何時ぞやのダンまち世界の
「むほォ、美味いっ!!」
目を丸くして喝采するライダーによって好奇心が勝ったようで、それでようやくセイバーも杯を呷った。私も参加してる以上、呑まないわけにはいかないので杯を傾ける。
(確かにコレは、戦争が起きるね…)
正直この子供の舌だと分かるとは言えないけど、記憶の中の
どこのファミリアにいたか?ベル君と同じく門前払いされたから、ティアを神様にして作りましたが何か。
「凄ぇなオイ! さっきのワインも美味かったが、こりゃぁ文字通り格が違うわい」
「流石に、本職には勝てないなぁ…うん」
私の得意な事で並べると、鍛冶<魔法使い<戦士=家事で超えられない壁があって酒造とかそこら辺になるのだ。この時代のお酒には完勝できても、神代の本職さんには勝てる訳が無かった。
それでも多少悔しくてガックリしてる私と惜しみない賛辞を送るライダーに向けて、アーチャーは悠然と嘲笑する。そういえば、いつのまにかアーチャーは上座にいる。愉悦な顔をしてるし流石に英雄王。
「当然であろう。酒も剣も、我が宝物庫には至高の財しかあり得ない。これで王としての格付けは決まったようなものだろう」
「ふざけるな、アーチャー」
喝破したのはセイバー。この和み始めた、悪く言えば馴れ合いじみてきた場の空気が気に入らなかったみたいだ。私はこういう雰囲気の方が好きなのに。
「酒蔵自慢で語る王道なぞ聞いて呆れる。戯言は王でなく道化の役儀だ」
「さもしいな。宴席に酒も供せぬような輩こそ、王には程遠いではないか」
「こらこら。双方とも言い分がつまらんぞ」
セイバーの剣幕を鼻で笑って一蹴する英雄王。それに更に苛立って言い返そうとするセイバーを、苦笑いのライダーが遮る。
そして、積極的に私が関わらなかった事もあって原作通りの掛け合いが始まった。そも聖杯とはという会話に一度介入しただけで、セイバーの機嫌は露骨に悪くなっている。
そして話は進んで行き、破裂寸前の爆弾のように感じるセイバーが遂に口を開いた。
「そうまでして何を聖杯に求める、ライダー」
そう問いかけられたライダーは、杯を呷り、言いづらそうに口をもごもごさせ、なんだか照れくさそうにしている。若干頬も赤くなっているように見える。
……ふむ、型月世界だしイスカンダルが女として召喚される可能性があるとして、イスカンダル×ウェイバーくんちゃん……あり、か? ってそうじゃない。危ない思考に落ちかけてた。
「受肉、だ」
それは、私とマスターくらいしか予想できていない返答だった。どっかのケンホロウみたいな声を上げるウェイバーくんを見て、マスターが笑っている。シニタクナ-イとは続かなかったけど、この素っ頓狂な答えにウェイバーくんはこっちに詰め寄ってきてしまった。
「お、おおオマエ! 望みは世界征服だったんじゃーーむぎゃっ!」
原作より増量されてるだろうデコピンで、ウェイバーくんは黙らされてしまった。
「馬鹿者、たかが杯なんぞに世界を獲らせてどうする? 征服は、己自身に託す夢だ」
「雑種……よもやそのような瑣事のために、この
呆れ顔のアーチャーの質問に、ライダーはあくまで真顔で答える。
「倉庫街でお前さんにそこのキャスターが言っていた通り、所詮我らはサーヴァント。マスターからの魔力供給がなければ、僅かの内に消滅する亡霊だ。貴様らはそれで満足できるか? 余は不足だ。余は転生したこの世界に、一個の
ライダーが言った言葉の中に含まれていた『転生』という単語に、私もマスターも意図せず反応してしまった。死の記憶が曖昧な状態のマスターはわからないけど、ある意味2度の死の経験とサーヴァントとしての記憶がある私には、ライダーの言ってる事がとてもよく分かった。
ロイドも娘もいなくなった今は振り切ったけど、あの娘が生きてた頃は何回ティアの単独顕現に引っ付いて現世に行こうとしたことか。誰にも言ってないけど、私の全開の工房を何日かフル稼働させれば受肉程度余裕でできる魔力は作れるし。
なんて事を考えてる内に、話は随分進んでしまっていた。
「決めたぞ。ライダー、貴様はこの我が手ずから殺す。十全の状態の貴様を潰してやろう」
