないものだった。
「あなたは……自由に生きていいのよ?」
超直感が伝えた、頭の中に浮かんだ言葉に、かける言葉が分からなかった。
ボンゴレの事情を知らない母さんは勿論、「超直感」の事も知らない。
密接に関わることであるが故に、マフィア関係を説明せずに説明出来るものではないだろう。
しかし、それを説明しなければ、それが伝えたその言葉を尋ねることなど、そもそも出来るはずもなく。
結局押し黙った俺の心情に気づく様子はなく、彼女はまるで取り繕うように笑った。
「ごめんなさいね。綱吉。でも変なこと言ったと思っているかも知れないけれど、その指輪の話は本当のことなのよ」
そしてそのまま、パタパタと部屋から出て行ってしまう……その指輪を、俺の手の中に残したまま。
「ちょっ……!? 母さんっ?!」
思わず声を上げ、後を追い、台所に立つ母さんの元へ急ぐと、そこには当然のことながら居候達が揃っていて。
あっという間に囲まれた俺は、結局それ以降、母さんにこの指輪の事や、渡された理由を尋ねる機会を得ることは出来なかった。
いや、今思えば敢えて彼の人は尋ねられないように立ち回ったのだ。
相談したリボーンに対しても、苦笑交じりで「母親とはいえ、女の秘密は無闇に掘り起こそうとするもんじゃないぞ?ダメツナ」と、窘められる事になる。
超直感が訴える危険が無いことも相まって、あの涙の滲んだ表情が気にはなるものの、時期を待った方が良いのかも知れないと思い直した俺も、それ以来、その話を掘り返す事は無かったが。
「……嘘だろ?」
薄々と、感じていたのだ。
母さんにも
そしてその予感は、今この時をもって確信に変わってしまった。
「この形、同じだ」
言葉がまるで通じない町中を、人目を避けながら通り抜ける中、意味も分からないまま記号のようなそれを流しみていた俺は、その中の一つの形に既視感を覚え……そして、その指輪をなぞった。
正確には、その指輪の……指を通す金環の裏に、彫られている模様のような何かを。
『母さんがたった一つだけ、生まれ育った場所からここへ、もって来られた物でもあるわ』
頭の中で繰り返されたその言葉に、俺の超直感は肯定していた。
「嘘だろ……!」
次いで頭を抱えた俺は知らない。
その模様が表す言葉の意味を。……その内容を。
『親愛なる友 ナナへ ツェリ』
その指輪を持つという事実が、何をもたらすのかを。
この時の俺は知る由も無かった。