人の悪意って計り知れない→なんでそんな事が分かる→マスゴミ見ろよ
の流れで1人で爆笑してる作者であった。
草木も眠るウシミツアワー。ニンジャの如く闇の中を疾駆し、
「こんばんは、雁夜おじさん。この制服どうですかね、似合ってます?」
「ああ、似合ってると思うよ。愛鈴ちゃん」
「それなら良かったです」
『残念。目が死んでるせいで、台無し。やり直し』
ティアさんに酷いと反論しつつ、私はデミ・サーヴァントとしての力を解放する。銀の髪が伸び、世界が広がり、神代のキャスターの力が制限を解かれた。それから、目の前の雁夜おじさんを観察する。
「それじゃあ、あんまり効果はなくなってますけど延命治療を始めますね。でも、言いづらいけど…正直もう長くは生きられないと思います」
私はそうキッパリと断言する。見た感じ、雁夜おじさんは長く見積もって後1年くらいだろう。ギル様と戦った時、
「やっぱりそうか。でも蟲どもに滅茶苦茶にされた身体で、あれから3年も生きられたんだ。心残りはあるけど、感謝してるよ」
「こっちこそです」
そう短く返事をしてから、私は最早習慣になっている雁夜おじさんへの魔術行使を開始した。
今の会話で分かったかもしれないけど、あの聖杯戦争からもう3年の時間が流れている。
ケリィが養子を取って衛宮士郎が生まれ、けれどまだ月夜の誓いが立てられていない微妙な時期。そして、私はちゃっかり中学校へと進学する事が決定した…そんな時期だった。
◇
3年前、雁夜おじさんに保護された私は、翌日見慣れたホテルで目を覚ました。話を聞くと、とりあえずあのまま放置は出来ないと私をホテルに連れて帰ったらしい。犯罪ですおじさん。
目が覚めた私は、雁夜おじさんに事の顛末を所々ぼかして話した後お礼を言い、ティアさんとの脳内会議を経て警察へと向かった。前日にあんな大災害が発生していたから、保護してもらうにはなんだかんだで都合がとてもいいと思ったのだ。
そして、事実それはその通りだった。
家族を失った可哀想な女の子をしているだけで、事はトントン拍子で運ばれていったのだ。そして、どんな経緯を辿ったのかは難しくて分からなかったけど、祖父祖母が他界している私は親戚に引き取られる事になったようだった。某妖怪アニメの主人公みたく。妖怪に狙われる遺品なんてなかったけど。バレれば私自身が魔術協会に追われる身ではあるから同じか。
けど、ここで1つの大きな問題が発覚した。
それは冬木市からは離れた、1軒目の引き取ると言ってくれたお宅に行った時だった。そこはまあまあ居心地は良かったのだが、そこの子供から化け物が来たように怯えられてしまったのだ。
仕方なく話を(脅して)聞いてみると、この真っ白な髪と死んだような目、後無駄に落ち着いてる精神が気にくわないらしい。出ていけと言われた。
だからその日の夜、私はそこから家出した。引き取られてから大体1週間目の夜だった。私は悪くない。
それからなんだかんだあった2軒目。そこはもっと酷かった。
迎えに来た夫婦の内お母さんの方が、一瞬だけではあったけど私を見て嫌悪感を露わにしたのだ。デミ・サーヴァントの知覚を舐めないで欲しい、バレバレだ。勿論そんな場所には行きたくないので、その場でその事を言い、問い詰め、論破し、その場で話自体をご破算にした。相手が悪い。
3軒目ではそもそもマトモに扱われなかったから、素知らぬ顔をしてまた1週間で家出した。ここ辺りで、デミ・サーヴァント化してなくてもティアさんと脳内で会話する事が出来るようになった。いつギル様とバトるか分からないから、訓練を怠ったりはしない。
そして4軒目、5軒目と続いていく内に、1つのことに私は気がついた。どうにも、どの家庭でも誰か1人は私の事を受け入れず、その家庭の元あった空気を壊す原因になってしまうらしい。当たり前だね。家出を繰り返した事がここで響いたのかもしれないけど。
それに、転校した学校でも軽く虐めが発生する。最初は転校生という事でワラワラ寄ってくるのだが、冬木市出身と知られた瞬間離れていく。そして、親なしやらなんやらと虐めが始まるのだ。あと何故か避けられる。強制ボッチだ。
それなの上手くいかない原因を纏めると、冬木市出身、親がいない、真っ白な髪、死んだ目、落ち着きすぎた精神と、どれも変えられるようなものでない事が判明した。髪色も、例え染めても翌日には白くなってる不思議仕様だからね。
