ソードアート・オンライン 崩壊幻想(Broken Phantasm) 作:黒木龍牙
「お、おはようございます………」
一人でそう呟きつつ、起きる。
ぞろぞろと、歩いてボス部屋に向かう皆。
俺は皆についていく。
未だに目覚ましのあまりの大きさに、頭がガンガンする中、ゆっくりと歩く。
何故、宿屋に泊まらないか。
それは攻略組の皆が使っていたから。
入れるところを探すのが面倒だったというのがある。
すると、少年少女二人組に話しかけられた。
黒髪少年と、赤ずきん少女だ。
「なあ、あんた………、昨日の会議、出席してたか?」
「いや………、実は遅れてな、パーティを組めって言われたんだけど、まあ、遅れたもんだから無理でさ………」
「じゃあ、俺らと組まないか?」
「あ…………、うん。でも、俺一人で突っ走るよ?」
「おいおい………、ゲームオーバー=死の世界なんだぞ?」
「……………、いや、敵の攻撃はストレートすぎてつまらん。見切りで避けられるし。問題ないだろ…………」
「じゃあ、パーティ申請だけ送っておく。とりあえず……、死ぬなよ」
「おう。お前さんらもな」
俺の目の前にパーティに入るか、と言う文字と、◯と×のマークが出た。
迷いなく、◯を押して、ゆっくり歩く。
俺はすぐに歩く速度を落とす。
二人は先に行った。
赤ずきんは俺に会釈するだけ。
まあ、それだけでも構わないだろう。
反応してくれたからな。
森の中を歩いていく。
そして、やっとボス部屋についた。
ディアベルという奴がこの攻略を仕切っているようだ。
ディアベルは説明をしていて、彼の声が響いている。
俺は一人、自分の剣、クロウエッジを見ている。
耐久値が、減っていないのだ。
(なるほど、永久武器か………)
そう思った瞬間、俺は肩を叩かれた。
褐色系のごつい男だ。
背は俺より少し高いくらい。
坊主頭で、すごく、怖い。
「あんた、ソロで行くのか?」
「ああ………、βテスターだし…………、基本一人じゃないと、みんな邪魔だし………。形ではあの黒髪ショートの男と、赤ずきんの女のパーティに入ってるから一応問題はない……」
「やめとけ、武器はなんだ?」
「なんでも出来る………。直剣、短剣、両手斧、槍、両手剣、どれでも…………。ステータスは筋力を目指してる」
「ふむ………、まあ、出来ると言うならそうなんだろう。俺はエギルだ。両手斧を使っている」
「…………、俺はカオナシ。今は基本直剣で戦っている」
エギルは笑顔で俺の言葉に納得したようだった。
すると、ドアが開かれた。
皆が走り出す。
「死ぬなよ」
「エギルさんもな」
エギルさんが走り出し、俺も走る。
ボスが現れた。
イルファング・ザ・コボルトロード
斧とバックラーを装備した、ボスだ。
そしてそれを取り巻くのは、ルイン・コボルト・センチネルだ。
俺は走り出す。
勿論、ボス一直線で。
「ちょお待ち!!って!?マジで待たんかい!!死にたいんか!?」
無視!
なんか大阪弁がベラベラぶちまかれているが気にしない。
俺は全てを無視しつつ、イルファング・ザ・コボルトロードの懐まで詰め寄る。
トップスピードでコボルトロードの脇腹をかすめるようにクロウブレードで斬りつける。
当たり前だが、十倍のダメージ判定。
コボルトロードのHPバーは4本あるが、1本目のうち六分の一減った感じ。
ヒットアンドアウェイ戦法をすれば行けるだろう。
そして、何より、俺はスピード型。
トップスピード一歩手前で十二分の一。
もし、トップスピードではなくその手前なら、後46回ヒットアンドアウェイを繰り返さなければならない。
まあでも、普通なら、そんなことはあり得ない。
俺はまた背後から斬りつけようとするが、コボルトセンチネルが邪魔をする。
右後ろ、左、右後ろ、右前、と移動しつつ、コンソールを操作し、槍を取り出す。
クロウブレードを右足の鞘に入れ、槍のソードスキル、“ペイルスティング”を繰り出し、コボルトセンチネルを突き刺し、吹き飛ばす。
すると、その先にいたディアベルが、直剣のソードスキル“バーチカル”で斬りふせる。
「ナイス!」
「おう!」
俺がそう言うと、ディアベルは笑顔で返す。
俺はまたコボルトロードを相手にしようとした。その時だ。
ディアベルが吹き飛ばされた。
「え?」
俺は何が起こったか分からなかった。
そうだ。
俺の吹っ飛ばした方向はどこだった?
