なんとなくFate   作:銀鈴

35 / 58
【BGM:星を掲げる者】かな?やっぱり


zeroに至ってほしい物語 其之漆

「天昇せよ、我が守護星ーーー鋼の恒星(ほむら)を掲げるがため!」

 

 元にした神星と英雄の様な正義や大義(プラス)なんて物は、私の中には一片たりとも存在しない。私にあるのは恐怖で振り切れた負の精神(マイナス)だけだ。正規の英霊であるキャスターにはあるかもしれないけど、生粋の邪神たるティアさんはその存在事態がマイナスに振り切れている。

 

『あっははは! マスター頭おかしいよ! よりにもよってこれを選ぶとか!』

『マスター、まだ頭にブーメラン刺さってる』

 

 絶大なプラスの重ね掛けが出鱈目な新生を顕現させるなら、暴論だけど振り切れたマイナスの重ね掛けでも出力は劣らないプラスになる筈だ。もし劣っていたとしても、そこにプラスが重ねられるのだから資格はギリギリ満たしている。

 ならばやる事はただ1つ。自らが望む未来を目指し駆け抜けよう。

 

「おお、輝かしきかな天孫よ。葦原中国(あしはらのなかつくに)を治めるがため、高天原より邇邇藝命(ニニギノミコト)を眼下の星へ遣わせたまえ。

 日向(ひむか)の高千穂、久士布流多気(クジフルタケ)へと五伴緒(イツトモノオ)を従えて。禍津に穢れし我らが大地を、どうか光で照らしたまえと恐み恐み申すのだ」

 

 これは天津の果てから響き渡る、光を讃えて祝う詠唱(こえ)

 本来私みたいな異分子(エラー)が唱えちゃいけない、極限まで凝縮された歓喜、喝采、正の賛歌。

 けれど自分を騙し世界を欺き、掲げられた太陽の輝きが、爽快に一つの未来だけを見据え輝く決意を撒き散らす。

 

「鏡と剣と勾玉は、三徳示す三種宝物(みくさのたから)。とりわけ猛き叢雲よ、いざや此の(くび)刎ねるがよい――天之尾羽張(アメノオハバリ)がした如く。

 我は炎産霊(ほむすび)、身を捧げ、天津の血筋を満たそうぞ。国津神より受け継いで焔の系譜が栄華を齎す」

 

 幼すぎる声で唄われる再誕の祝詞に淀みはなく……されど本来奏でる事の許されない旋律は、一句毎に肉体と魂を焼却せんと私を侵食する。

 扱うための魔力は十分。けれど騙し欺くだけでは、中身(こころ)が絶望的に力不足。いつか光の英雄に憧憬を抱いただけの人間じゃ、不合格として焼き尽くされるだろう。

 

『『天駆けよ、光の翼ーー炎熱()の象徴とは不死なれば。

 絢爛たる輝きにて照らし導き慈しもう。

 遍く闇を、偉大な雷火で焼き尽くせ』』

 

 それがどうした? その程度、本家本元に倣って私は気合いと根性で苦痛に耐えよう。そうしたら、(キャスター)が最後の壁は乗り越えてくれるのだから。頭に響く輪唱がその答えだった。

 (半人前)には出来なくとも、(キャスター)になら超える事ができる。なにせ、そもそも彼女達は英霊という神秘の塊かつ、自ら世界の(ことわり)を流出させる者。この程度の事が出来ずしてどうすると、物理法則(あたりまえ)をねじ伏せる。

 

「ならばこそ、来たれ迦具土神(カグツチ)。新生の時は訪れた」

 

 今は、私たち3人で1人の人間。資格は示した。ならば主導権を握っている私も自分を振り絞らないと、情けないにも程がある。だから今、私は寿命(いのち)を燃料にして擬似的に限界を超えていく。

 

『「煌く誇りよ、天へ轟け。尊き銀河を目指すのだ」』

 

 だってそうしなければ、自分の魔術か英雄王かに食い潰されてしまうから。

 私の本質は混沌・狂(マイナス)、幾ら擬似サーヴァントとなったところでそこに一切の変化はない。だからこそ生み出せる《逃げ出したい》《死にたくない》《戦いたくない》《恐ろしい》《もう嫌だ》といった負の感情を、爆発させ纏めて恒星と為す。その負の太陽が邪神と関わり性質が反転し、英雄の助力によって完成する。

 

『「ーーこれが、我らの英雄譚」』

 

