なんとなくFate   作:銀鈴

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ウェイバー君が喋ってるのは英語の筈なのに、銀城ちゃんが理解出来てることに突っ込んじゃいけない。


始まる宴 そのさん

「きゃー! すごーい、高ーい!」

「ふはは! そうであろうそうであろう!」

 

 ウェイバー君を半分パシリにした買い物を終え、私達は人混みの中を歩いていた。極小規模の人払いの結界を張ってるこっちの身にもなってほしいけど、うちのマスターが征服王に肩車して貰って、本当の子供みたいにはしゃいでて楽しそうだからまあ良い。

 

「という訳で、冬木の連続殺人犯にマスターは一家全員を皆殺しにされて、その時に偶然マスターになったって事。そのままじゃ私に魔力を絞り取られて干からびるから、魔術回路を開いたりなんだりはしたけどね」

 

 はしゃぐマスターから数歩下がった所で、私はウェイバー君と話している。マトモに話ができる唯一のマスターなんだから、こういう機会が出来たなら活用する他ない。

 

「キャスターお前、案外マトモな英霊だったんだな。僕はてっきり狂化でもしてるのかと思ってたぞ」

「失礼な、私だってマスターの事は考えますー。狂化はしてるけど」

「うわぁ…」

 

 目が死んだまま笑顔を浮かべるマスターに、ウェイバー君が憐れみの目を向けた。だが、はしゃぐ幼女(マスター)の姿に毒気を抜かれたのかこちらに向き直って話を続ける。

 

「それで、結局お前らが僕達に接触してきた理由ってなんなんだよ」

「接触したのは全くの偶然。でも今は、1つだけお願いはあるかな」

 

 そこで私は一旦言葉を切り、隣を歩くライダーのマスターを見上げて言う。約束守って貰えそうなマスターのうち、勝ち残ってる最後の1人だしね。

 

「もし私が敗退しても、マスターは殺さないであげてね」

「それくらいなら構わないけど、なんでそんな事を僕に言うんだ?」

「だって、サーヴァントを無力化するならマスターを殺すのが一番手っ取り早い方法だもん。しかも残ってるマスターは、君を除いて全員それをしてくるし」

 

 外道麻婆、テロリスト、ケイネスに、ウェイバーくんちゃんに私のマスター。あ、いや、ティアからの報告だとケイネスじゃなくてソラウにマスターは変わったんだったかな? まあどうなってるにしろ恋は盲目、寝取られた人だからアウトだろう。改めて、なんて絶望的なメンツなんだろコレ。

 

「なっ、それは…」

「アサシンが脱落したとはいえ、君も気をつけるんだね。特にテロリストな衛宮切嗣とか」

 

 今も見張られてるのかもしれないよ?とは言わないでおく。流石に、真昼間からこんな人混みの中狙撃してくるような………あれ、してこないって否定できない。

 つい魔術を使って安全を確認しようとした私に、マスターを乗せたままライダーが振り返り何か言いかける。

 

「キャスター、お主酒は飲め…ぬよな。むぅ、流石の余も幼子を酒宴に誘った経験などないぞ」

 

 なにやらライダーが難しい顔をしている。えっと、これはつまり聖杯問答のお誘いって事でいいのかな? アインツベルン襲撃イベントはキャンセルですかそうですか。

 

「結局何が言いたいんだよライダー!」

「聖杯は、相応しい者の手に渡るという。だが、それを見定めるのが何も闘争だけというのはありえんだろう。お互い英霊同士、互いの格に納得がいくまで語り合えば、自ずと答えは出る」

 

 つまり、なんだ。とそこで区切り、ライダーは自らのマスターに堂々と、頭がおかしいと思われても仕方のない提案をした。

 

「今さっき思いついたのだが、此度の聖杯戦争に招かれた英霊を集めて酒宴でも開こうと思うてな。じゃが、そこなキャスターは見ての通りであろう? 誘うに誘えなくてなぁ」

「何を考えていやがりますかこの馬鹿はぁッ!」

 

 そう叫んだウェイバーくんちゃんがデコピンで撃退される。あぁ、あんなに大きいタンコブ作って…南無。それを横目で見ながら、私は誘いについて考える。

 

「私はこの歳から結構宴会には行ってたし、そも英霊だし飲めない事はないよ? でも、うーん…」

 

 別に行くのは構わないけど、ギル様が多分来るせいでちょっと気乗りしない。私自身特に聖杯に願う事なんて無いし、無駄にマスターを危険に晒すだけにも思える。

 

「マスター、どうする?」

「キャスターの好きにしていいよ!」

 

 マスターが無表情で、声だけは楽しそうにそう言った。マスターは分かってるんだろうか?ハサンがいない以上聖杯問答は面倒な事になるだろうし、自分は自分で危険に晒されるって事。私のあげた宝具でも、ヘッドショットは防げないんだよ?

