なんとなくFate   作:銀鈴

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連続投稿2日目
感想、いつもありがとうございます。


第7節

 英雄王の言葉に反応して、乖離剣の直撃により発生していた粉塵が、内から焔に焼き尽くされた。やっぱり、全開じゃない乖離剣じゃあの子を仕留めきる事は出来ないらしい。

 

「なんでこういつもいつも、お前は私の邪魔になる事しかしないのさ、英雄王!!」

 

 怒りによる炎で髪を棚引かせ、その爆炎の中からキャスターが姿を現した。両手に例の劣化恒星剣を携え、本気モード(激昂状態)に入っている様に見える。狂化ランクがAもあるからか、私達は一時的に眼中にない様にも見える。

 

「王たるこの我が、なぜ貴様程度の事情を斟酌してやらねばならんのだ?」

 

 キャスターの怒りを的確に増幅していく英雄王。雑種には出来ない事を平然と…そこに痺れないし憧れもしないけどね。

 って、違う。今はそんな事考えてる場合じゃなかった。何か行動を起こすなら、今しかチャンスはない。

 私は胸の傷で戦闘不能が秒読み。ロイドは戦えるだろうけど、キャスター相手じゃ決め手にイマイチ欠ける。その上マスターという今はお荷物が同行……取れる手なんて一つしかないじゃないですかヤダー。

 

「ロイド、逃げるよ! マスターお願い」

「分かった!」

 

 そう言って私達が逃げる方向は大橋。これまで整備してきた孤児院ではなく、完全に破滅している深山町の方向であった。

 普段の私なら間違いなくロイドには追いつけないけれど、天賦の叡智で無理矢理に魔力放出を再現して、マスターを抱え先行するロイドに追従する。軍刀はとっくに仕舞ってある。

 

「逃げるなカルデア!」

「我を無視するとは、良い度胸をしているな、魔術師(キャスター)!」

「煩い慢心王、友達なんて一人しかいない癖に! ボッチなんだね? 分かるとも!」

「貴様、我を侮辱するかぁッ!」

 

 何か後ろで、しょうもない事が原因で大戦争が始まった気がするけどとりあえず思考から放り出す。

 深山町へと全速力で逃走する私達に、カルデアのダヴィンチちゃんから通信が入った。

 

『なんであの孤児院には逃げないんだい? あちらの方が逃走先としては優秀に思えるのだけど』

「あの2人の戦いに巻き込まれたら…いや、余波でもあんな施設秒で木っ端微塵になるんですけど!?」

 

 ほら、今だって後ろから世界が割れる様な異音が連続して響いてくる。これだから対界宝具同士の激突は…また特異点の揺らぎが悪化したんじゃない?

 

『でも、拠点はどうするのですか? マスターが安全に休める場所は、こちらには…』

「私の真名も半分はバレちゃったから、そっちの宝具を解放すればなんとかなる!」

 

 マシュの質問にもそう即答する。真名がバレちゃったからには、もう『もう1つの世界(アナザーワールド)』の使用を制限する必要もない。私だって、この胸の傷をどうにかしないと軽く死ぬし。侵食してくる絶滅の焔とかたまったもんじゃない。

 

「だから、聞きたい事とかは全部後回し!」

 

 と、大きな声を出してしまったせいか、キャスターにやられた胸の傷が激痛を発し大きくバランスを崩してしまった。そしてそのまま転倒しかけた時、ロイドが私の腰付近をガッチリとホールドしてくれた。

 

「あーごめん、ロイド。このままお願い。魔力放出は合わせるから」

「元からそのつもりだ!」

 

 自分で走る事を諦め、私の身体の自由をロイドに完全に任せる。

 そして2人分の魔力放出によって、世界の砕ける異音をBGMに大橋を渡りきった。次は拠点の確保だけど、どうせあの眼がある以上どこに居てもバレるし…

 

「行き先は、穂群原学園跡地で。カルデアは文句ある?」

『文句はないよ。どうやら、私達よりキミの方が土地勘がある様だしね』

 

 カルデア側の言質は取った。なら、少しはやらかしても文句を言われる事はないだろう。説明責任は生まれそうだけど。

 

「それならごー! 私、そろそろ気絶しそうだし早めで。門開けなくなっちゃうから」

「了解した!」

 

 私たちの移動速度が一気に上昇し、一直線に目的地へ向かった。

 こうやって私達は、一応の逃走に成功したのだった。

 

 

