Fragmental Memoir ~魔法剣士と神官戦士~   作:藤城陸月

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 何かあっても、にゃん太班長なら何とかしてくれそうな気がする。
 今回も安心感が天元突破中な件について──────。

 相変わらずにゃん太班長と呼んでしまう。


 そんな訳で、明けましておめでとうございます。藤城です。
 今年も、どうぞよろしくお願いいたします。



 今回、スキルについての独自解釈があります。


 それではどうぞ──────


 三話 打開策を考えよう

「─────という訳で、〈大知人〉たちを襲っていた連中を全滅させたんだ。

 その後、〈大知人〉の馬車を直したりして、その後ススキノから出ていく彼らを見送った。

 そのまま帰るのもなんだから、ススキノまでの道にあった障害物を駆除したりしながら帰って来て、至る現在」

「そういう事でしたかにゃぁ」

 

 

 場所はススキノ、にゃん太班長の借りているゾーン。

 今は、僕が(返り)血まみれで帰って来たことの説明を終えたところである。

 そして───

 

「それでなんだけど。にゃん太班長、この子は一体誰なんですか?」

 

 ───そして此処からは、こちらが質問をする番である。

 

 

 

 ──────その前に、体を拭くべきではないですかにゃ。

 ──────それもそうだね。まぁ、拭きながらでもいいかな?

 

 

 

「──────さて、何から話すべきですかにゃぁ……」

「…………(ゴシゴシ)」

 

 少女の眠るベッドから見えないように衝立を立てる。

 水をはじく布の上に桶を置き、お湯(雪を加熱した)を張る。

 撥水性の高い椅子に座り、上半身の服を脱ぎタオルを手に取る。

 …………全く関係の無いのだが、布や椅子の材質は何なのだろうか。当然だが、この世界にはプラスチックなどの石油製品は存在しない。

 

「先ほど話した通り、この娘は質の悪いギルドに……そうですにゃ、目を付けられてしまったのですにゃ」

「……そっか…………」

「…………にゃぁ」

 

 一拍。

 言葉を濁した意味を察せない程子供ではない。

 

「──────続きを、班長」

「分かりましたにゃぁ」

 

 ──────だからといって、聞かないわけにはいかない。

 いや、むしろ今のうちに聞いておかなくてはなくてはならない。

 そう、目を覚ましてしまう前に──────

 

 

 

 班長曰く──────

 

 数日前から、この少女は複数の〈冒険者〉からストーカーに遭っていたらしい。

 恐らく、〈フレンドリスト〉に登録されたことで居場所が相手に伝わっている。

 さて…………。

 昨日までは、班長を含めた善意の側の〈冒険者〉が制止すれば諦めていた。

 しかし今日。

 ()殿()()()()()()()()()は非常に荒れていた。

 彼らは辺りに当たり散らし──────一人の少女が、彼らの八つ当たりの対象から逃れる事は出来なかった。

 

 

 

「──────そう、か」

「一言だけ言っておきますにゃ。

 リベクスちが原因ではないですにゃ。

 これは遅いか早いかの違いでしかにゃいですにゃ」

「…………ありがとう、班長。

 念のために聞くけど、その〈冒険者〉たちの中にデミクァス、という男は居た?」

「ギルド〈ブリガンティア〉──────。

 その名前を覚えておくですにゃ。彼らが、この街の治安の悪化の一番の原因。

 そして、そのギルドマスターこそが、デミクァスですにゃ」

「そうか、分かった。

 ──────奴らの排除がなくては、この街の平穏は保証されることはない、と」

「にゃぁ……」

 

 二人は──────かつての、そしてこれからのトッププレイヤーである二人は、互いに犬歯を見せるような凄絶な笑みを浮かべた。

 

 

「──────ひぅ……っ」

 

 そして──────そんな二人に、か細い悲鳴が届く。

 

「あ、起きたん──────」

「おや、起きましたかに──────」

 

 衝立から顔をのぞかせた少女の声。

 それに応える途中で──────二人とも固まる。

 

 

