なんとなくFate   作:銀鈴

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当てて欲しくて公開するイオリの取り込んでる幻霊のヒント
宝具
手持ちの武器
千里眼:A
近接戦闘
天賦の叡智


第9節

「良し、さあさあ、レッツらごー」

 

 1人だけノリノリで、アーチャーは奥に見える教会へと突き進んで行く。その後ろ姿を見て固まっているオレの方に、ポンと軽く手が置かれた。

 

「なんだかんだ言ってるが、この特異点での時間が楽しくて仕方ないらしくてな。なるべく許してあげてくれ」

「別に、それはいいんですけど…」

 

 イオリが言うには、この先で待つのはバビロニアであった賢王たるギルガメッシュでなく、英雄王ギルガメッシュっていう話だった。それならばきっと…

 

『話をしてくれるかどうかも怪しいよね』

『寧ろ、一蹴されてそのまま戦闘に発展すると思われます』

 

 マシュやダ・ヴィンチちゃんの予想とオレの予想は完全に一致している。どう考えても助力どころか、マトモな会話すらしてもらえるか怪しい。

 

「いや、それなら問題ない……多分。

 今の英雄王は、魔力が足りない上に疲労困憊だからな。その分不敬な真似をしたらアレだが、話くらいはしっかりと聞いてくれる」

「多分って?」

「機嫌が悪ければ、その限りじゃないって事だ。まあ、今日は多分問題ないだろう。いきなり攻撃されないし」

 

 その多分というのが、不安で仕方がない。普段より何割か話を聞いてくれる賢王ギルガメッシュですらアレだったのだ。英雄王となると、何が起こるか分からない。

 

「あれ、来ないの? 用があるんだから、早く行かないと怒っちゃうと思うんだけど…」

「行かなきゃーー」

 

 ただでさえ低い成功率を、更に下げる理由はない。

 会話を一旦切り上げ、イオリの後を追う。そう急ぐオレに、カルデアからマシュが話しかけてくる。

 

『この先で待っているのは、間違いなく英雄王ギルガメッシュです。それと……何故か、聖杯と同等の魔力炉心も確認できます』

 

 それは確かに気になる事だけど、そこまで重要でない様に思える。だってあの王様は、ウルクの大杯を…聖杯を持っているのだから。

 

『それと、なんだか嫌な胸騒ぎがするんです。

 イレギュラーだらけのこの特異点、何が起こっても不思議じゃありません。どうか、気をつけて下さい、先輩』

「分かった、気をつけて行動するよ」

 

 この特異点に来てから、ずっとこの2人に振り回されっぱなしだったけれど、気を引き締めねばなるまい。忘れかけていたけれど、この特異点はあの7つの特異点と同規模のものなのだ。気を抜いたまま修復できるほど、甘いものである筈がない。

 

「ん、マスターも準備できたみたいだね」

 

 扉の前で待っていてくれたイオリが、こちらを見てそう呟いた。そして満足そうに頷き、教会の扉を勢いよく開け放った。

 

「やっほー! 英雄王。元気してるー?」

 

 そして、そんな事を大声で言い放った。絶対これは怒る。オレだって、疲れてる時にこんな声をかけられたら怒る。

 つまり、イオリはこちらの覚悟を一瞬で灰燼に帰しにきていた。

 

「何用だ、弓兵(アーチャー)風情が。今の我に、貴様なんぞと戯れている暇は…」

 

 教会の奥に鎮座する謎の玉座に座っているのは、相変わらず半裸で苛立ちがMAXといった雰囲気の英雄王。その燃える紅玉(ルビー)の様な双眸が、こちらを無遠慮に睨め回す。そしてその視線がオレに到達し、ピタリと静止した。

 

「ふむ、そういう理由(わけ)か。理解した」

「さっすが英雄王。話が省けて助かるよ」

 

 そう言ってこちらを一瞥した英雄王が、はしゃぐイオリに心底面倒そうな目を向けて吐き捨てた。

 

