※カニファンとは一切関係はありません
暗闇の中を私は走る。さっきキャスターには捕まった鮭飛びの術擬きも使って死に物狂いで走り続ける。まず最初にこれをやろう、とか言ったキャスターはやっぱり頭がバーサーカーだと思う。
「ほらほらマスター、頑張らないと死んじゃうよー。習うより慣れろなんだよ!」
真っ暗な貯水槽的な場所の中、キャスターの声援を聞き流しながら私は全力で移動する。拙い強化の魔術を全身に巡らせて、礼装の効果と私に施された改造の力もフルに使って私は逃げ続ける。
「bbtu? bbtu?」
刹那、私が直前までいた場所に黒光りする尖った何かが突き刺さる。否、それは脚。キャスターが訓練用とか言って取り出した、
「やぁ!」
そんなのはごめんなので、私は逃げながら反撃する。襲ってきたソイツに向かってキャスターから送られてくる無尽蔵の魔力を使い、目眩しとして炎の魔術を放つ。こんな場所で魔力を使いまくって良いのかなんて疑問は知らない。だってアレ相手にそんな事を気にしてたら即hageする事になるから。
もう声すら出せなくなるほど走り続けて、疲れきって死にそうだけど、キャスターにこれだけは言いたい。
「なんで、なんでラフムなのさ!!」
「nz:q!」
大声を出した事でせっかくの目眩しが無意味と化し、よく分からない事を叫びながらラフムが私に飛びかかってきた。魔術での迎撃…威力不足。逃走…時間が足りない。諦める?…論外。
自分でも馬鹿だ、やる必要なんてない、諦めろって分かっている。それでも私は、結末の分かりきった
「つぁ!」
まずは1回目。振り下ろされた鋭い脚を、右腕についてる巫女装束特有のヒラヒラとした部分で受け流す。視界に炎が散り、けれど完璧に攻撃を受け流してこの宝具の防御能力の高さを私に教えてくれた。
「ぁあっ!」
「2]?」
続いて2回目、2つ目の脚を今度は左腕で逸らす。ここ1時間、無駄に異世界式トレーニングなんて物を受けた訳じゃない。ほんの少しだけ…英霊に比べたら塵芥のような経験だけど、積み上げた戦闘経験的なサムシングがちゃんと働いてくれてる事に感謝する。
「ひぁっ」
「qkde? qkde!」
3回目、使われることの無いと思っていた後ろの二脚からの刺突を、脇に掠らせながら前進して回避する。でもこれでもう先が無い。
「炎よ、巨人に苦つうぐっ」
4回目、付け焼き刃の限界が訪れた。一か八かで魔術を発動させようとした瞬間、回転したラフムの腕が直撃し私は野球ボールのようにホームランされてしまう。
「けほっ」
何かに叩きつけられて水の溜まった地面に落下。それでも私に傷が無い事に驚愕してる中、起き上がった私の目の前いっぱいにあの縦に裂けた口が広がっていた。
あ、詰んだ。
「はいしゅーりょー!」
「……tzs@4d(4l)4.」
そんなキャスターの声が響いた途端、先程まで暴威を振るっていたラフムがどろりと液体になって溶けた。これで、終わり…?
「お疲れマスター、多分これで竜牙兵くらいとなら戦えるかもだよ!」
「これでまだ、竜牙兵なんだ…」
少し前のサーヴァント戦を見てなんとなく察してたけど、元一般人が戦うなんて無理があり過ぎる話じゃないだろうか? そんなコトを考えながら、もう出してるだけで疲れる巫女装束を消しキャスターの手を借りて立ち上がる。
「大丈夫だよマスター。私がいなくなる時までには、防御に徹すればサーヴァントとも戦えるくらいまでにはしてあげるから」
「それって、どこの「両義式」さんなのよさ…」
一体私はどこまで改造されるんだろうか。そうどこか遠い所に目を向けていた私の近く…正確にはキャスターの隣に、今日一日中姿を見ていなかったティアさんが実体化していた。
「どうティア? 頼んでた事、確認できた?」
「抜かりはない」
キャスターの肩を借りたまま、私が頭に?マークを浮かべてるとティアさんはちゃんと確認してきたって事を説明してくれた。
「まずは冬木ハイアットホテルの爆破解体を確認。ランサーの霊基は感じる、だから多分ケイネス達は、生きている」
「ふむふむ、他には?」
「やっぱり爆破されたんだ…」
雁夜おじさん達にとってもらったホテル、ハイアットじゃなくて本当に良かった。そういえば、あっちにも帰らないと心配され……るかは分かんないけど顔見せくらいはしなきゃ。
「次に、遠坂邸が爆発した。多分トッキーが、ギルガメッシュの怒りに触れた」
「軽く煽っておいてなんだけど、我様の行動早いなぁ…」
「……」
私は今聞いた事実に、ポカーンと口を開けて固まってしまった。遠坂邸が爆発?staynightまで続くのかなこれ。爆発の理由…無駄な弁明を続けた挙げ句、なんらかの理由で令呪使ったとか?
