東京レイヴンズIF~大鴉の羽ばたき~   作:ag260

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今回はライトノベル『ストレイト・ジャケット』のネタがふんだんに使われております。

一応前話で補足を書いておきましたが、分からない点があった場合は感想で尋ねていただくか、お手数ですがwiki等で調べてみてください。


第二十四幕 式神勝負勃発!

 

 

 

「…なんでこうなってんだ」

 

 

俺は今、なぜか京子と式神勝負をすることになり、そのために呪練場―――呪術防壁の張ってある大きな体育館。体育館としての設備はもちろん、呪術防壁は国家一級陰陽師が張ったものでフェーズ3並みの霊災が起きても安心・安全の設計…陰陽塾パンフレットより抜粋―――に向かっている。

 

 

「ええかげん腹括りや~」

 

俺の隣を歩いている大友先生が飄々と言う。

 

 

「そもそも先生があんなこと言わなけりゃ」

「そら、責任転嫁ってやつやで。あの状況じゃああするしかなかったやろ?」

「それにしてもいきなり式神勝負なんて…」

「ええやないの。これでカッコええとこ見せたらヒーローやで?」

「見せ場も無く負けたらどうするんですか」

「それは無いから安心してもええで」

「は?俺はまだ、陰陽術に触れて半年も経っていない様なド素人ですよ?勝てる訳が無いでしょ」

 

 

「春虎クン。キミは自覚しとらんみたいやけどな」

 

大友先生が足を止め、いつもとは違う真面目な顔で話し始めた。

俺もその雰囲気を感じて、黙って大友先生の次の言葉を待つ。

 

「キミはあの『十二神将』大連寺鈴鹿に勝ってるんやで」

「で、でもそれは夏目がいたから」

「確かに、キミ一人じゃ勝てなかったやろ。でもな、それは夏目クンにも言えることなんやで」

「…え?」

「確かに夏目クンは強い。特に夏目クンの使役式の竜。あれなんか、国内ではトップクラスの霊獣や。それを曲がりなりにも使役できとるんや。並みの陰陽師じゃ太刀打ちできへんよ」

 

 

 

確かに夏目の竜『北斗』は凄かった。

若干まだ御し切れてなかったが、あの『土蜘蛛』を相手に互角以上に戦っていたのだ。

 

「それでもな、夏目クン一人やったらさすがに『十二神将』には勝てへんはずや。彼一人やったらな」

「………」

 

大友先生はその後、またいつもの表情に戻り、明るく言った。

 

「キミの才能は塾長も認めとった。自信を持って大丈夫やで」

「……ありがとうございます」

「ほな、行こか。みんな待ってるやろ」

「はい」

 

俺は先程とは違う軽い足取りで歩き始めた。

…おっと、忘れるところだった。

 

「先生。ちょっと良いですか?」

「なんや?」

「ちょっと用意してもらいたい物があるんですが」

「用意してもらいたい物?」

「はい。実は―――」

 

 

 

 

~~side冬児~~

 

 

大友先生の発言で春虎と倉橋京子が式神勝負をすることが決まった後、春虎たちは準備のため控室に入って行った。俺や関係の無い他の生徒はアリーナを見下ろすように設置されている観覧席に座っている。

 

 

倉橋京子は早くに準備を終え、同じく準備を終え、主を待っているコンとアリーナ中央で睨み合っている。

 

「こんな豪勢な施設を使って喧嘩とはな」

「さすが兄貴!スケールが大きいなあ」

 

俺の隣に座っている天馬が、俺の呟きに興奮気味に答える。

春虎はそんな大物ではないと思うがな。

 

 

「あの担任もいまいちよく分からねーしな。いったい何者なんだ」

 

倉橋京子の言葉を遮った一喝には、凄い迫力が滲み出ていたんだが。

 

「ああ、大友先生?なんでも足を怪我するまでは呪捜官だったみたいだよ。凄い優秀だったって、自分で言ってたけど」

「自称かよ。信頼性が無いな」

 

どうも呪捜官と言うと、鈴鹿に簡単にやられてたイメージしか出てこない。

後どうでもいいがコイツ、俺と春虎とで態度が変わりすぎだろ。

 

まあ、兄貴なんて呼ばれたくもないが…。

 

 

「そういや天馬。どいつもこいつも春虎の式神を見た時に目の色を変えてたみたいだけど、そんなにすごい式神だったかあれ」

「み、見た目はともかく護法式だったからね」

 

さすがは兄貴!とか叫んでいる天馬にうんざりしながら疑問を口にする。

 

「護法式ってのはそんなに立派な式神なのか?」

 

俺の問いに天馬は高いテンションのまま鼻息荒く答えた。

 

「そうだよ。立派とは少し違うけどね。護法式や使役式って言うのは、基本的に二十四時間召喚していなきゃいけないんだ。それって術者にとってはすごい負担なんだよ。僕たちの同期だと、夏目君と倉橋さんしか持って無かったんだ」