 故に生まれるのは、歪な太陽に照らされた出来損ないの英雄譚。筋書きはありきたりで、役者だって役不足は否めない、面白みのない路傍の石ころみたいな物語。

 運命の車輪に巻き込まれた私の限界にして、いつか終点に至る事の確定した出発点。

 ただの少女が、ただ生きたいが為天に奏で奉ずる、空想の物語。

 

超新星(Metalnova)ーー

 大和創世 日はまた昇る 希望の光は不滅なり(Shining Sphere Riser)

 

 なんとなく運命(Fate)に流される事を辞め、生ききる為に確固たる意志を持って英雄王(最悪の敵)に立ち向かう。まるで物語の主人公みたいな決意で、私は魔術を完成させた。

 だから、今一時だけ私は星を掲げる者(スフィアライザー)

 自分の掲げた星で自分を焼き焦がしながら、遂に空想を現実に反転させた。

 

「待っててくれるだなんて、随分と余裕だね英雄王」

『それとも、自慢の財宝が蒸発するのが嫌だったのかな?』

 

 今使える最高峰の魔術の発動には成功した。けれど油断も慢心も、これからしちゃいけない。なにせ魔術に喰い殺される危険も、英雄王に勝てる可能性も僅かにしか変動してないのだ。だからこそ、挑発してペースを崩そうと試みた。

 

「細部まで見通す事は叶わなかったが、雑種が不遜にも何処かの神をその身に降ろそうとしているのだ。降ろされた神ごと粉砕せねば意味がなかろうが。

 故にだ。その程度の挑発に乗るほど、今の我は安くないぞ? 雑種」

 

 が、挑発は意味をなさず逆にこっちが挑発される結果になってしまった。万物見通す千里眼に、数多の財宝が納められた蔵、極め付けには乖離剣エア…タダでさえ精神が未熟なこちらが、ちょっと覚醒しただけで太刀打ちできないのも納得だ。

 これじゃあもう、正面突破しか手段はない。脳内で会議する事コンマ数秒、そう確信し焔で形成した大鎌を英雄王に向ける。

 人類の裁定者たる黄金と、ただの転生者(死に損ない)が溢れ出させる魔力が不気味な色彩を描き、両者の魔力が高まっていく。

 

「だったらもう、加減なしでいかせてもらうよ英雄王!

 私の人生(みち)に、貴方の存在は邪魔なんだよ!」

「粋がるなよ雑種。この我を相手に神などの力で挑んだ事を、冥府の底で後悔するがいい!」

 

 次の瞬間、異界に爆音を轟かせ私の最終決戦が始まった。

 

 

 煉獄の如く燃え盛る炎の中、セイバーは歩みを進めていた。

 原作と違い魔力の消耗こそ軽微であるが、膚は血の気が失せ白蝋の様に青褪め、目には虚無が湛えられ足元は覚束ない。いっそ反転(オルタ化)してしまえれば楽なのだろうが、それも不可能だった。

 ふらつきながら、躓きながら、それでもセイバーは進むのを止めなかった。

 理想を否定され、狂化した友の遺品を突きつけられ、外道に好敵手を奪われて。それでも彼女には、遂げるべき責務があった。王として果たさねばならない誓いがあった。それらを完遂する為の最後の手段は、万能の願望器たる聖杯を手中に収める事だけだった。だから進んだ。折れそうな心のままで。

 ついに一階に辿り着き、エントランスを抜けて両開きの扉を開け放つ。眼前に、広大な吹き抜けのコンサートホールが開けた。そして正面の舞台の中央には、燦然と輝く黄金の杯が、炎に囲まれ浮いていた。

 

「あぁ…」

 

 一目で知れた。紛れもなくあれこそが目指す聖杯だと。

 本来の筋書きと違って、ここに黄金のアーチャーは現れない。故にあと少し、ほんの少し足を進めるだけで願いは成就する。

 だがそれを知らないセイバーは、はやる気持ちを抑えゆっくりと一歩を踏み出した、そのとき。

 

 ーー衛宮切嗣の名の下に、令呪を以ってセイバーに命ずーー

 

 セイバーの魂の根幹そのものに働き開ける声が響いた。

 声の主は2階席の高さにある壁面から、テラス状に張り出したボックス席にいた。

 今この状況で、何をと計りかねるセイバーに

 

 ーー宝具にて、聖杯を破壊せよーー

 

 最後に残った全てを壊す命令が下された。

 




ちょっと外の様子を入れたら始められなかった(´・ω・`)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。