なんとなくFate   作:銀鈴

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前作含め過去最大の文字数になってる…


フェイトの始まる日 そのに

 異界の中が異常に賑やかになるアクシデント?はあったけど、あれから数分、私達は今間桐邸の目と鼻の先まで来ていた。ティアさんは魔力消費が無駄と言って、霊体化している。

 

『それで、ここまで来たのはいいけど具体的にどうするの?』

 

 共感知覚(という名のキャスターが上書きした別のナニカ)で感覚を共有している私は、見た目は完全お化け屋敷だけど結構な広さを持つ間桐邸が見えている。魔術師の家だし、真名解放でもしない限り完全に吹き飛ばすのは出来ない気がする。

 

「まあまあ、そこは私のサーヴァントとしての腕の見せ所かな!」

 

 そう言って私/キャスターは、手に持った大鎌を地面に突き立て左の腕を天に掲げた。それに呼応して間桐邸の上空に、銀色の魔力で紡がれた魔法陣が描き出される。

 

「せっかくの栄えある聖杯戦争。たとえ終わり(zero)に続く未来でも、第一戦が偽装じゃつまらないでしょ! 開け銀鍵の門『もう一つの世界(アナザーワールド)』!」

 

 莫大な魔力の後押しによって巨大な魔法陣が完成し、私の居る異界に繋がる穴が現出する。本来ならあくまでそれだけの『王の財宝(ゲートオブ・バビロン)』と違って中身の射出は出来ない宝具らしいけど、ただ落下させるだけなら話は変わってくる。

 

「天より降れ、我が作品(けんぞく)よ!!」

 

 私/キャスターが手を振り下ろし号令をかけた瞬間、虚空に開いた門から数多の武具が地上に向かって殺到した。その全てが最低ランクであるけれど紛れもない宝具。けれどまあいくら神秘を溜め込んだ宝具とは言え、それだけじゃ無論大きな屋敷の完全破壊なんて出来やしない。けれど、どんな物事にも例外というものはある。

 あれ?私の考え方ちょっとおかしくなってきてる気がする…

 

「閉門完了。それじゃあせーの」

 

 私が考えたそんな事が伝わってしまったのか、門を閉じ口の端を吊り上げてキャスターが宣言した。やっぱりうちの鯖バーサーク・キャスターなんじゃ…でも合わせる!

 

「『壊れた幻想(ブロークンファンタズム)!!』」

 

 壊れた幻想。それは自らの象徴たる魔力の詰まった宝具を壊して魔力を暴発させ、ミサイルや爆弾のように使う本来なら最終手段たる禁じ手。

 エミヤの投影とは違うけど幾らでも()()()()なおかげで、うちのキャスターも何度だって使用可能なそれ。たとえ低ランクでも大量の宝具が一斉に起爆すれば、それは想像を絶する破壊力を発生させる。

 つまり何が言いたいのかと言うと…

 

「いやっほー!! あとみーつっけた」

 

 間桐邸は完全に、跡形もなく、木っ端微塵に消し飛んでいた。キャスターがいとも簡単に(半壊してる)地下への入り口を見つけられたのは、そのおかげに違いない。

 そんな事を私が考えている間にキャスターは、大鎌を携えて蟲蔵に嬉々として突撃していった。私としては、途中色んな蟲がキャスターに向かって突撃しては見えない壁にぶつかっては潰れていくのは、見たくなかったけど。

 

「かーりーやくん、あっそびーましょー」

『今やってるの戦争だからね!?』

 

 そんな事を叫びつつ、私/キャスターは蟲蔵の最深部へと辿り着いた。今ここにいるのは誰と誰なんだろう?そう思った瞬間、キャスターと繋がっている私の感覚が爆発的に拡大した。見ているのは前だけの筈なのに、左右背後上下だけじゃなく蠢く蟲の数や形までハッキリと分かる。加えて妙に視界が明るく…ってそうじゃない!

 

「奴を殺せ! バーサーカー!!」

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!」

 

 私が意識を目の前に戻した時には既に、バーサーカーはキャスターに対し手に持った宝具の影響下にある物を振り下ろしていた。どう考えても回避は間に合わない。

 

『っ』

「はぁっ!!」

 

 恐怖で咄嗟に目を瞑っても遮断されない映像の中、黒銀の魔力を迸らせ跳ね上がった不気味な大鎌が、擬似宝具となっている鉄柱をいとも簡単に両断した。それを見てか大きく飛び退いたバーサーカーを見て、キャスターが幼い声で高らかに言い放った。

 

「サーヴァントキャスター、マスターの命令により推参。その首置いてけぇ!」

 

