まだまだヤンデレの片鱗は出てきませんが、恐らく次回辺りから物語が進んでいきます。もうしばらく、お付き合いください
ことりから、海未の告白の手伝いをしてほしいと言われた、その翌日の放課後。
ついに海未のの告白を手伝うことになった。
「遅いよ二人ともー!」
「す、すいません」
「俺がちょっと頼まれ事をされてて、悪かった」
「もう!今日はことりちゃんの衣装作りの手伝いで行くんだよ?気合いいれてかなくちゃ!」
「でも二人とも待ち合わせ時間までに来たんだし良いんじゃないかな?」
プンプンと遅れてきた俺と海未を怒る穂乃果とそれを宥めることり、そして、モジモジと顔を赤くしながら伏せている海未。いつもと怒る役と怒られる役が逆転しているが、自分のことでいっぱいいっぱいな海未は特にツッコむことはなかった。
ことりが提案してきた今回の告白の作戦は、実に単純なことで、穂乃果と海未を二人きりにして、放課後デートを行うというものだった。
今回ことりは、皆には衣装につける小物を俺達二年生で探すという名目で練習から抜けてきた。といっても、その衣装のほうは俺やヒフミトリオ、にこちゃんが手伝ったから8割くらい完成しているらしい。なので小物探しというのは、ただの口実で、穂乃果と海未を二人きりにするための嘘という訳だ。
「クンクン……何だか良い香りがしない?」
「え!?そそそ、そうでしょうか?わ、私は何も……」
流石穂乃果。やはり気付いたか。実は俺達が遅れたのは、俺が先生に頼まれて授業に使う資料を片付けてたというだけでなく、海未のメイクもしていたからだ。
今回はあからさまな感じにせず、ほんの少しリップやチークなどで手を加えて、ごく自然に、しかし表情次第では大人っぽく見えるようにした。穂乃果の感じた香りは、軽く柑橘系のコロンを振ったからだ。やっぱり、突然メイクを頼まれた時のために化粧道具一式を常備してて正解だったな。
「そ、それはともかく!早速行きましょう!早く行かないとお店が閉まりますよ!」
「おー!」
「可愛いのあるといいね♪」
普段しないメイクやこれから穂乃果とデートするということに未だにテンパってる海未が、強引に出発を宣言する。大丈夫かよ海未のやつ……。
……俺は、幾分か不安を感じながら3人に付いていくことにした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★★
【side:海未】
私は今、緊張の極致にありました。
昨日、突然ことりに言い渡された今回の計画。穂乃果とで、デートをして、そ、そそそして、穂乃果にここここ、告……ハ……ク……を!するという計画を!
そして今、私は秋葉原でことりと真琴くんと別れ、穂乃果と二人きり、そう、二・人・き・り!になってしまったのです!
余りの緊張に、もう何軒かアクセサリーショップや洋服屋さん、スクールアイドルショップにも立ち寄ってるはずなんですが、まったく記憶がありません!
そんな私を気遣って、穂乃果がハンバーガーショップに立ち寄って、席に着いていました。とても目の前にあるハンバーガーに手を出せる心境ではありませんが……。
「ねぇ、海未ちゃん」
私はもうパニックを起こしていました。果たしてこ、コクハクとは一体どのようにするのが作法なのでしょうか?そもそもこの状況はデートなのでしょうか?本当にしなければならないことなのでしょうか?二人は隠れて付いてきいると言ってましたが本当でしょうか?
「海未ちゃん?」
もう思考がさっきから二転三転してまったくまとまりません。
ああ、もうどうすれば!?