「ふふん、今更念を押すような事ではあるまい。余もな、聖杯のみならず、貴様の宝物庫とやらを奪い尽くす気でおるから覚悟しておけ。これ程の名酒、征服王に教えたのは迂闊すぎであったなぁ」
からからと大きな声で笑うライダーの声に、私は現実に引き戻された。割り込む余地がないから黙ってたけど、ここの聖杯の事英雄王なら分かってるんじゃないのかな? ああ、あり得ないって一蹴するか。
「ふむ、この順番だとしたら次はキャスターか。お主は聖杯に何を願う?」
そんなくだらない事を考えていた私に、ライダーが話を振ってきた。確かに私が一番下座だから、時計回りだと私が話す事になる。でも正直、私の願いなんて有りはしないし…
「ちょっと待って征服王。あくまで私は王っては言えないし、ここは騎士王に聞いてあげたほうがいいと思う」
「ふむ、まあそれもそうさな。ならばセイバーよ、貴様の懐の内を聞かせてもらおうか」
一応納得してくれたのか、ライダーの質問はセイバーに対象が変わった。私の『ただ戦いだけ』と『マスターの人並みの幸せ』なんてショボい願いを聞いたら、それこそセイバーがプッツンしそうだから順番は譲る。
セイバーの願いを私も認めはしないけど、言ってもらわないと仕方がない。
「順を譲ってくれた事、感謝するキャスター」
そう一言私にお礼を言った後、真っ向から2人の王を見据えてセイバーは切り出した。
「私は、我が故郷の救済を願う。万能の願望機をもってして、ブリテンの滅びの運命を変える」
セイバーが毅然として放った宣言に、しばし座は静まり返った。まあ、どう足掻いてもこうなるよね。覇道と覇道は100%相容れない、それこそ黄昏の女神でもいない限り。
「なあ、騎士王。もしかして余の聞き間違いかもしれないが…貴様は今“運命を変える”と言ったか? それは過去の歴史を覆すということか?」
「そうだ。例え奇跡をもってしても叶わぬ願いだろうと、聖杯が真に万能であるならば、必ずやーー」
断言しようとしていたセイバーの言葉尻が宙に浮く。漸くセイバーは、自分ライダーとギル様の間に横たわる微妙な空気、そして私の放つ呆れと苛立ちの混ざった空気に気づいたらしい。
「えぇと、セイバー? 確かめておくが……そのブリテンとかいう国が滅んだというのは、貴様の時代の話であろう? 貴様の治世であったのだろう?」
「そうだ。だからこそ、私は許せない。だからこそ悔やむのだ。あの結末を変えたいのだ。他でもない、私の責であるが故に……」
必死にセイバーがそういう中、不意に弾けるほどの哄笑が轟いた。
どうしようもなく、尊厳を踏みにじるような遠慮の欠片もない笑い。そんな事をできるのは、この場ではギルガメッシュのみだった。
これより酷い笑い方なんて、それこそどっかのべんぼうくらいかもしれない。
「……アーチャー、何がおかしい?」
許容量を超えた屈辱に、表情を怒り一色に染めたセイバーが吼えた。それに未だに笑いの余韻収まらぬ英雄王が応じ、ライダーは憂いの面持ちを深め沈黙する。
ここに私は、王ではなかった私が口を挟む事は出来ない。否、許されない。王でもない、臣下でもない、ただの民に区分される私にはそれ以外の気持ちなんて分からないから。だから今は、私が意見を挟める時まで少しだけ時間を潰してくれるよう、このお酒に頼ろうと思う。
◇
思った以上にお酒に飲まれ、かなりの時間が経った。
「貴様は臣下を“救う”ばかりで“導く”ことをしなかった。『王の欲』の形を示すこともなく、道を見失った臣下を捨て置き、ただ1人で小綺麗な偶像に縛られていただけの小娘にすぎん」
「私は……」
ライダーの言葉に、セイバーは俯いて何も答えられなくなってしまう。まあ、アレだけ言われたんだから仕方ない。心の支えをへし折られ、もう心はボロボロの筈だ。
そして彷徨うセイバーの目が、私の目と交差する。メトメトガアウ-じゃなくて、藁にも縋る思いなのが見てとれる。
「それじゃあ私も、ちょっと思うところがあるし発言しても良いかな?」
だけどセイバー、私だって1人の英霊。貴方の願いについて、言いたいことはあるんだよ?
\カット祭り/
そして、キングハサン! 貴方はキングハサンではないですか!! でもどうせ来てくれないんでしょう?知ってる。
-追記-
無事爆死