 気が付いたら、知らない部屋で寝かされている。

 衝立の向こうから聞こえる声は二つ──────どちらも男性。

 気がかりになってベッドから下りる。

 そのまま、声の聞こえる衝立の向こうを確認する。

 其処に居たのは──────思わずゾッとするような笑みを浮かべる二人。

 そして──────片方の青年は上裸。

 

 ──────ああ、なるほど。

 

「───この度は、誠に申し訳ございませんでしたぁっ!!」

 

 何処か既視感溢れる光景がそこにあった。

 

 

「ひぅ……っ」「ま……まぁまぁ、取り敢えず落ち着くですにゃ」「僕は大丈夫だよ班長。神殿送りになってお詫びするから」「ふ、ふぇぇええ……っ」「リベクスち!?」「大丈夫、これは検証だから。……多分、なんかの」「待つですにゃ……っ。早まっては、いけにゃいですにゃ!!」「放してくれ班長……っ。…………ぶっちゃけ、どうしたらいいのか分からないんだ」「その前に……服を着るのですにゃ」「…………はい」

 

 

 

「──────さて、二人とも落ち着きましたかにゃ?」

「「…………はい」」

 

 閑話休題。

 あたたかな紅茶の香りが漂う部屋の中。

 最終形態ド・ゲーザを解除した青年とまだ表情が固い少女は、穏やかな表情の……猫人族ゆえに、顔から年齢が分かりにくいが多分壮年の一歩手前の男性を仲介に落ち着きを取り戻す。

 

「先ずは自己紹介ですにゃ。

 差し当たって、自分が何て呼ばれたいのかだけでも紹介しないと最低限の話し合いすら出来ないですにゃ」

「私など……従僕で十分でございます……」

「だっ、だったら、わ、わたしだって……め、召使いとかでも……」

「……………………にゃぁ」

 

 

 

 ──────取り敢えず、夕ご飯の準備をしたいので手伝ってくれませんかにゃ?

       …………従僕ち、召使いち。

 ──────ごめんなさい、僕はリベクスです。

 ──────セっセララですっ、はいっ。

 

 

 

「さて、それでは──────」

 

「「「──────いただきます」」ですにゃ」

 

 気を取り直して。

 にゃん太班長による提案で、夕飯を作るという共同作業を行った。

 サブスキルが〈料理人〉ではなくても、計量や水洗い、運搬など出来る工程はある。

 料理という協力して行うにはある程度のコミュニケーションが必要な工程を経て、ある程度なら会話を行えるようになった。

 とは言え、ある程度は話すことが出来るようになったとはいえ、所属するギルドや職業などのことは話題に上がらず、セララという少女の事はほとんど分かっていない。

 

 そんなことよりも──────

 

「……………………(…………相変わらず、班長のご飯はおいしいなぁ)」

「……にゃぁ」

「──────おいしい…………」

 

 

 夢中になり過ぎてほとんど会話がなかったことを除いたら──────いや含めても良い晩御飯だった。

 

 

「──────本当においしかったです」

「にゃん太班長は凄腕の〈料理人〉だからね。その上、本人も料理上手だからなぁ」

「おかしな表現かもしれませんが、…………そうですにゃ、それがこの世界のルール、という事ですかにゃぁ」

「ルールか……確かにその通りだね。

 〈料理人〉以外では料理をすることが出来ない、という法則は理不尽なように思えるが、ルールと言えばむしろ納得すら出来る」

「あれ、でもリベクスさんは料理───包丁を使っていましてましたよね」

 

 先ほどの料理で、僕は包丁で食材を切っていた。

 

「まあね。

 僕の場合、サブスキルが少し特殊だからね。

 ただ、包丁やナイフで切る事しか出来ないんだ。つまり、『刃物で切る』ということは僕にとっては料理ではないらしいんだ」

「そのようですにゃ。

 この世界のルールはリベクスちが『刃物を使う』という事に限って料理する事を許している、という事ですかにゃ」

「そっちの方が納得かな?