「海未ちゃん!」
「うぁひゃい!?」
混乱していた私は、対面に座っていた穂乃果の顔が間近にあるのを見て、変な声をあげてしまいました。
「もう、何度も声掛けたのに返事してくれないから心配したよ」
「す、すいません……」
どうやら声を掛けられていたのにまったく気付けていなかったみたいです。余りにも余裕がなく、穂乃果に心配をかけたことに自己嫌悪の溜め息が出てしまいます。
「海未ちゃん、何か悩んでる?ずっと考え事してるみたいだけど」
「い、いえ、大したことじゃないんですよ?だから心配しないで……キャッ!?」
動揺していた私は、コーラが入っていたカップを倒してしまいました。じわーっとコーラがテーブル全体に広がっていきます。
「わわわ!海未ちゃん大丈夫!?」
「だ、大、丈、夫、です!」
慌ててティッシュでコーラを拭き取りながら、何時もならしないような失態を犯してしまったこと、そして周りの視線が気になってしまって、羞恥で顔から湯気が出そうでした。もはやパンク寸前の私。そんな私を見て、
「……ねぇ海未ちゃん、私ね、海未の味方だよ」
「え?」
一緒にティッシュでコーラを拭き取っていた穂乃果が唐突にそう言ってきました。いつも浮かべている、太陽を思わせる笑顔の穂乃果。でもそれは、春の木漏れ日のように優しく包むような、そんな笑顔で穂乃果は私を見つめていました。
「海未ちゃん、最近なんか考え事してるよね。でも何に悩んでるとか、私、馬鹿だから分かんないし、力になれないかもしれない。でもね、海未ちゃんが困ってるなら、私も一緒に考えたい!海未ちゃんがやりたい事があるなら私も手伝うよ!」
「穂乃果……」
「だから、何か悩んでるなら、言ってほしいよ。最近の海未ちゃん、ちょっと変だもん」
ああ、なんて……なんて真っ直ぐな瞳なんでしょう。その瞳の光が、彼女が言っていることに、一切の嘘がないと確信させてくれます。
ずっと、真琴くんに私自身が気付いていなかった私自身の想いを言い当てられた日の夜から、考えていました。
私は、穂乃果の何処が好きになったのか。
そしてその答えは、私は、穂乃果の全てが好きなんだと言うことでした。
私を信頼して、真っ直ぐに見つめるこの目が好きです。
私の手を引いて、引っ張ってくれるこの手が好きです。
私に勇気と活力を分け与えてくれるこの声が好きです。
私のこの想いを告げたら、穂乃果はどのような反応を返してくれるのでしょうか……そう思うと、怖くもあり、同時に……もし受け入れてくれるのなら……と考えてしまいます。
「穂乃果」
「?」
「私は……」
「穂乃果のことが、好きです」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★★
『穂乃果のことが、好きです』
テーブルに置かれた携帯から、海未の、意を決したような声が聞こえてきた。俺は意外に思いながらも、身を乗り出して、携帯の声に耳を澄ませた。
俺とことりは、二人と別れたふりをして、後をつけていた。
終始、変な動きをしていた海未は、普段なら写真でも撮って後でからかうところだが、流石に自重した。
因みに、何故ことりの携帯から海未の声が聞こえるのかというと、なんてことはない。通話状態の俺の携帯を海未の鞄に忍ばせて、盗聴機代わりにしてるだけだ。
『へ?どうしたのいきなり?』
『あう……いえ、その、私は最近、ちょっと自分のことで一杯一杯だったんです。なのに穂乃果はいつも、そんな私の事を考えてくれて、支えてくれて、そのおかげで今の私があるんだなって思ったんです。……まだ、私自身も、その悩みに答えを出せないでいるんです。それでもその……よ、良ければ今後も……ずっと側で一緒に……居て……くれ……ますか?』
……あの海未がこんな台詞をスラスラと言うなんて……。いや、これが本当の海未の気持ちなんだな。それほど、穂乃果に対する想いは強いってことか。
いつも、こう言ったことに関しては恥ずかしがる海未の、その本音に、俺は少なからず衝撃のようなものを感じていた。そして、その想いを告げられた穂乃果は……
。
『良かった~!』
『え?』
まさかの安堵の溜め息だった。
『最近海未ちゃんに避けられてる気がして、もしかしたら何か怒らせるようなことして嫌われちゃったのかと思ってたんだよ?』
『そ、そうだったんですか?』
『そうだよー!まこくんにも相談したんだけど、全然原因が分からなくって、でも違うんだよね?』
『は、はい。私は、穂乃果とずっと、ずっと一緒にいたいんです!だから嫌いになんて……!』
『エヘヘヘ。ありがとう、海未ちゃん。うん、ずーっと一緒だよ!』
『ほ、本当ですか!?』
『うん!だって海未ちゃんは、私の親友だもん!』
『…………』
『 ? 海未ちゃん?』
