なんとなくFate   作:銀鈴

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分離後特有の連続投稿。
深夜帯に書いてたので初投稿です。


フェイトの始まる日 そのさん

「へぇ、マスターも中々やるじゃん」

 

 マスターとフローが宝具になった『もう一つの世界(アナザーワールド)』に戻ったのを確認して、私はマスターの評価を結構上げた。私の補助があったとはいえ、元は一介の幼女がちゃんと桜ちゃん助けてるのは凄いと思う。

 

「まあ、今はこっちが優先なんだけどねっ!」

 

 一瞬だけ安否確認に割いた思考を目の前の戦闘に引き戻す。いくら狂化してて聖杯のギフトが無いとは言っても、相手は『無毀なる湖光(アロンダイト)』を抜いたランスロット。幾ら私でも、慢心してたら余裕で負ける。

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!」

「わ、ちょっ、まっ!」

 

 そんな無駄な事を考えてたせいか何度か被弾しかけた。ここで負けたら、いつのまにか雁夜おじさんに成り代わって魔力供給してるティアとか、門の中で倒れてるマスターに申し訳がたたない。といかティアさんほんとあなた何してるんですか?

 

「それじゃあもう一段、ギアを上げていきますかぁ!」

 

 私本来の銀色の魔力と、ナノゴーレムの混じった黒銀の魔力放出を更に増やす。切り上げ、薙いで、振り下ろし、突いて、フェイント気味に蹴りを入れる。爆発的に速度が上がったそれに難なく対応してくれるのは流石円卓最強と言ったところか。

 なんて真面目な事を考えてみるけど、今の私の本心は結局「楽しい」という気持ちに占められている。だって生前私が戦っていたのは大半が人外の化け物。私の全力と拮抗して、なおかつ武器が壊れず死合える人なんて(ロイド)しかいなかったんだもん仕方ないじゃん。

 

「しっ!」

「◼︎◼︎ッ!」

 

 剣と大鎌が幾度となく打ち合わされ、火花と魔力と衝撃波が撒き散らされる。ああ、楽しい。本当に楽しい。だけどそろそろ決着をつけないといけない。私は悲しい(ポロローン)

 

 ここまで騙し騙しヒャッハーしてたけど、相手はバーサーカーで私はキャスター…この前提だけはどうやったって覆せない。クラスの相性は悪く、さっきから単調になった私の攻撃が躱され始めているのが私の押されてる証拠だ。だから名残おしいけど、勝負を決めさせて貰う。私は魔法使い、小細工は得意だからね。

 

「魔力過剰供給(オーバーロード)、内側から爆ぜろ!」

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ッ!!!」

 

 剣戟の最中、ランスロットの鎧からくぐもった破裂音が轟いた。隙を狙って降った大鎌をアロンダイトで塞いで、しかも距離を取ったのは流石としか言いようがないけど……もう詰みだ。

 こんな事が起きた原理はいたってシンプル。超常の現象たるサーヴァントであっても戦闘時の呼吸は必須。ならそこにナノサイズのゴーレムを散布、体内に取り込まれた後に暴走爆発させれば一丁あがりだ。対魔力?そんな物は関係ない。だって私が散布していたのはあくまで機械、呪いとか魔術ではないのだから対応外だ。まあ、今回みたいに相手が鎧にでも包まれてないと大ダメージは期待できないけど。

 

「結構自信あったけど、やっぱりダメかぁ…」

 

 果たして、バーサーカーは生き絶えていなかった。体内が大爆発、それが全身鎧の中を駆け巡ったというのに現界を保っている。しかもフラついてこそいるものの、立ち上がり剣を構えなおした。

 

「本当なら、真名解放した全力の宝具で決めたいんだけど…ごめんね?」

 

 ここまで派手に、しかも時間のかかった戦闘をしたんだからきっとハサンが来てる。全壊した蟲蔵の中にいないのは確実だけど外にはいると考えて、本来の私の全力は見せず偽装に徹した方が良い。

 大鎌を銃形態に変形させて背負い、魔力を飛ばし再びナノゴーレムを爆発させる。再度の爆発でも壊れない地に伏したバーサーカーの鎧に感謝しつつ、私は門に手を突っ込みある物を取り出した。

 

「闇の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ、契約の元イオリが命じる、封印解除(レリーズ)

 

 私が取り出したのは、ピンクや白の可愛らしい衣装が施された小さめのバトンくらいの杖。追い討ちとして弱々しい動きしか見せないバーサーカーをもう一度爆発させつつ、杖に魔力を込めて接近する。

 

「……Ar(アァ)……thur(サァ)……」

 

 度重なる爆破で限界を迎えていた兜が砕け、その素顔が露わになった。それは私やマスターの記憶に色濃く残る、憎悪によって堕ち悪鬼とかしたランスロットの顔。セイバーとして召喚されてる青王様の事を察知してたのだろうか? 恨めしいという念が嫌という程に伝わってくる。

 

「だけどすまない…本当にすまない。私だって、マスターの望みは叶えてあげたいもん」

 

 加えてマスターのお願いは、私だって少なからず共感できる。だから、ここでバーサーカーを倒さないと言うのはあり得ない選択肢になる。でも、そうだね……最後は派手にいきますか。

 

「燃え上がれ、呪いの炎よ!」

 

 邪ンヌの炎をイメージしつつ、この部屋にこびりつく蟲を焼却すべく極めて派手にただの黒い炎を発生させる。これでハサンに対するクラスの誤解、宝具の真名の隠匿、派手な葬送っていう条件が全て整った。

 

「何時の在るべき姿に戻れ、クラスカード!」

 