 撒き散らした黒銀の魔力が漂う中、ようやく私も落ち着いて周囲を確認できる。ここに存在するヒトガタは、パーカーを着た白髪の男…雁夜おじさん、和服を着た蟲ジジイ、蟲の海の中【見せられないよ】な状態の私と同じくらいの幼女…桜ちゃん。そして最後に、短くなった鉄柱を剣のように構えるバーサーカー。

 うちの子が薩摩に侵食されてたり、スキルに無いと聞いてた魔力放出を使ってたり。この光景を見た私には、そんな事よりも先に怒りが湧き上がってきた。【見せられないよ】な事をしていいのは、創作物の中だけと決まってる。これだから魔術師って奴らは…

 

「フン、雁夜よ。面妖なサーヴァントではあるが、所詮クラスはキャスター。姿を現した時点で彼奴に勝ち目なぞありはせんわ。さっさ始末せんか!」

「武具接続、No.U002。能力起動」

 

 キャスターからも怒ってる気配が伝わってくる。そして呟かれたよく分からない言葉が私の耳に届いた瞬間、遠くに見えていた蟲ジジイの背中が気がついた時にはすぐ目の前にあった。

 多分縮地でもしたんだろうと理解を放棄する私の前で、キャスターが何も気づいていない臓硯の背後で大鎌を振り被る。

 

「『模倣(イミテーション) 人世界・終焉変生(マッキーパンチ)』」

『ヴォルスングサガじゃないんかい!』

 

 全力でツッコミを入れる私の前で大鎌が黒銀の軌跡を描いて振りぬかれ、臓硯を臓/硯に分割した。仮にも人の魂の限界と言われる200年を超えて生きた怪物。本体は桜ちゃんの心臓にいるはずだし、本来ならこの程度の事で殺せる訳は無いのだが……その姿は既にどこにも無い。ただ魂の腐ったジジイとして全てを終わらせられた。何せさっきのは正真正銘……

 

「……一撃だ」

『一撃だ』

 

 なぜ被ったし。まあいいか。

 使える理由も原理も不明だし理解は諦めるけど、今キャスターが使った技の原典は知ってる。簡潔にまとめると、歴史ある存在を問答無用で終わらせる攻撃。曰く「幕引きの一撃」一部の厨二が辿り着く作品の…陳腐な言葉になるけど必殺技だ。

 

「ぐ、があ゛ぁ゛あ゛ぁぁ!!」

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!」

「やぁっ!」

 

 そんな私の思考を遮ったのは、雁夜おじさんの絶叫とバーサーカーの突撃だった。バーサーカーと打ち合っているのはあくまでキャスター、自分にそう言い聞かせて頭を回す。

 雁夜おじさんが死にかけてるのは…あっ臓硯が死んだせいで起きた際の暴走か、あとバーサーカーがハッスルしてるのもってそれはまずい。あくまで私の偽善になるかもしれないけど、例え数年程度であっても雁夜おじさんには桜ちゃんと幸せに過ごして欲しいのだ。

 

『ティアさん!』

「了解、大マスター」

 

 キャスターはバーサーカーとの戦いで目一杯なので、ティアさんに頼んで分と保たずに雁夜おじさんを治療してもらう用に頼む。けれどまだやらなきゃいけない事が一つある。

 

 それは暴走する蟲の海に呑まれた桜ちゃんの救出。

 

 キャスターはバーサーカーと戦っているし、抑え続けてもらわないとだから助力は期待できない。ティアさんにはそもそも命令できる訳じゃないし、たった今頼み事をしたから却下。よって動けるのは私だけ。

 

「これが無窮の武練! これが円卓最強! セイバーじゃないし、獅子王のギフトもないくせに超強いじゃん!」

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!」

 

 バーサーカーの怨念の様に黒く濁った負の魔力と、キャスターの煌めく黒銀の魔力の軌跡が交わり火花を散らす。一瞬だけ見えたバーサーカーの武器は、『無毀なる湖光(アロンダイト)』に変わってるしこっちが押されてるっていうのにうちのサーヴァントは……こんなに笑顔で楽しそうとかどうかしてるよ。

 

『キャスター、桜ちゃん助けに行くから適当な礼装見繕って!』

「やだ!」

 

 秒と経たずに即答された。え、あぅ、こうなったら自力で見つけ出して助けに行くしか…けどそうなると時間が…

 

「でも私の使い魔は付けてあげる、5秒待って。感覚共有カット」

 

 感覚が突然元の自分に帰還する。こうなると、外の様子が分からないから出ようにも出れないんだけど…

 

『来てフロー!』

「え?」

「きゅうっ!」

 

