ソードアート・オンライン 崩壊幻想(Broken Phantasm)   作:黒木龍牙

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二話 切り取り

「お、おはようございます………」

 

一人でそう呟きつつ、起きる。

ぞろぞろと、歩いてボス部屋に向かう皆。

俺は皆についていく。

未だに目覚ましのあまりの大きさに、頭がガンガンする中、ゆっくりと歩く。

何故、宿屋に泊まらないか。

それは攻略組の皆が使っていたから。

入れるところを探すのが面倒だったというのがある。

すると、少年少女二人組に話しかけられた。

黒髪少年と、赤ずきん少女だ。

 

「なあ、あんた………、昨日の会議、出席してたか?」

 

「いや………、実は遅れてな、パーティを組めって言われたんだけど、まあ、遅れたもんだから無理でさ………」

 

「じゃあ、俺らと組まないか?」

 

「あ…………、うん。でも、俺一人で突っ走るよ?」

 

「おいおい………、ゲームオーバー=死の世界なんだぞ?」

 

「……………、いや、敵の攻撃はストレートすぎてつまらん。見切りで避けられるし。問題ないだろ…………」

 

「じゃあ、パーティ申請だけ送っておく。とりあえず……、死ぬなよ」

 

「おう。お前さんらもな」

 

俺の目の前にパーティに入るか、と言う文字と、◯と×のマークが出た。

迷いなく、◯を押して、ゆっくり歩く。

俺はすぐに歩く速度を落とす。

二人は先に行った。

赤ずきんは俺に会釈するだけ。

まあ、それだけでも構わないだろう。

反応してくれたからな。

森の中を歩いていく。

そして、やっとボス部屋についた。

ディアベルという奴がこの攻略を仕切っているようだ。

ディアベルは説明をしていて、彼の声が響いている。

俺は一人、自分の剣、クロウエッジを見ている。

耐久値が、減っていないのだ。

 

(なるほど、永久武器か………)

 

そう思った瞬間、俺は肩を叩かれた。

褐色系のごつい男だ。

背は俺より少し高いくらい。

坊主頭で、すごく、怖い。

 

「あんた、ソロで行くのか?」

 

「ああ………、βテスターだし…………、基本一人じゃないと、みんな邪魔だし………。形ではあの黒髪ショートの男と、赤ずきんの女のパーティに入ってるから一応問題はない……」

 

「やめとけ、武器はなんだ?」

 

「なんでも出来る………。直剣、短剣、両手斧、槍、両手剣、どれでも…………。ステータスは筋力を目指してる」

 

「ふむ………、まあ、出来ると言うならそうなんだろう。俺はエギルだ。両手斧を使っている」

 

「…………、俺はカオナシ。今は基本直剣で戦っている」

 

エギルは笑顔で俺の言葉に納得したようだった。

すると、ドアが開かれた。

皆が走り出す。

 

「死ぬなよ」

 

「エギルさんもな」

 

エギルさんが走り出し、俺も走る。

ボスが現れた。

 

イルファング・ザ・コボルトロード

 

斧とバックラーを装備した、ボスだ。

そしてそれを取り巻くのは、ルイン・コボルト・センチネルだ。

俺は走り出す。

勿論、ボス一直線で。

 

「ちょお待ち!!って!?マジで待たんかい!!死にたいんか!?」

 

無視!

なんか大阪弁がベラベラぶちまかれているが気にしない。

俺は全てを無視しつつ、イルファング・ザ・コボルトロードの懐まで詰め寄る。

トップスピードでコボルトロードの脇腹をかすめるようにクロウブレードで斬りつける。

当たり前だが、十倍のダメージ判定。

コボルトロードのHPバーは4本あるが、1本目のうち六分の一減った感じ。

ヒットアンドアウェイ戦法をすれば行けるだろう。

そして、何より、俺はスピード型。

トップスピード一歩手前で十二分の一。

もし、トップスピードではなくその手前なら、後46回ヒットアンドアウェイを繰り返さなければならない。

まあでも、普通なら、そんなことはあり得ない。

俺はまた背後から斬りつけようとするが、コボルトセンチネルが邪魔をする。

右後ろ、左、右後ろ、右前、と移動しつつ、コンソールを操作し、槍を取り出す。

クロウブレードを右足の鞘に入れ、槍のソードスキル、“ペイルスティング”を繰り出し、コボルトセンチネルを突き刺し、吹き飛ばす。

すると、その先にいたディアベルが、直剣のソードスキル“バーチカル”で斬りふせる。

 

「ナイス!」

 

「おう!」

 

俺がそう言うと、ディアベルは笑顔で返す。

俺はまたコボルトロードを相手にしようとした。その時だ。

ディアベルが吹き飛ばされた。

 

 

「え?」

 

 

俺は何が起こったか分からなかった。

そうだ。

俺の吹っ飛ばした方向はどこだった?

