なんとなくFate   作:銀鈴

11 / 58
ケリィは効果範囲から離れていたので暗視スコープが壊れるだけで済みました。
明日からソロモンかぁ…


フェイトの針は回る そのし

偽造呼出(コール)人類神話・雷電降臨(システム・ケラウノス)】!!」

 

 1人の発明家によって技術に降ろされた神々の雷霆が門から溢れ出し、地上を蹂躙する。莫大な閃光が世界を灼き尽くし僅かな間ではあるが、全ての監視が機能しなくなる。

 これが私の切り札。有り余る魔力と魔力操作での別の英霊の宝具(ノウブル・ファンタズム)の再現。勿論今の私は万全じゃないから威力は知れたものだけど、今のこれの目的は目眩しだから問題ない。

 

「跳ばして、ティア!」

 

 莫大な魔力のノイズと雷電の光。アサシンがいない今、そんな劣悪な環境で私の宝具を…と言うか、霊体化したティアの使う転移を見分けられる筈がない。

 

『了解』

 

 光に染まる世界の中私は、一瞬の浮遊感に包まれ倉庫街から姿を消した。雁夜おじさんには悪いけど、一応今日くらいは身を隠した方がいいかも知れない。

 斯して私は聖杯戦争の第二戦から撤退した。ん?第三戦だったかも。

 

 

 キャスターが大魔術を放ち逃走した後の倉庫街には、圧倒的な暴虐の跡が確と刻まれていた。粉微塵となったコンクリート、デリッククレーンやコンテナを始めとした金属類には未だに雷電の余波が宿り、絶縁体である筈の大気すら十分に絶縁出来ていない。

 それもその筈。本人は万全でないと断じているが、キャスターが再現し放った宝具は規格外(ランクEX)の対城宝具。サーヴァントを仕留めるには足りずとも、傷を与え、現代の世界を蹂躙し破壊するには有り余る威力だった。

 

「アイリスフィール! 無事ですか?」

「ええ、セイバーのおかげでどうにか」

 

 『風王結界(インビジブル・エア)』という空気を圧縮する宝具の存在とキャスターから1番離れていた事もあり、雷電の暴虐をセイバー陣営は殆ど無傷でやり過ごしていた。

 

「それにしても、随分と滅茶苦茶なサーヴァントね、あのキャスター」

「そうですね。正直どんな相手だったか読みきれませんでした」

 

 そうセイバーが判断するのも決しておかしくはない。なにせ登場の仕方は派手、同時に現れた英雄王を会話で退かせた後、今度はまるでバーサーカーの様にライダーを強襲、そして最後にはキャスターらしく大魔術を放ち撤退。訳がわからないにも程がある。

 

「ですが、宝具を使ってくれたお陰で真名が推測しやすくなったのは僥倖です」

 

 セイバーの持つ『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』のように、宝具の名前が判明してしまえば真名の推測は容易となる。そして今回キャスターが叫んだ宝具名は【システム・()()()()()】。ギリシャ神話の主神の別名、またはその武器である雷を示すその名は、キャスターがギリシャ神話に関連している事を表しているように思えた。

 そして、それが事実であるならば征服王に襲いかかった事も道理が通る。神霊が召喚される事はありえない筈だが、その眷属たる英雄というだけだったとしても、途轍もない脅威に違いない。

 

「とりあえず、一度帰りましょうセイバー。いつまでもここに居たって、いい事は1つもないわ」

「ええ。キリツグなら情報を掴んでいるやもしれません」

 

 そう言い帰路に着いたセイバー陣営は気づかない。キャスターが放ったのは本人の宝具でない事を。実際にはギリシャ神話どころか、どの神話にもキャスターは関係してない事を。

 

 

 気絶から立ち直ったウェイバーが見たのは、世界を埋め尽くす雷電だった。事情が全く分からない故に出した頭は、次の瞬間には自らのサーヴァントによって押し戻されていた。

 

「ちっと頭を下げておれ坊主! 死ぬぞ!」

 

 そんな事を自らのサーヴァントが告げた瞬間、搭乗するチャリオットに途轍もない衝撃が走った。だが、あくまで攻撃に使われていた物は雷。それ以上の変化はなく神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)は攻撃の効果圏内を逃れる事が出来た。

 

「い、今のはなんなんだよライダー! サーヴァントの宝具か? それともまたあのキャスターがなんかやったのか?!」

「おお! 坊主にしてはよく気づいたではないか。確かに先の雷撃はキャスターが放ったものであるが…まあ、宝具ではないだろうなぁ」

「はぁ!?」

 

 ライダーの言葉にウェイバーは驚愕する。先程のこの戦車を揺らした雷電は、明らかに宝具の域にある威力でなかったか? だというのに、キャスターの宝具はアレではない?

