FAIRY TAIL 〜Dの意志を継ぐ者〜 作:fortissimo 01
ここは村の跡地。アンジェリカが撒いた毒のゼリーによって建物はほとんど溶けてしまった。村人達は安全の為、その場にテントを張りその場に残っていた。そんな中、一つのテントの前には『立ち入り禁止』の印があった。
「……グレイは傷を癒すためテントで村人が治療中、ナツとルフィはその零帝と名乗る男を追って遺跡に向かった、そういうことだな?」
テントの中ではルフィ達を連れ戻す為ガルナ島に来たエルザが座っていた。その目の前にはしくしくと涙をこぼすルーシィとハッピーが縄で縛られ拘束されていた。エルザはその二人にこの島の事とルフィ達の現状を全て話させた。
「は、はい……」
「あぃ……エルザ様」
「(エルザ様!?)」
エルザが口を開こうとするとこちらに向かってくる足音が一つ。その足音はテントの前で止まる。エルザは警戒し、剣を持つ。
「……誰だ」
そしてテントの入り口が開くとそこにはルフィの姿があった。
「あれ、何でエルザがいるんだ?」
「ルフィ!」
「何でお前ら縄で結ばれてたんだ? 新しい遊びか!」
「「違うわ!」」
ルフィが来たことに安心するルーシィとハッピー。エルザは剣を降ろすとルフィに近づく。
「ルフィ、ナツが今どこにいるかわかるか?」
「ナツとははぐれちまったからわかんねぇ。道に迷ってたらここに来たんだ。あ、エルザも手伝ってくれよ! 一緒にあの仮面野郎を……」
「ナツを見つけ次第ギルドに戻るぞ、ルフィ」
「え?」
エルザの言葉に流石のルフィも固まる。固まるルフィにエルザは畳み掛ける。
「聞こえなかったか、ナツを見つけ次第ギルドに戻るぞ」
エルザの非常な言葉にルフィはむっとした表情を浮かべる。
「やだね!」
「何?」
きっぱりと言うルフィに、エルザは眉間にしわを寄せる。
「もう村の奴らの依頼を引き受けちまってるし、それにあの仮面野郎をぶん殴んねぇと!」
「そんなわがままが通ると思っているのか」
「ちょ、エルザ!?」
エルザは自身の持っていた剣をルフィに向ける。その目は本気の目だとルフィは気づくがルフィはニヤッと笑う。
「ああ、通すね」
「そうか」
次の瞬間、エルザが剣を振るとテントは一瞬で弾けた。
「ちょっと〜!?」
「テントがー!?」
縄で縛られている二人は縛られながらも吹き飛ばされ尻餅をつく。すぐさまエルザ達の方に視線を向けるとそこには黒い鎧を纏ったエルザとルフィが睨み合っていた。
「黒羽の鎧……エルザ、本気だ!」
「ちょ、ちょっと二人とも!?」
「最後の警告だ、ルフィ」
「俺は絶対帰んねぇぞ!」
「なら、動けなくするまでだ!」
黒羽の鎧の素早い動きでルフィに詰め寄るエルザ。
「ゴムゴムの……スタンプ!」
狙いを定めエルザに攻撃を放つ。しかし、その攻撃をエルザは剣を前に出し攻撃を弾き更に詰め寄る。
「この程度の力か、ルフィ!」
剣で攻撃してくるエルザに何とか避けるルフィ。しかし次第に剣の速度が上がり、躱すのが困難になる。
「くそっ!」
「甘いっ!」
「ぐぇっ!?」
剣ばかりに集中しているルフィの身体にエルザは蹴りを当てる。
「鞭!」
「っ!」
吹き飛ばされながらも足を伸ばしエルザに攻撃をする。エルザはそれに気づき上空に飛ぶ。攻撃を躱されたルフィはそのまま地面に倒れる。
「換装!」
「いっ!?」