そうだ、コボルトロードの付近だ。
つまり、ディアベルはコボルトセンチネルを俺が吹っ飛ばしたことで、吹っ飛ばされた!!
俺は瞬間的にディアベルに近付き、この間のクロウブレード入手のクエストで手に入れた現時点での最高体力回復アイテム、回復晶をディアベルに与える。
HPは黄色の半分ちょっとだったが、すぐに緑に戻る。
俺は少し考えとは違うことになると、焦ってしまうらしい。
注意しなければ。
「ありがとう……、ハハッ、少し油断した……」
「おいおい………、ナイト、あんたが死んだらモチベーションがだだ下がりだぞ」
「気をつけるよ………」
「………、後ろがどうやら、苦戦しているようだ。タゲも他の人に渡ったし、ちょっと行ってくる」
「分かった。君も、注意してくれ」
俺はディアベルから離れ、四体のコボルトセンチネルがのさばっている、先ほどの大阪弁が苦戦しているところへ向かう。
コボルトセンチネルは鎧を着ている。
よって、弱点は喉などの首回りだ。
俺は槍のソードスキル、“ラインブロウ”という横斬りをコボルトセンチネル二体の首にヒットさせ、HPを削り取り、殺す。
ソードスキル後の硬直が入るが、残りニ体なら問題なかったのか、すぐに型がつき、硬直が解ける。
「おい、あんた、今すぐ「いいか、関西人、よく聞け。お前はのさばる雑魚を分散させつつ、倒せ。俺はボスの前に出張る。あんたはテスターじゃないんだろう?」な!?お前さんはテスターやったんかいな!?」
「ああ、そうだ。だが、関西人、お前よりは戦える」
そう言いつつ、俺は槍を振り回し、左から来ていたコボルトセンチネルを斬りつけ、最終的に突き刺し、殺す。
「いいな?やるんだったら徹底的にだ」
「わ、分かったが!お前さんは後ろやろ!?」
俺は大阪弁の言葉を背中に受けつつ、走る。
ボスのHPは3本目へと突入した。
その瞬間、コボルトロードの速度が少し上がった。
「おいおい………、速度上がってるぞ!」
黒髪の少年、俺を一応のパーティに入れてくれたキリトという少年がそう叫んだ。
彼と後もう一人、アスナという少女は無言でそれを眺めつつ、コボルトセンチネルの喉を突き刺し、ポリゴン片へと還元する。
「おい!どうなってやがる!?」
「もしかしたら…………、HPが下がるたびに速度が上がるのか!?それに、バーが赤になった瞬間、武器が変わるとしたら!!」
「チッ!」
キリトの考えを聞いて、最悪を考え、俺は最前線へ戻る。
「エギルさん!肩借ります!!」
「え、あ、ああ!!」
俺は全力で走り、飛んで、エギルの肩を踏みしめ、上に飛ぶ!
コンソールを操作し、槍を収納、そして、両手斧を取り出す!
目標はセンター!
一気に行く!
「どっせえええええいい!!」
俺は可能な限り大声でそう言いつつ、振りかざし縦に斬る両手斧ソードスキル、アインブラストを決める!
それで斧を弾き、腹部を切り裂く!
だが、やはりクロウブレードのようにはいかず、HPはドット減るくらい。
硬直が解け、離れる。
そこに、斧ソードスキル、“ラッカス・ブレイク”が放たれ、ギリギリで回避した。
その瞬間に俺は腕を攻撃し、またヘイトを集めるが、足りない。
おれは、一瞬で口を開き、息を目一杯吸う!
そして、“叫んだ”。
「お前ごときに負けねえぞおおおおおおおおおッッッッッッッ!!!!!!!」
ヘイト集中スキル“威嚇(ハウル)”。
これを行うことにより、敵のヘイトを全て俺に向ける。
「ゔあああああああ!!!」
コボルトロードが叫び、俺に斧を振りかざす!
