FAIRY TAIL 〜Dの意志を継ぐ者〜 作:fortissimo 01
ハルジオンの港の一件後。ルフィ達は無事にマグノリアにあるギルド《妖精の尻尾》に着いた。
「わぁ〜! 大きい!」
「あい! ようこそ、妖精の尻尾へ!」
ハッピーはルーシィに歓迎の言葉を送る。そして四人はギルドの中に入る。
「ただいまー!!」
「飯ー!!」
ルフィはカウンターへ脚を運ぶ。
「あら、ルフィお帰り」
ルフィに声をかけた白髪の女性ーーミラジェーンことミラはにっこりとルフィに微笑む。
「ミラ! 飯!」
「ふふ、わかったわ」
ミラはすぐに料理の準備をする。すると近くに座っていた男性が新聞を読みながら笑う。
「ははっ! ルフィ、ナツ! また派手にやらかしたなぁ……。ハルジオンの一件新聞に載ってーー」
「てめぇ!
「グホッ!」
ナツはその男の顔面に飛び蹴りをくらわせる。男は他のテーブルを巻きこみながら吹き飛んだ。それが火種となり、他のギルドメンバーも暴れ出した。
「ふふ、またギルドが壊れちゃうわね。はい、ルフィ」
ミラはルフィの前に大量の料理を出す。
「おー! 美味そう〜! いただきまーす!」
ルフィはミラの出した料理をどんどん食べる。そんな現在のギルドの活気溢れた様子をルーシィは歓喜しながら眺めていた。
「すごい……! 私本当に妖精の尻尾に来たんだ!」
「ああ!? ナツが帰ってきただと!?」
「!?」
ルーシィの目に飛び込んだパンツ一丁の黒髪の男ーーグレイ・フルバスター。極度の脱ぎ癖がある。グレイはパンツ一丁のまま喧嘩に参加しようとしていた。
「グレイ……服」
「あ! いつの間に!?」
「全く……これだから品のないここの男どもは嫌だよ」
そう言いながら酒が入っている大樽を飲んでいる黒髪ウェーブの女性ーーカナ。ギルド最強の酒飲みである。
「ふっ……くだらん」
「わっ!?」
ルーシィが振り返るとそこには巨漢の男ーーエルフマンが立っていた。
「昼間っからピーピーギャーギャーガキじゃあるまいし。漢なら……拳で語れぇぇ!!」
「結局喧嘩なのね」
エルフマンはナツとグレイに近づくーーが。
「「邪魔だ!」」
「しかも玉砕!?」
二人によってエルフマンは返り討ちにあう。他のギルドのメンバーも喧嘩に参加し、ますます被害が拡大する。
「全く騒がしいね」
「ん?」
声のした方にルーシィが振り返ると男が二人の女性を抱えていた。この男ーーロキ。彼氏にしたい魔導士ランキング上位者だ。そのロキが済ました顔で喧嘩を見ていると飛来するビンがロキのおでこに命中する。
「混ざってくるね〜! 君たちの為に〜!」
「「頑張って〜!」」
「はい、まともな人消えた! 何よこれ、まともな人が一人もいないじゃない……」
「あら? 新人さん?」
ルーシィに声をかけたのは先ほどルフィに料理を出したミラだった。
「み、ミラジェーン! ほ、本物だ〜!」
ミラは週刊ソーサラーのグラビアを飾る魔導士で有名だ。
「あ……これ止めなくてもいいんですか?」
「いつもの事だからほっとけばいいのよ。それにーー」
ミラがそこまで言うとぶっ飛ばされたエルフマンがミラに命中し、一緒に吹っ飛ばされる。
「た、楽しいでしょ? ……きゅー」
「いやぁぁぁ!? ミラジェーンさん!!」
気を失ったミラを見て恐怖がこみ上げてきたルーシィ。
「おら!」
ナツによってルーシィの近くにグレイが吹き飛ばされた。
「ぐっ! あ、俺のパンツが!?」
「ヘッヘッヘ!」
ナツはグレイのパンツを回しながら笑う。グレイはどうすればと考えていると視界にルーシィが映った。
「お嬢さん、よければパンツを貸してくれないか?」
「貸すか!!」
喧嘩はどんどん激しくなり、誰も止められない。
「ったく……落ち着いて酒も飲めやしない。あんたらいい加減にしなさいよ?」
するとテーブルに座っていたカナがカードを取り出す。