そして1年近くたらい回しにされた果てに辿り着いたのが、今私のいる冬木市の孤児院だった。他の場所とは違って「引き取られた先で虐められたので戻ってきましたー(棒)」と、盛大に元の小学校に復帰もできた。
孤児院に来た夜、私は結局ここに戻ってくるのかと軽く絶望しつつ、復興が始まった冬木市新都を魔術で隠れながら散策していた。その時に出会ったのが、寿命が幾ばくも残ってない雁夜おじさんだった。
今のような関係になったのは、ここら辺からだ。
私はお金ごと聖杯の泥に家を押し流されてるから、現金はない。遺産があるかもだけど、こんな子供には任せられる訳がないからパス。現状はよく分からないんだけどね。
それでもって、おしゃれを含め色々な物に手を出してるせいで、お小遣いじゃ全くお金が足りない。だから、多少将来も見て、私はお金が欲しい。
雁夜おじさんは、桜ちゃんと過ごす時間が欲しい。
だから、雁夜おじさんのツテで私の作った魔術礼装(神秘控えめ)とか工芸品を売ってもらう代わりに、私が封印指定とかそんなのを無視した延命治療を施すというwin-winな関係を築く事ができた。
これが、夜な夜な幼女と密会し、良い事をしてもらってる死にかけのおじさんが誕生した経緯だったりする。字面だけみると、雁夜おじさんからかなり犯罪者臭が漂ってるなコレ。
因みに、今も私が自分を幼女と表したのは成長が微妙に止まった身体が理由だ。少し前から身長は145cmから伸びなくなり、体型もどれだけ食べてもほぼ変化しなくなった。胸だってつるーんぺたーんだし、このままじゃいつかガチロリ先輩とか呼ばれそうで困る。キャスター…イオリの最後がこのくらいの身長だったらしいって話を聞いて、ここだけは文句を言いたくなった。
ここまで書いた他、それからの2年に特筆すべき事は特に何もない。異常な事に、非常に平穏な2年間を私は過ごす事が出来た。多分麻婆にはバレてるし、ギル様の襲撃があってもおかしくないと思っていたのに、それらが一切無かった。
そして、それらを疑問に思いつつ今…stay nightかGrand Orderへと繋がる未来へと辿り着いた。
◇
「っと、これで終わりですね。向こう1週間くらいは大丈夫でしょう」
長い回想と命を繋ぐための魔術を終え、雁夜おじさんの背中を両手でパンと叩く。勿論加減はしているから、一般的な女の子程度の力しか出てないはずだ。
もう一度魔眼で確認してから、私はデミ・サーヴァント化を解除する。この深山町で、長時間大きな霊基の反応を出していられる程私の肝は座ってない。
「いつも悪いね、こんな時間に来てもらって。門限とか、大変だろう?」
「大丈夫ですよ。私、悪い子ですし」
ウインクして、ミステリアスになるようにそう言ってみる。事実、私は結構悪い子だから間違ってない。昼間は学校のせいでロクに動けなかったから、門限を笑って無視して夜になってから街に出かける事が多いしね。
おい、誰だ薄い本になりそうな設定とか言ったの。
「それはそれで置いておくとして、そういえば桜ちゃんは近頃どうですか? メンタルのケアは私じゃ出来ないから心配で…」
2人の体を蝕んでいた蟲達は、3年前にキャスターが完全に除去した。体もその時回復させたし、今は私が偶にこうやって来てはアフターケアにつとめている。
だけど、心に関しては何も出来ることはない。私の
それこそ、親しい人物に任せるくらいしか手法を思いつかないくらいには。
「みんなが揃っていた時とは比べられないけど、それでも随分と笑ってくれるようにはなったよ。折角だし会っていくかい?」
「いえ。こんな時間に起こすのは悪いですし、大丈夫です」
かぶりを振って私は、雁夜おじさんにそう告げた。深夜帯は、良い子はねんねの時間です。起きてて良いのは
「それに、ちょっと深山町にはあんまり長居したくなくて…」
あははと苦笑いを浮かべながら私は言う。だってこっちは、ケリィとか士郎とか麻婆とかギル様とか遠坂邸(再建)とかの、目に見える地雷が埋まりに埋まった地雷原なのだから。迂闊に転移も使えやしない。
「そういえばそうだったね。それじゃあもう帰るのかな?」
「はい。私も眠いですし帰ろうかと思います。お邪魔しました」
ペコリと一礼して、私は間桐邸から脱出する。
そして、隠蔽と強化の魔術を全力で使い新都に向かって走り始めた。
ふぅ…こんな危険な町にいられるか! おうちかえる!
