「ふわぁ…あふ」
今時珍しいレトロな目覚まし時計が鳴らすジリリリンという音で、私は目を覚ました。
目に入った机の上には、魔力が込められないか試してみている安い宝石、強化できないかやってみてる干将・莫耶(ペーパークラフト)、そしてイルカのぬいぐるみ。見慣れた自室に、窓から見えるのも何ら変わらない日常の風景。とは言っても、まだ6時半だからそんなに人は多くない。
「んみゅ…うるしゃい」
ベッドの上から手を伸ばし、未だに鳴り続けていた目覚まし時計を止める。ベッドから降り、フワフワとしたスリッパを履いて背を伸ばす。全身が怠いけど、桃色の寝巻きにも血なんてどこにも付いてない。
うん、そうだよこんなに今までと変わらないんだ。昨日の夜の事は、きっと不安に駆られた私が見た悪夢に違いない。現に、朝ごはんのいい匂いだってする。
「おなかしゅいた…」
寝惚け眼を左手で擦りながら、パタパタと手摺りを持ちながら一階に降りていく。今更だけど、名前も定かじゃない前世の記憶じゃ自室が無かったからか、未だに少し嬉しかったりもする。
リビングに繋がる扉に手をかけた瞬間、何故か身体が一瞬動きを止めた。この先には何時もの日常が広がってるはずなのに、そう、そのはずなのに…
ま、冬木市だからそんな事もあるか。そろそろ時期だろうし、イジメられてる事を親に言って転校手続きをして貰いたいなぁ。お父さんもお母さんも優しいから、それくらいは考えてくれるはず。お姉ちゃん? ちょっと喧嘩してたし、朝練行ってる時間だもんしーらない。
「おかーさーん、今日の朝ごはんはー?」
「…ごめんねマスター、お母さんじゃなくて。でも、朝ごはんだけは用意しておいたから……できれば食べて欲しいな?」
視界に踊る銀色の綺麗な髪、それと同時に認識した右手の甲に浮かぶカッコいい紋章。つまり
「あ、あぁ、あぁぁ……は、ははっ、そういえば、そうだったね
「あー…ごめんね嫌なこと思い出させちゃって。龍之介は刻んで魂も消し飛ばしたし、ご家族は…その、悪霊化しかけてたから勝手だけど火葬して祓っておいたよ」
バツの悪そうな顔をして、エプロン姿の銀髪の幼女が言ってくる。
そう、冬木市に生まれた以上覚悟はしてたんだ。原作に関わらなくても、自分か家族の何れかは死んじゃうって。大海魔か聖杯の泥とか、私に限っては龍之介とか。考えられるのは沢山あるけど、色々麻痺してた昨日と違ってやっぱりそれに直面すると…
「ごめんキャスター、しばらくそっとしといて…」
「ん、分かったよマスター。ご飯だけは食べておいてね」
そう言ってキャスターは霊体化して消え、離れて行く気配を感じた。もう誰も見てないし、今くらいは……いいよね?
「お母さん、お父さん、お姉ちゃん……」
2度目のこの人生。9年なんて短い間ではあったけど、それでもあったかい私の心の拠り所だった事には違いない。それが一瞬で奪われて、危険人物しかいない戦争に巻き込まれる?
溢れ出るぐちゃぐちゃでよく分からない、けど凄く強い感情に身を任せ、私は2度の人生の中で初めて声を上げて泣いた。
◇
「よいしょっと」
手頃な場所にあった椅子に登って、私は台所に立った。洗剤よし、スポンジよし、お湯もよし。さっきまで食べてた朝ごはんの乗っていたお皿も、ちゃんと割らずにシンクの中にある。あ、スリッパはちゃんと脱いだよ?
