なんとなくFate   作:銀鈴

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今生き残ってる人の半分が目に光が無い件について(ケリィ・麻婆・セイバー・銀城ちゃん)


zeroに至ってほしい物語 其之弐

 闇の帳の降りた新都を、1人の男装の麗人…セイバーが死人のような表情で歩いていた。その足の行く先は冬木市民会館。そこから上げられた狼煙は、アイリスフィールを捜し彷徨うセイバーの目にも留まっていた。

 その信号の意味こそキャスター達同様分からなかったが、持ち前の直感により聖杯戦争に関連する出来事と確信していた。絶望をその顔に刻み覚束ない足取りで進むセイバーには、かつての騎士王としての面影は殆ど消え去っていた。

 

「アイリスフィール…」

 

 セイバーは元々新都で捜索を行っていたため大橋に陣取るアーチャーに迎撃される事もなく、セイバーを捕捉していたキャスターからも放置されているため、こうやって無防備に彷徨う事が出来ていた。

 セイバーが未だに現界を保ち行動しているのは、自らを召喚した方ではないマスターへの思いもあるが、何より聖杯へ託す願いがあっててこその物だった。

 明かり1つ灯らぬ市民会館まで後少し、騎士王は進んで行く。そこで待つものがさらなる絶望だと知る事もなく。

 

 

「王の話をするとしよう」

 

 月光に照らされて、ビルの淵に腰掛けたまま、私はポツリと呟く。征服王が固有結界を発動させてからまだ数秒、ギル様がエアを抜くまでまだ少しだけ時間はあるだろう。

 

『どうしたのキャスター、過労死したくなった?』

「違うよマスター。ただ、今の私達って傍観者だから、先達に倣ってみようと思ってね」

 

 誰も好き好んで過労死なんてしたくない。ただなんとなく思い浮かんだだけだ。いやまあ、これも後に過労死するニートは見てるんだろうなぁとは思ってるけどね。

 

(つわもの)どもの夢を束ねて覇道を示し、見果てぬ夢を目指す征服の王。勝利して尚滅ぼさず、制覇して尚辱めない。その精神は本当に素晴らしいと思うよ。だからこそ、彼の王に触れた者は誰しも憧憬を抱き、その宝具に参集する。征服面積が2位なのは内緒だね」

『え、何それ初めて知ったんだけど』

「因みに1位はチンギス・ハーンね」

 

 夜の風を身体に受けながら、誰に聞かせる訳でもない事を呟いて行く。マスターには少しだけ解説したけども。

 見つめる先の大橋には、未だなんの変化もない。けど、案外未来視が出来る私の眼と原作知識が相まって、ほぼ起こる事が確実な未来が私の中には浮かんでいる。

 

彼方にこそ栄え在り(ト・フィロティモ)…か。ウチのマスターが好意を持って、私自身も憧れた貴方の最後。見届けさせてもらうよ、ライダー…ううん、征服王イスカンダル」

 

 私がそう言い切ると同時、雷光と共に王様達が現世に帰還した。互いの位置関係は変わらず、ぱっと見では戦いは冒頭へと巻き戻ったようだった。

 けど、私の目には大きな変化は2つ映っている。1つはライダーの『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』の消失、これは『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』が直撃したんだろう。もう1つは、ギル様の手にある何か。そこに乖離剣があるっていう事は知ってるけど、何故か見る事ができない。多分私にはまだ、抜く価値がないから見せてもらえないんだろう。

 

「さてマスター、あなたも魂に刻み込みなよ? あれだけ望んでた決戦なんだから」

『うん、勿論だよ』

 

 そうマスターに念押しした瞬間、最後の決戦の火蓋が切られた。

 

 

「すごい…」

 

 かつて画面の奥に見た決戦をキャスターと同調された感覚で見て、私が言う事のできた言葉はたったそれだけだった。

 ウェイバー君がイスカンダルの臣下になって、イスカンダルがブケファラスと共にギル様の『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の弾幕の中を疾走し…

 

『ーーまったく、キャスターも大概であったが……次から次へと珍妙なモノを……』

 

 そして今、天の牡牛すらも捕らえる天の鎖(エルキドゥ)に拘束されてしまった。その手のキュプリオトの剣はギル様に届く事は無く、ギル様の持つナニカ(乖離剣)はイスカンダルの分厚い胸板を貫通していた。なのにその顔には後悔は少しもないように見えて…何故か、頭の奥がズキリと痛んだ。

 

『ーー夢より醒めたか? 征服王』

『ああ、うん。そうさな…此度の遠征も、また……存分に、心踊ったのぅ……』

 

 解らない、分からない、もし理解ができても共感なんてできそうにない。なんでそんなに簡単に死を受け入れられる? あれはもっと、暗くて、怖くて………あれ? 私、今何を考えて…

