なんとなくFate   作:銀鈴

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食費は全額アインツベルン持ちな!
あと子供の供って字は動詞の意味があんまりよろしくないから使いたくないスタ……あれ、境遇的に平気か?


王のUTSUWA そのに

 王達の宴の場所として通されたのは、原作通り城の中庭の花壇だった。2人のサーヴァントが差し向かいにどっかりと胡座をかき、悠然たる居ずまいで対峙している。だけど、現状原作とは違う点が多々ある。

 

「キャスター、おかわりです!」

「ちょっと待って知ってたけどこの速さは予想外ぃッ!」

 

 キャスターが置いた大皿の料理を数十秒でセイバーが平らげ、皿を持ってうちのキャスターが厨房へと全力で走っていく。ライダーも料理の美味しさなのかセイバーの食べる速さなのかは分からないけど、驚きながらも料理を突ついている。

 セイバーはご満悦の様子で、アホ毛も元気に揺れ動いている。その姿は王だ英霊だ関係なく、ただ美味しい物を食べて満足してるただの少女だった。

 

「どうしよう、僕の中のアーサー王のイメージがどんどん崩れてく…」

「大丈夫よライダーのマスター、私もだから」

「あぁ、美味しい…」

 

 隣でアイリさんとウェイバーくんが揃って頭を抱える中、私はもっきゅもっきゅと料理を食べ続ける。拠点で作って貰ってる神秘マシマシ魔術カラメ魔力ゾウリョウ、しかも素材が魔眼や幻想種だったりするとかいう私の身体を改造する気マンマンの料理と違って、思いっきり普通の美味しい料理だからここで食べなきゃ損だ。

 

「それにしても美味しいですね、アイリさん!」

「そうね、愛鈴(あいり)ちゃん」

「うぐぐぐ…」

 

 名前が似てるのと厨房に行く間に話した事によって判明した同年齢という事もあって、何故かアイリさんとは意気投合できた。この事を知らないウェイバーくんはもう唸ってるけど、ちゃんと料理は食べている。美味しいからね、仕方ないね。

 

「和洋中全対応な上、よく分からない美味しい料理まで…一体キャスターはなんの英霊なんだよ…」

「ウェイバーくん、幾ら私が子どもだからってゆーどーじんもんとかは効かないよ? というか私自身知らないもん」

「だよなぁ…一体僕は何やってるんだか。あ、これは美味しい…」

 

 キャスターに埋め込まれた宝具によって、発動されたっぽい魔術が完全にレジストされた。それが無くてもまあ、魔術師には通じない程度の魔術だったけど。

 

「へいお待ち! 今度は鍋ごと持って来たよセイバー、これで少しは」

「この米とやらをおかわりです、キャスター!」

「チクショウメェ!」

 

 この様に大食い選手権と化しているサーヴァント陣営と違って、マスター陣はいたって平和だ。一児の母、その子どもと同年代の幼女、そして我らがヒロインが揃ってるんだからそうなるのはほぼ必然だった。

 

「喰らうがいい、セイバーにライダー! これが現代のブリテンが生んだ狂気の産物、スターゲイジーパイとハギスである!」

「ふっ、キャスターよ、私を舐めすぎたな。栄養は、ゲテモノ料理でも、変わりません!」

 

 三歩で厨房と宴会場を往復するキャスターが持ってきた冒涜的な造形のパイ、それをセイバーがなんの躊躇もなく喰らっていく。

 

「このハギスとやら、中々美味いではないか」

「マケドニアも、そういえばヨーロッパだった…」

「キャスター、デザートを要求します!」

 

 キャスターが所謂orzの体勢のまま高速でバックしていくのを見て、口に含んでいた食べ物を吹き出しそうになった。何危ない事してくれてるのさうちのサーヴァント。

 

「でも、本当に良かったわ」

「何がですか?」

 

 そんな混沌が煮詰まったような空間で、アイリさんがポツリと発言した。

 

「セイバーよ。あの娘らずっと不機嫌そうにしていたのに、ようやく笑ってくれたんだもの」

「その点、うちのキャスターは最初からずっと楽しそうですよ…なんでも英霊として自分が召喚されるのが、もう1度あるか分からない奇跡だとかなんとか」

「そりゃあ、幾万といる英霊の中から狙ってあんなのを呼び出そうとする酔狂はいないだろうな…」

  

 ウェイバーくんの至極真っ当な意見に私は頷く。キャスターを呼ぶなら、孔明先生とか玉藻の前とかメディアとかアンデルセンとかキャスニキとか色々いるもんね。マーリンは人理焼却でもされてないと無理だからパスで。

 マーリンって単語を思い浮かべた瞬間、こちらを睨んできたセイバーに戦々恐々としてる中、両手にお盆を持ったキャスターがゆっくりと帰ってきた。

 

「とある(やつがれ)現人神の作った物を食べてから嵌ったザッハトルテと、軽めに作ったワッフル。どっちがいい?」

 