だが、俺は体格の細さを生かしてスレスレで避け、また武器を変えるためにコンソールを操作する。
数回斧が俺に振られるがかすりもしない。
両手斧を収納し、再びクロウブレードに戻す。
そして、一瞬で踏み出し、脇腹を斬った。
その瞬間に、HPバーが残り一本となる!
すると変化が起きた。
コボルトロードの持っている武器が野太刀に変わったのだ!
俺はそれを見て、妙だと考えた。
βテストの時はもっと小さかったはずだ!!
「だ……だめだ!下がれ!全力で後ろに跳べっ!!!!!!」
俺がそう思っていたらキリトが叫んだ!
コボルトロードは垂直に飛び、降りようとしていた。
ぎりりと体をひねり、武器に威力を溜め込んだ状態で。
刀ソードスキル旋車(ツムジグルマ)。
刀を全方向360度に回転しつつ、切り捨てる攻撃。
俺はそれを見据え、コンソールを操作、取り出したのは両手剣。
刀身の腹に手を添え、2Hブロックを発動。
このソードスキル旋車はダメージとスタンがある。
だが、このガードはそういったものを阻む能力がある。
そして、これは“カウンターソードスキル”につなげることができる。
剣に衝撃が走った、瞬間、上にそらす!
「よっ!」
俺はその瞬間に刀身を赤く光らせる。
カウンタースキル“リヴァースインパルス”。
上に軌道をそらし、俺は思いっきり時計回りに回転しつつ、武器を遠心力をかけるように、外側に回す!
コボルトロードの足を大きく削る。
HPは更に減る。
俺はコボルトロードの後ろに回り、ソードスキル後の硬直に入る。
ソードスキル後の硬直はソードスキルの後、約二秒後から起こる。
だが、それは空中にいた場合は両足で着地し、バランスが安定した場合から起こる。
それを利用し、後ろに行くまで、バランスを崩しつつ向かうことにより、硬直が少し遅れるわけだ。
一瞬俺の場所を見失ったコボルトロードは俺を探すように、あたりを見回す。
そして、俺を………………、ヘイト対象から外した?
待て!
待て待て!
俺以外はスタンで動けない!
これじゃ、また…………
ディアベルが死ぬ。
「やめろおおおおおおお!!」
ソードスキル硬直が解け、俺は素早くディアベル達の前に出る。
それと同時にコボルトロードが上に飛んだ!
俺はディアベルとそれに従っていた奴らを蹴り飛ばし、一人でコボルトロードに立ち向かうが、無理があるのは明らかだ。
「キリト!!アスナ!こっち側に回れ!!」
「!!分かった!!」
「!」コクリッ!
コボルトロードの三連撃ソードスキル、緋扇!
俺は全てすんでで剣で滑らせ、全ての斬撃をずらす!
三撃目!!
俺はソードスキル、ホリゾンタルで三撃目を弾く!!
「スイッチ!!」
「はあああ!!」
キリトが剣を唸らせ、ソードスキル、バーチカルアークを放つ!
そのすぐ後、アスナが続き、リニアーを放つ。
俺はキリトに言う。
「これなら、ラストアタックは、俺らかな?」
「だな、どうする?」
「二人同時に出るか、俺が右で左手、あんたが左で右手だ。どうだ?」
「へぇ、いいな」
「じゃ、決まりだ。アスナ!スイッチ行くぞ!」
「!」コクリッ!
俺とキリトは頷き合い、同時に走り出し、同じモーションを取る。
すると、コボルトロードの一撃が、アスナのフードの耐久値を削り取った!
だが、アスナには当たっていなかったのか、アスナのモーションは止まらない。
アスナの栗色の髪がさらりと表れ、流れるようにアスナが武器を弾いた!
「「スイッチ!!」」
俺とキリトが同時に言い、前に出る!
勿論、技は決まっている。
直剣二連撃技、バーチカルアーク!
