FAIRY TAIL 〜Dの意志を継ぐ者〜   作:fortissimo 01

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月の島の謎 封印されし悪魔

「にしても変な月だな〜」

 

「なんで紫なんだろうね?」

 

村長から小屋の窓から不気味に光る月をぼーっと眺めるルフィとハッピー。荷物を整理し終えたルーシィは二人の方に顔を向ける。

 

「ちょっとルフィ、ハッピー。はやく窓閉めてよ、呪われたらどうすんのよ」

 

「んだよ、もうちょっと見ていいじゃねぇか」

 

「そんな簡単に呪われないよ〜」

 

呪いの事を軽くみている二人にルーシィは呆れる。ふとルーシィは何かを思いつくと再び荷物を整理し始める。

 

「……もし肉や魚が食べれなくなる呪いにかかったら知らないわよ〜」

 

「ハッピー、窓全部閉めんぞ!」

 

「あいさー!」

 

ルーシィの言葉に反応し、二人は大急ぎで全ての窓を閉める。そんな二人のよそでグレイは依頼の事を考えていた。

 

「にしても参ったな」

 

「流石に月を破壊しろって言われてもねぇ……どんな魔導士でも不可能だわ」

 

「けど、できねぇじゃ妖精の尻尾の名がすたる」

 

「できねぇもんはできねぇんだよ。第一お前、どうやって月に行くか考えてんのか?」

 

「ハッピーに連れてってもらう」

 

「流石に無理だよ〜」

 

ナツの無茶振りに首を振るハッピー。ルーシィはうーんと腕を組み考える。

 

「月を壊せって言われたけど、もしかして壊さなくても呪いを解く方法がこの島にあるんじゃないかしら?」

 

「だといいがな」

 

「よっし! じゃあ探検だ!」

 

ルフィはいつのまにか手に持っている虫あみを上に掲げる。

 

「もう夜だから明日探検よ」

 

「わかった、じゃあ寝る!」

 

「おー!」

 

「あいさー!」

 

「本当にわかったんでしょうね……?」

 

ルーシィに言われるとすぐ虫あみを置き、秒で眠りに入るルフィとナツとハッピー。

 

「とりあえず考えるのは明日だ」

 

「そうね、私も寝よ……」

 

小屋の電気を消し、グレイとルーシィも眠る事にした。しかし、ルーシィの寝床は上半身裸のグレイといびきをかくルフィの間だった。

 

「って! こいつらの間でどうやって寝ろと!?」

 

がばっと起き上がるルーシィ。するとルフィは突然ルーシィの腕を掴む。ドキッとするルーシィはルフィに小声で話しかける。

 

「ね、ねぇルフィ?」

 

「ん〜肉〜……がぶっ」

 

「きゃあぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、出発よ!」

 

早朝、村の外に出たルーシィは張り切った様子で四人に号令をかける。

 

「ルフィ、お前顔どうした?」

 

「あ? 俺の顔になんかあんのか?」

 

「あ〜……いやなんでもない」

 

ルフィの片方の頬が誰かに平手打ちをされたのか赤く腫れている。ふと前を見ると頬を赤く染めこちら、ルフィを睨むルーシィ。そんな状況をグレイは察すると呆れたようにため息をこぼす。

 

「つか眠い」

 

「眠い〜」

 

「誰のせいで寝れなかったと思ってんのよ! ほら、行くわよ!」

 

ルフィ達は眠気がありながらも島の探検を行う。しばらく歩くとルフィの腹の虫がなる。

 

「腹減った〜……」

 

「昨日食ったじゃねぇか」

 

「けど腹減った!」

 

「ちょっとあんた達、何がいるかわからないから大声出さないでくれる? ……と申しております」

 

ルーシィは自身の星霊であるホロロギウムの中から二人に注意する。

 

「……どうしたお前?」

 

「お、いつかのカッコいい時計!」

 

「(カッコいい……?)」

 

「自分で歩けよ」

 

「だ、だって相手は呪いよ? 実体が無いものって怖いじゃない……と申しております」

 

ビクビクとルーシィが震えるとホロロギウムも震える。それを三人は首を傾げる。

 

「何が怖ぇんだよ、んなもん俺がぶっ飛ばしてやる」

 

