ヒューマノイドと警察官 三章   作:とましの

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26話

客が全員帰ると魚住は明日も仕事があるからと薬を飲んで寝室に引っ込んだ。ひとり残った光秀は冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出してグラスに注ぐ。

それを一気に飲み干した光秀はしばらくじっとグラスを見つめていた。しかしシステムがエラーを起こすほどの事はない。ただほんのり身体の中が暖かくなる程度だった。

 

ただ魚住のために飲み物を取りに行くこの行為そのものがエラーを呼び起こす。持ち主の役に立ちたいと考え行動するだけで思考に矛盾が生じてしまっていた。

おそらくこれを放置すれば徳川が言うようにシステムに負荷がかかるだろう。そしてその状態が続けば負荷をなくすためにシステムのリカバリーが行われる。それで改善すれば良いが、おそらくそれは無理だろう。

前の持ち主の言葉が消えない限りこのエラーも消えることはない。だとしたら緋田の元に行ってその部分を削除してもらうか。そんな事を考えようとしたが、思考回路がその先の思考を拒絶した。

前の持ち主の記憶を消すというのは、持ち主を裏切ることに繋がる。そのため光秀がそれを望むことはできなかった。

 

「……システムと記憶媒体がいつまでもつか…だよな」

ぼんやりとつぶやいた光秀は新たなグラスを取り出した。そこにスポーツドリンクを注ぎ入れると寝室へ運ぶ。

「魚住、水分補給は必要だぞ」

寝室に入ると魚住がうつらうつらと眠り込もうとしていた。しかし光秀の声に目を開けるとゆっくり起き上がる。

「あいつが、魚住は疲れが溜まってるんじゃないかって言ってた」

「捜査が行き詰まってるからな」

そう言いながら魚住は光秀が差し出したグラスを受け取った。

「だがそのためにレオーネが応援として……」

言葉の途中で光秀の異変に気付いた魚住は言葉を止める。魚住が見つめる先で、光秀はベッドに座ったままぼんやりと虚空を見つめていた。

「疲れたか?」

ヒューマノイドでも疲れてぼんやりすることがあるのか。そう素直に思うまま魚住は問いかける。するとややあって光秀の紫色の目が魚住へ向けられた。

「試しに…スポーツドリンク飲んだんだよ……」

「ああ、またシステムエラーが出たのか」

光秀の説明に納得した魚住は自分の隣で横になることを促すようにベッドをたたく。すると光秀は今までにないほど穏やかな笑顔を見せた。

「俺……魚住のこと、好きなんだ」

「それは前も聞いたな。それより動けなくなる前に寝ろよ? おまえを運ぶのは楽な作業じゃないんだ」

魚住がそう言うと光秀はうなずきベッドの上を移動した。魚住の隣に転がると紫色の瞳を細める。

「俺、おかしいか?」

「いや、今夜のおまえは前ほどおかしくない」

「そっか……」

魚住が見つめる先で、光秀は安堵したような顔を見せていた。あげく目を閉ざした光秀はそのまま動かなくなる。

そんな光秀の頭をそっと撫でた魚住は寝室内の照明を消した。

 

 

 

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