ソードアート・オンライン 崩壊幻想(Broken Phantasm) 作:黒木龍牙
「ーい、お〜い。起きて。朝だよ〜」
眠い。
肩を持たれ、揺さぶられる。
まだ眠いんだ。
右手で持たれた手を押しのけ、布団を掴んで肩までもう一度被り直す。
「朝だっつってんのよ!起きろ!」
「うお!?」
敷布団ごと上に吹っ飛ばされ、天井にぶつかりそうになるのをなんとか手をついて、天井に顔面をぶつけることは回避。
未だに残っている上に向かう力を天井に蹴り、地面に降りる。
目の前には、赤を基調とした服を着て、その上から白いエプロンをつけている女の子。
さらに特徴を言うならば、初期では茶髪だったのに、武具店開いてすぐに、友達に1日だけベイビーピンクにしてくれと言われ、従ったのだが、予想外に客筋が伸び、そのままにしているショートヘアに少し丸顔ではあるものの、整った顔立ちで頰のそばかすがチャームポイントの女の子だ。
「起きたわね」
「ああ…………、おはよう、リズベット」
そう、こいつはリズベット。
俺と生活を共にしている幼馴染だ。
ちなみに今日は休日のはず。
俺は一日置きに休日とモンスター狩りを繰り返している。
で、休日は目覚ましをかけていないから起きないのだ。
だからこそ、起こしに来たのだろうが……、何故に?
「早く顔洗いなさい。そんで着替えて。あんたにお客さんが来てんのよ」
「客ぅ〜?どんなやつだ?」
俺はリズに言いつつ、洗面所に向かい、顔を洗う。
「黒髪で、全身黒の男」
「ぶぶっ!?けごっ!くぶふ!!」
水を思いっきり飲み込んで咳き込んでしまった。
なんでここがわかった!?
俺は水を拭いて、服を変えて、母屋から武具店に入る。
「よ、カオナシ、今のはお前の彼女か?」
「……………、俺の妹分、幼馴染だ」
「そうか…………、お前の店ってアスナに教えてもらったんだ」
「……………そうか」
アスナめ…………、覚えてろよ………。
リズベットとアスナは親友だと言う事から、アスナはよく来る。
ちなみに、この場所、リンダースの街にある水車付きの家を買った理由はリズにせがまれたからだ。
まあ、俺もいいところだとは思うし、その時の俺の所持金の2割程度だったので全然問題なかった。
まあ、リズベットも超必死になって、この家を買うときに必要な鍛治レベルまで上げてたからな。
「ってか、いつから同棲始めたんだ?んな事アルゴからも聞かなかったぞ」
「ったりめえだ。アルゴに口止め料として月300,000コル払ってるからな」
「うわ、それきつくないか?お前の情報を手に入れられなくなってから半年は経つぞ」
「そ、俺が払い始めたのもそれくらいだ。今じゃリズベットが主にこの店を仕切ってるから、俺がここに住んでることを知ってるのは、アスナとアルゴ、それにシリカっつー女の子のみだ」
「……………、なんでお前がシリカのこと知ってるんだ?」
「追っかけに合ってたところ、ここに走りこんで来てな。かくまったんだ。って、ピナを助けてもらった黒ずくめって、お前か」
シリカはソードアートオンライン内では特殊なビーストテイマーと呼ばれる、モンスターにある一定の果実などを与えると、確率でテイムすることができるプレイヤーだ。
ピナというのは、そのシリカがテイムしたフェザードラゴンの名前だ。
ピナがある時、シリカをかばって攻撃を受け、死んでしまった。
だが、黒ずくめの男の人に、蘇生するアイテムを教えてもらい、連れて行ってもらったという。
そんなお人好しは、俺の知り合いには、こいつ、キリトしか思いつかなかった。
まあ、まさか本当にこいつだとは……………、9割型思ってた。
「で、どうしたのさ。俺は鍛治レベル、リズより二百は下だが?」
「うっ、そうか………、いや、エリュシデータと同等レベルの剣がもう一本欲しくてな」
「ハァ?エリュシデータと同等?お前一本しか使わねぇ………じゃ……」
その瞬間、あの男、このゲームを作った張本人の文章が思い出される。
『君の言う通り、隠しスキルを入れてみようと思う。二刀流、双剣、神速剣、暗殺剣、抜刀術、無限槍、技壊棍、冥界剣、両手長弓、そして神聖剣。この10種類だが、どう思う?』
