というかエドモンが出てくるとはいい文明。
「いくぞ英雄王ーーー武器の貯蔵は十分か?」
降りしきる宝具の雨の中私は足を止め、門を開いて反転する。この台詞を言った以上もう逃走は許されないし、今この場所この空間なら『
「我が財の底は、人の知識の底だ。貴様程度が気にかける事ではないわ!」
もしかして、私が作った物も収蔵されてたりするのだろうか? 下手しなくても宝具クラスの物は沢山作ってきたけど。迫る宝具を見つつ、そんな事を考えてみる。
それはそれとして、折角こんな場所を用意したんだから、一回くらい本物の真似をしてみるのも許してほしい。私だって、少しははしゃぎたいのだ。
「第十——
私が開いた門の中から、大量のパンツァーファウストが宝具の雨に向かって発射された。それらは残念ながら髑髏の群勢じゃなくて生前私が手ずから製作した物。だから神秘は詰まってるけど、ただそれだけだ。
けれど威力は十分。打ち出される宝具を迎撃しつつ、数発は英雄王に向かって攻撃する事が出来ていた。有効打にはなってないけど。
「至高の天はここにあり! なんちゃって」
絶え間なく発射される宝具とパンツァーファウストが奏でる轟音の中、ちょっとだけカッコつけてみたけど言ってて恥ずかしくなったからやめる。流石にこのままじゃジリ貧だし。
手に持った大鎌で地面をコンコンと叩き、大きめの門を展開する。そこから出現するのは、本体は出せないので一部であるバカでかい砲身。これは現実世界じゃ絶対に使えない兵器、でも生前は大活躍だったから威力は間違いがない。
「砲身の展開と魔弾の装填完了。ドーラ&グスタフ擬き、てー!!」
その正体は2両の列車砲。都市の区画を1つ消し飛ばせる砲弾を発射可能な陸上の戦艦。それらから頭のおかしい大きさの砲弾が2つ、衝撃波を撒き散らし発射され『
「何ッーー!?」
即座に上昇して回避しようとした英雄王だけど、2つの魔弾はそれを追尾する様に宝具を蹴散らしガクンと曲がった。
思考と同じ速さで動くとか物理法則に範疇にないとかいう触れ込みの『天翔る王の御座』だけど、本来の搭乗者じゃないから性能は中途半端にしか発揮できない。だったらこの、ありふれた必中の効果を与えただけの砲弾でも、落とせないことはない!
「ばーんっ」
左手を銃の形にし英雄王に照準。口でキーワードを唱えたのと同期し、『天翔る王の御座』の付近で2つの砲弾が極大の爆発を引き起こした。爆炎が発生した直後から宝具の雨が止み、刺す様な殺気も消え去った。
だけど油断なんて出来はしない。だって私の知る限り、あのバビロニアの英雄王が、ギルガメッシュがたかがこの程度で倒れるなんてありえないから。
「ティア追撃!!」
『イエス、マイロード』
半分以上返事はふざけているけど、やってくれた仕事は一流だった。銃火器の制御をしてる私の背後に発生する5つもの巨大な魔法陣、魔力炉のバックアップを受けて十全に作動するそれらが、私が銃火器を撃つ事を止めた瞬間炸裂した。
『
魔法陣が収束し、五条の紫色の閃光が爆煙の中に放たれる。そして内側から煙を吹き散らすように、合体した炎と氷が合わさって最強に見える竜巻が発生した。なぜだか切実にサメを投入したい。
とりあえずその欲を振り払い、吹き荒れる竜巻を私はじっと見つめる。グチャグチャになった黄金の破片が竜巻の中に見える。これはどうなったんだろうか? ギル様は気絶したのか、或いは消滅したのか。
分からないから、とりあえず追撃して確かめる事にしよう。
「天廊守護せし毒の龍……ここに。星のように来て!