 ──────検証のために、後でリンゴでも剥こうかな?」

「はぁ…………。

 わたしのサブスキルは〈家政婦〉なんですけど……わたしに出来ることはありますか?」

「それは自分で考えるしかないと思うよ」

「冷たい事を言っているようですが、この世界で自分のやる事は自分で見つけるしかないのですにゃ」

「自分で、ですか…………」

「そう、自分でね」

「にゃぁ」

 

 

 

「──────あっ」

 

 夕飯の片づけも終わり、のんびりリンゴの皮を剝いている。

 そんな時、セララさんが何かに気付いたような声を上げ、そのまま僕には見えないメニュー画面を見て操作している。

 

「マリエールさんっ!?」

 

 ──────ッ!

 念話。

 恐らくはセララさんに関係のある人物からの物。

 

 そして、マリエール、という名前──────。

 かなり前のことになるが、紹介してもらったことがある。

 ギルド〈三日月同盟〉のギルドマスターで、施療神官(クレリック)の女性。

 非常に面倒見の良く、彼女の影響か〈三日月同盟〉もアットホームで過ごしやすいギルドだった。

 

 セララさんはこちらの迷惑にならないように、という気遣いなのか、こちらに聞こえないように念話(会話)している。

 その為、彼女がどの様な話をしているのかは全く分からない。

 しかし、彼女がマリエールさんの関係者───恐らくは〈三日月同盟〉の一員である、という事が明らかになった。

 

 ──────リンゴが剝き終わる。続いて切り分ける作業に移る。

 

 さて、この後どうしようか…………。

 

 

 

「─────ほう、アキバの街から救援が来るのですかにゃ」

「はいっ。時間は掛かると思いますが、助けが来るみたいなんです!」

「そうですか、それは良かったですにゃぁ。

 ──────リベクスち」

「分かった」

「リベクスさん?」

「少しだけそっとしておいて欲しいのですにゃ」

「え?あ、はい」

 

 ハーフガイアプロジェクト、425K。25K/日、17日?……妨害その他、約一月。レベル90六人、成功率──────

 特殊な方法──────飛行可能な召喚獣?

 …………よし。

 

「単純に陸路を取る場合、大体一ヶ月。レベル90六人のパーティーで成功率は約15パーセント。

 特殊な騎乗物に依り空路を往く場合、召喚獣の性能に因って大きく差が出るが、一週間を割る可能性もある。成功率は未知数、かな?

 因みにアップデート前の情報から概算したから成功率はもっと下がると思う」

「え…………」

「やはり、ですかにゃ──────」

「ぶっちゃけると、相当困難と言わざるを得ない──────」

「そん、な…………」

 

「「──────普通な(にゃ)ら」」

 

「─────え…………」

「単純に飛行可能な大型召喚獣さえいれば成功率はぐっと上がるだろう」

「そうですにゃぁ。高レベルの召喚術師(サモナー)がいれば可能ですにゃ。それに──────」

「同感」

「え、え?あの、どういう事なんですか?」

「ぶっちゃけると、救援部隊が失敗したら僕たちだけで何とか出来るってこと」

「え、えぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

 

「取り敢えず悟られないようにする必要がありますにゃ」「同意、僕が挑発で」「そうなりますかにゃ」「りょ。情報収集と物理接触?」「そうですにゃ、申し訳ないですがお願いしますにゃ」「…………お願いですから、わたしに分かるように話してください」「そうでしたにゃぁ」「だが断るっ!」「使い方が間違っていますにゃ。リベクスちの方が優位な立場なので、この場合は使えないのですにゃ。ついでに言うと感嘆詞は必要ないですにゃ。それに、リベクスちはこんなことを言わないですにゃ」「……………………フルコースか参ったな」

 

 

 

 

「さて、先ほどは申し訳ない事をしましたにゃぁ」

「そうだね、気を取り直していこうか。……ごめんねセララちゃん」

「いっ、いえ。大丈夫です、はい」

「打ち解けてくれたようで良かったですにゃぁ…………」

 

 先ほど切ったリンゴを食べながら。

 今現在集まっている情報をもう一度整理し直すことになった。

 

