第12話「よみがえれ!英雄伝説」
俺は極悪非道な城戸の爺さんの手によって、ギリシャに送り込まれて聖闘士になるための修行中だ。
この修行は辛いけど、日本に
その約束が守られる保証はないけど、俺は報酬に星華姉さんと二人で暮らせる程度の金を要求するつもりだから、腐ってもグラード財団総帥の城戸の爺さんならその程度の報酬なら払ってくれるだろう。
「星矢、なにをボウッとしているんだい! さっさと修行をしなっ!」
「わかったよ、魔鈴さん」
俺の師匠をしてくれているのは、同じ日本人の魔鈴さんだ。雰囲気が星華姉さんに似ているから指導は厳しいけど、俺はけっこう好きだったりする。
その魔鈴さんは何故か変な仮面をしている。これは魔鈴さんだけではなく、他の女聖闘士達もしていたりする。流行っているのかな?
そんなある日、俺がいつものように取っ組み合いを始めた魔鈴さんとシャイナさんの仲裁をしていると、突然現れた女悪魔に殺されかけた。
その女悪魔は日本でも俺を苦しめた奴だ。どうしてギリシャにいるのかは分からないけど、どうせ金持ちの気まぐれだろう。
このとき女悪魔に殺されかけたときの恐怖は一生忘れられないだろうけど、得たものもあった。
その女悪魔から殺意と共に
その日以来、俺は少しずつ
魔鈴さんの
シャイナさんの
あの女悪魔の
魔鈴さんもあんな
殺されかけたときは恐怖心に負けてしまったけど、俺が聖闘士になったら一度ぐらいは女悪魔を泣かしてやろうと思っている。
もちろん、孫バカの城戸の爺さんにバレないように気をつけるぞ。
まあ、あのプライドの高い女悪魔は、俺に泣かされたからといって爺さんに言いつける真似はしないだろう。
とにかく俺の目標は二つになった。
聖闘士になって報酬を貰い星華姉さんを迎えにいく。そして女悪魔を泣かすことだ。
星華姉さん、それまで待っていてくれ。
***
「燃えろ、俺の
俺は拳を叩きつける。
俺よりもデカい岩が一発で砕け散った。
聖闘士修行は順調だ。魔鈴さんもこの調子ならペガサスの聖闘士に間違いなくなれるだろうと太鼓判を押してくれた。
かつてはカシオスという男が一歩リードしていたけど、その男はギリシャを去ってしまった。
たしかカシオスはシャイナさんの教え子だったはずだ。魔鈴さんの喧嘩友達のシャイナさんもカシオスが居なくなってからはギリシャから離れることが多くなった。
なんでも遠い国で任務についているらしい。偶に帰ってきたときに魔鈴さんにボヤいている姿を見かける。
「あたしは確かに“蛇遣い座”の聖闘士だよ。黄道上に位置している星座だよ。だけど黄道十三星座にはならないんだよ。あたしがどんなに頑張っても黄金にはなれないんだよ。白銀はどこまでいっても白銀なんだよ。そんな馬鹿みたいな量の
「シャイナ、正気に戻りな!」
「へぶっ!?」
よく魔鈴さんに殴られているけど大丈夫かな?
何はともあれ俺の修行は順調だ。
ペガサスの
***
久しぶりに見たカシオスは以前の筋骨隆々とした身体とは違い、スマートといえるほどに痩せているようにみえた。
だがそれは俺の勘違いだということが直ぐに分かった。
カシオスは痩せたのではなく、驚異的なまでに鍛え上げられた筋肉を得ていたのだ。
「星矢、決勝の相手はお前か。どうやら
カシオスのその言葉はハッタリじゃない。コイツは決勝までの試合全てで、たった一撃で対戦相手を沈めてきたんだ。
「見せてやろう、これが80%だ!!」
カシオスは全身の筋肉に力を漲らせる。
カシオスの強靭な心臓から送り出させれた血液が筋肉に力を与えていく。
パンプアップした恐るべき筋肉が凶暴な戦意を放つ。
俺の
力の種類は違うけれど、カシオスから感じる力は本物だった。
全力を出さなければ負ける。俺は直感的に感じた。
「うおおおおおおっ!! 燃えろ、俺の
俺は燃やした
「流星拳!!」
一秒間に100発以上の拳を放つ、俺の必殺技の流星拳がカシオスの筋肉に叩き込まれていく。
「なにっ!?」
だが、その全ての拳がカシオスの筋肉に弾き返されていった。
「星矢よ、この程度なのか? こんなヌルイ拳がお前の全力だというのか?」
カシオスの言葉に込められていたのは嘲りなどではなかった。その言葉に込められていた感情は――悲しみだった。
「星矢っ!! この俺が手に入れられなかった
カシオスの悲鳴に似た叫びに俺の心が熱く燃えた。
「いいぜ!! そこまで言うなら見せてやる!!」
俺は限界を超えて
「うああああああっ!!!! 限界を超えろ!!!! 俺の
今度こそ俺の流星拳がカシオスをブッ飛ばす。
吹き飛んで壁に叩きつけられたカシオスだったけど、思った通り平然と立ち上がってきた。この程度で砕ける筋肉だとは俺も思っちゃいない。
「フハハハハハハッ!! それでこそ俺のライバルだ!! 見ろっ、これが俺の100%だあああああっ!!!!」
カシオスの全身が限界まで膨張した後、逆に縮んでいく?