「くそっ! 頭にきた!」
グレイは左手の掌に右手の拳を乗せる。
「うおぉぉぉぉ!!」
エルフマンは魔法で右腕を変化させる。
「全く……困った奴らだ」
ロキの指にはまっている指輪が強く光りだす。
「どっからでもかかってこい!!」
ナツは両手に炎を宿す。
「魔法!?」
「あい!」
「あいじゃない!」
ルーシィはハッピーを盾にして悲痛の声を上げる。するとーー。
「やめんかぁぁ!! バカタレ共!!」
突如出現した巨人の一喝にギルドメンバー全員はピタッと動きを止めた。
「デカーー!!?」
「あら、マスター。いらしてたんですか?」
「うん!!」
「マスター!?」
いつの間に起きていたミラの一言にルーシィは驚く。沈黙に包まれている中、ナツは高笑いをした。
「だっはっはっ! 皆してビビりやがって! この勝負俺の勝ーーぴっ」
そんなナツは虫を潰すかの様に足で踏みつける巨人。そんなナツを見てルーシィは恐怖に包まれた。すると巨人はルーシィの方を見つめる。
「む!? 新入りかな!?」
「は、はいぃ……」
完全に怯えた様子で答えるルーシィ。
「ふんぬぅぅぅぅ!!」
巨人は雄叫びをあげるとその身体がどんどん小さくなりーー。
「よろしくね!」
「ちっさ!」
ルーシィの膝したぐらいの背丈になってしまった。この男こそ妖精の尻尾のギルドマスター、マカロフ・ドレアーである。
「とう!」
マカロフは二階に向かってジャンプし、空中でくるくる回転する。しかしーー。
「あ痛っ!?」
体制を崩し、二階の床に激突する。
「はっはっはっ! じっちゃんダセーな!」
「うるさいわい!」
料理を食べていたルフィはマカロフに指をさしながら爆笑する。
「ゴホンっ! ま〜たやってくれたの貴様等、見よこの評議員から送られた文書の量を!」
マカロフは手に持っていた文書を読み上げる。
「まず……グレイ!」
「あ?」
「密輸組織を叩いたのはいいが……その後素っ裸で街を歩き、挙句の果て洗濯中の下着を盗み逃走」
「いや、だって裸でいるのはまずいだろ」
「じゃあまず脱ぐなよ」
グレイの返答に冷静に突っ込むカナ。マカロフはため息をひとつき吐くと再び読み始めた。
「エルフマン、貴様は要人護衛の任務中、要人に暴行」
「だって『男は学歴よ!』なんて言い出すからつい……」
マカロフは頭に手を当て首を横に振る。
「カナ・アルベローナ。経費と偽り酒場で飲む事樽15個。さらにその酒の請求先が評議員」
「バレたか……」
「ロキ。評議員レイジ老師の孫娘に手を出す。タレント事務所から損害賠償が来とる」
「はは……参ったなぁ」
「ナツ・ドラグニル。デボン盗賊一家を壊滅するが民家7件も壊滅。チェーリ村の歴史ある時計台倒壊。フリージア教会全焼。ハルジオン港半壊……」
「なっはっはっは!」
マカロフは次の文書を開くとがっくり項垂れる。
「そして……ルフィ」
「ギン盗賊一味を壊滅するが民家10軒も壊滅、さらに近くのレストランの料理を全て平らげ逃走。ルピナス城半壊。ナズナ渓谷観測所崩壊により機能停止。フーシャ村のシンボルの風車を破壊し、逃走。そしてナツと同じくハルジオン港半壊。そしてーー」
そこまで言うとマカロフはルフィを指差す。
「妖精の尻尾の食料の半分以上が貴様の胃袋の中とはどういう事じゃあ!?」
「あー悪りぃ悪りぃ」
「軽いっ!?」
ルフィの返答にしばし固まったマカロフは気を取り直し、ギルドメンバーと向き合う。
「全く、儂は評議員に怒られてばっかじゃぞ……」
皆は気まずそうに地面を見る。
「だがーー」
マカロフは突然笑い文書を燃やす。
「ーー評議員などクソくらえじゃ」
文書を空中に投げる。それをナツが食べる。
「よいか! 理を超える力は全て理の中から生まれる。魔法は奇跡の力なんかじゃねぇ。我々の内にある気の流れと自然界に流れる気の波長が合わさり始めて具現化されるのじゃ。それは精神力、集中力を使う。いや、己の魂を全て注ぎ込む事が魔法なのじゃ。上から覗いている目ん玉気にしてたら魔道など進まん。評議員のバカ共などに恐れるな」