『……いえ、何でもないです……』
……携帯から、海未の疲れたような溜め息が僅かに聞こえてきた。まあ、これはしょうがない。相手はあの穂乃果だからな。何より、普通は友情的な好きだと思うだろうし。
『ねぇねぇ、海未ちゃん。それでその悩み事ってなんなの?何かあったの?』
『えぇ!?い、いえ、えっと……』
『稔先生が恋の悩みじゃないかって言ってたよ?』
『な、なな!?そ、それはその!?』
『えー!教えてよー!』
携帯越しに、二人がいつも通り仲良くじゃれている声が聞こえてくる。微笑ましい二人のやり取りに思わず頬が緩むのを感じた。
「むー、残念。せっかく海未ちゃんが勇気を振り絞ったのにね」
そう言いながら、こくこくとレモンティーを飲むことり。穂乃果の反応に困ったようにその形のよい眉を八の字にして苦笑いを浮かべている。……ただ、俺にはどこかホッとしたような表情に見える気がする。
さっき、海未の告白が携帯から聞こえてきた時、ことりが小さく息を飲むのを見た。
昨日から、ずっと違和感を感じていた。よく分からないが、ことりはどこか余裕がないように思えた。何か急いでいる。そう感じてしまう。
「……ことり、聞いていいか?」
「 ? なぁに?」
「何で海未の手伝いをしようって思ったんだ?」
俺は、ずっと思っていた疑問をぶつける。すると、ことりはんー、と小首を傾げたあと、
「そんなに変なことかな?友達の応援をするのって」
「いや、変じゃねぇよ。実際、俺も片棒担いでるわけだしな」
「でしょ?普通のことだよ。……それにね、海未ちゃんが穂乃果のことを好きになる気持ち、分かるから」
「ことり……」
「穂乃果ちゃんはね、凄いんだよ。いつも私達の手を取って、『一緒に行こう!』って言ってくれるの。そしたら、手を引っ張って今まで見たことない景色を見せてくれるの。穂乃果ちゃんに『絶対にできる』って言われたら、どんなことも出来る気がしてくるし、穂乃果ちゃんの目を見るだけで、心がポカポカしてきて、魔法をかけられたみたいに力が湧いてくるんだよ。それにね、穂乃果ちゃんは…………」
……そんな風に、穂乃果の凄いところをあげていくことりの表情は何処までも楽しそうで、誇らしそうで、まるで想いが今にも溢れ出しそうな表情だった。
そう、今まさに、穂乃果の前に座る彼女が穂乃果の事を語った時のような、そんな表情を……。
同時に確信にも似たものを感じた。ずっと感じていた違和感の正体。
ことりの、 穂乃果に対する想いを。
ことりの口から、湧水のようどんどん溢れる想いを聞いていて、俺は、何を思ったのか、言葉を漏らしてしまった。
「辛くないか?」
言った瞬間、自己嫌悪で舌を噛み千切りたくなる衝動に駆られた。実際、舌の端を思いっきり噛んで、口の中に鉄臭い味が広がる。
ことりはキョトンとした表情をしている。俺は
「ずっとレモンティーばっか飲んでるじゃねぇか。腹、減ってなかったのかなって思ってよ。悪ぃな、こんな一杯セットで頼んで」
「え?ううん、大丈夫だよ、気にしないで。でも本当に多いね。後で持って帰れるかな?」
「どうだろうな。流石に分かんないな」
……我ながら、なんて苦しい言い訳だ……。
俺は、どこまで馬鹿なんだ!もし、俺の推測が当たっているなら、俺の今の発言はとてつもなく無責任なものだ。ことりがどんな思いで今いるのか、考えれば分かりそうなものなのに。俺は、最低だ。
『よーし!じゃあ次のお店に行こう!』
『ええ、行きましょう!』
「……俺達も行こうぜ」
「うん、行こっか」
穂乃果達は移動するようだ。俺はことりに声をかけて、二人の尾行を続けることにした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★★
結局のところ、海未はその後、告白をし直すことはなかった。
まあ、本人は吹っ切れたのかなんなのか、かなり上機嫌な様子だ。ことりの方は、あの後、何か言うでもなく、そのまま解散となった。
「なあ、智佳(ちか)、麗火(らいか)」
「んー?」
「なんだ?」
「俺がお前らのこと好きっていったらどう思う?」
「きも」
「通報しますた」
「お前らなぁ……」
翌日の昼休み。俺は、悪友の智佳と麗火なんとなくそんな質問をしてみた。予想通りの返答だった。
「んだよいきなり、キモいぞまこ。それともそう言うカミングアウトかよ」
「んな訳ねぇだろ、そうだとしてもお前みたいな中途半端デブにはしねぇよ」
「誰がデブじゃ!ぽっちゃりだぽっちゃり!愛され豚まん系だ!訂正しろ!」
「知るか!てか自分で愛され系言うな腹立つ!」
スマホでリズムゲーをしながら俺と言い争いをする辺り、麗火は本当に器用だ。まったく尊敬出来ないけれど。
「……また変なことに首突っ込んでんのか?」