 そう疑問の表情を浮かべるウェイバーに、ライダーは続けて言う。

 

「なんせなぁ…仮にも主神の雷霆(ケラウノス)という名が付く宝具があるなら、この程度の威力のはずがないわい」

 

 どこか遠くを見つめて言うライダーに、何故かウェイバーは黙ってしまっている。ライダーの出自を思い出しているのか、ケラウノスという名前に何かを思っているのか。

 そしてそのまま、彼らも電気の灯らぬ街の空を駆け拠点のマッケンジー家へと帰還していった。

 

 

「主よ!!」

 

 そして今回の不意打ち、大打撃を受けたのがランサー陣営だった。ランサーの敏捷値はA+という驚愕の値だが、雷電の速さには遠く及ばない。そしてその速さ故に、サーヴァント中最も近距離で再現された宝具の直撃を受けてしまっていた。

 更に、マスターであるケイネスが隠れていた場所は再現宝具の効果範囲内のコンテナの影。サーヴァントであれば大怪我で済む雷電も、生身の人間にとっては致命傷になりうるものだった。

 

「あ、が、かぁ」

「くっ」

 

 月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)だった物が飛び散る中心で、呻き声を漏らしながらガクガクと痙攣するケイネスを抱き抱上げランサーは疾走する。

 自慢の礼装のお陰でどうにか一命を取り留めてはいるようだが、このままでは死に向かって一直線だろう。令呪の命令は既に無効、騎士王との戦いは惜しいがマスターの命が優先である。

 

「主よ、どうか……」

 

 故にランサーは夜の街を疾走する。マスターの身体に無理な力がかからないよう加減しながら、自らのマスターの妻が待つ拠点のビルに向かう。どうか、再びマスターと共に戦える事を祈って。

 

 

 一瞬の浮遊感の後、私が転移した場所は原作キャスター陣が使用していた例の下水道というか貯水槽的な場所だった。とはいっても、あのコンビが根城にしていた訳でもないのでいたって普通…寧ろ、ティアの手で少し整備されているので簡素ではあるが工房と化している。

 

「マスター、起きてマスター!」

 

 門の中に入り救出したマスターにそう呼びかけながら、私はこうなってしまった原因が分かってしまった。

 ちょっと考えてみればすぐにわかる事だった。原因は大気中の魔力過多。私が張り切って戦闘を始めたせいで門の中に充満する魔力の濃度が急激に上昇、私にとってはなんでもないそれはただの人間にとっては猛毒だ。

 

「ど、どうしようティア! 私こんな状態の人の対処法とか知らないよ!?」

 

 私は物を作るのは得意だし、魔術も近接戦も大好きだけど回復関連の事に関しては詳しくない。まあ普通の怪我とか病気ならどうにかできるけど、魔力過多で死にかけの人間なんてどうすればいいのか全く見当がつかない。

 

「マスター、とりあえず落ち着く。深呼吸。ひっひっふー、ひっひっふー」

「ひっひっふー、ひっひっふー……ってこれラァァマァァズ!!」

 

 マスターを背負ったまま私は全力で叫ぶ。全身痛いけど知った事じゃない、シータ実装はよ。何今の電波。

 

「冗談は置いとく。マスター、まず大マスターをそこに寝かせる」

「分かった!」

 

 そう言って私は、背負っていたマスターを周囲より少し高く濡れていない場所に寝かせる。今も苦しそうな顔のマスターには、正直悪い事をしたと思う。

 

「そしてマスター、これからもこの戦い方を続けるなら、同じ事は何度も起きる。神代レベルの魔力濃度は、どう足掻いても現代人には耐えられない」

「うん。でも、この中が1番安全だし…」

 

 それは分かっている。だけど、この中が1番安心安全なのに違いはないのだ。というか、その前にマスターを助けなきゃすぐにでも死んじゃうような気がするんだけど…

 

「そう。だから、今すぐマスターを強化するのを勧める」

「どういう事?」

「今のマスターの身体には、十二分に魔力が浸透している。それこそ、放っておくと暴走して死ぬくらい。だったらそれに耐え得る様、私達を運用できる様改造しちゃえばいい」

「えぇ…」

 

 些か以上にマッドな意見だなぁ…と思いつつ、実は私もおんなじ事を考えてたりする。マスターが最初に言っていた「人理焼却の際にカルデアにいられるか、生き延びられる力」にも繋がるし……その、正直このままじゃマスターは真っ当な魔術師にはならない。回路だけは私が増やしたけど、その全力稼働の負荷に本人は耐えられないだろうし…当たり前だけどそもそも才が平凡だ。

 という事はつまり、このまま聖杯戦争を生き抜いても魔術協会からは逃げられないし、捕まってホルマリン漬けコース一直線って事になる。だから、そういう風にならない為に色々と弄っちゃえばいいんだけど…

 

「マスター、怒らないかな? 自害とか命令されたらちょっとやだなぁ…折角気の合うマスターだし」

 

 いくら転生者とは言え、自分のサーヴァントにそんな事をされたら怒るし嫌うだろう。そして私はランサーでもないのに自害とかしたくない。いや、ランサー適性はあるにはあるけどそんな結末は嫌だ。

 

「やり過ぎなければ多分平気。どっちにしろ、溜まりに溜まった魔力を吸収するか、無理にでも適応させるかしか助けられないよ?」

「えぇ…なにその衝撃の真実」

 

 どっちも一応出来はする。安全に助けて平々凡々な力を手に入れさせるか、嫌われて自害させられる覚悟で改造して助けるかの二択。

 

「うん、なら後者だね。まずは最低限だけど」

「了解。結界展開、準備は出来ている」

 

 まあ一気に色々やるのは無理だし、最初は魔術回路のテコ入れだけかな。そこから本人の返事次第で段々改造していけばおっけーでしょ! 嫌なら仕舞ってるヤバイ物を渡せばいいし、最後にさいきょーに便利なキャスターたる私が魔術を教えていけばなんとかなる筈!




セイバー陣営 : 鯖・マスターほぼ無傷
ライダー陣営 : 鯖・マスター無傷
ランサー陣営 : 鯖ダメージ中・マスター重症(感電)
キャスター陣営 : 鯖ダメージ大・マスター気絶(魔力過多&改造)

あれ…?実はキャスター陣営被害大きい…そしてこの後、ケイネスさんにはまだビル爆破が待っている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。