ヒューマノイドと警察官 三章   作:とましの

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25話

午後九時という遅い時刻の来客に光秀は眉をひそめながら立ち上がった。近くのソファでは発熱で限界を迎えたらしい魚住が眠り込んでいる。

普段ならその時点でうろたえるだけだが、今回はレオーネがいろいろと動いてくれた。

玄関に出た光秀は現れた石黒を前にして目を丸めた。

「今度は石黒か」

「魚住さん、電話口で咳き込んでいましたが大丈夫ですか?」

「あ、熱が高い」

石黒の問いかけに驚きつつ発熱していると告げる。すると石黒はわかりましたと言いながら上がり込んだ。そのため光秀は石黒についてきたらしい徳川に目を向ける。

「一緒に来たのか」

「いけなかったか?」

「いけなくはねぇけど、人間はヒューマノイドより休息を必要とするだろ?」

「そうだな」

心配してるらしい光秀に徳川は短い言葉で返した。その上で徳川は紫の瞳で光秀を見上げる。

「その場合は、俺より三成を心配しないといけないな。それと魚住さんも?」

「魚住はいま寝てる」

「熱で? 病院は行かないのか?」

「昼に行って薬をもらってるからそれは大丈夫なんだわ」

何もできない光秀はそこまで説明してリビングに戻った。そんな光秀の後ろを歩きながら徳川はそこまで引いてきたスーツケースを持ち上げる。

リビングに戻った光秀は石黒に床へ座るよう告げられた。魚住を見にきたのだと思っていた光秀は判断できずソファに目を向ける。

石黒が来た時点で起きたらしい魚住は自分の頭を軽くたたき覚醒を促した。

「あれ」

そんな魚住のそばで、唐突にレオーネが声をあげる。驚いた様子で彼が見る先にはリビングの入り口に立つ徳川がいた。

「君、日本にいたの?」

「三ヶ月前に帰国した」

レオーネの問いかけに徳川は真面目な顔のまま返す。知り合いらしいふたりに魚住は眉をひそめた。ただRーM001レオーネはSPとして様々な場所に赴いている。おそらくそのどこかで徳川と会ったことがあるのだろう。

「それよりも003の状態は?」

徳川の問いかけにレオーネは笑顔で肩をすくめた。

「初対面で僕にケンカを売った時の事を話そうか」

「その話は必要か?」

「君に僕の可愛いげを少しわけてあげたいね」

徳川の愛想のない態度にレオーネは笑顔こそ保ったが勢いは崩れていた。

 

 

床に座った光秀の腰にアダプタを差し込みパソコンと繋げる。そうしてシステムチェックをしていた石黒は何の変化もないことに首をかしげた。

緋田がわざわざここまで来て、光秀になにもしないで帰るとは思えないのだ。だとしたらこの端末ではチェックできない部分に何か仕込んだのだろうか。そう考えながらシステムの精査を続ける。

そんな石黒の後ろからパソコンを眺めていた徳川は紫の瞳を魚住へ向けた。

「ラブドール機能の誤作動は感情プログラムの暴走が招いたものかもしれない」

自分にかけられていた毛布をたたんでいた魚住は徳川の言葉に手を止める。目を向けると徳川の紫色の瞳がまっすぐに向けられていた。

「魚住さんを好きだと思う気持ちが強すぎて、機能の誤作動を引き起こした。それは悪いことではないし、魚住さんに非があるわけでもない。だけどエラーが頻発するとシステムに負荷がかかるから、それだけ気を付けないといけない」

「俺にできることはあるか?」

「エラーが起きたらすぐに三成へ報告してくれれば良い。あとは……エラーが起きないようにシステムを組み直さなければいけないな」

「そうですね」

徳川の意見に同意しながらも石黒はしかしと言葉を続けた。

「あなたは明日、捜査協力のために警視庁へ行くのですよね?」

「その後でシステムを組み直すから問題ない」

「問題大有りだよ!」

真面目な顔で石黒と話していた徳川はレオーネの声に視線を移した。魚住と石黒もそれぞれレオーネを見る。

するとレオーネはなぜか拳を固めていた。

「せっかく再会したんだから、明日はふたりで飲み交わすべきじゃないか!」

「断る」

「俺もアルコール飲みてぇ…」

きっぱりと断った徳川の代わりに光秀がぽつりとつぶやいた。あげく光秀は魚住に目を向けて首を傾ける。

「魚住…は、飲めた……いや飲めねぇのか」

システムが異常をきたして魚住が飲めたのかどうか思い出せない。その異常は石黒のパソコンにも数値として現れた。

「……記憶媒体のエラー、ですか。システムの強化が必要なようですね」

石黒は速やかに結論を出すと光秀からコネクタを引き抜いた。

 

 

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