『そう言う割に、大マスターは、しょっちゅうこっちに来てる』
「そりゃあ、雁夜おじさんとは約束してるしね?!」
被っていた猫を捨てて、本音でティアさんに反論する。一応、私は約束は守りたい主義なのだ。これが元の私の気持ちなのか、キャスターと混じって生まれた気持ちなのかは知らないけど。
『そう。じゃあ、これからはどうするの? 雁夜おじさんは、もう長くない。そしたら、深山町に行く必要はない』
「いや、一応高校は出たいからなぁ…学年が2つ上だから問題ないだろうし、穂群原学園の高等部には行く事になるから暫くは来るかな」
というか、実は通ってた小学校もこれから通う中学校も、穂群原学園系列だったりする。なんとなくおかしな気もするけど、私という異物がいるんだからそれくらいは誤差の範囲だろう。
『それじゃあ、その後は?』
「その後って?」
走りながら私は首を傾げる。その後?
『バレたら魔術協会に追われ、逃亡生活になる。マスターの力があるから、生きるのには困らない。けど、平和とは程遠い事になる』
「あー…やっぱりそうなるよね…」
ティアさんの言ってる事は私だって理解している。せかんどおーなー?が、いつまでうっかりしてくれるかも分からないしね。
「まあ、そうなったら海外に行ってヒマラヤでも登るかなぁ」
『何故にヒマラヤ?』
そりゃあ、カルデア(建設途中)が見つかるかもしれないし、月に行けるかもしれないし。アルジュナを召喚してガチバトル出来るかもしれないし。もしくは影の国を目指してみるのも良いかもしれない。高跳び(物理)してイギリスの方に行って、アヴァロンを探して3000里するのも楽しそうだ。
『…大マスター、だいぶマスターに似てきた』
「うん、今自分でもそう思った」
まあそれも不思議ではない。何せ、
マシュと融合したギャラハッドと違って、私達は双方合意しての融合だったお陰か、ジギルとハイドみたく裏表の関係になってるらしい。だから専用の霊薬を使えば反転できるし、無茶をすればまた話す事は不可能じゃない。
話が逸れてしまったけど、まあ要するに今もイオリからの影響を受け続けてるって事だ。最近、鍛冶作業が異様に楽しく感じるようになってきたし間違いない。
「でも、」
『でも?』
「そんななんとなくしか見えない未来より、目の前にある手の届く範囲の問題をどうにかしたいと思うよ、私は」
簡単に纏めると、死亡フラグ除去を最優先で。死んでしまうのなら、不意を突かれて頓死とかじゃなく満足して死にたい。ただでさえ寿命が削れてるんだしね。
『そう。それも、大マスターらしいね』
そう、鉄面皮なティアさんが笑ったように感じて…
「あ、今ティアさんがデレた!」
『気の所為』
「いや、今のは確実にデレだった!」
『デレてなんかない』
少しシリアス気味だった雰囲気を吹き飛ばし、私達はギャーギャーと(脳内で)騒ぎながら夜の街を駆けていった。そんな私達を、イオリが楽しそうに見ている感じがしたのは、きっと間違いじゃなかったと信じたい。
斯くして、私の物語は一応の終幕を迎える。
今までの様な「なんとなく生きる」事は止めたけど、成長したなんて口が裂けても言う事は出来ない。だけど、それでもこのなんとなく違う
たとえその末路が、
Fin...
『
「違うから、これただの宣誓だから!!」
こちらを指さして、イオリが大爆笑してるイメージが直接頭に投影された。ねえちょっと待って、そんな笑わないで。
これじゃあ締まらないとは思ったけれど、よくよく考えれば私達らしい終わりだったと反省する。
月は雲に隠れてるけど、代わりに星が綺麗な夜だった。
Fin...?
少し気になる後輩の男の子(士郎)の為に
「さあ英雄王、10年前の決着をつけようか。あの聖杯戦争の終わりを、今ここで!」
って感じで過去の因縁(ギル様)と命を削って決着をつけるstay night編が頭に浮かびかけたけど、セイバールートすら終わってないので却下になりました。今度は深山町が壊滅するし。
と言うわけで、一応の完結です。
リクエストだった単発ネタを、ノリと勢いでここまで書けたのは一重に読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございました。
…唯一の心残りは、ギルガメッシュ戦で
『