マトイはゆっくりと深呼吸をする。
ダーカーを殺す為に生まれ、戦い、殺し、そして一度はその身を闇に食われた。だが今もこうして戦いを続けるための戦いをするために立っている。
マトイは迷わない。彼女に出来る事はシオンより与えられた力を振るうこと以外に無いのだから。
そうするしか彼女は彼女自身の価値を示す事が出来ない。
そうすることでしか彼女は報いれない。
それはある意味スクナヒメに問われた事への答えとも言えるだろう。
「うん、いつでも行けるよ」
「はぁーい、そんなにフォトンを漲らせてるところ申し訳ないんですけどー今日は武器のテストって事なんで大して難しくないですよー!」
と、カリンが言い終わるのと同時にステージにダガンとカルターゴ、ブリアーダが数体現れる。
だがどれもその場から動かずじっとしている。
当たり前だ。全て再現されたVRデータなのだから。
それでもマトイの杖を握る手には力が入る。
「でもでも!耐久性は本物と変わりませんので遠慮は入りませんよぉ〜?」
「元よりダーカーに容赦はしないよ。お願い…」
癖でクラリッサと言おうとして、ふと気付いた。この子の名前を聞いてなかった、と。
「あとでジグさんに聞かなくっちゃ……お願い今は力を貸して!」
振るった杖からイルグランツが放たれる。輝く軌跡を描く複数のそれはダガン、カルターゴ、ブリアーダ全てのコアを貫いた。
「一度のテクニック行使で全滅ですか……」
カリンが素直に驚きを表す。
ダガンはともかくカルターゴやブリアーダのコアは背後にあるのだ。倒せないとは言わないが別の方法を取るだろうと踏んでいた。
それが蓋を開けてみれば、イルグランツをコントロールし鎌のように後ろから攻撃したのだ。
それだけなら一部のアークスも出来るかもしれないがマトイはそれを複数同時にやってみせた。
しかしマトイもまた驚いていた。
普通の武器ならばコレを一度するのにも煙を噴いていた。
だがこの杖は自分のイメージ通りにテクニックが使える。もっともっと自分を上手く使え、そう言われているような気すらしてくる。
かつての白錫クラリッサと同じように。
手元の杖に視線落としているとカリンの嬉しそうな声がスピーカーから響く。
「まだまだレベルを上げても良さそうですねぇー」
たかが武器のテストと最初は期待していなかったが良いデータが取れそうだ、とカリンは舌舐めずりを抑えられなかった。
「……カリンの悪い癖が…」
「これで有能なのが厄介じゃ…」
頭を抱える二人は目に入っていないのであった。
「お次は動きますよー!!」
再現されたダーカーはかまきり人間のようなダーカー、プレディカーダだ。プレディカーダは姿を消し、マトイの死角へ移動する。
マトイは慌てずにロッドだけその場に残し、短いミラージュエスケープで横へ移動し攻撃範囲から逃れる。
同時に残されたロッドからナ・グランツが発動され、死地に飛び込む形になったプレディカーダが光に焼き殺された。
「うん、快調快調」
引き寄せたロッドを軽く回しながら、戦闘を振り返る。この分だと恐らく白錫クラリッサと同じように扱っても大丈夫だろう。
「いいですねぇいいですねぇ!!私も乗ってきましたよー!」
楽しそうな声とともに再現されたのは中型ダーカーのウォルガーダだ。
先ほどとは違い腕を振り回し明らかに敵意を振りまいている。
「カリン!今回は大きな戦闘は無しって言っただろう?!」
慌ててシャオがストップをかける。元々武器のテストの予定なので交戦は予定ではない。
だが止めるのが遅かったのかウォルガーダはマトイに向かって腕を振り上げていた。
「大丈夫だよ、シャオ君」
マトイ微笑み、半歩横にズレる。
振り下ろした腕はマトイの服を風圧ではためかせたものの、傷一つ付けられていない。
「私はダーカーを殺すために生きてるんだもん。この程度……」
マトイはそっと右手をウォルガーダの顔に当てる。
あの人は素手でダーカーのコアを貫いていた。全く同じ事は出来ないが似たような事は出来る。
瞬間手のひらから閃光の槍が放たれる。それはウォルガーダを貫きステージのバリアに直撃した。
「素手でも倒せるよ」
ウォルガーダに触れた手をハンカチで拭くマトイの後ろでウォルガーダは光になって消えた。
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結局テストはそこで終了した。
マトイの放ったラ・グランツがバリアに直撃した結果、軽度ながら機能不全を起こしたせいだ。
カリンはシャオに正座させられていたのはどうでもいい話だろう。
「ご苦労さん。武器の感じはどうじゃ?」
「あ、ジグさん。この子凄い。私のイメージした通りに動いてくれる!」
そこでマトイは一つ大事な事を思いだした。
「ねぇジグさん、この子の名前はなんて言うの?」
「おぉ、言い忘れておったな。名は明錫クラリッサという」
それが新しいマトイの力。ダーカーを殺す力だ。
だが願わくば白錫クラリッサのように大切なものを守る力に、とジグは思わずにはいられなかった。
タイトルはいつも雰囲気で決めてる。