沙織お嬢様の優雅なる武勇伝   作:銀の鈴

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暗黒聖闘士編に突入です。暗黒は原作ではブラック、アニメではあんこくと読むらしいです。


ぶらっくせいんと編
第20話「沙織お嬢様の想定外」


「お遊びはここまでだ! これは俺が貰い受けるぞ!」

 

その言葉と共に現れた一輝は、予め用意しておいた表彰台横に置いた金ピカの箱を奪い取ります。

 

「一輝!? 何をするんだ! それは沙織お嬢様が優勝者のために用意してくれた賞品だぞ!」

 

邪武は慌てて一輝に苦情を言います。

 

「一輝待つんだ! 俺にも沙織お嬢様の商品が欲しい気持ちは痛いほど分かる! 奪い取ってでも手に入れたいのは俺も同じだ! だが、俺は踏み止まった! 何故だか分かるか!!」

 

「フン、貴様には奪い取るだけの実力が無かっただけだろう」

 

邪武の言葉に一輝が返事をされます。まったく、ここは捨て台詞を残してサッサとデスクイーン島に向かう場面ですわよ。

 

そして、さり気なくデスクイーン島へと向かったことを匂わせる台詞を放つのがミソですわ。

 

「違う! 商品を奪っても手に入るのは物だけだと気付いたからだ! 俺が欲しいのは金ピカの趣味の悪い箱じゃない! 俺は沙織お嬢様に頼りになる男だと認めてもらいたいんだ!」

 

「ククク、なるほどな。邪武はご主人様に褒めてもらいたいわけだな。随分と安い男になったものだ」

 

「なんだと! ならば一輝なら誰に褒めて欲しいんだよ!」

 

「ん、俺か? もちろんエス……いや、瞬に決まっている。瞬に“兄さんはやっぱり凄いよ! 世界一格好いいよ!”と言われたら凄く嬉しいな。その為なら大抵の無理は出来るぞ」

 

「だろっ! それが俺の場合は沙織お嬢様なんだよ!」

 

「なるほど、そう言われてみれば納得できるな。ならば先ほどの言葉は取り消して訂正しよう。邪武、貴様は安い男ではない……高い男だ!」

 

「おおっ、分かってくれたか! 我が友よ!」

 

「ああ、共に愛に生きる同士だ。貴様の気持ちには敬意を払おう」

 

こいつらって、本物のバカかしら?

 

瞬と紫龍は呆れた表情で二人を眺めています。二人に緊張感は全くありません。もしかしたら、一輝の冗談だと思われている可能性がありますね。

 

わたしは頼りになるであろう氷河にテレパシーを送ります。

 

『氷河、今は星矢が腹痛で医務室に行っています。頼りにできるのは貴方だけです。一輝に協力してこの場を切り抜けて下さい』

 

「(了解しました、沙織お嬢様)」

 

氷河は、わたしに顔を向けて力強く頷いた後、一輝に向かって大声を発しました。

 

「一輝!! 今の貴様の姿を見て、瞬が貴様を格好いいと思うと考えているのか!」

 

「グッ、そ、それは……ええいっ、うるさい!! 俺はどうしてもこの金ピカが必要なんだ! たとえ、愛する弟に幻滅されようともな!!」

 

「えっ、兄さん! それはどういう意味なの!?」

 

「なんだ? 一輝のタチの悪い冗談ではないのか?」

 

よし、瞬と紫龍が食い付いてきましたわ。このまま軌道修正といきましょう。

 

「そうか、そこまで一輝がその金ピカを必要としているなら、俺が優勝したら一輝に譲ってもいいぞ」

 

なぬ!?

 

何を言い出すのかしら、この駄馬は!?

 

「なあ、みんなもいいよな。誰が優勝したとしても一輝に金ピカはあげようぜ!」

 

「うん、僕は兄さんに譲るよ」

 

「ああ、俺も別に構わない。そんな金ピカの箱を持って帰っても春麗は喜びそうにないしな」

 

「え、いや、その……せっかくの優勝商品なんだぞ。それを譲るなんて沙織お嬢様に対して不敬だと思わんか? なあ、邪武もそう思うよな?」

 

氷河、頑張って下さい!

 

なんとか皆さんを説得するのです!

 

「馬鹿野郎!! 沙織お嬢様がそんな事で気を悪くされるほど心が狭いわけないだろう!!」

 

邪武ーーーーっ!!!!

 

余計なことを抜かすんじゃないわよ!!