「呪いなんか燃やせばいいだろ」

 

「それか凍らせちまえばいいんだ、ビビる事でもねぇな」

 

「バカの集まり……と申しております」

 

能天気な三人に呆れるルーシィ。するとガサガサと森がざわめく。一行は足を止めると何かが近づいてくる足音が聞こえてくる。そして一行の前に現れたのは何故か服を着た巨大なネズミだった。

 

「ちゅー!」

 

「でけぇネズミ!」

 

「こんなでかいネズミがいるんだな」

 

「感心してないで早くやっつけて! ……と申しております」

 

三人は構えるとネズミは頬を膨らませる。

 

「なんか吐く気だよ!」

 

「そんなもん俺の氷で……」

 

手に冷気を宿し氷の盾を作ろうとするとネズミは一行に大量の息を吹きかける。それを吸ったルフィ達はたちまち顔色を悪くさせる。

 

「「「臭えぇ!!?」」」

 

「ちょ、ちょっとあんた達!? と申して……ガクッ」

 

あまりの臭さに倒れるルフィ達。するとルーシィを守るホロロギウムもこの臭さに耐えきれず気絶してしまう。気絶した拍子にホロロギウムは消え、ルーシィは外に出される。

 

「え? ちょっと!? ……って臭ぁ!?」

 

「…………」

 

「おい、情けねぇぞナツ!」

 

「違うよっ、多分鼻が良すぎておいら達よりダメージがでかいんだよ!」

 

グレイは鼻を抑えながら気絶するナツに近づき背負う。

 

「しょうがねぇ! 逃げるぞ!」

 

グレイ、ルーシィ、ハッピーはネズミから全力で逃げる。しかしそんな中、ルフィは腕を組みじっとネズミを見つめる。

 

「うーん……」

 

「ちょっとルフィ! 早く逃げなさい!」

 

「ちゅー!」

 

首を傾げるルフィに襲い掛かるネズミ。するとルフィの口から涎が出てくる。

 

「ネズミって焼けば美味しかったような、じゅるる……」

 

「ちゅ!?」

 

目を輝かせ、涎を垂らすルフィにネズミは恐怖を覚える。ネズミは徐々に後ずさりをする。ルフィは持っていた虫あみを掲げる。

 

「待てぇ! 飯ー!」

 

「ちゅ〜!?」

 

虫あみを構えながら全力でネズミを追いかけるルフィ。ネズミは涙を流しながらルフィから全力で逃げていく。たちまちルフィとネズミはその場から離れていった。

 

「どんだけお腹空いてんのよ……」

 

「はぁ……まぁあいつの事は心配いらねぇだろ。俺たちはこのまま探検を続けるぞ」

 

呆れながらも探検を続けるグレイ達。しばらく進み、辿りついたのは古びた遺跡だった。

 

「広いわね」

 

「ボロボロじゃねぇか」

 

中は広く造られているが所々に大きな傷がつけられている。ルーシィは壁に描かれている壁画を見つける。

 

「ふむふむ……月の島に月の呪い、月の紋章ね。この遺跡、かなり怪しいわね」

 

「……はっ! ここどこだ? つかさっきのネズミは?」

 

「あ、ナツ起きたー」

 

「ようやく起きたか。起きたんだったらお前もこの遺跡を調べろ」

 

「何だこの床、ぼろっちいな……」

 

目覚めたばかりのナツは立ち上がるとそのまま強く地面を蹴る。

次の瞬間、地面は一気に崩れはじめナツ達の足場も崩れる。

 

『へ?』

 

一気に下に向かって落ちていくナツ達。最初は状況が読み込めないルーシィとグレイも表情が徐々に恐怖や憤怒の色に染まっていく。

 

「何でー!?」

 

「おいナツ! てめぇ何したんだ!?」

 

「知らねぇよ! 床を思い切り叩いただけだぞ!」

 

「「それが原因じゃねーか!」」

 

「すいません!?」

 

ルーシィとグレイは空中でナツの頭に拳骨を落とす。

 

「こうなったら、ハッピー!」

 

「…………」

 

「お前は何で気絶してんだ!?」

 

頭にたんこぶが出来たハッピーは何故か気絶していた。ナツ達はなすすべもなく下へ下へと落ちていく。

地面が見えるとそこには異常なデカさの草が茂っており、ナツ達はそれをクッションにする事に成功した。

 

