沙織お嬢様の優雅なる武勇伝   作:銀の鈴

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第30話「沙織お嬢様と新たなる勢力」

「ぶらっくぺがさす流星拳!!」

 

「その程度、止まって見えるよ」

 

魔鈴は、放たれる無数の衝撃波を軽々と躱した。

 

「 ぶらっくだいやもんどだすと!!」

 

「ふふ、冷たくて気持ちイイねえ」

 

魔鈴は、放たれた冷気でデスクイーン島の熱気で火照った身体を冷やした。

 

「ぶらっくゆにこーんぎゃろっぷ!!」

 

「おや、初めて聞く技名だねえ」

 

魔鈴は、初めて聞く技名に首を傾げた。

 

「ぶらっくねびゅらちぇーん!!」

 

「鎖? あたしにはそんな趣味はないよ」

 

魔鈴は、鎖に縛られる趣味はなかった。

 

「ぶらっく廬山昇龍覇!!」

 

「爬虫類は嫌いだよ」

 

魔鈴は、現れたドラゴンを蹴っ飛ばした。

 

女聖闘士候補生達は、次々とコスプレ元の青銅聖闘士達の技を模した攻撃を仕掛けるが、魔鈴には全く通じなかった。

 

白銀聖闘士の魔鈴にとって、聖闘士候補生でしかない彼女達が一夜漬けで覚えた必殺技を破る事など雑作もなかった。

 

「借り物の技があたしに通じると本気で思っているのかい!」

 

教皇の調査部隊である魔鈴達に牙を剥いた以上、たとえその罪が許されたとしても魔鈴の後輩達は聖闘士候補生の資格は剥奪されるだろう。

 

その事を理解している魔鈴は、この戦闘が彼女達への最後の指導だと思い、あえて厳しい言葉を投げつける。

 

「ほらっ、足元がお留守だよ!」

 

「きゃあ!?」

 

魔鈴は、流星拳を放つのに集中していたぶらっくぺがさすを足払いでスッテンコロリンと転ばせた。

 

「そんな冷気などこうして食ってやるよ!」

 

「魔鈴先輩だけズルいです!!」

 

魔鈴は、放たれた冷気で作られた氷を粉微塵に砕くと、懐から取り出したガラスの器に入れてイチゴシロップをかけると美味しそうに食べた。もちろん、男共に素顔を見られないように上手く素顔を隠しながらだ。

 

「イーグルトウフラッシュ! 念のため言っておくけど、あたしの正式な必殺技だからね!」

 

「きゃっ!? イタタタ、お尻にアザができちゃったかも…」

 

魔鈴は、マイナーな必殺技を放った。見た目ではただの飛び蹴りにしか見えないが、間違いなく魔鈴の必殺技なのでただの飛び蹴りよりも遥かに威力が高いはずである。だが、可愛い後輩相手なので手加減をしたのだろう。お尻を蹴り飛ばされた後輩は、涙目になりながらお尻を撫でているが大きな怪我はなかった。

 

「鎖はこうやって使うんだよ!」

 

「魔鈴先輩、こんな所じゃダメです……みんなが見てますよ……」

 

魔鈴は、飛んできた鎖を掴むと小宇宙を流し込んで逆操作を行ない後輩を縛り上げた。どうやら縛られる趣味はなくても縛る方は得意だったようだ。縛られた後輩は真っ赤に顔を上気させてモジモジとし始めた。もしかしたら新たな扉を開いたのかもしれない。

 

「神龍よ、ギャルのパンティおくれーっ!! さあ、あたしの願いを叶えてみな!」

 

「ああっ!? 私のドラゴンが頭を抱えてるわ!」

 

魔鈴は、現れたドラゴンに無茶振りをして困らせた。もちろんこのドラゴンは闘気が龍の形になっているだけなので、ノリの良い後輩が魔鈴の言葉に合わせて闘気の龍を操作したのだ。非常に仲の良い二人といえよう。

 

魔鈴とコスプレ後輩達の激闘は果てしなく続いている。魔鈴は、可愛い後輩達に指導をできる最後の機会だと捉え、ミスティ達には手を出させずに自分だけで戦うことにしたからだ。

 

もちろん、ミスティ達にも不満などはなかった。誰もクソ暑いデスクイーン島で進んで戦いたいなどと思わなかったからだ。

 

そもそも聖闘士候補生如きに、白銀聖闘士の自分達が全員で戦えば、過剰戦力どころか、客観的にみれば臆病者の集団なのかと疑われるほどの実力差があった。

 

それ故にミスティ達が、魔鈴の提案に一も二もなく同意して日陰で休んでいても当然だといえよう。

 

「なあ、ミスティよ。実際のところどうするよ?」

 

ゴロリと身体を横たえたバベルは少し困った様子でミスティに問いかけた。

 

「どうするとは、彼女達のことですか?」

 

「ああ、そうだ。さっきは魔鈴の手前、キツい事を言ったけどさ。聖闘士候補生らはまだ子供だぜ。流石に始末するのは可哀想だし、聖域に連れ戻しても碌な目に合わんだろ?」

 

聖闘士の掟に従えば裏切り者は粛清するのが当然だが、実際には現場の判断で見逃されることも多々あった。

 

特に若年者が修行の厳しさに耐えられずに逃げ出した場合、実際に追跡者が粛清する事など稀だった。

 

