“人の子” として生を受けた可憐な美少女は生まれながらに強大な力を有していました。
聡明な美少女は強大な力を有効活用して、世界有数の財団を世界随一の財団へとクラスアップさせます。
世界の覇者たるグラード財団を率いる麗しい美少女。
そんな偉大な美少女でも世界中に蔓延る邪悪を駆逐する事は不可能でした。
何故なら本物の神様が、太古の昔から戦い続けていながらも達成できない難業だからです。
たかが “人の子” 如きが掲げて良い目標ではありませんでした。
そう、たとえ神をも屠る力を持っていようとも所詮は “人の子” としての器では不可能なのです。
神では達成できず、神殺しであろうとも “人の子” の手には余る。
ならば答えは一つだけです。
わたしは “人の子” で在ることを諦めましょう。
わたしは人を超え、人を捨て、神をも凌駕して、全てを
そう、わたしは
*
バッチコイですわ!
我ながら最後の方は理解不能な内容だったのですが、幸いな事にシャイナお姉様の琴線に触れたようです。
たとえ何度生まれ変わっても、その度にわたしの元に駆けつけるとまで言って下さいました。
つまり、結果オーライというやつですね。
めでたし、めでたしです。
「沙織お嬢様、ご満悦のところ申し訳ございませんが、先ほどよりシャイナ様のご様子が些か妙に感じられるのですが?」
「そうかしら? 別にいつもとお変わりないように見えますけど」
星華の言葉を受けて、わたしはシャイナお姉様を念のため観察してみます。
お瞳はいつもの様に澄んで……少し濁っているような?
いえいえ、たまにはそんな日もあるでしょう。
たとえ少しぐらい濁っていようと、シャイナお姉様のお瞳は真っ直ぐと前を見据えて……落ち着きなくグルグルと回っているような?
いえいえ、たまにはそんな気分の時もあるでしょう。
瞳など大した問題ではありませんわ。
シャイナお姉様の凛とした雰囲気は……お姉様の周囲の空気が淀んで見えるような?
いえいえ、空気は読むものであって、見るものではありませんわ。日本人なら当然ですね。
なんといってもシャイナお姉様の優しい笑みは……どこか歪さを感じさせるような?
いえいえ、いつもの仮面をつければ――ほら、問題ないです! 最近は女子しかいないときは外すことが多かったですが、やはりシャイナお姉様といえば仮面ですよね。
だいたい外見などよりも、シャイナお姉様の温かみを感じさせるお声は……「いあ いあ さおり! さお…」シャイナお姉様から妙な言葉が漏れています。これはちょっとマズいかしら?
「いえ、非常にマズいと訂正すべきかと思います」
なるほど。星華がそう言うのなら間違いないでしょう。
どうやらわたしが気づかない間にシャイナお姉様の精神に邪悪な存在が巣食ったようですね。
そのような邪悪は、このわたしが許しませんわ!
「邪悪なる存在よ、喰らいなさい!
シャカからパクった技を改良した天舞宝輪(改)と天魔降伏(改)は人の精神に強く作用します。
シャイナお姉様の精神に巣食った邪悪を切り離して殲滅致しました。
わたしは全身の力を失って倒れかけたシャイナお姉様を抱き止めます。
「これで大丈夫ですわ。今はゆっくりとお休み下さいね」
こうして、シャイナお姉様の中に巣食っていた邪悪は退治されました。
……なんとなく、シャイナお姉様の精神が削られているような気がしますので、わたしの小宇宙で癒しておきましょう。
でも、少し変ですわね。お姉様に取り憑いた邪悪なモノを取り除いただけなのに、お姉様の精神が削られたように感じるなんて。それとも気のせいかしら?
まあ、いいですわ。
目が覚めればいつものシャイナお姉様に戻っているはずですから。
「いえ、そこは疑問点を追求すべきでは? 私の直感は全ての原因は沙織お嬢様だと告げています」
そんな訳ないでしょう!?
まったく、星華はひどいですわ。
傷ついた心をシャイナお姉様の温もりで癒してもらいましょう。
もみもみ。
ああ、この柔らかさに癒されます。
「エロいオッさんみたいですね」
ひどいですわ!?
*
「なんだか記憶が曖昧なんだけど?」
目覚められたシャイナお姉様は元に戻っていました。
「シャイナお姉様、気にしたら負けですわ」
「うーん、まあいいか。この事に拘ったら逆に不幸になりそうな気がするからね」
わたしの言葉に素直に頷くお姉様。
「賢明な判断だと思われます。“深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ” という名言もありますからね」
それは名言なのでしょうか?
「まあいいさ、それより推理の続きを聞かせておくれよ」
推理……?
シャイナお姉様は何を言っているのかしら?
「沙織お嬢様、聖域に情報をリークしている裏切り者の件だと推測できます」
おおっ、思い出しました。
たしか、シャカとアルデバラン 、そしてシャイナお姉様はシロだという所まで進んだのでしたね。
「はい、その通りです」
それでは次からは本命の青銅聖闘士達ですわ。
「私は疑わなくてもよろしいのですか?」
わたしの言葉を遮るように星華が妙な事を言いだしました。
まったく、星華がわたしを裏切るなんてあり得ませんわ。
あのね、星華がわたしを裏切るメリットが何かあるのかしら?
「いいえ、沙織お嬢様にくっ付いていれば、一生安泰は保障されていますから、髪についたガムのようにくっ付いて離れないでいようと決意しております」
うふふ、そうよね。星華はわたしの一番の味方だもの。洗脳されたとか以外で裏切るなんて思っていないわ。
「ご信頼いただき嬉しく思います。ですが、前言を翻すようで申し訳ありませんが、将来的に私が結婚したときはお側を離れることになります。子供は自分の手で育てたいので……産休扱いでお願いします」
結婚……?
産休……?
びーえる趣味のぺったんの星華が?
理解しがたい言葉を耳にしたわたしは、愚かにも禁断の言葉を口にしたのです。
「このクソお嬢がっ、誰がぺったんだぁあああっ!!!!」
この日、城戸邸に怒れる大魔神が顕現しました。
わたしは一生懸命に逃げました。
死ぬかと思いました。
沙織「一度目にした技は全て使えます。これぞ城戸神拳奥義『水影心』です」
星華「沙織お嬢様はパクるのが得意なのですね」
沙織「技というのは師の模倣から始めるものです。そして、師から受け継いだ技をより発展させていくのですわ」
星華「シャカ様が沙織お嬢様の師なのですか?」
沙織「いいえ、技をパクっただけですわ♪」
星華「パクリと模倣、違いが分かりません」