そうだ、コボルトロードの付近だ。

つまり、ディアベルはコボルトセンチネルを俺が吹っ飛ばしたことで、吹っ飛ばされた!!

俺は瞬間的にディアベルに近付き、この間のクロウブレード入手のクエストで手に入れた現時点での最高体力回復アイテム、回復晶をディアベルに与える。

HPは黄色の半分ちょっとだったが、すぐに緑に戻る。

俺は少し考えとは違うことになると、焦ってしまうらしい。

注意しなければ。

 

「ありがとう……、ハハッ、少し油断した……」

 

「おいおい………、ナイト、あんたが死んだらモチベーションがだだ下がりだぞ」

 

「気をつけるよ………」

 

「………、後ろがどうやら、苦戦しているようだ。タゲも他の人に渡ったし、ちょっと行ってくる」

 

「分かった。君も、注意してくれ」

 

俺はディアベルから離れ、四体のコボルトセンチネルがのさばっている、先ほどの大阪弁が苦戦しているところへ向かう。

コボルトセンチネルは鎧を着ている。

よって、弱点は喉などの首回りだ。

俺は槍のソードスキル、“ラインブロウ”という横斬りをコボルトセンチネル二体の首にヒットさせ、HPを削り取り、殺す。

ソードスキル後の硬直が入るが、残りニ体なら問題なかったのか、すぐに型がつき、硬直が解ける。

 

「おい、あんた、今すぐ「いいか、関西人、よく聞け。お前はのさばる雑魚を分散させつつ、倒せ。俺はボスの前に出張る。あんたはテスターじゃないんだろう?」な!?お前さんはテスターやったんかいな!?」

 

「ああ、そうだ。だが、関西人、お前よりは戦える」

 

そう言いつつ、俺は槍を振り回し、左から来ていたコボルトセンチネルを斬りつけ、最終的に突き刺し、殺す。

 

「いいな?やるんだったら徹底的にだ」

 

「わ、分かったが!お前さんは後ろやろ!?」

 

俺は大阪弁の言葉を背中に受けつつ、走る。

ボスのHPは3本目へと突入した。

その瞬間、コボルトロードの速度が少し上がった。

 

「おいおい………、速度上がってるぞ!」

 

黒髪の少年、俺を一応のパーティに入れてくれたキリトという少年がそう叫んだ。

彼と後もう一人、アスナという少女は無言でそれを眺めつつ、コボルトセンチネルの喉を突き刺し、ポリゴン片へと還元する。

 

「おい!どうなってやがる!?」

 

「もしかしたら…………、HPが下がるたびに速度が上がるのか!?それに、バーが赤になった瞬間、武器が変わるとしたら!!」

 

「チッ!」

 

キリトの考えを聞いて、最悪を考え、俺は最前線へ戻る。

 

「エギルさん!肩借ります!!」

 

「え、あ、ああ!!」

 

俺は全力で走り、飛んで、エギルの肩を踏みしめ、上に飛ぶ!

コンソールを操作し、槍を収納、そして、両手斧を取り出す!

目標はセンター!

一気に行く!

 

「どっせえええええいい!!」

 

俺は可能な限り大声でそう言いつつ、振りかざし縦に斬る両手斧ソードスキル、アインブラストを決める!

それで斧を弾き、腹部を切り裂く!

だが、やはりクロウブレードのようにはいかず、HPはドット減るくらい。

硬直が解け、離れる。

そこに、斧ソードスキル、“ラッカス・ブレイク”が放たれ、ギリギリで回避した。

その瞬間に俺は腕を攻撃し、またヘイトを集めるが、足りない。

おれは、一瞬で口を開き、息を目一杯吸う!

そして、“叫んだ”。

 

「お前ごときに負けねえぞおおおおおおおおおッッッッッッッ!!!!!!!」

 

ヘイト集中スキル“威嚇(ハウル)”。

これを行うことにより、敵のヘイトを全て俺に向ける。

 

「ゔあああああああ!!!」

 

コボルトロードが叫び、俺に斧を振りかざす!

