なんとなくFate   作:銀鈴

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お月見なのに、団子じゃなく金林檎を齧り走り回るマスターとはこれ如何に。そしてロマンの登場に泣きそう。



王の覇道、人の覇道

「大マスター、セイバーが動いた」

 

 セイバーの生前の話を聞いた翌日の(多分)朝、フローちゃんとキャスターの魔術に追い回される私にそんな声が届いた。

 

「え? 何!?」

 

 だけど今の私にそんな声を理解する余裕なんてありはしない。

 今の気を逸らした時間で近づいてきたフローちゃんを展開した仮装宝具のヒラヒラとした腕の部分で闘牛士の様に回避し、反対の手で炎の壁を即興で作り出す。そのまま身体は回転に任せ、後続の魔術に備えて自分も魔術を組み立てる。選択したのは単なる爆発を起こすだけの物、どうせマトモにやり合うなんて出来ないから回避を選び…

 

「わぷっ、けほっけほっ」

 

 当たり前の様に失敗した。炎壁を抜けてきた水球が私に直撃し、仮装宝具の下に着ていた服がびちゃびちゃに濡れてしまった。

 これが非日常に生きる私の日常、正直な事を言うともう辞めたい。でもやらなきゃ軽く死ぬから特訓する。やっぱり生きるのはままならないものである。

 

「ねえティア、セイバーが動いたって本当!?」

「本当。アイリスフィールを連れて、車で廃工場に移動中」

 

 水が滴る頭を魔術で乾燥させつつ、今聞こえた話をどうにか理解する。という事はまたも本編はカット。ここからはバンバン人が死んでいく展開になる。そういうのは、ちょっとヤだな。

 

「ねえキャスター、あなたはライダーとセイバーのどっちと戦いたい?」

「そりゃあもちろんライダー!」

 

 満面の笑みを浮かべてキャスターは言った。その顔と昨日のキャスターとが重なり、それを私は振り払う。何をどう感じても良いけど、それに囚われちゃいけない。踏みとどまったら、私が死ぬ事になるのだ。

 

「それじゃあ、ケリィの目がソラウに向いてる内に戦いに行こっか。ある意味初の原作介入、加減なしの全力でいくよ!」

 

 私も覚悟を決めないといけない、いつまでも静観を決め込んでいるわけにはいかないのだ。キャスターがここまで残ってる事はイレギュラー、いつ運命(Fate)が殺しにきたって不思議じゃないのだから。

 

「了解だよマスター! 一丁ド派手に行きますか!」

「マスター、私も出ていい?」

「勿論! 2人で『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』を引きずりだしてやろうよ!」

「「おー!」」

 

 あの…盛り上がってる所悪いけど、ライダー倒しちゃったらダメだからね? 多分エルメロイⅡ世が生まれなくて、剪定事象?とか言うのに分岐しちゃうかもだからね?

 

 

「この道を真っ直ぐ進んで、左手に見える筈の廃工場。そこが、ランサーたちの拠点らしいわ」

 

 助手席のアイリスフィールに指示されるがまま、目に虚無を湛えたセイバーがメルセデス300SLを運転していく。セイバーからの返事はない。このどこか壊れてしまったような様は、あの王の宴の後から続いているものだった。

 

「ねえセイバー、あなた本当に大丈夫なの? あの宴が終わってからずっとそうだけど…私は心配だわ」

「えぇ、問題ありません、アイリスフィール。私はこれでもブリテンの王、あの程度の事で屈したりはしませんとも」

 

 そうセイバーは、傍の黒い長剣を触り答える。それはキャスターが置いていった『無毀なる湖光(アロンダイト)』の模造品。規格外のランクの道具作成スキルを使って製造されたそれは最早宝具に片足を突っ込んでいるのだが、今は武装としてではなく専らセイバーの精神安定の為に使用されていた。

 

「アイリスフィール、貴女こそ大丈夫なのですか? やはり、あの土蔵の中で休んでいる方が良かったのでは…?」

「大丈夫よ。この不調は、私の構造的欠陥とでもいうべきものだから。貴女さえ隣にいれば大丈夫だけど、本当に駄目になったら、お願いするわね?」

 

 そう言うアイリスフィールの顔色は蒼褪め、しきりに額の汗を拭う様はどう見ても普通ではない。だがセイバーの精神もギリギリのラインで安定している現状、それ以上の追求は無かった。

