最近アークスシップで風邪が流行ってる。
そんなフワッとした噂をマトイはパティエンティアから聞いた。
「そんなわけで何か知ってたら教えて欲しーな!パティだよ!」
「パティちゃん、相手はあのマトイ様なのに態度変えないんだね……どうもティアです。」
「うーん…確かに最近少し調子が悪そうなアークスは見掛けたかな…」
「あ、じゃあじゃあ体調の悪そうな一般の人は見た?」
「私は下の居住区にはあんまり行かないからちょっと分かんないや…ごめんなさい」
頭を下げようとするマトイをティアが慌てて止める。元々はただの噂なのだ。情報が無くても仕方ない。
「うー、アークスの調子が悪いって人は結構聞いたんだけど、アークスじゃない普通の人は全然聞かないんだよねー」
「そうだね。もしかしたらフォトンとかに関わってるのかな?最近みんなたくさん出撃してたし疲れてたのかも?」
「ハッ!わかったよティア!これはアークスだけを狙い撃ちにしたダークファルスからの“ばいおこうげき”に違いない!」
「あぁ!?パティちゃん!それでは失礼します!」
私がアークスを守るんだー!!と駆け出すパティ。それを追いかけるティア。まこといつも通りのパティエンティアであった。
「……行っちゃった」
相手を置いてけぼりなところも含めて。
ーーーーーーー
先ほどの噂がなんとなく気になったマトイはフィリアのもとを訪れていた。
餅は餅屋、病は医者にというわけである。
なんのかんの言ってフィリアはとても優秀なスタッフでありマトイも信頼している。決してマトイお説教係りではないのだ。
「かくかくしかじかって噂があるんだけどフィリアさんは何か知ってる?」
「かくかくしかじかって、また変な事覚えてきたわね…まぁ、それだけ馴染んだって事なんでしょうけど……」
なんとなく複雑なフィリアである。
「えっと、そうね。私たちの所へ診察へ来る人は少ないけど、調子が悪いって報告は受けてるわ」
「みんなは大丈夫なの?」
「えぇ。調子が悪いと言っても風邪とかじゃなくて本当に身体がダルいとか、ちょっとフォトンが上手く制御出来ないと言った感じね。今のところ診た人たちにウイルスの類いは確認出来なかったし、恐らく疲労のせいじゃないかって言われてるわ」
でも、とフィリアは続ける。
「私はなんとなく違う気がするわ。勿論根拠もないし、ただの勘なのだけど…」
「大丈夫だよフィリアさん。もしも何かあったら私達がなんとかするから、ね?」
マトイは握り拳を作ってフィリアを励ます。
「あ、でも本当に病気とかだと私に出来ることあんまりないかも…?」
「うふふ、大丈夫。そういった時の為の私達よ。任してちょうだい」
「そっか、そうだよね。フィリアさんがんばって!」
そんな談笑をしつつもマトイは内心自分に嘆息していた。また自分一人でなんとかしようとしていたと。これではまるでフィリアを信じていないみたいで心底自分自身に嫌気がさしていた。
「それじゃあ私行くね」
「任務?」
「ううん、違うよ。今日はナベリウスに用事があるの」
「あんまり無理しちゃだめよ?」
「はぁーい」
フィリアと別れ、出撃ゲートへ向かった。