もしもの世界を生きる彼女と   作:マーマレードタルト

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ハルコタンがまた舞台になったりしないかなぁ。スクナヒメとも会いたいです。EP4で目覚めてから一度もあってないし……


Looking to tomorrow

 

惑星ハルコタンには白の領域と黒の領域をわける大河が存在する。

その川を境にお互いに不可侵とする掟があったがそれも既に過去の話し。黒の民はダーカーと変わらぬ存在となり、玩具系ダーカーと共に攻め込んでくるのが現状だ。

とはいえ襲撃は統率されていない少数での散発的なものが大半であり、そのほとんどは白の民自身で対応する事が出来ていた。

しかし今回の襲撃はあまりに規模が違い過ぎた。川へ川へと続々と集まる黒の民はさながら黒い津波のようであり、一度侵入を許せば白の領域を飲み込み地獄を生み出すのは火を見るよりも明らかであった。

幸運であったのは、いち早く異常を察知したコトシロからの連絡でスクナヒメが、唯一お互いの領域を行き来する方法である“陰陽の繋ぎ橋”と呼ばれる大橋を結界で封鎖できた事だろう。これによって数日の間だが迎撃のための時間が確保された。

 

「コトシロ、状況はどうじゃ?」

「結界が張られた当初は延々と叩くばかりでしたが、破れないと分かったのか今は大人しくなっております。とはいえ数は膨らむ一方、楽観はできません」

「よい、あれはあくまで時間稼ぎじゃ。此度の異常は恥ずかしながら我らだけでは解決は困難。そのためにアークスと合流し準備ができさえすれば良い」

 

陰陽の繋ぎ橋から数キロ離れた所に急ごしらえの陣を構えたスクナヒメ達は、茶を啜りながらマトイ達アークスを待っていた。

 

「スクナヒメ様、どうやら来たようです」

「スクナヒメ!大丈夫?怪我してない?」

「阿呆。妾はハルコタンの神じゃぞ?そうホイホイ怪我なんぞせんわ」

「………【双子】の居る黒の領域に乗り込んだ時」

「カカッ、聞こえんのぉ」

 

慌てるマトイと軽く談笑していれば続々とアークスが到着してくる。その中にはよくハルコタンを訪れるサガとカトリの姿もあった。

 

「珍しいなカトリ。お前が自ら防衛戦などという泥臭いものに参加するとは」

「この美しいハルコタンの危機とあらばこのカトリ全力で手助けするつもりですわ!ところでサガさん、防衛戦ってなんですの?」

 

サガは思わず頭を抱えた。カトリは相変わらずカトリなのだと。同時にほんの僅か雀の涙ほどだが感心した自分を殴りたかった。

しかしサガはただでは転けない。だてにカトリとコンビを組んでいるわけではないのだ。

 

「良かろう。これを機にお前にも防衛戦の心得と言うものを叩き込んでやろう」

「あれ?サガさん目がマジになってません?なんというかこうスイッチが入ったみたいな?」

「防衛戦と言うのはその名の通り大多数の敵から防衛する戦闘だ。有名なのは惑星リリーパにおける採掘場防衛戦だな。あれは雪崩のように押し寄せるダーカーから複数の塔を守るものだ。今回の防衛対象についてはまだ聞いてはいないが恐らくはこれと同様で何かを黒の民から守るものと見ていいだろう」

「あのぉ、サガさん?わたくしの話を」

「案ずるなカトリ。確かにこの防衛戦は必然的にアークスでの連携や協力が不可欠になる。経験不足はまだしも知識不足による足手まといはひいては防衛戦失敗に繋がる。私が責任を持ってお前を防衛戦でも動けるアークスに鍛え上げると約束しよう」

「私はもう少しお茶でも飲みながらゆる〜く出来」

「そうと決まればまずはハルコタンの神との作戦会議に向かうぞ。目標を知らねば向かうことすらままならぬからな」

「私急に帰りたく…あぁ、サガさん!首根っこを、掴まないで、下さいまし!あぁ慈悲を!慈悲を〜!助けて下さいましあなた様〜!!」

 

ズルズルと引きずられるカトリで大笑いしたスクナヒメは咳払いを数回して真面目モードに入る。

 

「さて、では心強いアークスの強者も集まったところでぶりーふぃんぐとやらを始めようかの」

扇子でコトシロの頭をペシペシと叩き何かを促す。こっそり凄い憂鬱そうなため息をつきながらコトシロは大きな大きな地図を壁に張り出した。

 

「これは上空から見た現在のハルコタンじゃ。青く光るところが今いる場所で赤く光るのは結界維持の為の陣が張られている場所、黒くうねうねしているのが黒の民じゃ」

 