今回は細かい事情など分からないが、以前に暗黒聖闘士が隠れ住んでいたデスクイーン島に聖闘士候補生達は何らかの事情で逃げ込んだだけだろうとバベルは考えていた。

 

聖域で修行をしていた彼女達の事をバベル達は当然知っている。

 

彼女達は真面目に修行に励むグループだった。特にリーダー格の少女は真面目過ぎると心配になるほどだったとバベルは記憶していた。

 

そんな彼女達が集団で一斉に聖域を逃げ出したのだ。何か事情があるはずだった。

 

そういえば、とバベルは思い出す。

 

かつて失われた黄金聖衣がデスクイーン島に持ち込まれたなどという、荒唐無稽な噂話が驚異的な速さで聖域に流れた事を。

 

それに謎の失踪を遂げた少女達がそのデスクイーン島に連れ攫われたという噂話も驚異的な速さで広まった事を。

 

そして、この手の事には腰が重いと定評のある教皇が、異例の速さで調査部隊を組織させ派遣した事を。

 

自分では聡明だと思っているバベルの脳は更に思考を加速させていく。

 

前聖戦を生き残った教皇は超高齢だが、ここ数年は若返ったかのように活力に満ちていた。

 

教皇としての使命感で活力を奮い起こしているのだろうとバベルは単純に思っていたが、それなら数年前以前(・・)はどうしてお爺ちゃんみたいにヨボヨボな感じで活力が弱かったのだろうか?

 

使命感で活力が漲るなら、ずっと漲っているはずだとバベルは理論的風味に考える。

 

急激に回転しだしたバベルの頭脳はもう止まらない。アクセル全開で恐ろしい真実に辿り着く。

 

かつて、バベルは聞いたことがあった。邪悪な者の技に他人の精気を奪うものがあることを。その技を教皇に逆らう事など到底出来ない年若く活力に溢れた聖闘士候補生に教皇が無理矢理に使っていたと考えれば全ての事象が理解できた。

 

1.若い娘達の精気を奪い元気になる教皇。

 

2.若い娘達は精気を奪われる手段(エロい行為)に耐えられなくなり聖域を逃げ出す。

 

3.若い娘に逃げられ焦る教皇。

 

4.適当な噂話をばら撒き合法的に調査部隊を派遣する教皇。

 

5.デスクイーン島に逃げ込み暗黒聖闘士として生きる覚悟を決めた若い娘達。

 

6.邪悪なる教皇の手下に成り下がった白銀聖闘士達の魔の手に必死に抗う若い娘達。

 

7.同じ女としての直感だろうか? 真実に気付いたらしい女白銀聖闘士だけは若い娘達を庇っている(明らかに手を抜いた戦いぶりからも推察できる)

 

8.それを休憩しながら見学している呑気な白銀聖闘士達。←今ここ。

 

「うわあああっ!!!! 俺はっ、俺はっ、白銀聖闘士でありながら邪悪に手を貸していたのかぁああああっ!!!!」

 

バベルは、己の名推理によって辿り着いた真実に苦悩した。

 

そしてそれは、アステリオンの能力でバベルの脳内で繰り広げられた名推理劇場の生中継を聞いていた他の白銀聖闘士達も同様だった。

 

「こ、このミスティが、その様な美しくない行為に加担していたというのか!?」

 

ミスティは美しくない己の行為に愕然となる。

 

「ウググ、教皇の野郎! 俺達を謀っていたのか!!」

 

モーゼスは純粋なる怒りを露わにした。

 

「聖闘士候補生達が抱いていた叛意は聖域にではなく教皇に対してだけだった……そこまで読んでいながら俺は気づけなかったのか……すまぬ。哀れなる聖闘士候補生達よ。これよりは白銀聖闘士としての誇りにかけて邪悪なる教皇の毒牙よりお前達を守り抜こうぞ!!」

 

そして、アステリオンの後悔と決意の咆哮が、デスクイーン島に派遣された白銀聖闘士達の心を一つにした。

 

「うわあああっ!!!! 俺も娘達を守り抜くぞぉおおおおっ!!!!」

 

「このミスティが醜き教皇に美しき鉄槌を与えましょう」

 

「俺もやってやるぜ!! クソ教皇に思い知らせてやる!!」

 

「今、俺達の心は一つになった。たとえ敵が教皇であろうとも恐れることは無い。何故ならば、正義は我らに有り!!」

 

「「「応っ!!!!」」」

 

この日、ほぼ同時刻に極東の島国にて鮮烈に生まれ、そして儚くも歴史の闇に消えていった某女名探偵もかくやという名推理をみせたバベルによって、新たな反教皇勢力が生まれる事となった。

 

 




沙織「東方に名探偵サオリ在り。そして、西方には名探偵バベル在り。なるほど、わたしのライバルというわけですね」
星華「沙織お嬢様は名探偵業は廃業されたはずでは?」
沙織「ああ、そういえばそうでしたね。それでは名探偵の名はバベルとやらに譲るとしましょう」
星華「はい、それがよろしいかと。これ以上の名推理を沙織お嬢様に披露されてはグラード財団の名誉にも傷を与えかねませんゆえ」
沙織「うふふ、もう星華ってば冗談ばっかり言うんだから」
星華「ハハ、冗談ならどんなに良かったことか…」
沙織「遠い目をされてどうしたの、星華?」
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