マルタ姐さんの宝具を意識した詠唱で発動した魔術によって、暴れる大竜巻を押し潰す様に、上空から黒紫色の巨大な結晶体が落下してくる。あれは私の世界の神様なら殺せる劇物、こっちでも通じるかは分からないけど、効かない事はないはず。
だからこそ、トドメを刺すべく壊毒の彗星の上に転移、空中で一回転し右足を伸ばして落下する。
「ライダー、キィィィック!!」
無機物と化した右足で流星を後押しし、魔力放出で更に加速して落下する中、刺す様な殺気が復活したのを感じた。あ、マズイ。
そんな考えが頭を過ぎった瞬間、流星が異音を発し内側から爆発した。見覚えのありすぎる金色の宝具群がその破片を破壊し、竜巻を吹き飛ばし、私が引き起こした災害を全て跡形もなく吹き飛ばす。
「天の鎖よ!」
やる気を出させちゃった事に数瞬固まった私に、ぐるぐる、グルグルと虚空から現れた金色の鎖が巻き付いていく。手首に、肘に、肩に、首に、胴に、膝に、足首に巻き付いた
「この我を相手にここまで持ち堪えた事、まずは褒めてやろう」
私の魔術の残骸を吹き払い現れたのは、上半身裸の英雄王。相変わらず『王の財宝』から武器を出してるし、普通に無傷でイラッとする。全回復してくるラスボスとか、あいつ思い出すじゃんこんにゃろー。
「だがこれにて終いだ。良い祭だったぞ」
「ははっ、ここまでやっても戦闘じゃないのかぁ…」
こちらを見上げる英雄王に対して、私もくっ殺的な感じで睨み返す。勿論口が裂けてもそんな事は言わないけどね。
そんなしょうもない事を考えつつ、一縷の望みを掛けて『天の鎖』を千切ろうと力を込めて見たけど…やっぱりダメだった。千切れる気配が微塵もしない。神性がBもあると余裕のアウトだね? 分かるとも!。バサクレスさんが千切れたのは、バサクレスさんだったからみたいだった。
『当たり前。悪いけど、今のマスターとヘラクレスじゃ、格が比べ物にならない』
それもそうだ。というか、この事に関してはほぼ無理と思ってたから案外どうでもいい。それよりも、ティアだけでも脱出したりする事は出来そう?
『無理。思った以上に、天の鎖の拘束がキツイ』
このティアの言葉を聞いて、私は切り札が1つ無くなってしまった事を確認した。いざとなった時、私から不意打ちでティアを出して2対1にしようと思ってたんだけど、この手段はもう使えない。
だから、諦める?それはない。最後の最後まで抵抗するに決まっている。
「
そう英雄王が言い、私を取り囲むように『王の財宝』が展開された。そこから覗く宝具は全て私を照準しており、これらが解き放たれた場合私は即座に挽肉になるだろう。そう、あくまで撃たれたらだけど。
「詰めが甘いよ、英雄王」
「何?」
全身を拘束されたまま私が言い放った言葉に、ギル様が不快そうに眉を顰める。
私はセイバー等の三騎士でも、ライダーでもバーサーカーでも…多分ない。力で抑えられる他のクラスと違って、私のクラスはキャスターだ。魔術師を、たかが身体的に拘束しただけで満足するとか、不十分にも程がある。こういう事があるから、慢心王って言われるんだろうね。
「真の英雄は目で殺す! ブラフマーストラ!」
「ぬぅっ!」
あの不愉快な顔ではなく、英雄王の右肩を狙って私は不完全な宝具もどきを放った。私の左眼から放たれた熱線が、狙い通りに着弾・貫通し爆発を引き起こした。
なんて仰々しい事を言ってみるけど、私のこれは本来の対国宝具たるブラフマーストラの、極めて劣化した搾りかすみたいな出来損ないだ。戦に明け暮れてはいたけど明確な武の師はおらず、スキルなんてモノに頼っていたから何か武術を極めてもいない。だからカルナやラーマのモノと違って漢字でルビ振りも出来ないし、ただの爆発するビームに成り下がっている。
「我の決定に反するか! 不敬であるぞ!」
右肩を抑えた英雄王が一歩後退し、左手で合図を下した。震えだす宝具群と、私の拘束を天の鎖が強化する中、私も笑って答える。
「生前から、偉い人って気に食わなくてね!」
右足のナノゴーレムを解放。自分の周囲に、足を起点に幾千幾万の斬撃として再構成して迎撃する。今の私が操作できるゴーレムの射程圏外に英雄王がいるのは残念だけど、今はそんな贅沢言ってられない。こんなショボい物じゃ、時間稼ぎがせいぜいだろうから。
「やるよティア!」
『承知した』
迎撃仕切れてない原初の宝具が全身に突き刺さり、段々と動かなくなっていく身体で私は最後の魔術を使う。発生させたのは、魔術での探査も肉眼での確認も妨害するナノゴーレムの煙幕。自分の勝ちじゃなく、次に続く者を支援する魔術だ。
「さて、後は任せたよ…
結局今回も私は、最後の最後に勝つ事が出来なかった。だけど今回に関しては、ロイドと一緒に死んだ最後みたいな後悔はない。確かにマスターは心配だ。けれど、ここまで来れば私達の勝ちは疑いようもない。
「あの英雄王に、目にもの見せてやって!」
『……分かったよキャスター』
マスターの中のスイッチが切り替わったのを感じた。これでもうどうとでもなるだろう。崩壊していく霊基で、私は私達の勝利を確信した。
『我が手に輝く、全ての令呪を以って命じる。
ーーーー貴女の総てを私に継承して! キャスターッ!!」
「『是非もなし』」
私とティアの声が重なり、令呪によって供給された莫大な魔力による全能感が全身を包み込む。
そして、次の刹那には私の意識は光に溶けて消滅していた。
7割くらいネタの次回予告
「「『すべては、勝利をこの手に掴むためッ!!』」」