いっそgood/Bad廃止すべき…?
「分かってるよ、王様!」
飛び出していったイオリが、たった今ギルガメッシュを倒した冬木のキャスターに全力で攻撃を仕掛ける。
オレでは、あんな神話の戦いに巻き込まれたら…いや、余波だけで死んでしまうだろう。事実、橋で一度死にかけている訳だし。
「あははっ! そういう事だったんだねイオリ。まさか英雄王を本命として使わないなんてね!」
「そりゃあそうじゃん愛鈴。ザビ子でもなきゃ、英雄王をお願いどうりに動かせる訳ないんだしさ!」
武器の雨が、焔の爆発で掻き消された。
そして、その中から飛び出した無傷の冬木のキャスターと、イオリが激突した。双方の手に握られるのは、灼熱の閃光を纏った双刀と黄金の爆光を纏った双剣。そしてそのどちらの光からも、人間が触れてはいけない様な気配を感じた。
『え? えぇ!? 嘘、でもこれって…』
そんな謎の感覚に戦々恐々としていると、オレの耳にマシュの驚愕する声が飛び込んできた。
「何があったの、マシュ!?」
『はい! えっと、キャスターさんから聖杯の反応が検知されました! ですが…』
『何故かは知らないけど、アーチャーからも同等以上の魔力が観測されたのさ!』
なんですと。それじゃあ、この特異点に聖杯はない云々は嘘で、2つも聖杯は存在していたという事に…?
「いや、それは違うぞマスター」
そんなオレの疑問を見透かしたかの様に、隣に立っていたロイドが訂正を入れた。
「確かに冬木のキャスター…愛鈴が持っているのは聖杯だ。ただし、過去にアインツベルンが召喚した
そして、イオリは聖杯なんて所持してはいない。だが、マスターも入った異界の中に、1つで聖杯と同規模の魔力炉を20機抱え込んでいる。ただそれだけだ」
目線の先では、空を舞う2人が何度も何度も交差して戦闘しているのが見える。それは、バビロニアで会った神霊すら凌駕する魔力を常時放出しながら戦うという、十分に頭のネジが外れた戦いだった。
『嘘…アーチャーさんの放出する魔力量、未だに上昇し続けています!』
『確かに凄いけど、こんな力を出し続けられる筈ないぞ!?』
「そうだ、出し続けられる訳がない。このままじゃ、すぐにでもイオリの
苦虫を噛み潰した様な顔をしてロイドが言う。自分の大切な人が、自分の分身とも言える存在と、自殺紛いの方法で殺し合っているのだから。
『それじゃあ!』
「俺だって、助けに行きたいさ。
でも、イオリが1人でやらせてくれって言ったんだ。何を言っても曲げない事は分かってるし、こうしなきゃ戦えすらしない事も理解している」
爆音と共に、衝撃波が駆け抜けた。
目を向ければ、イオリが焔に焼かれながらもキャスターとの戦闘を続けていた。オレの目には見えない速度だけど、次元が違うというのは分かる。
「だったら、信じてそれにトコトン付き合ってあげてこそ、男だろう」
そしてオレ達は、その余波が届くことのない地上で待機している。手を貸したい。それは事実だけれど、アーチャーの頼みを聴かない訳には行かずこんな状況に陥っていた。
◆
「ねえマスター。キャスターとの戦いだけどさ、最初は私1人にまかせてくれない?」
「え?」
空で神話の様な対戦が起きる中、イオリがふとオレにそう言ってきた。カルデアの通信は、過剰な魔力の嵐で一時的に途切れている。
「見ての通り、ギル様でもあの状態の愛鈴には勝てない。あの子は自分の中の英雄を、幻霊として取り込んでるからね。先ずは、それを剥がさないとそもそも勝ち目がないんだよ」
「幻霊…?」
いきなり初めて聞く単語が飛び出してきた。幻霊とは一体なんなのだろうか? 首を傾げるオレに、イオリは言葉を続ける。
「そこはダ・ヴィンチちゃんにレクチャーしてもらってね。
話を戻すけど…勝ち目を作る為に、始めは私1人に任せてくれないかな? あの子と私が地面に落ちたら、来てくれればいいから」
「でも、それじゃあアーチャーは…」
勝ち目を作る為に、勝ち目のない戦いに挑む事になる。それじゃあ、どうあがいてもイオリは…
