穏やかな日常
「はぅ……」
少し熱めのお湯に肩まで浸かり、四肢を伸ばす。全身の疲れがお湯に溶けていくみたいだと思いつつ、マトイはガスを抜くように一息ついていた。
「あの人に拾われた当初はこんなに立派なお風呂なんていらないって思ってたけど………これは必要だよ……うん」
全身が脱力して疲れどころか身体そのものが溶けていきそうな快楽。そうでもなくても現在進行系でマトイはやや長めのバスタイムでふにゃふにゃにふやけていた。その脱力具合と言えば普段の12割増しと言えばわかるだろうか。盛り過ぎ?だが現実だ。
元の部屋主の趣味で設置された露天風呂はかなり広く、4人程度なら十二分に余裕を持って入れるほどだ。
まだ記憶を失ったばかりのマトイにはスペースを取るばかりの超絶無駄遣いと思われていたが、マトイを露天風呂に沈めること数度、ようやく露天風呂の素晴らしさを伝える事が出来たというのは余談である。
「広くて快適だけど、1人で入るにはちょっと広過ぎるよね…」
脚を伸ばしても反対側に届かないどころか、寝そべっても余裕がある。
元々は2人以上で入るものとして設置されているのだ、持て余すのは当たり前である。
「あ、そうだ!今度、サラとかクラリスクレイスちゃん誘ってみようっと!」
お風呂の中でポンと手を打つマトイ。我ながら最高のアイデアだと自画自賛したかった。
「あー、手がしわしわ…長風呂しちゃった……」
名残惜しくもお風呂から上がる事にする。3人で入るお風呂を想像してにこやかになるのだった。
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さて、日付変わって次の日。防衛戦で多少疲れたのもあってか、いつもより少しだけ遅い時間に目を覚ましたマトイ。
「ふわぁ……あれ?メールが届いてる……誰からだろ?」
寝転がったままサイドテーブルの端末に手を伸ばす。
「これはクーナちゃんから?なになに…」
ベットでごろんごろんしながら、内容に目を通す。真っ白な髪が乱れ、シャツがひらりひらりとするせいで、シミひとつない白く透明感のある太ももがチラチラと見えるが今は誰の目も無いので気に留めない。
「今日の夕方、大きなライブイベントやるから仲の良い人と一緒に来てね、かぁ」
なんとも急な話であるが、いつもの事である。クーナはアイドルとして活動する裏で、六芒の1人としての仕事もしている。その都合、ライブはいつも急なもので大体1時間前に告知されるのだ。それでも毎回たくさんの人が集まる事からその人気ぶりが伺える。
実際マトイも観に行った時は熱気に驚いたものだ。
ともかく、そんな事情からライブは単独で観に行く事がほとんで、誰かと行くとなるとアークスは皆それぞれ任務があり急なライブとなると中々予定が合わないのだ。
「夕方…….私は暇だけど、サラとクラリスクレイスちゃんはどうだろう…2人ともお仕事忙しそうだけど」
ごろんごろんしながら思案する。が、結局マトイは彼女達の予定等知り得ない訳で、さっさと聞いた方がいいと気付く
「とりあえず……一緒にクーナちゃんのライブに行かない、っと」
それぞれにメールを送信して返事を待つ間に身支度を整えようと覚悟を決めてベッドから抜け出す。
顔を洗い、軽めの化粧、髪を梳いていつもの髪型になるように結う。あとはシャツを脱ぎ捨てて私服に着替える。
拾われた時なんかは、この身支度も慣れなくてドッタンバッタン大騒ぎして結局同居人やフィリアに整えてもらうみたいな事もあったが今では手慣れたものだ。
「今日はメディカルチェックに行かなきゃ……シャオ君もフィリアさんも心配症なんだから」
ダーカー退治に飛び回りたいのが本心だけども、マトイの事を心配している2人の気持ちを無下にすることは出来ない。無視したり忘れたりすると鬼の形相のフィリアがやってくるのをマトイは知っていた。
それにマトイは前科持ちなのだ。仕方ない。
「防衛戦でダーカーたくさん殺したし仕方ないよね」
ため息を吐き、メディカルルームへと向かうのであった。
具体的にマトイってどれくらい強いの?って感じなんですが、ウチのマトイはラ・グランツでカンスト出るくらいです。イル・グランツは1発あたり30万くらい?デタラメですね。どれくらい法撃盛ればそれくらいでるんでしょう。