鎧を変えたエルザは倒れているルフィに斬りかかる。そして無情にもルフィに赤い剣が振り下ろされ、衝撃で砂煙が舞う。
「ルフィ!?」
ルーシィは思わず声を上げ、エルザ達に近づこうとする。砂煙が晴れるとそこには剣を両手両足で白刃どりをして必死に耐えてるルフィの姿があった。
「あ、危ねぇ……!?」
「よ、良かった……」
ルーシィは安心したのか足の力が抜け地面に尻餅をつく。
ルフィは必死に耐えていると剣から徐々に熱が溢れる。
「熱ぃ!?」
「っ! 炎帝の鎧と炎帝の剣!」
「諦めろ、ルフィ」
高熱を宿した炎帝の剣に徐々に体を焼かれるルフィ。剣を離したら斬られる、離さなくても高熱で徐々に身体を焼かれるという状況。諦めるようにエルザはルフィに語りかける。
「諦める、かぁ! うぎぎ……こんなもん!」
ルフィは顔を真っ赤にさせて両手両足に力を込める。すると手で押さえていたところからピシッと亀裂が走る。
「っ! 換装!」
驚きながらエルザは剣をしまうと、ルフィから離れるように黒羽の鎧に換装しジャンプで遠ざかる。
「ふーっ! ふーっ! 熱かった……」
ルフィは立ち上がりながら自分の手を冷まそうと息を吐く。
「まさか両手両足で炎を宿す剣を受け止めるだけでなく、そこから剣を折ろうするとはな。今の状況を切り抜けたのはお前が初めてだよ」
「へへ……!」
「考えは変わらないか?」
「変わらねぇよ! 俺はこの島でまだやらなきゃいけねぇ事がたくさんあるんだ! 何より村の奴らも、仲間も傷つけられたんだ! 黙って引き下がれるかよ!」
ルフィは真剣な眼差しをエルザに向ける。そんな視線を向けられたエルザは表情を緩める。
「……お前らしいな、ルフィ。だが、私も考えを変えるつもりはないぞ!」
「ああ、上等だ!」
会話が終わると二人は同時に走りだす。
「ゴムゴムの!」
「黒羽……!」
ルフィは腕を後ろに伸ばし、エルザは剣を持つ力を強める。
「ブレッド!」
「月閃!」
二人の技がぶつかり合う……その時。
「な、何の騒ぎだ!?」
二人の間にひっそりと建っていたテントから治療中だったグレイが飛び出してきた。
「「えっ?」」
「ん?」
「「ぐ、グレイっ!?」」
ルーシィとハッピーは突然グレイが現れた事に目を点にする。ルフィとエルザも突然の事で技を止める事は出来ない。二人の技が徐々に真ん中にいるグレイに近づき……。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!??」
「はっはっは! 悪りぃグレイ! はっはっは!」
「いつまで笑ってんだクソゴム野郎! ところで何でエルザがここにいるんだよ……」
腹を抱えて笑うルフィの胸ぐらを掴み怒りながらエルザがここにいる訳を聞く。ボロボロとグレイを見て思わずため息をこぼすエルザ。
「私はお前達を連れ戻しにマスターから命令されてな。お前もそうだったろ、グレイ?」
「うぐっ……」
ジト目で言い放つエルザにグレイは思わず視線を外す。
「……はぁ」
再びため息をこぼすと持っていた剣でルーシィとハッピーの縄を斬る。
「え、エルザ?」
「色々とありすぎて頭が痛い……まずはこの仕事を終わらせるとしよう」
『エルザ!』
エルザが仲間になったと喜ぶルフィ達。そんなルフィ達をギロッと睨みつける。
「勘違いするな、ギルドに戻ったら全員罰は受けてもらうからな。 さて……まずはナツと合流がしたいが」