「うん、負けて消えるだろうね。だけどまあ、私の逸話的にも会ってるし文句はないよ。ロイドからもOKは貰った」
「本当に?」
「ああ。またこうなるのかと思うと、凄く嫌な気分だがな」
そういうロイドは、とても嫌そうな苦しそうな顔をしていた。
そうしてウジウジと迷っている間に、上空の戦いは佳境を迎える。なんらかの魔術が発動され、焔が暴れまわっている。
「あー…こうならない様に、あんまりマスターと仲良くしてなかったのに…」
そう言ってアーチャーは、半透明な門から取り出した歪な形の短剣を自分自身に突き立てた。突き立てたままの短剣から稲妻が発生し、何かがプツンと途切れる感覚がした。
「
そう言いつつイオリは、全ての武装を実体化させた。
博士風なローブ、腰には巨大な望遠鏡、そして左眼に片眼鏡。1つに纏めた銀の長髪が、溢れ出す魔力の奔流で踊っている。
「最終再臨完了っと。じゃあね、元マスター。もう行かないと間に合わないから」
そして、その姿のままロイドへと近づき…
「んっ…多分、これで問題ないね。行ってきます」
「応。じゃあな、イオリ」
「なっ…」
目の前で、新婚さんみたく行ってらっしゃいのちゅーをして出撃して行った。それには色んな感情がごちゃ混ぜになっていて、甘いは甘いのだけれどオレは何も言うことが出来なかった。
◆◇
「うぉおおおおぉっ!!」
「はぁぁぁぁっ!!」
始まりから終わりまで、共に全力全開。様子見なんて彼方に放り投げた。加減や躊躇は欠片もなく、出し惜しみなど一切ない。狂った魔力の込められた双刀が、衝突し爆発する。
私が顕現させるのは、断罪の
今の私が使える宝具の中で、唯一愛鈴の纏う太陽を突破できる放射能を模した輝き。ついでに莫大な熱量も発生しており、それを収束させてギリギリのラインで打ち合う。
愛鈴が顕現させるのは、その後継である無敵の灼閃。
本家本元や私やロイドも並べても幼稚な剣閃ではあるけれど、文字通り触れれば終わりの1閃は、こちらに余裕を持たせない。
どちらも同じ狂った出力、同じ土俵に立ったこの勝負。一合打ち合わせる度に覚醒が起きる為、経験の問題も排除される。
「なんで、なんで邪魔するの
「分かるよ、痛い程にね!」
「それなら!」
「だけど、こんな大事にしちゃダメでしょうが! ちゃんとそれくらい認識して!」
「うるさい!」
愛鈴が放った三連続の灼閃光が、私の振るう2本の軍刀を粉砕した。けど、この宝具は全部で7本。残骸を
狂気染みた破壊力の4刀が再び衝突し、世界が割れる異音が鳴り響く。交差する刀の先に見えた愛鈴の顔は、涙に濡れていた。
「というか、なんで
「私の宝具は、元々1つじゃないからだよ!」
私の放った光の極撃が、恒星の如き二刀を粉砕し愛鈴を斬り裂く。ガンマレイで斬り裂かれた以上、桁違いの激痛が細胞を焼き尽くす筈なのに、聖杯でその傷はすぐに再生される。
そして、お互い距離をとった。デミ・サーヴァントとサーヴァント、同じ存在であるが故の鏡合わせの様な行動だった。
「「開け、『
よって、選ばれる戦い方もまた同じ。
私と愛鈴双方の背後に半透明の門が多数展開され、様々な宝具が顔を出す。この宝具は、元々私のとティアの物の2つある。今私が使っているのはティアのやつというだけの話だ。
「「一斉射撃ッ!!」」
宝具群のぶつかり合いが始まり、鋼の驟雨の中を私と愛鈴は虚空を蹴って疾走する。1秒もかからず再接近、振るわれた4刀が衝突した。
「イオリィィィィッ!!」
「愛鈴ィィィィィッ!!」
共に名前を叫びながら、全力で刀を振るう。
斬って斬って斬って斬って斬って、斬られて斬られて斬られて斬られて斬られて、衝突する度に砕ける世界の音をBGMに、私たちの戦闘はヒートアップしていくのだった。
術 Lv90
銀城 愛鈴
➖➖ーーー(120,841/346,350)
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なに書いてるんだ私は…