 

「あ、見て。あの建物。多分あれが問題の廃墟よ」

 

 それから双方無言のまま進むこと数分、開発の波に取り残された廃墟に車は到着した。一般人から見ればただそれだけの場所であるが、微かに残る魔術結界の跡からここが拠点として使用されていた事が見て取れた。

 開け放たれた門から敷地の中へと乗り入れ、セイバーは車のエンジンを停止させる。既に疲れ切った様子のアイリスフィールを車の中に待機させ、セイバーが運転席から降りると同時、この場所に居を構えていた槍兵が忽然と姿を現していた。

 

「よくぞこの場所を見破ったな。セイバー」

 

 一昨日開かれた『王の宴』に不参加だったランサーは、多少の疲労は窺えるものの万全と言って差し支えない状態であった。それ故であろうか、瞬時にセイバーの異常をランサーは察知していた。

 

「それにしても、どうしたセイバー。今のお前からは、覇気のはの字も感じ取れんぞ? よもやそんな状態で俺と競い合おうと言うのではあるまいな?」

「やはり貴方には見抜かれてしまうか。だがすまない、そのつもりで私は来ている」

 

 虚無を湛えた目でランサーを見つめるセイバーの全身に魔力が纏わりつき、纏う雰囲気とは正反対に輝く甲冑を形成する。

 

「ここ暫くは、誰も彼もが穴熊を決め込んで動こうとしていない。たが、私の直感が囁くのだ。この先に、我ら2人が心置きなく雌雄を決する好機はありはしないと」

 

 ランサーには知る由もないが、セイバーの直感スキルのランクはA。未来予知にも匹敵するそのスキルは、これから起こる未来の事を確かに言い当てていた。

 

「頼むランサー。この胸の内に涼風を呼び込んでくれるのは、今はもう、貴方の曇りなき闘志のみだ」

「多少腑に落ちないところはあるが…いいだろうセイバー」

 

 そう言い切りランサーは、己が宝具たる

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』と『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』をまるで翼を広げるかのように大きく掲げる。セイバーもまた腰に佩いた黒い長剣はそのままに『風王結界(インヴィジブル・エア)』に包まれた宝剣を構える。

 

「いざ尋常にーー」

「勝負!」

 

 そして、夜の倉庫街から預けられたままだった両雄の激突が、ここに果たされた。

 

 

「ちょっと待てよライダー! いきなり進路を変更して、どこに行くつもりなんだ!」

 

 雷鳴を轟かせつつ空を駆ける戦車の上で、ウェイバーはライダーに食ってかかっていた。うん、そりゃ怒るよね。私のマスターみたいに、なんでもなんでも許してくれるマスターの方が珍しいのだ。

 

「いやなに、どうやらセイバーとランサーがやり合い始めた様だからな。見に行かなきゃ損であろう」

「お前はまたそんな理由でーー」

 

「調整開始、通常モードから特化モードへ。キラー設定。対神性及び対獣性、対神秘を上限。過剰能力の為、対竜及び対悪魔を下限に設定」

 

 大鎌の設定を変更して、話すライダー組2人より更に高高度から大鎌を振り上げ急降下し、気合を込めて戦車を引く神牛に振り下ろす。

 

「ワッショイ!!」

 

 表示こそされていないけれど私は神殺しの英霊で、さっきの調整の通り大鎌(武器)にもその効果は宿っている。更に不意打ちという事もあり…結界、私の相棒はあっさりと神牛の首を断ち切った。

 

「おおう!?」

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

 神牛が片方居なくなった程度では制御に問題は無いらしく、ライダーは巧みに神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)を新都郊外にある廃墟に降下させて行く。その間響いていたウェイバーくんの悲鳴は、うん。マジヒロイン。

 そして無事に着地したのを見計らって、私もライダー組の近場に着陸する。アイサツ前のアンブッシュは一回まで。それ以上は、スゴイ=シツレイ。なんちゃって。

 

「さあライダー、約束を果たしに来たよ。邪魔は入らないだろうし、存分に殺り合おっか!」

「警告。ライダーのマスター、死にたくなかったら、離れるかライダーに守ってもらうといい。私達は、直接貴方を狙わない」

 

 まだ誰にも知られていなかった、私というサーヴァントの全力戦闘態勢。私とティアはライダーの前に、その状態で降り立った。

 












ケリィ「実はスタンバってます」
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