そう言い終わった瞬間、半分以上暴走させている魔力放出を全開、身体能力を無尽蔵の魔力で無理矢理に強化、空中をも足場にして私は疾走する。
「特効設定。対神・人・神秘・男性上限! 対称性質下限!」
その最中、限界まで加速させた思考で大鎌の特効設定を対ギル様用に急速変更する。
ギル様を倒せる可能性があるとしたら、慢心させたまま勝負を決める事。長引いたら神性がBもある私に勝ち目はない。だからこの一撃で、倒すまではいかなくても重症くらいは負ってほしい。
そう願いつつ、三歩で私はギル様の背後に到達した。
「シ、ぁぁァアアーー!!」
今の私ができる最大最強の一撃。全身全霊を以って振り下ろした大鎌は、黄金の波紋から生じた幾つかの盾によって、それらを何枚か斬り裂いたものの完全に防がれてしまっていた。が、衝撃が完全に消え去る訳は無く、足場のビルの上層階が内から弾けるように爆散する。
この結果を多少残念に思いつつもそのまま空中を蹴って、空中に浮遊しこちらを睥睨するギル様から距離をとる。
「どうした雑種。吠えた割には、随分と温い攻撃ではないか」
「そりゃあ私、キャスターですからね!」
そう叫びつつ、飛来した数個の宝具をステップで避ける。
物理型キャスターなんて色物はいるけど、本来キャスターは陣地を構えて魔術戦をするサーヴァント、断じて接近戦でヒャッハーするタイプじゃない。だから私の筋力パラメーターだってエミヤと同等のDランク、同じ幼女のジャックとか邪ンタリリィにすら届かない残念ぱわーだ。だから幾ら強化があるとはいえ、本来魔術で戦うべきなんだけど…
「ティアごめん、早速お願い」
『了解、マスター』
リュートさんのパチモンとは違い、本物の『王の財宝』を持ってる英雄王にはAランクの魔術は余裕で防がれる。Aランクってのがどれくらいかは忘れたけど、いつもの小手先魔術じゃ通じない事は明らかだ。
だから、魔術はティアに完全に任せる。比翼連理とはまでは言わないけど、以心伝心の大切な
「
『王の財宝』から射出された宝具の第二陣が届く寸前、私は軽く大鎌で空間を斬り裂きその中に潜り込む。このただ魔力消費が抑えられるだけの転移魔術で移動する先は、英雄王の背後ではなく高度を落としに落とした地表。
そこで私は、自分の切り札の1つをあっさりと発動させる。
「束ねるは影打の聖剣、約束された勝利は齎さず、されどその命の本流は、輝く
英雄王の『王の財宝』と似たように、私の隣の空間に開かれた半透明の門。そこから顔を覗かせる
こちらを補足し向き直った英雄王が一瞬だけ驚愕した様に感じ、それは即座に愉悦っぽい笑みに掻き消されていた。麻婆でも食べてろコンニャロー。
「真名開帳ーー
限界を超え溜め込んだ魔力が解放され、紅混じりの黄金の閃光が迸った。英雄王の背後にあった暗転しているビルの一部を貫通蒸発させながら、収束・加速された極大の魔力斬撃が空へと昇って行く。
無論、あの英雄王がこんな程度で負ける訳がないから更に魔力を供給して照射を続けるけど、こんな高出力はそんなに長く保たない。具体的には後17秒。その間に次の一手を考えなきゃ、殺られる。
『準備完了』
加速した思考の中でアレコレ手を考えてる時に、丁度ティアから合図が入り発動しようとしている魔術の情報も叩き込まれた。効くかは知らないけど、やってみるだけやらないとね!
「セーフティー解除、魔力解放!」
動力炉の安全装置を解除し、溢れ出る魔力によって大気を圧縮。積乱雲を形成。それによって気圧が急激に変動する。
これによって発生するのは、1つの嵐そのもの。全盛期のロイドが固有結界内でよく使ってたけど、教えた私に出来ない道理はない。
ただでさえ天変地異じみている冬木市の夜空に、雷雲と暴走渦巻く大嵐球が、凄まじい内圧を帯びて螺旋を描く。さあ準備は整った!
「『風伯、雷公ーー天降りて罰と成せ
咆哮と共に解き放った魔術が、通常の何百倍にも増幅された疾風迅雷を天より降らせた。その軌道には勿論英雄王がいた空間が含まれており、並のサーヴァントなら掠っただけで甚大なダメージを負う魔術が空間を蹂躙した。
付近建物の窓ガラスが全て割れ、地面に引かれたアスファルトは蒸発して燃え盛る煙と化し、それが有害な感じのする臭いを発し立ち込める。
「ここまでやれば、少しは…」
先程の大魔術の余波で次々と電気が消え、闇に閉ざされた冬木の町並みを眺めつつ、荒い息を整えながら私は警戒を続ける。
全力全開の専用調整した大鎌での一撃、魔力を過剰に供給した『
「
濛々と立ち込める煙の中から、予想通りではあるけど最悪の事実を告げる声が私に投げかけられた。これ以上は、街が死んじゃうからそんなに力は出せないんだけど…
そんな私の心配を他所に、煙のカーテンを吹き飛ばし現れたのは、先程とは比べ物にならない量の黄金の波紋。そして、黄金の鎧をボロボロにした英雄王。身体に傷が見えないのは、エリクサーでも使ったんだろう。ふざけるなチートめ。
しかも英雄王の顔は愉悦感溢れる笑みに歪んでおり、乖離剣こそ握られてないものの結構やる気になっているようだった。
「もうやだいおりちゃんおうちかえる」
『馬鹿なの?』
『キャスター…』
小声で呟いた言葉に、マスターとティアから一斉にダメ出しされた。アッハイダメですかそうですか。
「精度を上げてゆくぞ、存分に足掻くがいい!」
そんな楽しそうな声と共に、計六十八丁の宝剣宝槍が私に向け発射された。直撃は大鎌で防げる、でも至近弾でのダメージを負う事は必至。そんな隙を晒したら、ズッ友チェーンでぐるぐる巻きにされて串刺しだね、分かるとも!
「だったら、こう!」
色々な系統をチャンポンした魔術を発動、地面に片手をつき錬金術で組成を組み替えて足場を整えつつ『
「ナノゴーレム展開、準備完了!」
『術式展開も完了、サポートは任せて』
金属と金属がぶつかり合う轟音の中、隠れる私の全身から黒い靄が発生し、背負った棺桶がギチギチと軋む不気味な音を響かせる。私の全部を振り絞って、最低でも聖杯が溢れるまでは戦い抜く。
『
ティアに発動してもらった魔法によって、壁の裏から刹那の内に内に英雄王の右隣に転移する。その際に撒き散らした衝撃波で体制を崩す隙だらけの英雄王に、私はスキル等で限界まで加速した回し蹴りを叩き込み魔術を発動する。
棺桶に貯めていた衝撃エネルギー、歪曲させていた時空間の反発エネルギー。それらを、きっと大量の運動エネルギーを秘めた私の右脚で叩き込み解放。桁違いのエネルギーが爆発した。
「アトランティス・ストライクッ!」
「ぐっ!」
負荷に耐えきれず膝から先が爆散したけど、代わりに直撃したギル様を新都の建造物群を貫いて、甚大なダメージの手応えと共に
さりげないエミヤへの風評被害。み、見せ筋じゃないから。
Dies的オリ詠唱を出した分、オリ宝具程度じゃもう恥ずかしくないのダァーッ!はぁ…