FAIRY TAIL 〜Dの意志を継ぐ者〜   作:fortissimo 01

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ナツvsエルザ

鉄の森の事件から数日が経過したある日。ギルドの前では大きな人だかりが出来ていた。その中心にはナツとエルザの姿があった。今日は約束の決闘の日なのだ。

 

「ちょ、ちょっと! 本気なの!? 二人とも!」

 

「あら、ルーシィ」

 

すると、人ごみを掻き分けてルーシィが出て来た。

 

「本気も本気。本気でやらねば漢ではない!」

 

「エルザは女の子よ、エルフマン」

 

エルフマンの言葉にすかさずツッコミを入れるミラ。そんな中ルーシィは心配そうに二人を見ていた。

 

「だって、最強チームの二人が激突したら……」

 

「ん? 最強チーム? なんだそりゃ」

 

「あんたとルフィとナツとエルザじゃないっ! トップ4でしょ」

 

「はぁ? 誰がそんなバカみたいな事言ったんだよ」

 

やれやれとグレイは手を振る。その近くにミラがニコニコと笑顔でグレイの方を見ていた。

 

「…………ぐすっ」

 

「あ……ミラちゃんだったんだ」

 

ミラを泣かした事に罪悪感を感じ、即座に謝るグレイ。

 

「あ、泣かした」

 

「泣かせたー」

 

「泣かせたー」

 

「あんた達いつのまに!?」

 

ルーシィにつられ、いつからいたのかルフィとハッピーもグレイを指差す。唐突に現れた二人に驚きを隠せないルーシィ。

 

「……確かにルフィとナツとグレイの漢気は認めるが、最強って言われると黙っておけねぇな。妖精の尻尾にはまだまだ強者が大勢いるんだ…………オレとか」

 

「最強の女はエルザで間違いないと思うけどね」

 

「最強の男になるとミストガンやラクサス、そしてエースと()()()()()だな」

 

上からエルフマン、レビィ、ジェットの順に最強候補の名を上げていく。

 

「エースって……あの『火拳のエース』!?」

 

「そうよ、今はクエストでしばらく留守にしてるけどね」

 

「そうなんだ〜! すごい人なんだなぁ……」

 

何故エースに反応したのかと言うとルーシィの憧れの一人だからだ。いつか会ってみたいと心に決めるのだった。

 

「エースは強ぇぞ〜! 昔なんてエースに一回も勝ったことなかったしな」

 

「え!? ルフィが一回も勝ててないの!? どんな化け物よその人……」

 

ルフィでさえ一回も勝ったことないと知り、驚愕するルーシィ。ルーシィは頭の中で巨大な大男を想像する。ちょっと怖い人なのかもと勝手に決めるのだった。

 

「まぁ今なら俺が勝つけどな、にっししし!」

 

「て言って何ヶ月か前にボコボコにされたじゃないか」

 

「あれ? そうだっけ?」

 

「おい、ルフィ。もうすぐ始まるぞー!」

 

エルフマンがそう言うと、ルフィはすぐさま決闘が見やすい位置に移動する。

 

「なんにせよ、面白い戦いにはなりそうだな」

 

「そうか? 俺はエルザの圧勝で決まると思うが」

 

「どっちも頑張れよ〜!」

 

皆からの歓声を浴びながらエルザとナツは睨み合う。

 

「こうしてお前と魔法をぶつけ合うのは何年ぶりかな……」

 

「あの頃はガキだったっ! 今は違うぞっ! 今日こそお前に勝つ!!」

 

「私も本気で行かせてもらうぞ、久しぶりに自分の力を試したい」

 

そう言い、エルザは魔法を使う。光が収まると赤と黒を強調した鎧を換装する。手にはいつもの剣が握ってある。

 

「全てをぶつけて来い」

 

「え、『炎帝の鎧』!? 耐火能力の鎧だ!」

 

「これじゃナツの炎が半減されちまう!」

 

「エルザの奴、ガチだぞ!?」

 

エルザの鎧を見て、皆は驚愕する。そんな中、ナツはにやりと笑う。

 

「炎帝の鎧かぁ……そうこなくちゃ! これで心置きなく全力が出せるぞっ!」

 

ナツは両手に火を纏い、構える。エルザも同じく構えるとマスターが二人に近づく。

 

「では、始めぇ!」

 

マスターの号令で二人はぶつかり合う。勝負の状況は五分五分。ナツの攻撃をエルザは紙一重でかわしていく。しかしナツもエルザの攻撃をかわし、すぐさま攻撃に移る。

 

「すごい!」

 

「な? いい勝負だろ?」

 

「どこが」

 

勝負が盛り上がり、ヒートアップして来たその時、パァン! と誰かが強く手を叩いた音が響きわたる。皆、その音を発した人物に注目する。

 

「全員動くな。私は評議員の使者である」

 

そうカエルの姿をした評議員の使者が中心に移動しながら言う。

 

「ひょ、評議員!?」

 

「使者だって!?」

 

「なんでこんなところに!?」

 

「あはは! カエルが喋ってる、おもしれぇ!」

 

「そうよね!? あれカエルよね!?」

 

ルフィはカエルのような評議員を見て爆笑し、ルーシィは目を何度も擦り評議員を見る。

 

「ごほんっ! ……鉄の森のテロ事件において、器物損害罪、他11件の罪の容疑でーーエルザ・スカーレットを逮捕する」

 

「え?」

 