すると会話を遮るように外から爆音が聞こえてきた。
「何この音? 外から?」
外に出て辺りを見渡すと島の中央にある遺跡が傾いて見える。
「ん? 遺跡が傾いてる?」
「何で傾いてんだ?」
ルーシィとルフィは思わず首を傾げながら遺跡を眺める。グレイは誰の仕業か何故かすぐわかったのかため息をこぼす。
「ナツの仕業だろうな、恐らく月の魔力を地下に当たらないよう遺跡そのものを傾けたんだ。頭が良いのか、ただのバカなのかわからねぇな」
「それがナツです!」
「だな! うっし、野郎共行くぞー!」
ルフィ達はデリオラが眠る遺跡に向かって走るのであった。
遺跡に向かって走る一行。ふかい森の中を走り抜けるとエルザは静止するようにルフィ達の前に手を出す。
「待て、誰かいるぞ」
一行は警戒すると森の奥から不気味な仮面を着けた集団がぞろぞろと現れた。
「見つけたぞ、妖精の尻尾!」
「仮面がいっぱい!」
「仮面野郎はこんな中にいるのか!」
「明らかに仮面違ぇだろ!」
仮面を着けた一人が魔法で攻撃をする。それをエルザは軽々と躱し、剣で斬りつける。
「ぐわっ!?」
「エルザ!」
「行け、ルフィ、グレイ。決着をつけるのだろ?」
「っ……あぁ、すまねぇ!」
「ありがとな、エルザ! じゃあそれなら、よっと!」
ルフィは近くにある木に片手を掴み、もう片方の手でグレイを掴む。
「ん?」
きょとんとするグレイを横にルフィは勢いよく後ろに下がり、掴んでいた木と距離を離す。その光景にグレイは寒気を感じる。
「ゴムゴムの……!」
「お、おいルフィこのパターンって……」
「ロケット!」
「やっぱりかぁぁぁ!?」
勢いよく飛んだ二人は空を駆ける。仮面の集団は呆然とその様子を眺めていた。絶叫しながら飛んでいると徐々に遺跡に近づく。そして二人は勢いよく遺跡に突っ込む。
「よし、着いた!」
「麦わら!? グレイ!」
「ルフィ! グレイ!」
着いた先にはナツと仮面を外したリオンの姿があった。
「お、ナツだ! 無事だったんだな! それと仮面野郎、今度こそぶん殴ってやる!」
「お、お前な……少しは加減ていうのをな……!」
「あ、悪りぃ」
たんこぶを生やしながらルフィの胸ぐらを掴むグレイ。
「ルフィ、今俺がこいつと戦ってんだ! 横取りはずりぃぞ!」
「いや、俺が戦う!」
ルフィとナツが揉めているとグレイはリオンを睨みつけ、二人の前に立つ。
「……ルフィ、ナツ。悪いがこいつとのケジメは俺につけさせてくれねぇか」
「グレイ?」
「お前、一度負けたんだろ?」
「あぁ……けど次はねぇからよ、頼む」
グレイの気迫に黙る二人。そんな中、リオンは笑みを浮かべる。
「……大した自身だな」
「10年前、ウルが死んだのは俺のせいだ。けどな、関係のない村を傷つけ、仲間を傷つけ、ウルの氷を溶かそうとするお前は許すわけにはいかねぇ。共に罰を受けるんだ、リオン!」
会話を切るとグレイは両腕を前に重ねる。その構えを見てリオンは目を見開く。
「そ、その構えは……
「絶対氷結って……あの氷の?」
「グレイ、お前……!」
「貴様、血迷ったか!?」
「今すぐ島の村人達を呪いを解け、そしてこの島から出て行け。これはお前に与える最後のチャンスだ」
グレイから強大な魔力が溢れる。真剣な眼差しでリオンを睨む。リオンは驚愕の表情を浮かべていたが徐々にそれは笑みに変わる。
