ヒューマノイドと警察官 三章   作:とましの

10 / 12
30話

救急車と救助隊がやってきて店内に取り残された子供の救助を始める。やってきた所轄の警察官に状況説明をしていた魚住は店内に目を向けた。

するとややあってレオーネが少女を抱えて店から出てくる。事故で破損したのか右腕は垂れ下がったままだ。それでもレオーネは再び店内へ戻ろうとして救助隊に止められる。

魚住は説明を終えるとそんなレオーネの元へ近づいた。

「レオーネ、光秀を知らないか」

「3号君は店内にいるよ」

「やっぱりそうか。どうして出てこないんだ?」

どこか破損したのかとつぶやきながら魚住は店内へ入っていこうとする。レオーネはそんな魚住の腕をつかんで止めさせた。

「ここは僕に任せて、君は病院に行ったほうがいいよ。顔色が良くないからね」

笑顔でそう告げるとレオーネはそばにいた救急隊員に目を向けた。魚住へ声をかけようとしていた救急隊員は視線を受けて魚住に話しかける。

 

 

破損したレオーネと光秀は月城国際ヒューマノイド研究所へ運ばれた。レオーネはそこで精密検査を受けて破損箇所を調べられる。

腰の差し込み口にコードを繋げられたレオーネはやってきた徳川に目を向けた。

「あの子は?」

「本体の損傷が激しいと聞いた。俺は今のところ近付けてない」

「そう……」

いつも変わらない真面目な顔の徳川は今も何の感情も示さない。

「記憶媒体だけでも無事なら、なんとかなるのかな?」

「そうだな。記憶以外のプログラムは、いま俺が再構築している。だから安心して欲しい。俺が直す」

「君は……感情をどうしたの?」

淡々と話す徳川に、レオーネはぼんやりとしながらも笑顔を作り問いかけた。すると徳川は真顔のまま首を傾ける。

「今は感情プログラムも働いているはずだが、おかしいか」

「数日前に会った時より何かが悪化しているよ」

感情プログラムが働いていると徳川は言うが、その表情に感情は見られない。しぐさも声色も失っていては、感情プログラムが働いてるとは言えないだろう。

「問題ない。あの子を取り戻すまでは演算を続ける。大丈夫だ。壊させない」

徳川の端的な説明に、レオーネはそういうことかと目を細めた。徳川はプログラムを組み立てるための演算処理にシステムの大部分を使っている。そのため他の部分の出力が低下しているのだろう。だとしたら故障ではないし、徳川に心配を向ける必要は無さそうだ。

「君の二の舞は嫌だね」

「いやだ」

言葉のぬくもりすら失った徳川だが、それでも自分は失っていないらしい。そんな彼をいとおしいと思ったが、撫でようにも右手はピクリとも動かない。

「ごめんよ、真琴。君に触れたいのに腕がうごかないんだ」

「こんな時まで気遣おうとしなくていい」

やはり抑揚のない声色で告げた徳川はオイルに汚れたレオーネの頬に触れた。

「おまえは少し休め。その間に破損箇所を直しておく」

「そうだね。今回はさすがに疲れたよ」

愛想があるのかないのかわからない徳川の態度に笑みをこぼす。そうして廃棄熱とともに吐息を漏らしたレオーネはみずから電源を落とした。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。