いや違う!
膨張と凝縮を繰り返しながら、筋肉の密度が増していってやがるんだ!!
その筋肉の圧力に大気が震えている。
そして圧力が限界を超えたとき大爆発を起こした。周囲が粉塵に覆われてカシオスの姿を隠す。
その粉塵が収まった後、そこには異様な筋肉に包まれたカシオスが静かに立っていた。
その筋肉はまるで鋼鉄の棒を無理矢理捻って、人型に組み上げたような迫力があった。
「ククク、この姿になるのは久しぶりだ。星矢よ、いい試合をしよう」
その言葉と同時に強い衝撃を受けて俺は吹き飛ばされていた。
「ほう、流石だな。これで死ななかったのは師匠以外だとお前が初めてだ」
慌ててカシオスに目を向けると、さっきまで俺がいた場所で、拳を振り抜いた姿で立っていた。
その体からは煙が上がっていた。カシオスのあまりの速さに筋肉と空気との摩擦熱でおこった煙だろう。
「音速を見切れる俺の目が捉えられない速さなのか!?」
信じられないことにカシオスの筋肉は俺の流星拳よりも速かった。
「結局俺は
本気で残念そうなカシオスの声に俺は…俺は……いや、まだだっ!!
俺はまだ全てを見せちゃいないぜ!!
残された力の全てを込めて
「カシオスッ!! これが俺の全力だーーーーっ!!!!!!」
「また流星拳か。それは俺には通用し…なにっ!? 無数の流星が一つになっていくだと!!」
「うぉおおおおおおおおっ!!!! これが俺の彗星拳だああああああああっ!!!!!!!!」
「ぬおおおおおおおおっ!!!! フルパワー!!!! 100%中の100%!!!!」
俺の全力とカシオスの全力がぶつかり合う。
心と体がぶつかり合う。
その瞬間、俺には星々の輝きがみえた。
***
「星矢、本当に日本に帰るのか?」
「ああ、日本で俺の姉さんが待っているからな」
「そうか、お前がいなくなったら寂しくなるな」
日本に向かう俺をカシオスは見送りに来てくれていた。
「あはは、カシオスがそんなことを言うなんてらしくないな」
「ふん、ぬかせ。星矢こそ本当は寂しいのだろう」
確かに寂しくないと言えば嘘になるだろう。
でもそれ以上に楽しみだった。
「楽しみだと?」
「ああ、今度会うときカシオスがどれほど強くなっているかを想像したら楽しくなるぞ」
「ククク、言っておくが今度は今回のようには如何ぞ。俺の筋肉など、師匠に言わせれば赤子同然のレベルにしか達していないのだからな。まだまだ発展途上よ」
「あはは、俺だって
ニヤリと俺たちは笑い合う。
「それじゃあ、ちょっくら日本に帰ってくらあ」
「おうっ、日本でも負けるんじゃないぞ。お前を倒すのが俺なんだからな」
俺はカシオスに手を振ると、日本へと向かった。
待っていろよ、女悪魔め。次はお前を泣かしてやるからな。
“ヒヒーン”
なぜか、背中のペガサスの
気のせいだよね?
***
「星矢は行ったようだね」
「魔鈴、行かせてよかったのかい? 日本は反
「…シャイナも日本に向かうんだろう? 行くなら早く行きな。次に会うときは敵として容赦はしないよ」
「あたしとしては魔鈴にも一緒に来て欲しいけど……無理のようだね」
「すまないね、私には私の目的があるんだよ」
「そうか……まあ、あんたの目的は何かは知らないけど叶うことを祈っておいてやるよ」
「シャイナ……ありがとう」
「ふん……あたしは忙しいからもう行くよ」
「シャイナ、死ぬんじゃないよ」
「ふふ、これから敵になる奴に贈る言葉じゃないね。でもそれもあたし達らしいか……魔鈴も死ぬんじゃないよ」
───二人の女聖闘士は、互いの拳を一度だけ合わせると背を向けて逆方向に歩き出した。
そんな二人を天空の星々は、優しくも哀しい光で照らしていた。
沙織お嬢様が幼い頃に小宇宙に目覚めた影響で少しだけ原作と乖離が発生しているけど、無事に星矢はペガサスの聖衣をゲットです。流石は原作主人公です!