地図には戦場になるであろう陰陽の繋ぎ橋とその周辺が描かれており、何の術か現在地と敵の居場所などが表示されていた。

 

「現在はスクナヒメ様の結界により安全が確保されているが、黒の民もどきは今尚増える一方でありいずれ結界に限界がくるのは明白だ。これに対してスクナヒメ様はマガツに施したものを応用した封印陣を用いて黒の民もどきの封印をお決めになられた。今回の作戦目標はスクナヒメ様が封印を完成させるまでの結界維持の陣を防衛する事となる」

「ちょっといいですか?」

 

ここで手を挙げたのはキャストのフーリエだ。コトシロが続きを促す。

 

「まず黒の民の侵攻経路は、この陰陽の繋ぎ橋で間違いないんですか?」

「それに関しては問題ない。行き来の為の橋は他にもあったが、ここ以外は全て落とした。ゆえに敵はここを目指すはずだ」

「はいはいはい!リサからも質問なんですけどぉー川を泳いで渡る事は出来ないんですかぁ?」

「あなた方アークスが知らぬのも無理はないだろうが、ハルコタンを二分する大河の流れはとても強い。とてもじゃないが泳いで渡れないだろう。しかし比較的浅い場所があるのも確かだが、そういうポイントには見張りを置いてある。異常があれば即座に連絡がはいる手筈だ」

「なるほどなるほどー!ありがとございますー!!」

 

そんな風に質疑応答をしている最中カトリはサガにひっそりと質問する。

 

「サガさんサガさん。どうしてこの大きな橋も落としてしまわないんですの?落とせば浸入経路は無くなるのではなくて?」

「カトリにしてはいい着眼点だ。恐らくは浸入経路を一つに絞る事によって敵の誘導が目的だろう」

「敵の誘導?」

「そうだ。仮にこの橋を落とせば浸入経路は無くなり一時的に安全にはなる。しかしそうなると敵はあちこちから浸入しようとし、逆に動きが読めなくなる。それを避けるために、ここへ誘導しているのだろう」

「はぁ〜よく考えますわね〜」

 

とそんなやり取りをしているうちに作戦会議はほぼほぼ終わっていた。

 

「他に質問は無いようなのでブリーフィングは終了する。作戦は明日の明朝開始。それまでに各自準備は万全にしておいてもらいたい」

 

コトシロからブリーフィングの終了が宣言され、アークスは各々準備に入る。武器の点検やトラップの所持数確認、テクニックの調子を確かめる者もいればご飯を食べたり仮眠をとる事で英気を養う者など様々だ。

そんな様子をマトイは少し離れたところから眺めていた。

 

「そんなところで何黄昏とるんじゃ」

「あ、スクナヒメ。2、3人と組んだことはあるんだけど、こんな風に大勢の仲間と一緒に戦うのは初めてだから……上手くみんなを守れるかなって」

「お主……」

無言で扇子を振り上げマトイの頭に振り下ろした。ぺしんっ!といい音が響く。存外痛かったようで叩かれた場所を抑えながら涙目で抗議の目を向ける。

 

「お主は本当に阿保じゃの……」

「え、えぇ…?」

「ここに集まった皆はお主の信じるに値する仲間ではないのか?」

「信じてないわけじゃないよ?でもやっぱり私は他の人と違うから……」

「はぁ……これではあやつも報われんわ…」

 

呆れて空を仰ぎ見てしまうスクナヒメ。ついでに思わずここには居ない誰かに愚痴を言いたくもなってくる。お主共々本当に優しい愚かな阿保よ、と。

とは言えもうすでにあの世に逝ってしまった人に言っても仕方ない。

 

「良いかマトイ。確かにお主は強い。それはもう一騎当千と言っても過言ではなかろう。しかし、“強いだけ”じゃ。本当に皆を守りたいと願うのであれば、皆を信じて共に戦え。それがひいては皆を守る事に繋がるであろう」

「…………」

「1人では守りきれぬこともある、ということ。…まぁ、頭の片隅に置いておくことじゃ」

 

そう言ってスクナヒメは何処かへ転移していった。スクナヒメも明日に向けた準備があるのだ。

1人残されたマトイは、さっきの言葉を何度も噛み締める。

結局その言葉は食事の時も仮眠の時も頭にこびりついて離れなかった。




フーリエ、橋に発破は使うなよ!!

フーリエ「了解!発破ッァ!!!!!」
橋「アァァァァァァ!!!」
黒の民「アァァァァァァ!!!」
リサ「楽しいですねぇ楽しいですねぇ!!」

陰陽の繋ぎ橋と言うのはオリジナル設定です。そもそも橋があるかすら怪しいですが昔は交流もあったみたいだし、あってもいいでしょうよ。

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