そこまで言うとマカロフは人差し指を上に向ける。
「己が信じた道を行けぇ! それが妖精の尻尾の魔導士じゃぁぁぁ!!」
『おおおおお!!』
ギルドメンバーはマカロフと同じ様に指を立てて雄叫びをあげる。
「はい! これであなたもギルドの一員よ!」
「わぁ〜! やった〜!」
ルーシィは自分の手の甲につけてもらったギルドマークを見て喜んでいる。ルーシィは数々の依頼が貼られているリクエストボードの前にいるナツとルフィに近づく。
「ナツ、ルフィ、見て見て! ギルドマーク付けて貰った!」
「ふーん」
「よかったなぁ! ルイージ!」
「ルーシィよ!」
「ねぇねぇこれなんてどう?」
するとハッピーが依頼の一つをナツとルフィに渡す。
「盗賊退治で16万J!」
「決まりだな」
ナツとルフィとハッピーは早速依頼に行こうとするとーー。
「ねぇ、父ちゃんまだ帰ってこないの?」
ルフィ達は声の発信源の方を見る。黒髪の小さな少年ーーロメオとマカロフが喋っていた。
「くどいぞ、ロメオ。貴様も魔導士の息子なら親父を信じたおとなしく家で待っておれ」
「でも三日で帰ってくるって言ったのに……もう一週間も帰ってきてないんだよ!?」
「マカオの仕事は確かハコベ山じゃったな」
「そんなに遠くないじゃないか! 父ちゃんを探しに行ってくれよ!」
「貴様の親父は魔導士じゃろ! 自分のケツのふけねぇ様な魔導士はうちのギルドにはおらん! 帰ってミルクでも飲んだおれ!」
「くっ……」
ロメオは涙目になりながら俯く。
「バカーー!!」
「ぐおっ!?」
ロメオはマカロフの顔面に一発くらわせると涙を流しながらギルドを出て行った。
「厳しいのね……」
そんな様子を気の毒そうに言うルーシィ。
「ああは言ってもマスターも心配してるのよ」
ミラが皿を拭きながら呟く。ーーすると、リクエストボードから壊れる音がした。
「お、おいルフィ……」
「…………」
ルフィは無言でリクエストボードを破壊するとギルドを出ようと扉に向かう。ナツとハッピーもルフィに着いて行く。
「ど、どうしちゃったのあの二人……」
「ルフィとナツもロメオ君と同じだから……多分つい自分とだぶったかもね」
「え?」
ミラの言葉に首を傾げるルーシィ。
「ナツのお父さんも出て行ったきり帰ってこないのよ。お父さん……とは言っても育て親なんだけどね。しかもドラゴン」
「ど、ドラゴン!? ナツってドラゴンに育てられたの!?」
ルーシィは半信半疑でミラに聞くとミラは小さく頷く。
「小さい時そのドラゴンに拾われて……言葉や文化、魔法を教えてもらったんだって。でもある日、ナツの前からそのドラゴンが突然と姿を消した」
「! そっか……それがイグニール」
「ナツはいつかイグニールと会える日を楽しみにしてるの」
ナツの過去話にルーシィはしばし、呆然とする。するとルーシィの脳裏にもう一人の人物が浮かぶ。
「あ、じゃあルフィは?」
ルーシィの質問に少し暗い表情をしながらミラは口を開く。
「……ルフィはね、小さい時にお兄ちゃんを亡くしたらしいの」
「ぇ……」
ルーシィは絶句する。
「ルフィの昔の事は詳しくはよくわからないけどね……。多分、ロメオ君と昔の自分がだぶっちゃったのかなって思うの」
「そう……だったんだ、あいつ」
ルーシィは出て行ったルフィとナツを思う。
「うぅ……」
夕焼けに染まる街の小道でロメオはすすり泣きで俯きながら自宅に帰る。すると頭に何かを被らされた。ロメオは被されたものを取って見る。
「これ……」
それは身に覚えのある麦わら帽子だった。不意に正面を見るとルフィとナツとハッピーの姿があった。
「ルフィ兄……」
その後ろ姿をロメオは麦わら帽子を握りながら見ていた。