「……………二刀流ねぇ………?」
「…………いっつも思うけど、お前って感が良すぎないか?」
「たまたまだ。だが、エリュシデータは魔剣相当だ。この店にはねぇけど、この間いい情報が手に入った。そのことに関してはリズの方がよく知ってるから、俺は引っ込む。リズ、じゃあ、あとはよろしく」
「はいはい。片手剣ね、このリズベットにおまかせあれ!」
「おう、たのむ」
部屋に戻る。
俺は服を狩り用のローブ、ロード・オブ・ブラッディアサシンを着て、アクセサリー、包帯を頭にセットする。
せっかく起きたのだ、少し狩に行こう。
目のみが出ている状態だが、息苦しいなどはない。
右目だけ出し、左目は隠す。
そして喉仏を下げて限りなく俺の出る声の中で一番低い声で言う。
「リズ………、行ってくる……。キリトを頼んだ」
「ああ、うん。行ってらっしゃい」
俺はリズベット武具店とは反対側の母屋からでて、最前線の国鉄宮へ向かった。
まあ、キリトがいるし、クリスタリティホワイトドラゴンが相手でも大丈夫だろう。
今日のノルマは四百匹のリザードマンナイト……かな。
そう思い俺は黒鉄宮の奥の奥を目指した。
「387!388!」
二匹のリザードマンナイトを連れてきて、今日のスキル上げ対象である槌、タプファーカイトでリザードマンの頭を執拗に殴る。
二匹をほぼ同時に撃破し、他のリザードマンナイトが居ないか探す。
そう言えば、あのドラゴン倒したのかな………。
メッセージを見るが、来ていない。
一回連絡…………、そう言えばここ黒鉄宮じゃん。
ここではメッセージを送受信出来なくなっている。
まあ、黒鉄宮を出れば、すぐできるようになるのだが……。
だが、あることに気がつく。
キリトとリズの選択肢が薄い文字になっている。
まさか……?
死んでないよな?
連絡できないよう、選択不能になっていやがる。
黒鉄宮や連絡不能エリアに入ると、こう行った感じになる。
まあ、不能エリア内でメッセージを作ることはできるのだが、送信できないと行った感じかな。
俺は帰りに邪魔なリザードマンを倒して、無事四百匹殺しきり、急いで一層中央区、生命の碑を目指した。
今までの人生で一番後悔する日になるのではないか。
そう感じていた。
だが、キリトが居るのだぞ。
俺より少し下くらいのレベルで、あんな弱いドラゴンに殺されはしないはずだ。
生命の碑についた。
真っ先に見たのはLの行。
もちろん探すのはLisbethの文字
Lirys
Lisa
Lisaraー
Lisatsuー
Lisbeth
Lissー
線が引かれていない。
つまり、生きているのだろう。
Kira
Kirian
Kiril
Kirito
Kitaro
キリトも死んでない。
恐らくだが、何らかの理由で連絡が取れなくなって居るんだな。
ふう、と胸を撫で下ろすように肩の力を抜く。
「フェイスくん!」
「ん?」
俺の呼ばれ方はいろいろある。
死神、カオナシ、フェイ坊、包帯の人、そして、フェイス。
そしてフェイスくんと呼んでくるのは二人しかおらず、その上でこの声は……。
「アスナか………」
「リズと連絡が取れないの!」
「ああ、俺も確認しに来た。結果は見てみろ」
アスナは俺と並び、生命の碑を見る。
だが、すぐに寂しそうな、悲しい顔を緩ませ涙を流しヘタリ込む。
「ねえ、フェイスくん、リズがいるのは何処かわかる?」
「…………、助けに行くのか?」
「もちろん。それ以外に何かあるの?」
「やめとけ、俺の考えじゃ俺らが行っても助からない。あいつらが自力で脱出するしかねぇんだよ」
俺は少し前に買っていた葉巻をストレージから取り出し、包帯の間から咥える。
ふぅ、と白い煙を口から吐く。
「でも!」
「心配すんな。あいつにはちゃんとお強い剣士様が付いてるさ………。そうそう死なねぇよ」
そう言うと、そう………、と短く返事をした。
明らかに元気がねぇな…。
「どうしたんだ?元気ねぇぞ?」
「………………、なんでもないわ……」
いや、明らかに精神的に疲れ切ってるだろお前。
何故だかかなり疲弊して見える。
そう言う時は大抵………。
「(はぁ……、キリトくんもどこに行ったのよ……。もう……)」
聞こえてるぞ〜?
