沙織お嬢様の優雅なる武勇伝   作:銀の鈴

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第23話「沙織お嬢様の名推理(その1)」

シャカの報告によりますと、聖域の教皇がデスクイーン島へ調査部隊を派遣したそうです。

 

なんでも十数年前に行方不明となった射手座の黄金聖衣らしきものが、デスクイーン島に持ち去られたという怪情報が聖域に流れたそうです。

 

恐らくこれは金ピカの事でしょう。クソジジイが誰かに騙されて買った金ピカ――黄金聖衣のバッタもんの情報が聖域に漏れたわけです。

 

しかしそれは、普通ならありえないことです。外部に情報が漏れるほどグラード財団の情報管理能力は低くありません。

 

「つまり、あたし達の中に犯人がいるってわけだね」

 

シャイナお姉様の言う通りです。情報漏洩の犯人は内部の者だと考えた方が辻褄が合います。

 

例えば、デスクイーン島での作戦が始まった後ならまだ分かります。

 

辺境のデスクイーン島に、いきなり青銅聖闘士が集まれば聖域も変に思うでしょう。そして、調査をすれば金ピカを見たと言う現地住民も出てくる可能性だってあります。

 

それらの情報を得た後なら行方不明の黄金聖衣と結びつけても納得できます。

 

ですが、今の時点ではあり得ません。青銅聖闘士達はまだデスクイーン島に向かってすらなく、金ピカもついさっき城戸邸から持ち去られたばかりなので日本にあります。

 

まだ銀河戦争を察知した聖域が、銀河戦争は聖闘士同士の私闘を禁じた掟に抵触するとか言いがかりをつけ、日本に懲罰部隊を派遣したと言われた方が納得できるでしょう。

 

ですが、わたしも甘く見られたものですね。

 

このわたしを裏切り、内部情報を聖域にリークした愚か者がいるのですから。

 

ふふ、その愚か者は一体誰でしょう?

 

このわたしを怒らせてタダで済むとでも思っているのなら後悔させてあげますわ。

 

ククク、それでは犯人探しといきましょう。

 

わたしの灰色の、もとい虹色の脳細胞にかかれば真犯人などまな板の上の鯉も当然です。

 

ちゃっちゃと割り出して裏切りの報いを与えましょう。

 

え?

 

超能力で心を読んで犯人を探さないのかって?

 

そんな風情のないことをしては興醒めですわ。ここはわたしの名推理で、犯人は貴方です! と問い詰めるハイライトシーンではないですか!

 

まったく、乙女のロマンというものを理解して下さいね。

 

では、これより優雅で可憐な美少女名探偵の名推理をご覧下さいませ。

 

 

 

 

まずは容疑者として、シャカとアルデバランは除外していいでしょう。この二人は数年前からわたしに仕え、聖域に情報をリークどころか逆に聖域の情報をわたしにリークしています。

 

彼らは非常に優秀なスパイですわ。もちろん、優秀ゆえに二重スパイという可能性も否定できませんが、彼らに関してはそれはありません。

 

「ああ、そうだね。あいつらは沙織のことを狂信者のように崇めているから裏切りは考えられないよ。むしろ、もう少し自重して欲しいぐらいさ。あいつらの沙織への気持ち悪いぐらいの崇めっぷりはどこの邪教集団だよってレベルだからね。あいつらの事を知らなければ絶対に討伐対象にしていたよ」

 

うふふ、わたしの可憐な魅力のせいですわね。美しいのは罪という言葉が身にしみますわ。

 

「……ここでそんなセリフが言える沙織が凄いのは認めるよ」

 

シャイナお姉様に褒めてもらえました。

 

「いや、別に褒めたわけじゃ……」

 

シャイナお姉様の言うようにシャカとアルデバランの狂信度は高いので裏切りの可能性は低いです。ですが、わたしがお二人が裏切っていないと断言するのには別の理由があります。

 

「へえ、どんな理由なのか聞かせてもらっても構わないかい?」

 

興味深そうにシャイナお姉様が尋ねられました。

 

もちろん、シャイナお姉様に秘密にする理由がありませんわ。

 

「いえ、私としてはお聞きになられない方が良いと愚考いたします」

 

「おや、何故なんだい、星華?」

 

シャイナお姉様のお言葉ではありませんが、何故か星華がシャイナお姉様に理由を聞くことを止めていますわ。どうしてかしら?

 

「確実にシャイナ様が、沙織お嬢様に引く(・・)からです。そう、いつものようにです」

 

「……ああ、納得したよ。沙織、そんなわけだから理由は聞かない事にするよ」

 

真顔の星華と、心の底から納得されたような雰囲気のシャイナお姉様。まったく意味が分かりません。

 

なので、理由は言っちゃいましょう。話を途中で止めるのも良くないですからね。

 

「だから、あたしは聞きたくな『呪いです』やっぱり、聞くんじゃなかった」

 

わたしの言葉に急にゲンナリとした顔になられるシャイナお姉様。話を続けますので聞いていて下さいね。

 

「お二人には青爪邪核呪詛(アキューズド)という強力な呪詛をかけています。わたしに対して反抗の意思を持つだけで手の爪が青から紫、そして最終的には真紅へと変色していくという便利な魔法ですわ。当然ですが、裏切りお知らせ機能だけではなく、裏切り報復機能も完備しておりますからご安心下さい。ちなみに報復内容というのはですね、裏切り者の肉体を木っ端微塵に砕いた後、二度と再生できないように肉体を再構成して別の生き物(カエルさん)に作り変えるという優秀なものですわ」