「は、はは! 所詮脅し! お前に出来るはずがない!」
リオンは手を前に出し、グレイに攻撃しようとする。しかし、グレイから溢れる魔力が更に強まり、リオンを軽く吹き飛ばす。
「ほ、本気なのか!?」
「……さよならだ、リオン。
グレイは魔力を一点に集中する。グレイは目を見開き、魔法を放とうとする。しかし、グレイの前に突き出した両手が突然掴まれ、無理やり両手を下に降ろされる。グレイは両手を降ろした人物に思わず視線を向ける。
「る、ルフィ」
「お前それ、使ったら死ぬって言ってたじゃねぇか……!」
「っ……!」
腕を掴む力が強まり顔を歪ませるグレイ。ルフィは怒りが混じった視線をグレイにぶつけるとグレイは一瞬臆するがすぐさまルフィの胸ぐらを掴む。
「あいつとの決着は俺がつけなきゃならねぇんだよ! 死ぬ覚悟だって出来てる! 俺がここでこいつを止めなきゃウルに……っ!?」
そこまで言うとルフィはグレイの額に思い切り頭突きをする。
「な、何しやがるっ!?」
「死ぬことは恩返しじゃねぇぞ! そんなつもりで助けたんじゃねえ! 生かしてもらって死ぬなんて弱ぇ奴のやる事だ!」
「っ!」
ルフィの言葉にグレイは脳裏に師匠であるウルの最後を思い出す。絶望的な状況の中、涙を流すグレイにウルは振り返り笑顔を浮かべる。
それはまるで
グレイはルフィの胸ぐら掴んでいた手を離すと、ルフィはグレイに背を向け、リオンを睨む。
「誰も死なねぇし死なせねぇ。全員生きてギルドに帰る、だろ?」
「ルフィ……あぁ、すまねぇ」
グレイは罪悪感に軽く顔を俯かせる。するとパシッとナツはグレイの頭は叩く。
「何勝手な事しようとしてんだ、あいつを倒すのは俺だぞ」
「ナツ……」
「死ぬ事が決着じゃねぇだろ。だからもう勝手に死のうとすんな、グレイ」
「……あぁ」
ルフィとナツ。二人の後ろ姿を見たグレイは安心したのか、顔を緩め二人に並ぶ。
「けど、リオンを倒すのは俺だ。それは変えねぇ」
「何だとてめぇ!?」
「なんか文句あんのかよ、クソ炎」
「にっしし、こうじゃねぇとな」
二人が喧嘩をしていると突然、遺跡が揺れ始める。
「な、何だ!?」
「お取り込み中失礼」
「……ザルティか」
すると仮面をつけた知らない老人が部屋に入る。
「何だあのおっさん?」
「ほっほ、そろそろ日が落ちる頃。なのでこの傾いた遺跡を元に戻しておきましたぞ」
「はぁ!?」
ザルティの言葉に目を見開くナツ。
「どーやって戻した!?」
「ほほ、さーてと月の雫の儀式でも始めに行きますかな。トビー殿、行きますぞ」
「おおーん!」
トビーを連れたザルティは急ぎ足で部屋を出て行く。
「無視してんじゃねぇ! てめぇら!」
「待てお前らー!」
「ナツ! ルフィ!」
「俺とルフィはあいつら捕まえてぶん殴る!」
「その仮面野郎は任せたぞグレイ!」
ルフィとナツは逃げた二人を追いかけながらグレイに叫ぶ。グレイは初めはきょとんとした表情を浮かべるが、すぐさま頬を緩めるとリオンを睨む。
「……あぁ任せとけ!」
「別れの挨拶は済ましたか?」
「別れなんかじゃねぇよ、俺はあいつらと一緒に帰るんだ。けど、その前にリオン! テメェを止める!」
手のひらに拳を乗せ、魔力を高めるグレイ。兄弟子であるリオンを睨むその目に一切の迷いなし。今ここに決着をつけるため、仲間との誓いを胸にグレイは走る。