 振り下ろした杖の先から魔法陣が広がり、バーサーカーの姿が魔力の光となり消えていく。だけどこれでも私はキャスター、このまま終わらすだなんて事はしない。

 空気に溶けて消えるはずの魔力の光が魔法陣の上で収束する。魔法陣を起動、魔力を走らせて金に輝く3つの円環を形成、一旦広がった円環が収束し、そこには一枚の金色に輝くカードが出現していた。

 

「マスター、サーヴァントになっても、演出好きは治らない?」

「だって、やるんだったらこういう方が楽しいじゃん」

 

 瀕死の雁夜おじさんを引きずるティアに私は反論する。英霊になっても変わらず隣にいてくれた事は嬉しいけど、その、もうちょっとロマンに対する理解を…

 

「それ、どうするの?」

 

 私の心を読んだのかちょっとムッとしたティアが、私が手に持つ金色のセイントグラフを指差して言う。五次のメディアさんみたいにマスターするのも考えたけど、バーサーカーじゃ正直手に余るし…

 

「うーんと、食べる…かな?」

「そう。私は消える、好きにするといい」

 

 何かを察した様に、雁夜おじさんを捨ててティアは霊体化した。まあ、実体化してても魔力を食うだけだしね。私に呆れて帰ったなんて事は信じない。

 

「さてっと。落ち着いた事だし、いただきます」

 

 大丈夫、これは紙じゃない。魔力の塊、種火と思えば怖くない。手を合わせて、そう思い込みセイントグラフを頬張る。……無味無臭で歯ごたえもなし、けれど狂った魔力が身体に満ちた。まあ、私もバーサーカー適正あるからあんまり問題はない。

 

「ごちそうさま。後は雁夜おじさんを起こして、桜ちゃんを返してトンズラするのが1番かな?」

 

 杖を門の中に放り捨て、戦闘態勢は解かずに考える。時間制限は私の黒炎が鎮火するまでだから、そんなに長くはない。流石にこればかりはマスターの意見を聞かないとだし…あ、起きた。

 

 

『マスター、これからどうする? 流石に意見が欲しいなー』

「きゃすたー、私おきぬけなんだけど…」

 

 怠い身体に鞭打って起き上がり、ようやく私はそう呟く。えっと、気絶する前は確か…

 

「あぁ、確か桜ちゃん助けたんだっけ」

「きゅう」

 

 少し周りを見てみると、一糸纏わぬ無傷の桜ちゃんが寝息を立てていた。私は焔でできた巫女装束のままだし、そんなに時間は経ってないのかな?あとフローちゃんに癒される。

 

「そういえば、バーサーカーはどうなったの? キャスター」

『倒して食べたよ! 美味しくはなかったかな』

「あ、うん」

 

 もちつけ私、ウチのサーヴァントに常識なんて通用しない。多分アレだろう魂喰いってヤツだろう、聖遺物の使徒なら不思議じゃナイナイ。

 

「それで、意見が欲しいなってどーゆー事?」

『えっと、まず今の状況を説明するね。バーサーカーは撃破して雁夜おじさんも身体から蟲は完全に除去、桜ちゃんも見た限り無事で蟲の反応も無いし、今は蟲蔵自体を焼却中』

「うんうん」

 

 そこまではいたって順調じゃないの?早々に目的達成できちゃったから、私としてはそこそこ満足だし。

 

『今は炎で目隠ししてるけど、外には多分ハサンが待機してるから尋常な手段でのここから脱出は不可能。おんなじ理由で上の屋敷は直せないし、雁夜おじさんと桜ちゃんを放っておく訳にもいかないよ? 時間制限は私の炎が鎮火するまで。マスターの意見が欲しいな』

「……キャスター、転移とか距離の置換とか出来たりしない?」

『どっちもできるけど、それでどうするの?』

「一旦、全員連れてマイホームのマイルームに帰る」

 

 私が出した答えはそれだった。事件発生からまだ1日、ギリギリ家に警察は来ていないだろうし、私の私物で持ち出したい物が数個ある。とりあえず桜ちゃんに着せる服とか、ご飯とかの問題も1日くらいは解決するだろう。

 

『でもマスター。確実に警察のせいで家は使えなくなるし、おじさんと桜ちゃんはどうするの?』

「事情説明するしか…ないでしょ」

 

 運が良ければ…いや、最悪2人を助けた代償って言えばホテルの予約くらいはしてくれるだろう。勿論冬木ハイアットホテルは除く。2人に関しては私の手に負える事じゃない、本気で助けたいなら正真正銘最後までってやつだ。だから現状打破には手を貸すけど、それ以降は雁夜おじさんに丸投げする。

 

『それでダメだったら?』

「知らない。逃げる」

 

 結局はそこに落ち着く。キャスターの持つ力なら聖杯戦争中町を逃げ回る事は可能だろうし、割り切ろう人間自分が1番大切だ。

 よくよく考えたら今回の襲撃で私達は原作キャスター同様神秘の秘匿とかしてないから討伐対象入りするかもだし、拠点はない方が良いのかもしれないね。私が前世の知識を可能な限り書き留めてロードワークの情報も追加した数冊の大学ノート、あれさえ手元に戻れば少しはマシな考えも思いつくだろう。

 

『ふっ』

「むぅ、何かおかしな事でも言った? キャスター」

『ううん。私のマスターをするなら、やっぱりそう言う人の方が良いなって思って。いいね、それでこそ私のマスターだよ』

 

 そんな嬉しそうな声が聞こえて数秒、ボロボロの雁夜おじさんがこの世界に落とされてきた。

 私にとっての運命(フェイト)が始まった日は、まだ終わらないみたいだ。あ、桜ちゃんに服着せとかなきゃ。

 




サーヴァントをセイントグラフに戻して、しかもそれを食べたのはウチの子が初めてな気がする。自己改造でも持ってるんじゃないだろうかウチの子は…
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