FAIRY TAIL 〜Dの意志を継ぐ者〜 作:fortissimo 01
屋敷の下水道。そこでルーシィは魔法アイテム『風読みの眼鏡』をかけ、本の解読をしていた。そして本を読み終わったルーシィは本を閉じ、改めて本の表紙を見る。
「やっぱり……この本、
ルーシィが立ち上がると、後ろの壁から手が現れルーシィの腕を掴んだ。
「ボヨヨヨ……逃がさんぞ!」
「くっ!」
ルーシィは両腕を塞がれ身動きが取れない状態になった。
「さぁ言え、何を見つけた? その本の秘密とはなんだ?」
「あ、アンタなんて、最低よ……文学の敵だわ……」
「文学の敵だと!? ぐぬぬ……小娘が偉そうに! さっさとその本の中に書かれている秘密を話せ! さもなければ貴様の腕をへし折るぞ!」
「! 痛っ……」
怒鳴りながら掴んでいる手にさらに力を入れ、本当に腕を折ろうとしている。ルーシィも苦痛の表情を浮かべる。
「ルーシィ!」
「えっ?」
「ボヨ? ぐへぇ!?」
するとルーシィを追いかけていたハッピーが体当たりでエバルーを吹き飛ばす。その拍子に拘束されていた手が自由になった。
「ナイス! ハッピー!」
「あ、頭が〜……」
「ぐっ……おのれ〜!」
「これで終わりよ、エバルー!」
ルーシィは黄金の鍵を構えながらエバルーに言い放つ。
「ボヨヨヨ……誰が終わるものか!」
するとエバルーもルーシィと同じ黄金の鍵を取り出す。
「え!?」
「ルーシィと同じ魔法!?」
「開け! 処女宮の扉……バルゴ!」
鍵から光が溢れると、エバルーの隣にあのゴリラメイドが立っていた。
「お呼びでしょうか? ご主人様」
「こいつ、星霊だったんだ!」
「ボヨヨヨ! さぁバルゴ、こいつらを……ん?」
「「あっ!?」」
そこにいる者たちはバルゴの方をみて驚愕した。何故ならバルゴの両肩にナツとルフィが掴まっていたからだ。
「ナツ!」
「ルフィ!」
「な、なぜ貴様らが!?」
「あんた達、どうやって……」
「このメイドが動きだしたから後をつけてきたらいきなり……ってなんでルーシィとハッピーがここにいるんだー!?」
「それはこっちの……ってあれ? てことはあんた達もしかして星霊界を通過したって言うの!?」
「ば、バカな……ありえん」
ルーシィとエバルーはその事実に驚愕する。エバルーが呆然としているとルフィとナツはようやくエバルーの存在を認識した。
「あ! ボヨヨの奴!」
「ルーシィ、俺たちは何すればいいんだ!?」
「そいつをぶっ飛ばしちゃって!」
「おう!」
「よし!」
掛け声に合わせ、二人はバルゴから飛び降りる。バルゴの正面に立ち、二人は各々構える。バルゴは唐突の出来事に反応を遅らせた。
「ゴムゴムの銃!」
「火竜の鉄拳!」
「ぶほぉ!?」
バルゴは弓矢のごとく吹き飛ばされ、下水道の壁にめり込み、気絶した。
「なっ!? お、おいバルゴ!?」
「これでお終いよ! 開け! 巨蟹宮の扉……キャンサー!」
ルーシィはホルダーから取りだした一本の金の鍵が眩しく辺りを照らす。そしてルーシィの隣には背中にカニの足を生やし、両手にハサミを持ったサングラスの男性が現れた。
「「か、カニだー!!」」
「これ絶対語尾が『カニ』のやつだよ! そうに違いないよ!」
「はいそこ! うっさいっ!」
ルフィ達は涎を垂らしながらキャンサーの方を見る。キャンサーはルーシィの方に身体を向ける。
「ルーシィ、今日はどんな髪型にする……『エビ』?」
「「「エビー!?」」」
「空気よんでくれるかしら!?」
想像の斜め上をいった解答にルフィ達は驚愕する。そんな三馬鹿をほっときルーシィはエバルーに指を差す。
「まぁいいわ、戦闘よ! あのヒゲオヤジをやっつけちゃって!」
「い、いかん!」
身の危険を感じたのかエバルーはまた魔法で地面に潜ろうとする。しかし、ルーシィは腰にあったムチをエバルーに向けて放つ。
「ぐえっ!?」
エバルーの首を捕らえ、地面に潜れないようにした後ルーシィはキャンサーに命令する。
「これであんたは地面に潜れない。今よ、キャンサー!」
命令を受けたキャンサーはエバルーに素早く近づき、ハサミを向ける。するとキャンサーは目にも留まらぬ速さでエバルーの髪や髭を一本も残さず切っていく。
「カット完了……エビ」
「あ、あ……我輩の自慢の髭が……」
髭を切られた事があまりにショックだったのかエバルーはそのまま気絶した。
「卵みたいになったな、あのおっさん」
「あい」
「不味そうだ」
「そんな事言ってないで、はやくカービィさんのところに行くわよ!」
ルーシィ達は廃棄する予定だった本を手に、依頼主のカービィの自宅に向かった。この本の秘密を告げるためにーー。
依頼主の家に戻ってきた一行はカービィにあの本を手渡す。
「こ、これは……!? どういう事ですかな……私はこの本を廃棄してくれとーー」
「廃棄するのは簡単です。もちろん、カービィさんでもできます」
「な、なら、この本は燃やします! こんな本、見たくもない!」
カービィは懐からマッチの箱を取り出す。そんな中、ルーシィは話を続ける。
「カービィさん。何故あなたがこの本の存在を許さないのかようやくわかりました。父親の誇りを守るため……この本の作者であるケム・ザレオンは貴方の父親ですよね?」
「っ!」
「えぇ!?」