 

『また幾度なりとも挑むが良いぞ、征服王。

 時空(とき)の果てまで、この世界は余さず(おれ)の庭だ。故に我が保証する。世界(ここ)は決して、そなたを飽きさせることはない』

『ホォ……そりゃあ、いい、な……』

 

 カリスマA+のギル様と消滅して行く征服王を見つめる中、私の頭は半分恐慌状態に陥っていた。今のよく分からない感覚は何? 追求したいけど、ここから先は地獄を見る気配しかしないから動けない。手足が震えて、ナニカ悍ましい気配が私の背中をなぞる。冷や汗が出てきて、段々身体が冷えていき…

 

「落ち着いてマスター。ほら、私がいるから」

「ぁ…」

 

 甘い少女のものに煤けた匂いが混ざった香りが、私をフワリと包み込んだ。目の前にはサラサラとした銀髪が踊り、落ち着かせるようにポンポンと背中を摩られ、ギュッと抱きしめてもらった。

 

「きゃす、たー…」

「なにがそんなに怖いのかは分からないけど、だいじょーぶ。もう時間はあんまりないけど、私がいるから」

 

 優しくそう言ってくれるキャスターのおかげで、どうにか精神が通常の状態に戻ってくる。

 そうだよ、今私が取り乱してどうする? 仮にもマスターである私がこんな状態じゃ、キャスターは戦いに集中出来ないだろうし、必然的に英雄王に勝つのも時間稼ぎも出来ない。

 よし、落ち着け私。切り替えろ。さっきのは何かの幻影、気の迷い。憧れの人物の死に影響されただけ!

 

「そう、だよね。うん。キャスターが居てくれるもんね」

「あんまり、私に依存はして欲しくないんだけどね…」

 

 キャスターがそう苦笑いで言ってくる。むぅ、私そんなにキャスターに依存なんてしてないもん。1人で生きられる…とは言えないけど、寂しくなんてないもん。

 

「はいはい。わかったからそうむくれない」

「むぅ…」

 

 私の頭を軽く撫で、いつのまにかこの異界の中に来ていたキャスターは、再び外へと出陣して行った。その背中にどこか諦めたような気配を感じて、謎の不安が少しだけ蘇る。

 

『忠道、大義である。(ゆめ)その在り方を損なうな』

 

 それと同時、復活したキャスターの感覚で英雄王がウェイバー君の前から立ち去ったのを感じた。

 そしてそれを確認した途端、感覚の同調が一段階低下した。それに疑問を浮かべる間も無く、私の周囲の空間が唸りを上げる。仮装宝具を展開、異常な魔力から防護準備完了。

 

『魔力炉制限解放。全兵装起動。バックアップ開始。1京231兆と、2939億8362万5283個の全武装の正常駆動を確認。うん、今日もぜっこーちょー』

「……は?」

 

 キャスターを濃密な魔力が包み込み、その武装を形成していく中聞こえた言葉に、私は耳を疑った。明らかに数の単位が狂っている。逸話を聞いた限り、40代にすら届いていない年齢で死んでしまっている筈なのに、自分で作ったと思われる数としては狂気の域に達している。狂気…? あ、だから狂化持ってるのか。

 そんな事を考えている間に、キャスターの立つビルの屋上の対角状に金色の光が現れ…つい先程まで大橋にいたギル様が顕現した。

 

『こんばんは、英雄王。

 あの決戦の後に戦うのがこんな雑種で悪いけど…今回の宴の決着、つけてもらうよ』

『ふん、何故雑種風情が仕切っているのだ。だが、神そのものと共に在る以上、(おれ)が貴様らを叩き潰す事は必然であろう』

 

 画面越し?でも分かる程の殺意が私達に向かって叩きつけられる。A+の神性がBにまで低下する程の神への敵意、ティアさんがいるからそれを相手にしなきゃいけないのは分かっていたけど、やっぱりギル様は色々と規格外だ。うちの子も大概だけど。

 

『あはは、そう簡単に叩き潰されるとは思わないでよね。これでも私、神殺しなんだから』

『雑種如きが、吠えるではないか』

 

 その言葉を皮切りに、キャスターから埒外の魔力が放出され、ギル様の背後に『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』による黄金の波紋がいくつも現出する。

 

 多くの悲劇を見過ごして保った平穏。

 それが失われる運命(Fate)のレールが私には見えた。

 明日への希望はなく、全てを失う可能性を抱きながら、終局の戦いが始まったこの夜。

 私達の最後の時間が、始まった。

 




既に完成されてるのに手を加えたくなかった末の大胆なカット。
なおセイバーはここから聖杯を破壊させられる模様。ケリィ外道。
本人達は仲良く倍速愉悦time
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