「それ以上巫山戯た事を喋ろうものなら、魔術師(キャスター)よりも先に貴様を潰すぞ弓兵(アーチャー)。口をつぐむが良い、次はないぞ」

「は〜い!」

 

 そう子供がしそうな返事をして、後ろでずっと黙って待ってくれているロイドの元にパタパタと走っていった。これで英雄王との矢面に立つのはオレただ1人。この身この心1つで立ち向かわなければならない。

 

「さて、天文台の魔術師よ。我も当事者故に、凡その事情は把握している。貴様の願いも予想はついた。普段であれば即打ち首にするところだが……良いだろう、話だけは聞いてやる」

 

 あまりに予想と違う態度に困惑する。オレの知ってる英雄王とあまりに違いすぎる。けれど固まっている暇はない、早く言えと急かされているのだ。待たせてしまったら何が起こるかわからない。

 

「どうか、貴方の力を貸して欲しい。英雄王ギルガメッシュ」

 

 押し寄せるプレッシャーの中、英雄王と眼を合わせてそう言い、オレは頭を下げた。もしかしたら、今ならば話を聞いてくれるかもしれーー

 

「断る。予想通りのつまらん願いである上に、我が力を貸す利益がないわ!」

 

 なかった。力を貸してくれるなんて事はなく、ある意味予想通りの結果に終わった。そして、こちらに興味を失ったかのように眼を瞑ってしまった。

 

『そんな…』

『まあ、普通はこうなるよね』

 

 通信機から残念そうな2人の声が聞こえてくる。だけど、1つだけまだ切ってない手札がある。イオリとロイドだけでは、本人達の言う通り冬木のキャスターに勝てるか怪しいのだ。だから、どうしても助力が欲しい。だから、これを言うしかない。

 

「バビロニアで見せてくれた、凄くカッコイイ英雄王の姿、また見せて欲しかったんだけどなぁ…」

 

 玉座に座る英雄王の眉がピクリと動く。

 

「ティアマト神すら討滅した王様が力を貸してくれたら、あの冬木のキャスターとも互角以上に戦えると思ったんだけどなぁ…」

 

 玉座に座る英雄王が、目を開けた。

 

「でも、分かりました。オレ達は、オレ達の力だけで挑む事にします。お邪魔してすみませんでした」

 

 もう一度頭を下げて、オレは踵を返し入り口へと向かう。やはり、オレ達だけで戦うしかないのだろう。英雄王の助力が得られない以上、勝算は低くなるけれど仕方がない。

 

「待つがいい、天文台の魔術師よ」

 

 そうして数歩歩いた時、後ろから声をかけられた。振り向くと、目を開いた英雄王が立ち上がりこちらを見ていた。

 

「そこまで言うのであれば仕方ない。賢王(オレ)に出来て、(オレ)に出来ぬ道理もあるまいしな」

『それって!』

「だが、勘違いはするでないぞ。貴様の頼みで動くのではない。いかな我も、あの魔術師と同時にカルデアと敵対しては力尽きるのみだからだ」

 

 嬉しそうに返事をしたマシュを、英雄王はキッパリと否定する。

 

「それは、一緒に戦ってくれるという事ですか?」

「違う。我と彼奴の戦に巻き込まれれば、貴様らなど木っ端の如く砕けるであろう。故に供に戦う事は許さぬが、邪魔はしないでやる。貴様らは勝手に問題を片付けるがいい」

「ありがとうございます」

 

 最大の感謝を込めてそう言い、頭を下げる。

 

「どうせ彼奴は、明日も我に挑みにくるであろう。

 その時にでも仕掛けるのだな」

「はい!」

 

 元気よく返事をし、今度こそ教会を後にする。

 

 教会から離れ、例え英雄王でも音を聞き取れない様な距離まで来た時、漸くアーチャーが口を開いた。うん、分かっている。言いたい事は分かっている。

 

「英雄王、ツンデレ…まじツンデレ…」

『いやぁ、見事なまでにテンプレを踏襲していたね!』

 

 くつくつと小さく笑うイオリの背中をロイドが優しく撫で、大笑いしているダ・ヴィンチちゃんをマシュが宥めている。

 これ、凄く失礼なんじゃないだろうか?