 でもまあ、私の好きにしていいって言うんなら…

 

「かの征服王のお誘いだし、受けないわけにはいかないかな? お酒はあんまり得意じゃないから別の役割でいいなら、だけど」

「えらく物分かりがいいのぅキャスターよ。余はきっと『そんな事より戦だ』とか言うと思っておったぞ!」

「なんでみんな、こんな可愛い女の子をバーサーカーにしたがるかなぁ…今回のバーサーカー、ランスロットだったのに」

 

 ぶーぶーと私は文句を漏らす。本当に、なんでみんな私をバーサーカーにしたがるかなぁ…確かに昨日の夜は楽しかったし、もっと殺り合いたいけどさぁ。

 

「して、その別の役割とは?」

「料理人。せっかくの宴会なのに、料理がないなんてつまらないじゃん? まあ、満足させられるかは分からないけどね」

 

 (ロイド)に食べてもらおうと思って、座に行ってからのメル友に教えてもらった料理とか色々あるのだ。料理の腕はあの人には及ばないし、レパートリーも負けてるけどね。バトラーは強かったよ…

 

「ほう、そりゃあいい。では当日はよろしく頼んだぞ」

「場所はどこでやるの?」

「この街の郊外にアインツベルンの城があるだろう? あそこは中々に良いと思うのだが…」

「確かに、庭園とかもあるだろうし決まりだね!」

 

 いい感じに話がまとまったので握手…は上手く出来なかった。大きすぎでしょライダーの手。流石征服王。

 

「うぅ、そうじゃないだろライダー…」

「あ、復活したんだ」

 

 デコピンの衝撃から復活し、ユラァと立ち上がったウェイバーくんちゃんが私に指をさしながら聞いてくる。

 

「バーサーカーがあのランスロットだって!? 円卓の騎士最強、湖の騎士が?」

「うん、今回マキリが召喚したサーヴァントはサー・ランスロットだったよ。バーサーカーなのに凄く強かった」

 

 だってナノゴーレムって切り札は切る事になったし。無窮の武練は伊達じゃなかった。ヒトヅマニアなあの人だけど、バーサーカーでアレならセイバーだったら…恐ろしい。きっと栗星吸って100%クリティカルからのアロンダイトをオーバーロードされるんだ。そう言うのは魔神柱(うまい棒)にやってどうぞ。

 

「な、なあキャスター。僕の聞き間違いじゃなければ、お前がバーサーカーを倒したって言わなかったか?」

「うん? 聞き間違いじゃないよ。マキリの屋敷を吹き飛ばして厳重注意もらったの私だし」

「うわぁ…マジかよ」

 

 ウェイバーくんちゃんがマスターに向ける憐れみが強まったように思える。私、そんなに酷い事はしてないような…寧ろマスターを鍛えてる分いいサーヴァントなんじゃないかな?

 

「とりあえず、お互いの要件はこれで終わりみたいだし、さよならでいいかな? 征服王、宴会っていつやるの?」

「そうさなぁ…今から呼びかけに回るとして、明日の22時辺りが丁度いい時間かのぅ」

 

 なるほど、なら私はその時間までに腹ペコ王が満足するくらいの料理を揃えればいいわけか。マスターを鍛えるのと並行してやるとすると、中々に苦行だね。

 

「りょーかい。ほら、降りてマスターもう行くよ」

「えー、ここ楽しいのに…」

「【炎、神をも灼き尽くせ(シウ・コアトル)】擬きの準備は、いつでも出来てるんだよ? ま・す・たぁ?」

 

 楽しんでるところ悪いけど、このままずっとライダーの上に乗ってるつもりならこっちだってやる事をやらなきゃいけない。マスター曰く、この時の私はケツ姉さんの如き凄まじい笑顔だったらしい。

 

「ひぅ、い、今すぐ降ります…」

「あいたたた、髪を、髪を引っ張るでない小娘よ」

 

 スルスルとライダーからマスターが降りてくる。ライダーにライドしたマスター…うん、何か強そう。仮面ライドゥ…いや、何でもない。最終フォームが遺影でイェイな世界の破壊者ライダーなんて知らない。

 

「それじゃあねライダーとそのマスター。宴会が終わったら存分に殺り合おうね!」

「ううむ、やはりお主はそうなるのかキャスター」

 

 ライダーが頭に手を当ててるけど、こればっかりはどうしようもない。そもそも私が今回の聖杯戦争に参加した目的が、名高き英霊達との闘争なんだし。

 

「またねー!!」

 

 マスターがパタパタと手を振り、私がマスターを引っ張って移動していく。そしてライダー達が見えなくなった所で、マスターが私に話しかけてきた。

 

「キャスター、イスカンダルの髪の毛とサイン付きハンカチって触媒に使えないかな?」

「打算ありありじゃないですかやだー」

 

 とか言いつつ、固定化の魔術をかけてる私も私か。もしここがfgo時空だったとして、私と征服王の組み合わせって何それヤバい(確信)

 

「ところで、マスターはどこまでが本音でどこまでが嘘だったの?」

「7:3かな。打算ありでも楽しかったし」

 

 そう言うマスターは嘘をついてる様子はない。いや、3割しか嘘ついてないんだから当たり前か。でも、うちのマスターの考えが正直読めなくて困る。

 

「ねえマスター、今日は元々こんな事するつもりは無かったんだし、マスターの不注意で起きた分のペナルティーは覚悟してるよね?」

「え」

 

 まるで石化の魔眼でも食らったかの様にマスターが固まる。真面目に対応するのは、私にとってかなり疲れる事なのだ。本当はライダーの言う通り、今すぐファイッ! ってしたかった。

 

「何回かに一回は仮装宝具展開は出来るようになったんだし、ティアだけじゃなくてフローも今日から追加ね」

「え」

「安定して展開出来るようになったら、私も混ざるから」

「え」

 

 顔を真っ青にするマスターを引きずって、私達は例の貯水槽へ帰還するのだった。そろそろ、ティアに任せてた偽装も終わったかな?




生き残れるかも分からないのに触媒、ゲットだぜ!してる謎マスター。
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