「そして、私達には厳重注意だって。使い魔を飛ばして確認したから間違いない」
「「厳重注意?」」
ティアさんのその報告に、私とキャスターの声が重なった。倉庫街でやったって事は、特に何もないはずだし…
「原因は、間桐邸を吹き飛ばした際の、神秘の隠匿がどうのこうの。次は無い、だそう」
「あー…ハサンが来てたから逃げたけど、アレが原因かぁ…」
「えっと、キャスター? 多分これって、あと一回でも何かやらかしたら原作キャスターみたいに令呪一個分の賞金首にされちゃうんじゃない?」
頭によぎった嫌な予想を、私はキャスターに尋ねてみる。もしそうじゃなくても、何かペナルティー的なのが科せられる気がするんだけど…
「なったらなったで、英雄王以外とはちゃんと戦いたいし私は構わな…ってそうか。勝ち残ってもマスターに問題が出るんだ」
こくこくと私は首を縦にふる。そんな事になったら、今まで静観してたケリィとかがマスター暗殺に動くに違いない。アサシンがいない分マシだけど、難易度がただでさえhardなのにlunaticまで一気に上がるのと同義だ。
「でもそれならどうする? ジルがいない以上アインツベルンへの襲撃は起きないし、大海魔も出てこないよ?」
「そうなんだよね〜…」
その状況で、私達の行方が多分どの陣営にも分かってない以上ストーリーが進まない。原作なんてもう捻じ曲がったと信じてるけど、最終的には大災害が起きてもらわないと色々と不都合がある。
となると、私達キャスター陣営がどこかに攻め入るのが一番手っ取り早い。ならば攻める陣営は、セイバーか、ランサーか、アーチャー…は無しで。ライダー陣営は正直邪魔したくないし、バーサーカー&アサシンは既に脱落済み。
「うーん…」
「よしマスター、分からないなら身体を動かそう!」
「へ?」
何かに納得したように頷くキャスターに、嫌な予感しか感じない無意識にジリッと一歩下がった私は悪くない筈だ。
「そうだよね、マシュが宝具を使えるようになった時はキャスニキと戦ってたんだし、ラフムもどき程度じゃぜんぜん甘いよね!」
全身を苛む倦怠感と酷使しすぎた脳が発する痛みを無理矢理押し殺して、私は宝具の巫女装束を再展開する。だめだこの
「ほ、ほらキャスター。私今さっきまでラフム擬きと戦ってたんだよ? もうヘトヘトで、お腹も空いて動きたくないんだけど…」
「へぇ…ならティア、押さえて」
「了解」
気がついたら私はティアさんに羽交い締めにされていた。キャスターが私にした改造、宝具による強化、魔術によるブーストを完全に無視して押さえ込まれている。
そんな私に向かって、キャスターが謎の液体と丸い物が入った2つの小瓶を持って近づいてくる。
「マスター、口開けて?」
「んー!!んんー!!」
せめてもの抵抗として、私は口を固く閉ざし顔を目一杯横に逸らす。そんな怪しげな物食べたり飲んだりしてたまるか!
「全く、マスターはワガママだなぁ…」
「い、いやぁ」
そんな私の些細な抵抗も虚しく、頭はガッチリと固定され、閉ざした口は有り余るサーヴァントの膂力によってこじ開けられてしまった。
「大丈夫だよマスター、毒とかは入って無いから」
開けられた口内に無味の球と甘ったるい液体を入れられて、口の中の味覚が崩壊する。キャスターの目が無言でこれを飲み込めと言っている。断ったら何されるか分からないし……ええいままよ!
「んくっ……!?」
もうどうにでもな〜れって感じで、私はそれらを飲み込んだ。そして数秒後、お腹がカァッと熱くなったように感じた。しかも全身の疲労とか空腹感まで吹き飛んだ気がする。
「何、したの?」
「異世界産の、カロリーメイトみたいなやつを食べてもらったんだよ。体力と魔力を回復して、お腹の減りも気にしないようにしてくれる素敵な物だね。生前は半ダース銀貨1枚…地球に合わせると1000円で売ってたよ! 生産者は私」
一応商品として売ってたなら安心していいの…かな? 毒では無いみたいだし、無駄に高いけどそれなら…
「需要は?」
「栄養バランスもバッチリ取ってるから、一部の女性に人気だったよ」
「未来で異世界でもそこは同じなんだね…」
そこで気を抜いてしまったのが私の過ちだった。なんで、直前までの話を忘れちゃったんだか…
「それじゃあマスター。問題は全部解決したみたいだし、今度はティアとやろっか」
「え」
私の前に、見覚えのある半透明の門が開く。それはあの異界へ続く扉で、おそらく加減がなくなった事の証明だった。
「宝具の真名開帳まではいかなくても、仮装宝具の展開までは今日中に持ってこうねマスター」
「………はい」
もう諦めて、私は渋々門の中へと連行されるのだった。目に光が無くて変って昔友達に言われたけど、今はそれ以上なんだろうなぁ…あははは、はぁ。
マスターの現在の改造された点
魔術回路
よくて10本→凛・桜レベル
魔力量
平均→平均
宝具
無し→防性宝具
身体能力
普通の幼女→???
令呪
残り3画 ?