「そんなんじゃねぇよ。別に変なことなんて」
「でも首は突っ込んでる」
机の上で胡座をかきながらジャリジャリ君をかじりながら、智佳は断言した。
……やっぱり保育園からの腐れ縁というのは、馬鹿に出来ないらしい。
麗火も、智佳と同じように俺が何かに首を突っ込んでいることを察してるのか、スマホから少し顔をあげて俺が事情を話すのを待っている。
「あー、実はな……」
俺はあの3人のことをABCと仮称して、所々ぼかして二人に事情を説明した。
「んー、つまりお前は、そのCが身を引くのが納得いかないってことか?」
「……まあ、そう言うことだな」
「何でだ?だってお前、そのCがわざわざデートをセッティングしたんだろ?つーことは、もう諦めてるってことだろ?」
「そもそも、お前は部外者」
「そうそう。第一お前、只でさえ恋愛のれの字もねぇような奴が首突っ込んでいい案件なのかよ?」
「中学時代に、その恋愛経験のない俺が『恋愛相談すれば告白を100%成功させるキューピッド』っていう噂を学校中に広めたのは何処のどいつだったよ?」
「そう言いながらマジで成功させる変態はどいつだったかな?」
「私だ」
「いいや私だ」
「「お前じゃねぇだろ」」
と、まあどうでもいいコントはともかく、確かに二人の言う通り、俺は今回の件に関しては部外者という他ない。正直、俺が何か言ってどうなるというもんじゃないというのは分かる。でも……。
「……何とか、してやれないのか?」
「あ?」
「そりゃ部外者なのは分かってるし、無駄に引っ掻きまわすことになるかもしれないけどよ……このままだと、3人の関係がどんどん変わってって、何か、取り返しのつかないことになる気がするんだ。だから、何か3人が納得できる答えにたどり着けるように、俺にも出来ることがあるんじゃないかって……」
今は、まったく何も思い付かない。でも何かしなければ、あの3人はバラバラになってしまう、3人が笑って過ごすことが出来なくなるという不安が、俺の中で渦巻いていた。ことりのあの態度を見るたびに、その不安が大きくなるのを昨日から感じていた。
「だとしても、今は静観するっきゃないでしょ」
「……麗火、お前俺の話を……」
「聞いてたよ。けど、ウダウダ考えても時間の無駄だろ。んなことする暇があるなら、μ'sのライブの準備でもしたらどうだ?また近いうちにやるんだろ?」
「それは……(ゲシッ!)いってぇ!てめ、智佳!」
麗火の最もな意見にまだ納得出来ない俺の後頭部に突然智佳が蹴りを入れてきた。俺は思わず文句を言おうと立ち上がるが、
「下手な考え休むに似たり」
「は?」
「だな。智佳の言う通り、考えても仕方ないもんは仕方ねぇんだよ。信じりゃ良いのさ、その3人を。もしかしたら、杞憂かもしれねぇぞ?だってその3人は親友同士なんだろ?今から焦ってもしょうがねえさ」
「…………」
「まっ、何かあったらお前はすっ飛んでいくだろ?目の前に困ったやつがいたら全力で助けにいく。それがお前だろ、まこ」
「……ああ」
麗火の言う通り、もしあいつらに何かあれば、俺は全力であいつらを助けにいく。それが、俺がマネージャーとしてあいつらの側にいる理由であり、俺自身が決めたことだからだ。
……そうだ。今はその時じゃない。もし、本当に大変な時は、あいつら自身が助けを呼ぶもんな。それに俺だけじゃない。あいつら3人の周りには、絵里さんに希さん、にこちゃんや真姫、花陽ちゃんに凛も付いているんだ。
信じるんだ、穂乃果達を。穂乃果達の絆を。
「しかし、お前ずいぶんその3人の肩を持つな?……はっはーん、さてはお前?その3人の中の誰かが……」
「好きなのか?」
「当たり前だろ?」
俺はμ'sのマネージャーだ。あいつらのことが好きなのは当然のことだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆★★★★
【side:希】
「……何これ……?」
その日、何となくうちは占いをすることにした。
占いの対象は海未ちゃん。一昨日くらいに先生が冗談で海未ちゃんが恋煩いをしているなんて言っててそれが気になって軽い気持ちで何時もの要領で占いを始めた。
……そしたら、
「また、このカード……」
何度も何度も、繰り返しタロットを引き直しても、現れる同じカード。しかも不気味なことに、そのカードは海未ちゃんだけでなく、試しに他のμ'sのメンバーを占った時に穂乃果ちゃんとことりちゃんの時に必ずと言って良いほど現れた。
……そのカードに描かれていたのは、「塔」のアルカナ。
「破滅」を意味する、最悪のカードだった。
ヤンデレ度数
海未→0%(デレデレ)
ことり→5%(デレデレ)
現在の関係性
穂乃果×海未(親友)
穂乃果×ことり(親友)