はぁ………、しゃあねぇなぁ。
「好きだからって、キリトの情報をアルゴから買い占めるんじゃねぇよ」
「な、なぁっ!?」
「はっはははは!何だ、バレてないと思ってたのか?」
アスナは顔を真っ赤に染めて、腕を振り回しつつ、舌が思うように動かないくらい焦っているらしい。
全く、可愛い反応しやがるぜ。
「恋愛は難しい。支えて支えられて………。お前らはお似合いだと思うぜ」
「そう……かな……?」
「ああ、人生の先輩として、俺はキリトと付き合うのをオススメするぜ」
「…………そう……、じゃあ、フェイスくんはリズとどこまで進んだのよ」
………?
何を言っているんだ。
俺はそんな感情持ってねぇぞ?
「いや、首かしげてないで……、リズの事、好きじゃないの?」
「んーー………………、いや、良いパートナーとは思ってるけど……」
「なんで!?同棲しといてなんでそんな感じなの!?」
お、おう……。
アスナが鬼気迫る勢いで俺に顔を近づけ、怒ってくる。
リズ……、話してないのか?
「俺とリズは幼馴染、っつーか、俺はあいつのベビーシッターだったんだよ」
「べ、ベビーシッター?」
「そう、あいつが赤ちゃんの時、俺があいつと遊んだり、オムツ変えたり、色々したぞ?」
「って、フェイスくん何歳!?」
「現在26歳の研修医だ………、まあ、小さい時から一緒だから、兄妹みたいなもんだな」
「………、予想よりも年上だったわ……、そうなのね、了解しました」
「敬語はやめてくれ………、俺はフェイスレス、顔も無ければ年齢も関係ない……、質問いいか?リアルのことなんだが……」
「え?いいけど……、何?」
「須郷と知り合いか?」
「っっ!?」
「ん、その反応だけで充分だ。いざって時はあいつの情報色々掴んで、警察突き出すから」
「ま、待って、なんで」
「まあ、あいつの事は色々知ってるからさ。脱出後は頼れよ?」
「………………、私の事……、知ってるの?」
「噂程度にはね……。まあ、その話はまた今度………、お前さんも今日は帰るのが得策だぜ」
そう言って、生命の碑が置かれている広場から出る。
さてっと、リズベット武具店に戻って接客………、というか、closeの看板を下げないと……。
そんなこんなで休日は無駄に気にかけることの多い幼馴染と、俺の知り合いの子供を待つという、不安でありながら、少し、どんな物を持って帰ってくれるのか、少し楽しみだった自分がいた。
次の日だ。
アスナが早々に訪れた。
どうやら心配で眠れなかったらしく、朝早くから来た。
そんなに心配するほどでもねぇだろ。
「でも………、やっぱり心配だよ……」
「さいですか……」
仕方なく、店を閉めて、最前線ではないフィールドに身を投げ出した。
きた場所、それはまあ簡単にいうと、虫系の敵が現れるフィールドだ。
「で、ここがなんなのよ?」
「んー?ああ、いや、とある蝶の体液なんだがな」
「え、なんか嫌な予感がするんだけど……」
「プリンのカラメルくらい甘い」
「……………!?」
そう来るとは思っていなかったんだろう。
このアインクラッドにそこまで濃厚な甘みは、高級品としてかなりの値で取引されている。
味覚エンジンを詳しく調べ、毒性なども取り消せば、完全なるお菓子の甘みとなる。
「そ、そんなに甘いの?」
「ああ、この間エグゼクティブスワンのタマゴがドロップしたんで、プリンをつけてそれをかけたんだがな………、モロゾフのプリンくらい美味い」
「ちょっと、それ分かる人いるの?」
「あ?ああ、そうか…………、モロゾフは簡単にいうと関西のケーキチェーンで………、東京で有名なのだったら………、亀有のプリン屋BATONとかか?」
「……………?」
あー………、よくわかってないか……。
「あ、いえ………、モロゾフのプリンは美味しいのは知っているわ。ただ、私以外だと関西に行ったことある人くらいしか知らないと思うわ」
「納得したわ………、親父さんとかが仕事とかで買って来るのか?」
「ええ、そうよ……」
あ、遠い目してる。
おそらくお菓子の話題とかになってモロゾフのプリンを出したがわかってもらえず少し悲しい思いをしたんだな。
「そ、そうよ、プリンのカラメルくらい甘いのよね!?」
「お、おう、そうだったな。それが、あれの体液でできる」
俺が指を指した先にいたのは………。
でかい銀色のトンボだった。
アスナが絶句している。
とりあえず説明をつらつらと並べてみる。
「名前は“アルビオン・ドラゴンフライ”。名の通り、白色っつーか銀色のトンボだ。攻撃は突進、羽で風を起こして翻弄、超音波で少し軸がずらされ」
「ねえ、今動かなかったら、色々考えちゃうから…………、良いよね?」
「お、おう……」
俺が返事した瞬間、アスナの姿がかき消えた。
え?