「おい……皆大丈夫か?」

 

「なんとか……」

 

「ったく、考えもなしに行動しやがって」

 

辺りを見渡すと岩と岩の間に水晶のような綺麗な石が発光し、神秘的な光が暗い洞窟内を照らしている。

 

「ここは……遺跡の地下?」

 

「秘密の洞窟だーー!」

 

「おい、これ以上暴れんじゃねぇ!」

 

ナツは近くにあった穴に入り込み奥に進む。それを大急ぎで止めようとグレイ達も駆け出す。すると先に穴を抜けたナツは何かを見上げていた。

 

「な……なんだこれ?」

 

「あ? 何が……っ!?」

 

「何、これ?」

 

「デッケェ怪物が凍ってる!」

 

そこには氷漬けにされた悪魔のような巨人がいた。ナツ達はその光景に驚きを隠せない。そんな中グレイの顔色が突然悪くなる。

 

()()()()!?」

 

「デリオラ?」

 

「んだよ、グレイ。こいつの事知ってんのか?」

 

「ありえねぇ! こんな所にいるはずがねぇ! あいつは……あいつは!」

 

「ちょ、ちょっとグレイ落ち着いて」

 

頭を抱えて混乱するグレイを落ち着かせようとルーシィはとりあえずその場に座らせる。少し落ち着きを取り戻したグレイは呼吸を整える。

 

「ねぇ、グレイ。これは一体?」

 

「デリオラ、厄災の悪魔」

 

「厄災の……悪魔?」

 

グレイの目には困惑、そして激しい怒りの感情が伝わっている。すると遠くから足音が聞こえてくる。

 

「誰か来る! 隠れて!」

 

ナツ達はすぐさま近くにあった岩陰に身を潜める。すると氷漬けのデリオラの側から二人の男が現れる。

 

「人の声がしたのはこの辺りか」

 

「おおーん」

 

眉毛が濃い男と犬のような男がきょろきょろと辺りを見渡す。

 

「……誰もいねぇみたいだな」

 

「誰もいねーのかよ!」

 

「キレんなよ」

 

「……ユウカさん、トビーさん、悲しい事ですわ」

 

二人の男の後ろに赤い髪をした女性が近づく。ユウカとトビーと呼ばれる二人組は振り返りその人物を確認する。

 

「シェリーか」

 

「おおーん」

 

「アンジェリカが何者かの手によっていたぶられていました……」

 

「! ルフィか……」

 

グレイは先程のネズミ、アンジェリカを思い出す。自分達以外に相手に危害を加える事が出来るのはここにいないルフィしかいないと理解する。

 

「ネズミだよっ!」

 

「ネズミではありません、アンジェリカです。アンジェリカは闇の中をかける狩り人、そして愛!」

 

「強烈に痛い奴が出てきたわね」

 

「あいつら、この島の奴じゃねぇ……ニオイが違う」

 

岩陰で身を潜めていると三人は何事もなかったと元の道へ戻っていった。

 

「……行ったみたいね」

 

「とっ捕まえて色々聞き出せばいいじゃねぇか」

 

「そうだよ〜」

 

「ここはもう少し様子を見ましょ」

 

ルーシィがナツとハッピーを止めていると、グレイは氷漬けにされたデリオラを見上げ口を開く。

 

「あいつらデリオラを何の為に……つか、どうやって封印場所を見つけたんだ」

 

「封印……?」

 

「こいつは……俺に魔法を教えてくれた師匠、ウルが()()()()()封じた悪魔だ」

 

その言葉にグレイ以外の者達は驚愕する。

 

「氷の造形魔法の禁術……絶対氷結(アイスドシェル)。それはいかなる炎系の魔法でも溶けることのない氷だ。けどなんでこいつがここに……」

 

「もしかしてあいつら知らないのかも。それで何とかして氷を……」

 

「何の為だよっ!」

 

「わ、わからないよ……」

 

グレイの剣幕にルーシィは怯える。はっと我に帰ったグレイは座り込み頭を抱える。

 

「ちっ……くそ、調子がでねぇ。誰が何の為にデリオラを……」

 

「簡単な事じゃねぇか。さっきの奴らをぶん殴って聞き出すんだ」

 