 ちょっと待ってキャスター、その組み合わせは流石に頭がおかしい。特に前者はこんなに色々食べた後に出すような物じゃない気が……食べるけど。

 

 

「ふん、『王の宴』と聞いて来てみれば、なんだこの茶番は」

 

 出されていた皿があらかた片付いた時、ソレは現れ吐き捨てる様に言った。

 たったそれだけの行為で、場の空気が一変する。しかしそれは必然だろう、何せ黄金の光から実体化したのはアーチャー…英雄王ギルガメッシュなのだから。

 

「遅かったではないか、金ピカ。まあ、歩行(かち)なのだから無理もないか」

 

 甲冑姿のアーチャーがこちらに歩を進めると同時、マスター陣はジリと後ろに下がった。ここから先は、謂わばサーヴァントのみが入れる領域だしあながち間違ってはない。まあ、王じゃない私も入れるかは怪しいけど。 

 

「ふん、貴様がこの様な鬱陶しい場所を選ぶからだ」

 

 そうライダーを一瞥した燃える紅玉(ルビー)のような双眸が、次の瞬間私を射抜いた。ビクッてなって固まっちゃったけど『私は悪くない』

 

「癪だが礼を言ってやるぞ雑種。綺礼は時臣なんぞより実に面白いマスターだ」

「えと、ありがとうございます」

 

 まさかお礼を言われるなんて思ってもなかったので、そんな曖昧な返事しか返すことができなかった。それを最後に私には興味を失ったようで、ライダーとセイバーと同じように座った。

 どうすればいいのか分からず戸惑っていると、4つの目が座れと促してくる。私、王じゃないんだけど……なんて思ってると、アーチャーにまで睨まれた。諦めよう。

 

「ようし、これでようやく揃ったな。キャスターには2度目となるが、許せ」

 

 私がここに座ってること自体が予想外なんだし、文句は言わずにコクリと頷く。

 

「聖杯は、相応しき者の手に渡る定めにあるという。それを見定めるための儀式が、この冬木における闘争だというがーーなにも見極めをつけるだけならば、血を流すには及ばない。英霊同士、お互いの『格』に納得がいったなら、それで自ずと答えが出る」

 

 ライダーがいかつい拳で樽の蓋を叩き割ると、芳醇なワインの香りが中庭の夜気を染め上げる。私がいつだったか料理用に自作して、開けずに放置してたのを提供した。

 そして取り出した竹の柄杓で、掬い取ったワインを一息で飲み干しこちらに差し出してくる。

 

「……なるほど、では我々と“格”を競おうと言う訳か、ライダー」

「然り」

 

 それに誰よりも早く反応したのはセイバーだった。差し出された柄杓を受け取り、ライダーと同様に一息で飲み干した。

 私が言えた事じゃないけど、よくそんなに飲めるよね…

 

「お主らも飲むがいい。全員が飲み干した所で『聖杯戦争』ならぬ『聖杯問答』を始めようぞ!」

「それじゃ、謹んで」

 

 私も柄杓を受け取り、樽の中身を掬い取って一気飲みする。大人の時ならともかく、こんな事をしたら今の身体の年齢じゃいつかの宴会の二の舞になるだけだけど、今の身体はサーヴァント。事前に霊基を弄ったから、今は少しだけ大人ばーじょんなのだ。

 そしてアーチャーの番に回り、柄杓を干した時予想通りそれは起きた。

 

「ーー不味くはない、がそれまでだ。英霊の格を量るには役不足が過ぎるわ」

 

 原作の様に嫌悪感を剥き出しにしてはいなかったが、不愉快そうに顔を歪めアーチャーは吐き捨てる。知ってた。

 

「そうかぁ? キャスターが提供してくれたこれ、少なくともこの土地の市場の物とは比べ物にならん逸品だぞ」

「だろうな。これは間違いなく神代の酒だ、この時代の酒に負ける訳がなかろうよ」

「英雄王に褒められるとか、作り手としては照れます…」

 

 セイバーが信じられないといった目で私を見てくる。というか何このマイルド英雄王? 噂に聞いたザビ子とかカルデアとかとの経験があったりする方ですか?

 

「何をどう解釈したら褒めるなどと解釈できるのだ雑種めが」

 

 そう嘲りに鼻を鳴らすアーチャーの傍らに

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』による門が開く。つくづく、私の門と似た様な能力だよなぁ…

 

「見るがいい。そして思い知れ。これが本当の酒というものだ」

 

 アーチャーが取り出したのは、眩い宝石で飾られた一揃いの酒器だった。重そうな黄金の瓶は、澄んだ色の液体がたっぷりと湛えられている。

 聖杯問答はここからが本番、はてさてどうなるやら。というかギル様の酒、どこぞの出会いを求めてる世界の神酒(ソーマ)よりはマシ…だよね?

 




中華料理は別口で習っていた模様。
そしてマスター陣同様に緊張でガチガチになるキャスター…
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