あ、もうすでにアスナは銀トンボ目前まで迫って行っていた。
アスナは血盟騎士団の副団長を務めつつ、攻略組でも最強の中の一人だ。
通り名は閃光。
早すぎる剣先と、正確な剣さばき。
まさに光を味方につけたかのような早さを持ち、なおかつ美人である。
そして、走り出す初速もさながら、かなり早い。
筋力値をかなり上げているであろう。
ちなみに俺のステータスはほぼ全てを均等にほぼ最高値に近づけてある。
簡単に言うと、徐々に上げられる訓練を習慣のように続けた結果である。
そんなこんな考えを巡らせているうちに倒したようだ。
少しスッキリした顔で帰って来る。
カーソルを触って、取り出したのは、その体液だった。
「はい、ドロップしたわよ」
「おお、普通なら3体くらい狩らないとドロップしねぇのに……。まあ良いか、んじゃ、そろそろ帰るか」
俺たちはゆったりと歩いて帰る。
その途中で質問された。
「何故、顔をそんなに隠しているのか」と。
「左目だけ隠せば良い」と。
あんまりちゃんとした理由は無い、と言うと少し不満な顔をされた。
なので、少し補足する。
「昔から顔の傷がコンプレックスだったからだ」
「傷?」
「右頬にぱっくりと。その位置だけなぜか色が薄くてな……、よくマスクしてたからそんな感じで」
「顔を隠すのが癖みたいなものなの?」
「寒がりでもあるってのもあるかな」
なるほどねぇ、と少しは納得してくれたらしい……かな?
俺は寄るところがあると言い、体液の麻痺毒の抜き方と管理方法を教え、先に帰らせた。
そして、来たのが、27層の黒鉄宮のトラップ部屋。
そうトラップ部屋である。
昔、俺が保護していた子達のうち、一人が死んだ。
ダッカーという少年だった。
直剣使いだった彼は俺を師匠と呼んで、かなり慕ってくれていた覚えがある。
俺はよくここに、花を供えに来る。
まあ、アイテム耐久値的に、2時間ほどで消失してしまうのだが
ここの敵のレベルは、なぜか、今の攻略組でさえ、突破するのは厳しいレベルだ。
ただし、俺や最前線で最強を名乗る奴らからしたら別だ。
当時、俺と五人、キリト、アスナ、エギル、クライン、ヒースクリフ、は、攻略組の平均レベルを20以上離していた。
今では俺は攻略組の平均より、軽く30は上のレベルだが、よくここで経験値狩りをしている。
「あ、フェイスくん……」
「…………サチ……」
黒髪ショート、青を基調とした服を着た少女、サチがそこにいた。
サチはそのダッカーと同じ、月夜の黒猫団の一員だった。
このトラップ部屋でダッカーと同じく襲われたが、幸いに逃げられたのだ。
「…………ねえ、フェイスくん………。あなたが悪い訳じゃないんだよ?」
「いや…………、俺のせいだ。俺が殺したようなもんさ」
「でも………、あれはしょうがないことだったと思う……。私は……、あなたを責めない………、責められないよ……」
まあ、俺はもちろんのこと、ほぼ毎週来ているわけで……。
もちろん、キリトもいた。
だが、キリトも唐突なことで、動けなかったのだ。
26層のエリアボスのドロップ品、イマージェンシー・サモン・トライヴをサチに渡していた。
イマージェンシー・サモン・トライヴはある特定の人物を召喚することができるアイテムだった。
その特定の人物に俺を設定していたサチが俺を召喚したのだ。
俺は基本、あいつらについて行くわけでなく、家で飯を作ってやったりしていたわけだが、急にそんなところに召喚された。
その瞬間、目の前でダッカーが死んだんだ。
このトラップはいたって単純、宝箱を開けると、部屋の入り口が閉まり、転移結晶などの無効、結晶無効空間となる。
そして無限に敵が湧き続ける。
宝箱を閉じれば湧くことは無くなるがそれは混乱状態である彼らには、すぐ対処する方法が思いつかないでいたのだ。
俺はその混乱に少し思考を向けてしまった。
それが、ダッカーの死に繋がったのは事実だ。
「ねえ、また、月夜の黒猫団に来てね。あなたは、私たちの…………、英雄なんだから」
「………………分かった。Sレア食材でも持って、料理でもしに行くわ」
「っ!うん!」