 

「いや、待ってくれ。俺達が知っている思慮の浅いお嬢様なら絶対確実に機嫌を損ねるぞ」

 

「そうだね、たしかに紫龍の言う通りだよ。僕達が知っている、あの性悪のお嬢様なら絶対に機嫌を悪くするよ」

 

「そうだろ! そうだろ、みんな! だから優勝商品を譲っちゃダメなんだ!」

 

えーと、紫龍と瞬に悪口を言われたっと。

 

カキカキ。

 

うふふ、ちゃんとメモをとりましたから絶対に忘れませんわ。この作戦が落ち着いたら絶対に仕返しをしてあげますわ。

 

「そんなわけ無いだろ!! そりゃあ、昔の沙織お嬢様はちょっぴりお転婆だったけど、本当はあの頃も優しい方だったんだよ!!」

 

「ちょっと待てくれ、邪武。沙織お嬢様は今では素晴らしい方に成長なされたが、幼少の頃はただの悪ガキだったぞ」

 

「氷河、俺もそう思うぞ。今は成長されて慈悲深い方になられたが、昔は躾のなっていないクソガキだったな」

 

氷河と一輝にも仕返しが必要っと。

 

カキカキ。

 

二人にはそれぞれマーマさんとエスメラルダに説教をしてもらいましょう。

 

「違うんだよ、沙織お嬢様の事を皆んなは誤解しているんだよ! あの頃、腹を空かした俺に沙織お嬢様は“皆んなにはナイショだよ”って言いながら食べ物を分けてくれていたんだ!」

 

「それはきっと、お腹が空きすぎて幻を見ていたんじゃないかな?」

 

「そうだな、俺も瞬の意見に一票だ」

 

「いや、俺は意地悪でドッグフードでも食わせていたんじゃないかと思うぞ」

 

「氷河、それは言いすぎだ。沙織お嬢様はそこまで底意地は悪くない。きっと、自分の嫌いなオカズの処理をさせていただけに違いない」

 

……一輝が正解です。

 

 

 

 

「やっと、城戸邸に着いたよ。ん? 星矢の小宇宙が小さくなっている?」

 

悪天候のため出立が遅れたシャイナが城戸邸に着いた時のことだった。

 

屋敷内に感じていた星矢の小宇宙が突然、小さくなったことを感じとったのだ。

 

「これは星矢の身に何かあったみたいだね」

 

シャイナは、急ぎ星矢の小宇宙を感じる場所へと駆け出した。

 

着いた先では、星矢が意識を失って廊下に倒れていた。

 

「星矢っ、しっかりしな!」

 

シャイナは、星矢の両頬をバチンバチンと容赦なく平手打ちして目を覚まさせようとするが、星矢は一向に目を覚まそうとはしなかった。

 

たぶん星矢は、痛みによる失神の上、強烈な平手打ちのせいで脳震盪まで起こしてしまったのだろう。

 

「チッ、反応なしか。青銅とはいえ、聖闘士が情けないねえ」

 

目覚めない星矢を放り出すシャイナ。

 

「まずは沙織と合流する方が良さそうだね」

 

城戸邸内で聖闘士が気絶しているなど普通ではない。そう判断したシャイナは、沙織と合流して現状把握する事を優先した。星矢の救助はその後だ。

 

「沙織の居場所は……こっちだね!」

 

シャイナは沙織の小宇宙を探り、その居場所を特定して再び駆け出した。

 

 

 

 

「ええい、とにかくこの金ピカの箱は俺が貰い受ける!!」

 

色々とムカついたので、わたしはテレパシーを使って、一輝に作戦を強引に進めるように命じました。

 

もう細かい部分は全無視です。

 

終わり良ければすべて良し。この精神でいきましょう。

 

「俺はこの金ピカを使って、デスクイーン島で眠る彼女をきっと……じゃあな、さらばだ!!」

 

「待って、兄さん!!」

 

「一輝っ、だから奪わなくてもお前にやるって言ってんだろ!!」

 

「一輝、盗みはよくないぞ!」

 

「一輝、デスクイーン島に行くんだな! そこに何かがあるんだよな!」

 

うふふ、どうやら上手くいきそうですわ。一輝と氷河もちゃんとデスクイーン島へと誘導しています。

 

では、わたしもお嬢様として声をかけておきましょう。

 

「一輝、どうしてこの様な真似を……何か深い事情があるのですか?」

 

「沙織お嬢様……申し訳ありません。どうしても俺にはこの金ピカが必要なんです。たとえその結果、沙織お嬢様に弓引くことになろうともです!」

 

一輝は深い憂いを感じさせる表情になっています。彼は中々に役者ですね。

 

「では、さらばです! 瞬っ、達者に暮らせよ!」

 

「待ってよ、一輝兄さぁあああん!!」

 

一輝は、わたしに一礼した後、瞬に言葉をかけながら金ピカの箱を背負いました。

 

そして、窓へと走りよった一輝は、

 

「サンダークロウッ!!!!」

 

「アババババババッ!?!!??!!!」

 

シャイナお姉様のサンダークロウで痺れて倒れました。

 

――あれ?

 

「一輝、沙織を裏切るとはいい度胸だね。このまま死んでみるかい?」

 

痺れて動けない一輝の頭を踏みつけながら、シャイナお姉様は非情の言葉を投げつけます。

 

そんなシャイナお姉様のお姿はとても格好いいと思いました……マル

 

 




作者が聖闘士星矢の中で一番好きなキャラが誰なのか分かるでしょうか? はい、それはシャイナさんです。ジャンプ連載時、星矢はシャイナさんと美穂ちゃんのどちらを選ぶのか気になっていました。残念ながら美穂ちゃんはフェードアウトしちゃいましたが。
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