 何か、暖かい場所に寝かされているのを感じた。

 カルデアのベッド? いいや違う。特異点にレイシフトしている以上、それはあり得ない。そしてなにより、品質が段違いだ。

 この寝具は、いつまでもここで寝ていたくなる様でーー違う、そうじゃない。オレはレイシフトして特異点の修復に来た。そして、あの冬木のキャスターが放った炎で焼かれて…

 

「ッーー!」

 

 そこまで記憶が蘇り、オレは荒い息でガバリと状態を起こした。そして、周囲の状況確認より先に自分の身体を触って確認していく。

 

「何も、ない?」

 

 文字通り焼きついた最後の記憶では、オレはなす術もなく炎に包まれ焼かれた筈だ。それなのに、触った感じなんの傷跡も残っていない。鏡などがないので見た目は分からないが、声が出せた以上そちらも問題ないだろう。

 

「よしよし、目は覚めたし無事みたいだね。

 だから言ったでしょマシュちゃん? 最高品質のエリクサーを使ったから、特に問題ないって」

『だって先輩が、先輩があんな事になったんですよ!

 安心できる訳ないじゃないですか!』

 

 その声に振り向くと、明らかに風呂上がりの様に見えるアーチャーが、ロイドに髪を拭いてもらいながらマシュと話していた。

 そして、それと同時に気がついた。この空間には、およそ風景と呼べるものが一切存在していなかった。空も白、地面も白、壁も白、白白白白白。ここは、自分の今座っている布団と、キャスター達以外何も存在していない空間だった。

 

「どこ、ここ?」

 

 なんでこんな場所に!?

 

「狩りごっkもご…ここはジャパリpもご…ちょっ、ロイドやめっ。ひゃん、ここは健全な世界だから!」

「こらっ!」

「ひぁっ、ふぇぅ、本当に、やめっ。それ以上やられると、んっ、切なくなっちゃうから…」

 

 何か喋ろうとしたアーチャーが、何度もロイドに髪をかき回されて、人に見せちゃいけない様な顔に変わっていく。

 混乱に陥りかけたオレの頭は、目の前で繰り広げられた唐突なイチャラブで強制的に沈静化させられた。

 

『見ちゃいけません先輩! お父さんの様になってしまいます!』

「大丈夫、分かってる」

 

 オレとキャスター達の間にマシュのホログラムが立ち上がり、視界を塞いでるけど言われるまでもない。ランスロットやトリスタンの様な、特殊な性癖をオレは持っていない。

 

『円卓最強の騎士が、まるで変態の代名詞みたいに扱われる日が来るなんてね…』

「仕方ないよ、ダ・ヴィンチちゃん」

 

 だって、キャメロットでもハロウィンの時のお城でも、かばい立てできない程にやらかしていたのは覆しようもない事実だから。

 そして、オレの服も別の物に変わっていた。カルデア戦闘服ごと、あの炎に燃やし尽くされてしまったらしい。ジャージ姿な自分を見て、つい1年前までよくこういう格好をしていたのに、今では懐かしく感じる事に驚いた。

 

『それはそれでいいとして、立香君も起きた事だし、現状の整理をしたいと思っていたんだけど…』

「今は真面目な状況なんだぞ? もう冗談とかおふざけで茶化さないか?」

「わ、わかっは。らいじょーぶ」

 

 立ちはだかるマシュの向こう側から、厳し目にアーチャーを話をするロイドの声と蕩けきったアーチャーの声が聞こえてきた。

 これじゃあ、楽に話なんて出来やしないのは目に見えて明らかだ。

 

「それじゃあ、残りの髪を乾かすからなー」

「ひゃ、ひゃい…」

『おお! まさか魔術をこんな風に使うなんてね!』

 

 そんなダ・ヴィンチちゃんの実況によって、なんだか少しだけ覗いてみたくなってくる。好奇心に身を任せ立ち上がろうとした時、マシュのホログラムがずいと近寄ってきた。

 

『むぅ、先輩は絶対に見たらダメなんです! 

いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)』です!』

 

 そして頬を膨らませ、両手を大きく広げオレの視界を目一杯塞いでくる。ここまでされたなら仕方がない、気になってはいたけどやめよう。再び布団の上にオレは座り直す。

 

「ほへ〜」

「相変わらず、イオリは髪長いよな…」

「嫌い?」

「いいや、好きだぞ?」

「えへへ…」

 

 あの2人の準備が終わるまで、気長に待つとしよう。恐らくここら、危険な場所ではないのだろうし。

 あぁ、巌窟王のコーヒーが恋しい。




イオリの融合した幻霊のヒント、出揃いました。
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