「なっ!?」
「パパー!?」
隠された事実に戸惑いを隠せないルフィ達。カービィはマッチを静かに降ろす。
「カービィさんはこの本はお読みに?」
「いえ、父から聞いただけですので……しかし、読むまでもない。『駄作』……父はそう言っていました」
それを聞いたナツはカービィに詰め寄る。
「だから燃やすのかよ! そりゃああんまりじゃねぇか!? 父ちゃんが書いた本なんだろ!?」
「落ち着いて、ナツ! 言ったでしょ、誇りを守るためだって」
「ええ……父はこの本『日の出』を書いた事を恥じていました」
カービィはルーシィ達に語る。31年前……突然帰ってきて、作者を辞めると言い腕を切り落とした事。その後、入院した父を恨み、罵倒を浴びせたこと、そしてその数日後に自殺した事。
「私の中の憎しみはいつしか後悔に変わりました……。私があんな事を言わなければ父は自殺しなかったんじゃないかと……」
再びマッチの箱からマッチ棒を取り出す。
「だから、燃やすのか。おっさん」
「そうです……。父への償いとしてこの本を……父の名誉の為にこの駄作を消し去りたいと思ったんです」
マッチ棒に火をつけ、静かに日の出の本に近づける。
「これで……最後だ」
本に火がつくーーその時、日の出から眩しい光が溢れてきた。その光と共に本が開かれ、中から無数の文字が飛び出す。
「えっ!?」
「っ!」
「文字が浮かんだー!?」
「これは一体……?」
ルーシィ以外の者はこの光景を見て、呆然としている。カービィがルーシィに聞くと、ルーシィは口を開く。
「ケム・ザレオン……いえ、本名はゼクア・メロン。彼はこの本に魔法をかけたんです」
「魔法……?」
するとタイトルである『日の出』の文字が浮かび、並び替えられる。そして本当のタイトルとしてカービィの前に現れた。
「
「彼のかけた魔法は文字が入れ替わる『
ルーシィがそう言うと飛び出していた文字達が次々と並び替えられる。並び替えられた文字で語られる文はカービィに向けられた文だった。
「すげぇ!」
「綺麗ー!」
「おぉ!」
「彼が作家を辞めた理由……。それは最低の本を書いてしまった他に、最高の本を書いてしまったことかもしれません。カービィさん、あなたに向けた最高の手紙という本の……」
『日の出』から溢れた文字は次々と本に戻っていく。
「それがケム・ザレオンが本当に残したかった本です」
「父さん……私は貴方を……理解できてなかったようだ」
「よかったな、おっさん! いい父ちゃんじゃねぇか!」
にししと笑うルフィを見て、カービィは目から雫が溢れる。
「はい、父は……最高の父親でした」
父を抱きしめるかのようにカービィは『日の出』改めて、『
「皆さん、ありがとう。やはりこの本は燃やせませんね」
「そっか……じゃあ、俺たちは帰るわ」
「そうだな」
「あいさー!」
「えっ!?」
ルフィはそう言うとカービィに背を向け、出口に向かう。ナツとハッピーもそれに続く。カービィとルーシィは戸惑うことしか出来なかった。
「ちょ、ちょっと待ってください……報酬をーー」
「だって、依頼は『本の廃棄』だろ?」
ルフィがそこまで言うとカービィははっと気づいた。
「し、しかし……」
「いいんだよ! 目的を達成してないのに報酬なんて貰ったらじっちゃんに怒られちまう」
ルフィ達の慈愛にまたも涙が溢れそうになるカービィ。
「ありがとう……ありがとう、妖精の尻尾」
「じゃあな〜! メロンのおっさん!」
ルフィはカービィに手を振りながら屋敷を後にした。
帰り道の途中、ルーシィが少し機嫌が悪かった。
「もう、どうすんのよ! 200万が全部チャラになっちゃうなんて!」
「だって、依頼達成してないし」
「妖精の尻尾の名折れだ」
「うぅ……はぁ、わかったわよ」
ルーシィは降参と言わんばかりに手を両手にあげる。
「でも良かったな、あのおっさん」
「今頃、自分の
「え? 本当の家って?」
ルフィとナツの会話に疑問が生じたルーシィは二人に聞く。
「あいつらの匂いと家の匂いが違ったんだ」
「ナツって鼻がいいからよ」
「な、なにそれー!?」
じゃあ大金持ちじゃなかったって事!? ルーシィは心の中で落胆していた。
「あの小説家、すげぇ魔道士だな」
「あい、30年間も魔法が消えてないなんて相当な魔力だよ」
「昔は魔道士ギルドに所属していたんだって。そこで体験した冒険を小説にしてるの。はぁ、憧れちゃうな〜」
ルーシィはうっとりとした表情で空を見上げる。そんなルーシィを見て、ナツは悪い表情になった。
「やっぱりなぁ〜」
「ん? やっぱりって?」
「ルーシィの机の上にあった紙の束って自分が書いた小説でしょ?」
「えぇ!?」
図星だったのか顔を真っ赤になる。
「やたら詳しい訳だ!」
「おお、ルーシィすげぇな」
「他の人には誰にも言わないでよ!」
「なんで?」
「まだ下手くそだし……読まれたら恥ずかしいでしょ!」
手を振りながらルフィ達に懇願する。ルフィは何か思いついたのか悪い表情を浮かべた。
「うしっ! じゃあ今からルーシィの家に行こうぜ!」
「よっしゃ!」
「あいさー!」
「ぎゃああああ! あんた達、待ちなさーい!!」
顔を真っ赤にさせたルーシィはルフィ達を全力疾走で追いかける。ルーシィの初めての仕事はこうして幕を閉じた。