「「うおおおおおおおおお!!!!」」
Wの文字に切り裂き、俺とキリトは舞い降りるように、技を終わらせた。
しかも、
「ラストアタックボーナスはどうだ?」
「俺来たけど、キリトには?」
「俺にも来た」
「同時に決めたとはいえ、本当にラストアタックボーナスが二人に渡るなんてな」
そう言い、二人で笑う。
ラストアタックボーナスは二人で分けっこだ。
だが、回りから、非難の視線が俺らを襲う。
そして大阪弁が俺に非難の声を吐いた。
「あんたらは!グループ行動がでけへんのか!!」
「いや、あんたらだけでも後ろは行けると思った。それに、あの後の行動が見えたからこの二人を呼んだ。避難するなら俺にしろ」
「そうか!じゃあ、あんたに言うたる。LAを俺らに差し出せ」
「はいはい」
「…………て、え?」
「金しか来てないからな。みんなで山分けするんだぞ」
俺はコンソールを操作し、皆が受け取ったであろう金額の約十倍の金を出す。
ジャラジャラと出て来る金をみて、皆が驚く。
「全部で二十万くらいだ。あんたらはきちんと全員で、山分けしてくれよ」
「こ、こんなに、ええんか?」
「まだ所持金はある。じゃあ、俺は上のアクティベートを」
「…………………チートだ………。チートを使ってるんだ」
「そうだ………、ボスの攻撃を全て避けたり、当たっていてもすかしてたんだろ!?」
でっち上げ、と呼ばれるものだろうが、皆にはそう思われるだろう。
キリトは否定しようと首を振るが、皆には通じない。
まあ、そのでっち上げに乗るのも、悪くない。
「はぁ………、じゃあ、まあその通り、と言っておくか。お前らよりも情報を持っているのは事実……、特定の層のボスはどう言ったものか知っている。お前らよりな」
「なんだ………と?」
「βテスターなのは認めてる。それでチーターって呼ばれてもしょうがない?じゃかあしい。混ぜてビーターって呼んでみろ。しっくり来るかもな。」
「チーター、βテスター、プラスでビーター……、あんたはそれを自分で言っておもろいんか?」
「おもろいおもろい、もっちろんおもろい。俺はビーターカオナシ。それでいいじゃねぇか。次の層のアクティベートは任せろ。だが………、いつか、俺は最前線から手を引く。その時までは、手を貸してやろう」
非難の目を浴びながら、そして静かに俺は階段を上がる。
螺旋階段を淡々と上がる。
俺はラストアタックボーナスである、コートオブデスサイズを着る。
コートは紅と黒のコートで、コートオブミッドナイトの青が紅くなっているらしい。
「ま、まってくれ!」
キリトだ。
俺と同じくラストアタックボーナスのコートオブミッドナイトを着ている。
「なんだ?事実、俺は見切りで全て避けたんだ。ああ言われてもおかしくないが?」
「いや……、その……、後ろで戦ってた俺に、ラストアタックをくれたのはカオナシ、お前だ。ありがとう……」
「いや、俺をチームに入れてくれたお礼だ。あ、アスナにもなんか……」
「ねぇ、なんで私とキリトの名前を知ったの?」
「はい?」
「だってどこにも表示がないじゃない。なんで知ったのよ」
「顔を動かさず目だけ左向いてみ、そこに表記あるから」
俺はそう言い、コンソールを操作する。
何を出そう……、何か、あ、金しかねぇや。
すると、アスナが笑い出した。
「フフッ、なぁんだ!こんなところに書いてあったのね〜」
……………、金を出せる雰囲気ではなくなった。
彼女の笑顔は、心洗われる感じ。
女神の微笑みか………?
俺は言う。
「アスナ、その笑顔振りまいといたほうが得するぞ。いい笑顔だ。このゲームは生きる上では笑顔は必要ないかもしれんが………、士気向上などなどで、やはり表情は必要になるからな」
「フェイス……、レス?それが……、なんでこんな名前なんです?」
「カオナシ、っつープレイヤーネームでβの時プレイしてたからな、それを英語のしただけだ」
「え?じゃあ、俺のこと……」
「知ってるし一緒に戦ったのも覚えてるぞ、キリト。じゃあ、俺はコンバートしたら戻って幼馴染連れて二層の攻略するわ。っつーことで、先行くけど、グループは解消しよう。幼馴染にも、死んでほしくないんでね」
俺は足早にそう言うと、コンソールを操作して、グループから抜ける。
「まあ、これからボス戦では会うだろうし、フレだけ登録しといてくれ、じゃあな!」
俺は階段を駆け上がる。
二人の顔を見ないように。
俺が、前を見続けられるように。