だが、俺は体格の細さを生かしてスレスレで避け、また武器を変えるためにコンソールを操作する。

数回斧が俺に振られるがかすりもしない。

両手斧を収納し、再びクロウブレードに戻す。

そして、一瞬で踏み出し、脇腹を斬った。

その瞬間に、HPバーが残り一本となる!

すると変化が起きた。

コボルトロードの持っている武器が野太刀に変わったのだ!

俺はそれを見て、妙だと考えた。

βテストの時はもっと小さかったはずだ!!

 

「だ……だめだ!下がれ!全力で後ろに跳べっ!!!!!!」

 

俺がそう思っていたらキリトが叫んだ!

コボルトロードは垂直に飛び、降りようとしていた。

ぎりりと体をひねり、武器に威力を溜め込んだ状態で。

刀ソードスキル旋車(ツムジグルマ)。

刀を全方向360度に回転しつつ、切り捨てる攻撃。

俺はそれを見据え、コンソールを操作、取り出したのは両手剣。

刀身の腹に手を添え、2Hブロックを発動。

このソードスキル旋車はダメージとスタンがある。

だが、このガードはそういったものを阻む能力がある。

そして、これは“カウンターソードスキル”につなげることができる。

剣に衝撃が走った、瞬間、上にそらす!

 

「よっ!」

 

俺はその瞬間に刀身を赤く光らせる。

カウンタースキル“リヴァースインパルス”。

上に軌道をそらし、俺は思いっきり時計回りに回転しつつ、武器を遠心力をかけるように、外側に回す!

コボルトロードの足を大きく削る。

HPは更に減る。

俺はコボルトロードの後ろに回り、ソードスキル後の硬直に入る。

ソードスキル後の硬直はソードスキルの後、約二秒後から起こる。

だが、それは空中にいた場合は両足で着地し、バランスが安定した場合から起こる。

それを利用し、後ろに行くまで、バランスを崩しつつ向かうことにより、硬直が少し遅れるわけだ。

一瞬俺の場所を見失ったコボルトロードは俺を探すように、あたりを見回す。

そして、俺を………………、ヘイト対象から外した?

待て!

待て待て!

俺以外はスタンで動けない!

これじゃ、また…………

 

 

 

 

 

 

 

 

ディアベルが死ぬ。

 

「やめろおおおおおおお!!」

 

ソードスキル硬直が解け、俺は素早くディアベル達の前に出る。

それと同時にコボルトロードが上に飛んだ!

俺はディアベルとそれに従っていた奴らを蹴り飛ばし、一人でコボルトロードに立ち向かうが、無理があるのは明らかだ。

 

「キリト!!アスナ!こっち側に回れ!!」

 

「!!分かった!!」

 

「!」コクリッ!

 

コボルトロードの三連撃ソードスキル、緋扇!

俺は全てすんでで剣で滑らせ、全ての斬撃をずらす!

三撃目!!

俺はソードスキル、ホリゾンタルで三撃目を弾く!!

 

「スイッチ!!」

 

「はあああ!!」

 

キリトが剣を唸らせ、ソードスキル、バーチカルアークを放つ!

そのすぐ後、アスナが続き、リニアーを放つ。

俺はキリトに言う。

 

「これなら、ラストアタックは、俺らかな?」

 

「だな、どうする?」

 

「二人同時に出るか、俺が右で左手、あんたが左で右手だ。どうだ?」

 

「へぇ、いいな」

 

「じゃ、決まりだ。アスナ!スイッチ行くぞ!」

 

「!」コクリッ!

 

俺とキリトは頷き合い、同時に走り出し、同じモーションを取る。

すると、コボルトロードの一撃が、アスナのフードの耐久値を削り取った!

だが、アスナには当たっていなかったのか、アスナのモーションは止まらない。

アスナの栗色の髪がさらりと表れ、流れるようにアスナが武器を弾いた!

 

「「スイッチ!!」」

 

俺とキリトが同時に言い、前に出る!

勿論、技は決まっている。

直剣二連撃技、バーチカルアーク!