「こればかりはナツに賛成ね」

 

「いや、ここで待つんだ。月が出るまで……」

 

 

 

 

 

 

 

グレイ達がデリオラを見つけて数時間後、地上では辺りは暗くなり森は闇で覆われていた。そんな暗闇の中を虫取り網を持ったルフィが駆け抜ける。

 

「くそ〜どこ行ったあのネズミ! 急にいなくなりやがって」

 

森を抜け広い場所に出たがそこには先程のネズミはいなかった。しかし諦めないとルフィは目を凝らし辺りを見渡す。するとふと紫の光が見えるとそこには光の柱が立っていた。月と同じ色をした光は不気味に森を照らす。

 

「変な光だな〜……あ!」

 

光の柱を眺めているとその近くに先程のネズミが何故か飛んでいた。

 

「あのネズミ、空にいたのか! ……あれ、ネズミって飛べたっけ? まぁいいや」

 

近くにあった大木を掴み、徐々に後ろに下がり木と距離を開ける。十分な距離に達するとルフィはにやっと笑いその手を離す。

 

「ゴムゴムの、ロケット!」

 

 

 

時を同じくして地上に出たナツ達の目の前には覆面を被った人達が呪文を唱えていた。

 

「何……あいつら?」

 

「ベリア語の呪文……月の雫(ムーン・ドリップ)ね」

 

そう説明してくれたのはルーシィの契約した星霊の一人、琴座のリラだった。

 

「月の雫?」

 

「そっか、そういう事ね……奴ら月の雫を使ってあの地下の悪魔を復活させる気よ!」

 

「そんなバカなっ! あの氷は溶けない氷なんだぞ!?」

 

「その氷を溶かすのが月の雫よ。一つに集束された月の魔力はあらゆる魔法を打ち消すの」

 

「そんな……」

 

「おそらく島の呪いの原因も月の雫だと思うわ。集束された月の魔力は人体を汚染するの。それほど強力な魔力なのよ」

 

「あいつら……!」

 

「待ってナツ! 誰か来る」

 

立ち上がろうとするナツの腕を掴み隠れさせると覆面の者達の近くに先程の三人とその後ろに仮面をつけた人が立っていた。

 

「くそ……昼起きたせいで眠い」

 

「おおーん」

 

「侵入者も見つからなかったな」

 

「本当にいたのかよ侵入者!」

 

「……」

 

「悲しい事ですわ零帝様。昼に侵入者がいたようですが取り逃がしてしまいました……こんな私では愛を語れませんね」

 

「侵入者……か」

 

「! 今の声……」

 

零帝と呼ばれる者の声にグレイは反応する。零帝と呼ばれた者は三人の前に立つ。

 

「侵入者の件だがこれ以上邪魔をされたくない……この島ははずれにある村にしか人はいない筈だ。お前達、村を消してこい」

 

「はい」

 

「おおーん!」

 

「了解」

 

「何っ!?」

 

「村の人は関係ないのに……ど、どうしよう!?」

 

ナツ達はどうにか止めようと試行錯誤する。

 

「ん? 何だあれは?」

 

すると三人のうちの一人、ユウカが空を見上げて呟く。その場にいた者はつられて空を見上げる。そこにはふらふらと飛んでいるアンジェリカの姿があった。

 

「アンジェリカ? でも何だか様子が……?」

 

シェリーは首を傾げるとアンジェリカは徐々にこちらに近づいてくる。そして祈りを捧げていた祭壇に墜落した。

 

「きゃ!? アンジェリカ!?」

 

「さ、祭壇がぁ!?」

 

「なんなんだよこれ!」

 

砂埃が舞う中驚きを隠せず慌てる覆面達。砂埃が徐々にやむとそこには気絶するアンジェリカの上に麦わら帽子の男、ルフィが立っていた。

 

「ちゅ〜……」

 

「にっしし! やっと捕まえたぞ、ネズミ!」

 

「何だこいつ……!?」

 

「ん? つか何処だここ?」

 

ルフィはようやく辺りに人がいる事に気づく。首を傾げていると殺気を放つ零帝がルフィの前に出る。

 

「貴様……何者だ」

 

「あ? お前こそ誰だよ?」

 

 

 

 


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