「それじゃあ、洗い物をーー」
最近冷えてきたし、お湯に逃げる私は悪くない。そう言い訳をしながら、始めますかと自分に気合を入れようとした瞬間、後ろから私に声がかかった。
「ちょっと待ってマスター、私の見間違いかな? 少し前まで声を上げて泣いてたマスターが、今平然とした顔で洗い物をしようとしてる光景が見えるんだけど…」
「キャスターの目はいたって普通だよ? あとご飯すっごく美味しかった! ありがとうございました」
お湯を止めて、そのままじゃ危ないから椅子からも降りてペコリとお辞儀をする。闇の帝王の著書にも古事記にも、オジキは大切って書いてあるからね。
「どういたしまして…なのはいいんだけど、マスター、あなたは一体何なの?」
「何なのって?」
思ったより床が冷たかったからスリッパを履き直す。何なの?って言われても私は私としか…
「自分以外の家族が全員死んじゃった事に泣いてたと思ったら、いつの間にかご飯を食べて洗い物をしようとする。魔術師の家系でもなさそうな…というか、絶対に無い筈なのに魔術のことも聖杯戦争の事も理解してる様に見える。挙げ句の果てには、グランドオーダー案件でも無いと出番はないと思ってた私を
「そんな事、言われても…」
「言ってくれないと私、勝手に死ぬまで魔力を持ってくから」
私とさして変わらない幼女と、じっと見つめ合う。せっかく生き延びたんだから、こんな所で死にたくない。聖杯の泥に巻き込まれるか、火災で焼かれるかは知らないけど、サーヴァントの助けがあるに越したことはない。それには信頼関係が必須だし……グランドオーダー案件ってなんで知ってるのか分からないけど、知ってるっぽいし隠す事でもないからいいか。
「信じてくれるかは分かんないけど、私は前世の記憶?みたいなのを持ってるだけのきゅーさいの女の子だよ。それで、最初と最後の問題以外は解決。だって、Fateの事を覚えてるんだもん」
「なるほど、私の同類だったんだ。それなら、私を召喚出来たのもおかしくないか」
同類って…ダメだ、転生を経験した英霊とか全然分からない。教えてもらうまで、我慢するしかなさそうだ。
「元が男だったのか女だったのかは分かんないかな。それで、1個目の性格に関してはね、これが私の素だよ?」
「そこは分からないんだ…え、素?」
何か納得してなさげなキャスターが、ピシリと固まる。似た様な経験をしたなら、もしかしたら分かるかもって思ったけど…残念。
「前世からなのか、転生なんて事を経験したからなのか、私って元々どこか壊れちゃってるみたいなんだよね」
あはは、と笑みを貼り付けながら私は言う。
何かを楽しいと思っても、そのすぐ後には周りに合わせるだけになってる。悲しい事があっても、1分もあればすぐに切り替わる。猫を被って普段は隠してるけど、「どこにでもいる普通の幼女」としてはこれだけは変な点だと思う。
「それじゃあ私からも質問。あなたは何の英霊?どんな力を持ってて、聖杯にはどんな望みをかけてるの? 私の事は殆ど全部話したんだから、できれば答えてくれると嬉しいな」
まだ一応魔術使いを目指してたり、強化魔術とか宝石に魔力を込められるかやってみてる事は話してないけどそんなのは些事だろう。魔術回路? 希望的にみて数本あるかないかじゃない?
「うん、なんか親近感を感じるしいっか。そもそも私、誰も知らない英霊だろうし」
なにやらボソボソと呟いた後、1人納得した様でキャスターが私をしっかりと見据える。なんだろう、ちょっとドキドキする。
「それじゃあ改めて。サーヴァントキャスター、真名は無銘って言えたらカッコよかったんだけど、イオリ・キリノって名前。簡単に言うとここから並行世界の未来で、ついでに異世界の英霊だよ」
「へ?」
「聖杯にかける望みは特にないかな? 強いて言うなら、他の英霊と戦う事。色々便利で強めだとは自信を持って言えるけど、鯖としてはバサカレベルの
花の綻ぶような笑顔でキャスターは、私の予想とは360度違う答えを告げてきた。違う、180度だ。歴史的馬鹿者になっちゃう。
でもこれあれだ、ダメだ私死んだ。末路は雁夜おじさんだ(確信)
プリヤ時空という幸せは何処? ない? そんなのってないよぉ…あんまりだよ…でも魔法少女ならデバイスか愉悦型魔術礼装でどうぞ、ファヴとQBは大人しく蜂の巣になっててください。
どうしてだ、どうしてこんなキャラになったんだ…書きやすいけど。
fgo?とりあえずプレゼントは最後まで取り切ったし、サンタオルタ終わらせましたよー。次の邪ンヌサンタリリィとかなにそのご褒美。