 

「「うおおおおおおおおお!!!!」」

 

Wの文字に切り裂き、俺とキリトは舞い降りるように、技を終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

しかも、

 

「ラストアタックボーナスはどうだ?」

 

「俺来たけど、キリトには?」

 

「俺にも来た」

 

「同時に決めたとはいえ、本当にラストアタックボーナスが二人に渡るなんてな」

 

そう言い、二人で笑う。

ラストアタックボーナスは二人で分けっこだ。

だが、回りから、非難の視線が俺らを襲う。

そして大阪弁が俺に非難の声を吐いた。

 

「あんたらは!グループ行動がでけへんのか!!」

 

「いや、あんたらだけでも後ろは行けると思った。それに、あの後の行動が見えたからこの二人を呼んだ。避難するなら俺にしろ」

 

「そうか!じゃあ、あんたに言うたる。LAを俺らに差し出せ」

 

「はいはい」

 

「…………て、え?」

 

「金しか来てないからな。みんなで山分けするんだぞ」

 

俺はコンソールを操作し、皆が受け取ったであろう金額の約十倍の金を出す。

ジャラジャラと出て来る金をみて、皆が驚く。

 

「全部で二十万くらいだ。あんたらはきちんと全員で、山分けしてくれよ」

 

「こ、こんなに、ええんか?」

 

「まだ所持金はある。じゃあ、俺は上のアクティベートを」

 

「…………………チートだ………。チートを使ってるんだ」

 

「そうだ………、ボスの攻撃を全て避けたり、当たっていてもすかしてたんだろ!?」

 

でっち上げ、と呼ばれるものだろうが、皆にはそう思われるだろう。

キリトは否定しようと首を振るが、皆には通じない。

まあ、そのでっち上げに乗るのも、悪くない。

 

「はぁ………、じゃあ、まあその通り、と言っておくか。お前らよりも情報を持っているのは事実……、特定の層のボスはどう言ったものか知っている。お前らよりな」

 

「なんだ………と?」

 

「βテスターなのは認めてる。それでチーターって呼ばれてもしょうがない?じゃかあしい。混ぜてビーターって呼んでみろ。しっくり来るかもな。」

 

「チーター、βテスター、プラスでビーター……、あんたはそれを自分で言っておもろいんか?」

 

「おもろいおもろい、もっちろんおもろい。俺はビーターカオナシ。それでいいじゃねぇか。次の層のアクティベートは任せろ。だが………、いつか、俺は最前線から手を引く。その時までは、手を貸してやろう」

 

非難の目を浴びながら、そして静かに俺は階段を上がる。

螺旋階段を淡々と上がる。

俺はラストアタックボーナスである、コートオブデスサイズを着る。

コートは紅と黒のコートで、コートオブミッドナイトの青が紅くなっているらしい。

 

「ま、まってくれ!」

 

キリトだ。

俺と同じくラストアタックボーナスのコートオブミッドナイトを着ている。

 

「なんだ?事実、俺は見切りで全て避けたんだ。ああ言われてもおかしくないが?」

 

「いや……、その……、後ろで戦ってた俺に、ラストアタックをくれたのはカオナシ、お前だ。ありがとう……」

 

「いや、俺をチームに入れてくれたお礼だ。あ、アスナにもなんか……」

 

「ねぇ、なんで私とキリトの名前を知ったの?」

 

「はい?」

 

「だってどこにも表示がないじゃない。なんで知ったのよ」

 

「顔を動かさず目だけ左向いてみ、そこに表記あるから」

 

俺はそう言い、コンソールを操作する。

何を出そう……、何か、あ、金しかねぇや。

すると、アスナが笑い出した。

 

「フフッ、なぁんだ!こんなところに書いてあったのね〜」

 

……………、金を出せる雰囲気ではなくなった。

彼女の笑顔は、心洗われる感じ。

女神の微笑みか………?

俺は言う。

 

「アスナ、その笑顔振りまいといたほうが得するぞ。いい笑顔だ。このゲームは生きる上では笑顔は必要ないかもしれんが………、士気向上などなどで、やはり表情は必要になるからな」

 

「フェイス……、レス?それが……、なんでこんな名前なんです?」

 

「カオナシ、っつープレイヤーネームでβの時プレイしてたからな、それを英語のしただけだ」

 

「え?じゃあ、俺のこと……」

 

「知ってるし一緒に戦ったのも覚えてるぞ、キリト。じゃあ、俺はコンバートしたら戻って幼馴染連れて二層の攻略するわ。っつーことで、先行くけど、グループは解消しよう。幼馴染にも、死んでほしくないんでね」

 

俺は足早にそう言うと、コンソールを操作して、グループから抜ける。

 

「まあ、これからボス戦では会うだろうし、フレだけ登録しといてくれ、じゃあな!」

 

俺は階段を駆け上がる。

二人の顔を見ないように。

俺が、前を見続けられるように。

 

 

 

 

 

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