俺はサチの嬉しそうな返事を聞いて、すぐにその場から離れる。
さて、じゃあ、今度リズと一緒に月夜の黒猫団のところに行ってみますかね。
帰る途中、橋の下でうずくまっているリズがいた。
なぜ店をほっぽり出して、こんなところにいるのか……。
だが、近づいてみて分かった。
すすり泣いてる……。
………。
俺は帰りに店で買ったタルトを出しつつ、リズの横に座る。
「………グズっ………」
「カラカラ芋のタルトだと………、食え」
リズは無言で顔を上げてそれを受け取る。
少し、目元が赤くなっている。
無言で咀嚼を始めたリズ。
んー、こういう時って、何してやればいいものか……。
とりあえず、頭を撫でてみる。
俺なりには、ガラス細工を触る感じで。
「……………アスナ………、キリトのこと好きなんだ……」
「ああ………、第1層からのコンビだからな……」
なんだ。
またキリトが女の子を落としたのか。
「キリトの事は、諦めたほうがいいぜ〜。アスナ結構大胆だからな〜」
「別にキリトの事なんかどうでもいいわよ。単純にアスナが話してくれなかった事が少し悲しかったってだけよ」
ありゃ?
予想のななめ右下へと変化球が飛んできた。
そうかい………、と言って、半分考えが違っていた恥ずかしさと、半分安堵の気持ちが芽生える。
キリトに惚れた女は、まあ少なくとも報われないだろうと思っているからだ。
俺の可愛い妹分が、報われないのは嫌だなと、思ったのだ。
もちろん、その理由は血盟騎士団副団長であるアスナにあるわけだが……。
「じゃ、帰ろうぜ?日が暮れる」
「うん………、ねえ、リュウ」
………。
2年前だったら、普段の呼び方だ。
だが、今はSAOの中での名前で呼ばなければ、現実の情報が出てしまう。
…………。
真面目な話か………。
「なんだ?リカ」
「私ね、あんたの事、好きよ」
「ああ、知ってる」
そう、知っている。
それは家族として、親友として、兄として、そして、異性として。
「私、結構大人になったのよ?」
「ああ、そうだな」
「そろそろ、恋人にしてくれても良いと思うんだけど」
「お前さんまだ中学生だろうが」
「………そうだけど……」
「まだ早いっての」
「でも……」
「ったく………、リカ………。俺はお前を守るっつー役割を持たされたあくまで保護者だ。お前に手を出すことなんざできるわけねえのさ」
「でもっ!!」
「いい加減諦めろ」ペシッ!
「あいたぁっ!!」
少し、うざかったので頭にチョップを入れた。
お菓子買ってくれなくてぐずる幼稚園児か。
「はぁ………、じゃあ、一緒に寝るか……。手はださねぇからな?」
「でも……、警告が……」
「解除の仕方を教えたるから………、まあ、とりあえず、帰ろうぜ?どうせ、アスナとキリトに店番任せてるんだろ?」
「うん……」
「なら、なおさら戻ったほうがいい。じゃあ、リズ、お手をどうぞ?」
俺はそう言いつつ、右手をリズに差し出す。
リズはすぐに左手を俺の右手に乗せ、握って俺が引き寄せると同時に立ち上がる。
やはり、耳元がうるさかったらしく、すぐ離した。
シチュエーションとしては最悪だな。
同じことを思ったのか、二人で笑ってしまった。
「んじゃ、オプションメニューのかなり深いところにあるコード解除をしたら警告はなくなる。今夜は俺が飯作るから、お前さんはその解除をしとけ。あ、コード名は倫理コード解除だから、他を解除するなよ?」
「う、うん……」
「制限は夜11時。もし、解除できなかったら、一緒に寝るのなしな」
「そ、それやだ!!」
「じゃあ、頑張るこった。帰るぞ〜」
「あ、ちょ、待ってよ!!」
先に走り出したはいいものの、リズの方が速かったため抜かされまして恥かきました。
夜11時。
ボアの肉などを焼いて、バップルというリンゴのソテーを一緒に食べる料理を食べた。
いやー、美味かった。
自分の料理としてはまあまあ、できた方だ。
晩飯を食べているときは、リズはオプションメニューをいじっていなかったので見つけたのかと思ったのだが………。
俺は今、自分の寝室にいるのだが、リズは……どこにいるだろうか?