「「な、なんだとぉぉぉ!!?」」

 

突然の逮捕宣言にナツとルフィの怒声が響き渡った。

 

 

 

『…………』

 

エルザが逮捕されて数時間が経過した。先程まで盛り上がっていた空気は既になく、ギルド内には沈んだ空気が漂っていた。二人、いや二匹を除いて。

 

「出せっ! 俺をここから出しやがれ!」

 

「じいちゃん、ミラ! エルザを助けに行く! だからここから出してくれよ!」

 

「だしたら暴れるでしょ?」

 

「暴れねぇよ! つーか元に戻せよ!」

 

ナツとルフィはトカゲに変えられ、瓶の中に閉じ込められるも大声を張り上げる。

 

「……今回ばかりは相手が評議員じゃ手の打ちようがねぇ」

 

「そんなの関係ねぇ! 間違ってるのはあいつらだろ!? エルザはなんも悪りぃ事してねぇじゃねぇか!」

 

「白いモンでも評議員が黒と言えば黒になるんだ。ウチらの言い分なんて聞くもんか」

 

「しっかしなぁ……今まで散々やってきた事が何故今回に限って?」

 

「あぁ……理解に苦しむね」

 

「絶対、何か裏があるんだわ……。証言をしに行きましょ!」

 

「まぁ待て」

 

ルーシィが立ち上がり、ドアに向かおうとするとマスターがそれを止める。

 

「これは不当逮捕よ! 判決が出てからじゃ間に合わないっ!」

 

「今からではどれだけ急いでも判決には間に合わん」

 

「でも……!」

 

「出せー!! ここから出せぇ!」

 

「はやく出せー!!」

 

「ーー本当に出しても良いのか?」

 

マスターはナツとルフィの方を見ながらニヤリと笑う。

 

「当たり前だー! はやく出せぇ!」

 

「ぅ…………」

 

それでも騒ぐナツと急に黙るルフィ。

 

「ルフィ?」

 

「どうした、ルフィ? 急に元気がなくなったな」

 

マスターが言っても返事をしないルフィ。するとマスターがルフィの瓶に魔法をかける。するとそこにはマカオの姿があった。

 

「マ、マカオ!?」

 

「「ええぇぇぇぇ!!?」」

 

「すまねぇ……ナツとルフィには借りがあってよぉ」

 

マカオは頭をかきながらギルドメンバーに言う。

 

「……じゃあ本物のルフィは?」

 

「まさかエルザを追って!?」

 

「シャレになんねぇぞ!? あいつなら評議員すら殴りそうだ!」

 

「全員、黙っておれ。静かに結果を待てば良い」

 

ルフィが暴れることに騒ぐギルドメンバーをマスターは黙らせる。皆はマスターの言う通り静かに待つ事にした。

 

 

 

評議会、裁判所。その中央に立たされるエルザ。エルザの目の前には評議員の者達がいた。そして中央に座っていた評議員の一人が判決を言い渡す。

 

「被告人、エルザ・スカーレットよ。そなたは……」

 

「ゴムゴムの〜……」

 

「ん?」

 

「バズーカ!!」

 

すると突然ドアが破壊される。裁判所にいた者達は呆然としていた。

 

「何事!?」

 

「お、エルザ! いたいた〜!」

 

「る、ルフィ!?」

 

ドアを壊し、入ってきたのはルフィだった。エルザと評議員達はルフィの姿を見て驚く。

 

「麦わら……麦わらのルフィか!」

 

「あ! お前らな、なーにが逮捕だ! 勝手にうちの仲間を連れてくんじゃねぇ! だからエルザは返してもらうぞ!」

 

「や、やめないか……」

 

「エルザからもなんか言ってやれよ! こいつら変な理由でお前の事逮捕しようとーー」

 

「やめんか!!」

 

「ぐへぇ!?」

 

エルザはルフィの頭を思い切り殴り、気絶させる。

 

「殴るぞ!?」

 

「もう殴ってますよ……?」

 

「何か言ったか!?」

 

「い、いえ何も! すいませんでした!!」

 

エルザはギロっとカエルの評議員を睨む。カエルの評議員は怯えた様子でエルザから距離をとる。呆然としていた評議員達はようやく我に帰る。

 

「……ふ、二人を牢屋へ」

 

 

 

「全く、お前にはあきれて言葉もない。これはただの儀式だったんだ」

 

「儀式?」

 

牢屋の中でエルザはルフィに事情を説明する。

 

「形だけの逮捕だ。魔法界全体の秩序を守るため評議会としても取り締まる姿勢を見せなければならない。わかったか?」

 

「いや、さっぱりわからん」

 

「はぁ……つまりだな、有罪にされるが罰は受けない。本来なら今日中に帰れたんだ、お前が暴れなければな」

 

「えぇ!? そうなのか!?」

 

ルフィはガーンと衝撃を受ける。そんな様子を見たエルザはクスっと笑う。

 

「……だが、嬉しかったぞ。ありがとう、ルフィ」

 

「……にしし、おう!」

 

エルザの言葉に笑顔で答えるルフィ。そんな二人が入っている牢屋を遠くから見ている青髪の男、ジークレインは不敵に笑う。

 

「モンキー・D・ルフィ……妖精の尻尾にいたのか。『D』の名を持つ者が……」

 

ジークレインはそう呟くと闇の中に消える。その言葉に一体どんな意味があるのか?

 

 

 


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