 そう疑問に思った私の上からまさかの生命体が現れた。真っ赤な甲殻に包まれた強靭そうな腕、立派な翼、猛々しい牙、雄々しい尻尾、くりんとした眼。まだ幼体ではあるけれど、全身に武具を身に纏ったそれは、幻想種の頂点『竜種』に違いなかった。でも可愛い。

 

「マスターの起源とか特性は分からないけど、元々の属性はノーマルな火。私の改造も相まって相性はいいはずだよ!」

 

 自分じゃそこは調べられなかったけど、やっぱり属性は火だったのか。まあ1番多いって話だったし……え、改造? ナニカサレタヨウダ。

 呆然としてる私の背中がコンコンと叩かれた。振り向くと、フローと呼ばれてたドラゴンが伏せて何かを待っていた。

 

「えっと、乗ればいいの?」

「きゅ」

 

 恐れ多いけど、それ以上になんだかドキドキする。だって神話の生物に乗れるんだよ?SAN値直葬系はノーサンキューだけど、こういう系ならもっと来ても問題ナッシンだ。

 

「よいしょっと」

 

 頑張ってドラゴンさんの上に跨った瞬間、私の全身を焔が包み込んだ。パジャマの上を舐める様に焔が伝っていき、新たな衣装を形成する。瞬きの間に完成したそれは不思議と熱くない、焔でできた巫女装束。意味はもう考えないけど、多分外に出るのに必要なんだろう。

 

『3秒後に門を開くから、早くでて救出して戻ること!』

「りょうかい、フローちゃん、お願いね?」

「くるあっ!」

 

 私はそう言いつつフローちゃんにしがみつく。3、2、1、今!

 門がゆっくりと外に向かって開かれ、そこから私は凄まじい速度で外に出撃した。途端に嗅覚を支配する腐臭やらなんやらが入り混じったゴミの様な臭い。そんな空気を焼き焦がしながら、私達は無残に砕かれた蟲蔵内を飛翔する。

 

「お願い、見つかって」

 

 視界の端に打ち合うサーヴァント達とぐったりしてる雁夜おじさんを入れながら、私は眼下に広がる蠢く蟲の海に目を凝らす。気持ち悪いその中に探すのは肌色、心臓の蟲は消滅してる筈だから今助けだせれば間に合う筈。

 

「いた! お願いフローー!!」

「きゅるぁぁ!」

 

 痛みを発しながら魔力回路が駆動し、吸い上げられた魔力が魔術を発動させる。それは所謂ドラゴンブレス。圧倒的な火力が蟲の海から見えた幼い手の周りを除いて焼却し、一塊の蟲だけを残して中断された。

 

「突撃ー!」

「きゅう!」

 

 初歩の初歩、強化の魔術を自分の脚にかける。グングン迫る桜ちゃんのいる(であろう)蟲塊。暴れる蟲が気持ち悪いし、脚だって痛いけど知ったもんか!

 

「捕、まえた!」

 

 多少の蟲ごと桜ちゃんの手を掴んで引っ張り出し、どうにか抱きとめる。その際未練がましくへばり付いていた1匹の蟲が、火傷を負った桜ちゃんの肌を這い私の頭に飛びかかって来た。

 回避不能迎撃不能、牙が見えた多分淫蟲、死んで、たまるか!!

 

「へ…?」

 

 走馬灯が見える寸前、淫蟲が業火に包まれた炭と化した。

 私がその事を不思議に思う間もフローちゃんの動きは止まらない。本来の主人の命に従って、開かれた門の中に最高速で飛び込んだ。そして徐々に減速しながら着陸、停止する。

 

「そうだ、桜ちゃんは!?」

 

 私が未だ抱きとめている助けたかった人物、その容態を確認する。全身についた暴れた蟲による大量の切り傷、ブレスの余波で受けたと思われる火傷、それらが日袴と同じ色の焔に包まれて治っていっている。

 

「この巫女服のおかげ…?」

「きゅうきゅう」

 

 フローちゃんがコクコクと頷いている、どうやら本当にそうだったらしい。それなら全身の傷に対応してて遅々として進んでない回復も、私が全力を出せば早くなる筈。

 

「せめてこういう怪我だけは治す!」

 

 肥大化する魔力消費。全身に走る痛みも増大したけれど私は、自分が掲げていた目的の達成を確信し……限界を迎えてパタリと倒れるのだった。




転移とかいう魔法レベルの魔術を使ったり、宝具やら魔力放出(もどき)をバンバンつかってるけど、真工房さえ起動しちゃえば魔力供給が半自己完結するからね、仕方ないね。

途中の謎の番号はユニーク装備の二個目って意味でした。



そして、マッキーパンチとランスロさんが出てるからって、あの超良作とは比べないで下さいお願いしますm(_ _)m
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