「現在、このススキノはダニエル率いるギルド〈ブリテン〉によって、治安が悪化しています。

 このことを知って、マリエールさんがセララちゃんの救出の為、アキバの街から救援部隊を派遣した。

 この救援部隊について、こちらから出来ることはないです。

 従って、現在すべきことは情報収集及び、救援部隊が到達出来なかった場合の対策を考えることです。

 ──────って感じかな?」

「そんな感じですにゃぁ。余り関係にゃいですが、デミクァスとブリガンティアですにゃ」

「そうだっけ?…………まぁ、どうでもいいや。

 ところで、〈ブリテン〉にダニエル以外に発言力を持った奴はいる?」

「そうですにゃぁ、ロンダークという妖術師(ソーサラー)が居ましたにゃぁ」

「ロンドンか……聞いたことないな。まぁ、僕より強い妖術師(ソーサラー)は存在しないからどうでも良いかな。うん」

「相変わらずですにゃぁ、リベクスち」

 

 何処か嬉しそうに──────〈放蕩者の茶会(デポーチェリ・ティーパーティー)〉最年長の男は懐かしむ。

 

「すっかり何時も通りのリベクスちですにゃぁ。

 ところで、ロシア語は使わないのですかにゃ?」

「男がロシア語使っても需要無いからね」

「それもそうですにゃ」

 

 一拍。

 二人の間を心地よい静寂が支配する。

 

「─────あの…………」

 

 当然ながら、その雰囲気は慣れない少女にとっては例外である。

 

「いつもこんな感じなのですにゃ」

「にゃん太さん……?」

「リベクスちは親しい人にはとことん優しいのですが、知り合ったばかりの人とは上手くコミュニケーションを取れないのですにゃ。

 そして、親しくない人は名前さえ覚えない──────という振りをするのですにゃ」

「ちょっ、班長。振りじゃないんだけど。本当にどうでもいいと思ったいるだけなんだけど」

「リベクスちはツンデレさんですからにゃぁ。ホントはいろんな人の事を気に掛けている優しい人なのですにゃ」

「…………にゃん太班長に優しいって言われるとむずがゆくなるよ」

「……(ふふっ)」

「──────さて、笑顔が戻ったところで話を戻そうか」

「…………」

「そうですにゃぁ」

「うう…………」

 

 穏やかな雰囲気に、この二人は今までもこんな風に冒険をしてきたのだ、と少女は顔を赤くさせながら感じていた。

 見守る視線は優しく、温かかった。

 

 

 

 

 

「状況はさっき説明した通り。僕たちに出来ることは余りない。

 …………自分に出来ることは、自分で見つけるしかない」

「そうですにゃぁ……付け加えるのにゃら〈ブリガンティア〉に救援が来ることを悟られないようにする必要がありますにゃ」

「──────確かに…………普通に失念していた」

「本当にいつも通りですにゃぁ」

「うぐぅ……」

 

 完全に失念していた。

 事前に対策を取られていたら、助かる者も助からなくなる。

 

 ──────白いローブが、その背中が思い浮かぶ。

 

 分かっていた事ではあるが──────やはり僕にとって、その役割は荷が勝ちすぎるらしい。

 気を取り直して──────

 

「──────まぁ、取り敢えず僕は情報収集かな?いつも通りに」

「そうですにゃぁ、それならば我が輩は情報整理ですかにゃ。

 セララさんには、我が輩とリベクスちが帰って来た時に、笑顔で迎えて欲しいですにゃ」

「─────はいっにゃん太さん」

 

 その満円の笑みに、落ちたなという感想を抱いてしまった僕は汚れていると思う。

 まぁ、今更だが。

 

 各々の役割は決まった──────

 

 

 

 

 

 

 

「──────さて」

 

 明くる朝、ススキノの街にて。

 

「情報収集と言えば酒場だよな」

 

 扉を開く──────

 

 

 中に誰がいるのか──────それを僕は知っている。

 

 

 

 ──────僕の役割は情報収集。

 

 さあ、一番大切な情報を手に入れるとしよう。




 打開策(出来ること)を考えよう──────

 ⇒ リベクス:情報収集→外回り
   にゃん太班長:情報整理・監督
   セララさん:この世界での日常に慣れる
  全体:救援を(積極的な行動によって悟られない様にしながら)待つ


 さて──────今回も、読んでいただきありがとうございます。


 リベクスのサブ職業は次回。

 年齢的に、にゃん太班長は色々と知っているはず。


 そんなわけで、次回もよろしくお願いします。




 新しい一年が、良い年でありますように──────
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