 

「うう……聞きたくないって言ったのに」

 

「ほらね、やっぱり引いた」

 

項垂れるシャイナお姉様と頷く星華。似たような動きをされています。うふふ、仲良しさんですね。

 

それでは、推理の続きをしましょう。

 

「ちょっと待ちな!! そのナントカという呪いは他には誰にかけているんだい!!」

 

シャイナお姉様が慌てるように尋ねてきました。

 

あのお二人以外にはいませんわ。非常に便利なお得魔法ではあるのですが、呪いをかけるときに一時的にとはいえ、わたしの美しい爪が気持ち悪く変形するので多用する気になりませんの。

 

わたしの超能力による洗脳が効きにくい聖闘士にも有効な呪いですから非常に残念です。

 

「そ、そうなのかい。少しだけ安心したよ。これからも安易に使うんじゃないよ」

 

うふふ、シャイナお姉様にも心配して頂けるなんて、わたしの美しい爪は果報者ですわ。

 

「沙織お嬢様、いつもの様に私の頭が痛くなりそうなので、推理とやらの方を進めて下さい」

 

実は星華は頭痛持ちです。わたしとのお話中もよく頭が痛くなるみたいで心配です。

 

星華のためにも一刻も早く裏切り者を発見するとしましょう。

 

 

 

 

次の容疑者としてはシャイナお姉様です。

 

ああ、もちろん本気で疑っているわけではありません。

 

むしろ身の潔白を示すために推理をするだけです。シャイナお姉様を疑うような輩が現れないように先手を打つわけですね。

 

「ああ、あたしを疑うのは当然だからね。別に気にはしないから安心しな」

 

はい、安心します。では、推理を始めますわ。

 

いきなり結論を申しますと、シャイナお姉様は真っ白で潔白の純情乙女です。わたしが幼い頃からのお姉様であり、戦闘の師匠ですもの。むしろシャイナお姉様が聖域側でしたら、わたしも聖域側につきますわ。

 

「あのさ、女神(アテナ)打倒を掲げる沙織側にくるのにあたしがどれだけ悩んだのか分かっているのかい? 冗談でも聖域側につくとか言わないでおくれよ」

 

シャイナお姉様の口調は冗談っぽい軽いものでしたが、その声色は真剣でした。

 

(あ、あら? シャイナお姉様に神殺しはやめたと伝えていなかったかしら?)

 

……つ、伝えてなかったような気がしないでもないような?

 

今となっては、腹上死するようなクソジジイの世迷言のために面倒な神殺しなどやってられないというのが本音です。

 

ですが、シャイナお姉様を味方に引き込むために数年がかりで意識改革や意識誘導、思想操作に説得攻勢その他諸々の努力を積み重ねました。

 

それらの努力が実り、シャイナお姉様はわたしの陣営へと鞍替えを了承して下さったという経緯があります。

 

神殺しはやっぱり面倒なのでやめました。と言った場合、どのような反応をされるでしょうか?

 

そ、想像するのがちょっぴり怖いかも?

 

「沙織、どうしたんだい、なんだか顔色が悪いよ。もしかして女神(アテナ)打倒に関して問題でも発生しているのかい? それならあたしにも教えておくれよ。あたし達は仲間だろ? 仲間に隠し事なんかしないだろ? なあ、あたしに教えておくれよ」

 

珍しく迫ってくるシャイナお姉様から異様な圧迫感を感じます。

 

ど、どうしたらいいのでしょうか!?

 

なんとかシャイナお姉様を宥めなくてはいけませんわ!!

 

「シャイナ様、お嬢様は女神(アテナ)打倒をお止めになりました」

 

「……なんだって?」

 

星華ーーーーっ!?

 

何を暴露しちゃってますのーーーーっ!!!!

 

シャイナお姉様の雰囲気が口にするのも悍ましい感じになっちゃっていますわよ!?

 

どうするんですか!?

 

「はい、沙織お嬢様は女神(アテナ)打倒などという安易な道はお捨てになりました」

 

女神(アテナ)打倒が安易な道だって!?」

 

あら、シャイナお姉様の雰囲気が元に戻った……?

 

「その通りです。沙織お嬢様にとっては女神(アテナ)如きは敵ではありません。むしろ一方的な弱い者イジメになりかねません。その様な真似を誇り高いお嬢様がお選びになるとお思いですか? もしもそうなのでしたら、その様な愚かな考えはお捨て下さい。今のままではお嬢様に付いていけなくなりますよ」

 

「じゃ、じゃあ、沙織は何をするつもりなんだい?」

 

何か含みのありそうな星華の言葉に、ゴクリと喉を鳴らされたシャイナお姉様が問いかけます。

 

わたしも非常に気になります。

 

一体、わたしはこれから何をするのでしょうか?

 

星華の次の言葉にドキドキです。

 

「それをメイドである私の口からシャイナ様にお伝えする事は流石に不敬です。ですので、続きは沙織お嬢様から直接お聞きください」

 

星華ーーーーっ!?

 

無茶振りやめてーーーーっ!!!!

 




沙織「たったひとつの真実を見抜きます、見た目は大人(13歳には見えないナイスバディ)、頭脳は子供(だってまだ13歳ですもの……もちろん謙遜ですよ?)、その名は名探偵サオリですわ」
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