 

「あー、でも、うん。マスターのお陰で、どうにかなりそうだよ。本当にありがとう」

 

 目尻に涙を浮かべたイオリが、どうにか落ち着いて言ってくる。オレにとっても死活問題だから、精一杯頑張った。

 

『ですが先輩、どうやってあんな事を思いついたのですか?』

「いや、なんとなく?」

 

 そう、なんとなくアレが最適解な気がしただけだったのだ。

 

「さてと、それじゃあよかった…って言いたいところなんだけど。マスター、良い知らせと悪い知らせ、どっちを先に聞きたい?」

 

 この数瞬で完全に素面に戻ったイオリが、そう問いかけて来た。まだ笑っているダ・ヴィンチちゃんは総スルーされている。

 

「それじゃあ、良い知らせから」

「おっけー。じゃあ簡単に纏めて言うよ。

 ギル様が助けてくれるお陰で、こっちの勝ち目がかなり出てきた。あの子と、少なくとも戦えるくらいには」

 

 つまり、今までより圧倒的に良い状況になったと言う事か。それなら、頑張った甲斐があったって事だ。

 

「それじゃあ、悪い知らせは?」

「あの子が本気になったら、逸話的に英雄王じゃ何があってもに勝てない。結局あの子をどうにか出来るのは、私達だけだね」

『『なっ』』

 

 通信機の向こうから、2人の驚く声が聞こえた。けれど、オレはなんとなく納得している部分があった。あの炎を直に受けたからだろうか?

 

「後、最終決戦まで数日の猶予もないね。私の眼に始まりが見えるくらいだし」

「そんな…」

 

 ついででトンデモナイ事を言いやがった。それじゃあ、準備も何もできやしないじゃないか。眼に見えるとは、千里眼の効果だろうか?

 

「それとーー」

『まだあるんですか!?』

「うん。

 

 

 今日の、宿がない」

 

「なん……だと」

 

 一気に問題の脅威度は下がったけれど、重要度はさして変わらない。こんな瓦礫の中じゃおちおち眠れないし、それでは明日に支障が出る。

 

『キミの宝具の中って言うのはダメなのかい? アーチャー』

「有りだけど、最初からは提案できないよ…あくまでアレは宝具なんだし。まあ、マスターとカルデア側が文句ないなら良いけどさぁ…」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの質問に、アーチャーが溜め息を吐きながらそう答える。

 

「マスターはいいの? あんな空間で」

「問題ない」

「カルデアは?」

『マスターが決めたのなら、文句はないです』

「はぁ…なんで皆、こんなお人好しなのさ…」

 

 アーチャーが、もう一度大きく溜め息を吐いた。

 

「もうやだぁ、疑ってた心が痛い。助けてロイドぉ…」

「ほら、よしよし…」

 

 涙目のイオリが、ロイドに抱きついて頭を撫でられ始めた。

 ちょっと気を抜いた途端にこれである。いつか、ひとりでに口の中がジャリジャリとしてくるんじゃないだろうか? 勿論砂糖で。

 

「今日の晩御飯は竜骨ラーメンにしてやるー!!」

 

 それはそれで、凄く楽しみだ。

 こうして、とても長く濃密だった3日目が終わりを告げた。

 




「し、仕方ないわね。別の私に出来て私に出来ない筈がないんだから、助けてあげる!」
「で、でも勘違いしないでよね。あなたが頼んだから助かるんじゃなくて、敵対したら疲れるだけだからなんだから!」
「あなた達じゃ、私の近くにいたら壊れちゃうもん。けど、一緒に戦いはしない代わりに邪魔はしないであげる! そっちも勝手になんとかしなさいよ!」


疲れてるんだな…私。
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