すると、ドアが開いてリズが入ってきた。
その姿は、うん………、黄色のパジャマ。
可愛い。
「で、みっけた?」
「…………………」
「?」
「うん………、見つけた……」
嘘つくな嘘を。
お前さん相変わらず隠すのが下手だな。
はぁ、とため息をつく。
「こっちこい、場所教えるから」
「……ちゃんと見つけたわよ!!」
「なんだ?どうせ、分かってないのかと思ったんだが?」
「違うわよ!!恥ずかしいのよ……、あんたと寝るのが……」
「別にエロいことなんぞ望んでないけど?」
「そ、そのことじゃなくって!!普通に………、その………、抱き合って寝たりとか……」
「小さい頃はよく一緒に寝ただろう?」
「それはそれ!これはこれなの!!」
少しキレ気味に言うリズベット。
そんな怒らんでも良かろうに。
っつーか、予想が外れたことが何気にショックなんだが……。
ベッドの淵に座っていた俺の横、といっても間隔をあけて、リズはベッドに座った。
…………。
じれったい。
だが、すぐにリズは少しずつ俺の方に近付いてくる。
手が触れて、びくりと跳ねるように少し離れ、また触れる。
ゆっくり、俺の右腕に絡むように抱きつくリズ。
胸が当たる。
柔らかいなぁ。
いい匂いがする。
シャンプー変えたのか。
体温が感じられる。
暖かい。
鼓動を感じる
俺を見ている潤んだ目と目が合う。
なんで………、少し悲しそうなんだよ。
俺は左手でリズの頭を撫でる。
手を離すと、笑顔が見て取れたので、安心した
「………き………、好き……」
「ああ、知ってる。俺も、お前が大切だ」
「うんっ!」
そのあと、二人で抱き合って寝た。
もちろん、リズは俺の胸に顔を押しつけるように、そして俺はリズを優しく抱きかかえて寝た。
リズは俺を抱きしめて、ぐっすり眠っていた。
俺はそんなリズの背中をポンポンと叩きつつ、昔のことを考える。
リズは俺の膝の上が好きだった。
あぐらの上に座ったり、寝てたらお腹の上でこいつが寝てたり。
色々あったなぁとじじいのごとく考えていた。
全く………。
「ん……………、リュウ…………………」
「………」
まったく……、守らないとな………。
…………、もっと強く………、全てのスキルをマスターしてから、最後のボスに…………、この世界のボス………茅場晶彦に…………挑みたいなぁ………。
『まさか、君までこの世界に来ているとは……、まあいいだろう。君は私を敵として見ているだろうが、事実そうだ。その見方を変えろとは言わない。だが、この世界を……………、このゲームを作った私が、間違っていると思うかね?いや、私が全て正解を選んでいるとは当然人間なわけだから思わない。だが、このゲームを作り、発売し………、そしてこの世界へ閉じ込めた。この行動は正直、私としては公開などない。全力で来るといい。全力でぶちのめしてやろう』
こっちのセリフだ馬鹿野郎。
俺はそう思いながら、リズの頭を撫で、寝るのだった。
どうも、黒木龍牙です。
眠いです。
まじ眠いです。
そしてリズといちゃつきたいです。
さあさて、月夜の黒猫団との関係が明らかになりました。
ダッカーのみと言った感じにしましたが、彼が死にかけることをトラウマに思う、という感じでもよかった気もしますがまあいいでしょう。
そしてモロゾフ。
関西圏で有名なお菓子の売店です。
甘いものが好きな方は是非。
ってかリズと主人公いちゃつきすぎ。
俺と変われ龍牙。
俺も龍牙つまり、同一人物………………?
まあいいか。
ではでは。