「なるほど。要するに霊的なスタミナが必要って事か」

「そうなんだ。だから陰陽師にとっては、使役式や護法式を使役することは一種の『ステータス』なんだよ」

 

確かに、呪力の総量は訓練次第で多少上がりはするものの基本的には生まれつき、才能によるところが大きい。

 

「そんな式神を春虎が持ってたからみんな驚いてたのか」

「そういう事。ほんとに兄貴はすごいや!」

 

 

興奮しっぱなしの天馬を無視してアリーナに視線を戻す。

そろそろ春虎も出てきていい時間だな。

 

そう思った直後、ゲートから騎士の鎧の様な物を身に纏った人物が何か叫びながら出てきた。

 

あのゲートから出てきたってことは、あの鎧姿の人物は春虎に違いない。

ここからでは距離があって何を言ってるかは聞き取れないが、どうせまたおかしなことでも言ってるんだろう。

 

なぜあんな恰好をしているかは分からんが、だいたいの予想はつく。

 

「アイツはまた、面白いことをしてくれる」

 

本当に見ていて飽きないやつだ。

 

 

 

 

 

~~side春虎~~

 

 

「銀の翼に希望(のぞみ)を乗せて、灯せ平和の青信号!勇者特急マイ〇ガイン!定刻通りに只今到着!」

「春虎クン。最近の若い子はそのネタ分からんやろ」

「…ですよね」

 

元気よくゲートから飛び出たのはいいものの、呪練場にいる皆がポカンとしている。

冬児だけはニヤニヤしながらこちらを見ているが見えた。

 

まあ、みんながポカンとしているのはそれだけが理由じゃないみたいだが。

 

 

 

「先生。俺、もっと簡単なもので良かったんですけど…」

「でもそういうのキミ好きやろ?」

「否定はしません」

 

俺は、大友先生に『京子の使役する式神の攻撃にも耐えられる武器』を頼んだんだが、急にそんな武器がある訳がないと思っていたので木刀があれば良いな、程度に思っていた。

 

しかし、大友先生が持ってきたモノは俺の想像の遥か上を行っていた。

 

見た目は機関銃などの重火器が最も近いのだろうが銃口が無く、パッと見用途が分からないこれは――

 

「でもだからってなんで『スタッフ』なんですか!?しかも『モールド』までご丁寧にセットで…俺は戦術魔法士(タクティカル・ソーサリスト)かっての」

 

因みにレイオット仕様の『スタッフ』と『モールド』になっている。

 

「てか、良く用意できましたね」

「いや~、前々から作ってたんやけど使用する機会が無くてな」

「…あんた何やってんだよ。しかもなぜこのチョイス」

「ええやないか。僕ストレイト・〇ャケット好きなんやもん」

「あんたの趣味かよ!?」

 

そんな適当な理由でこれかよ。今更だが不安になってきたぜ。

 

「機能の方は安心してくれてええよ。ちゃんと呪術強化済みやし――」

「あ、そこはちゃんとしてるんですね」

「――魔法もちゃんと撃てるで」

「現代技術はそこまで行ったか!」

「まあ、魔法に似せた呪術やけどな。呪文書式板選択器(スペルタグ・セレクター)で術を選んで撃発音声(トリガーヴォイス)の『イグジスト』で撃てるで。基礎級呪文(ベーシック・スペル)なら無音詠唱(ダムキャスト)も可能や。」

 

何て無駄に高いクオリティなんだ。ほぼ原作通りじゃないか。

 

しかし、これならいけるかもしれないぞ。

 

 

「はは、春虎様。そ、そのお召し物はいったい…」

「あなた、ふざけてるの!そんな恰好をしてどういうつもりよ!」

 

コンと京子が同じような質問をしてくる。

 

「いや、これ持ってきたのは大友先生なんだけど…」

「そんなものを着て何をするつもりって聞いてるのよ!」

 

コンも同じ質問だったらしく無言で首を何度も縦に振っている。

 

「なにって、式神と戦うのに素手って訳にはいかないだろ」

「式神勝負ってのは式神同士を戦わせるのよ。あなた分かってる?」

「俺だって式神だし」

 

俺に何を言っても無駄と思ったのか京子は俺を憎らしげに睨みつけた後、大友先生の方に叫んだ。

 

「くっ!――大友先生良いんですか!?」

「ま、本人がええと言ってるんやし。それに万が一のためにアレを用意したんやから」

「そういう事だ。俺が良いって言ってるんだ、早くやろうぜ」

「…もうどうなっても知らないわよ」

 

京子の方も覚悟が決まったのか静かに呪力を練り始めた。

 

 

「コン。俺が白い方とやるから、お前は黒い方頼むぞ」

「はは、春虎様!そのような危険なことをせずとも」

 

コンの方はまだ納得がいかないみたいで、俺に必死で抗議してくる。

 

「だって俺、式神の使い方とかいまいち分からないし」

「な、ならば、コンだけでも」

 

まだ納得しないコンの頭に手を乗せ、その小さい頭を撫でながら目線を合わせてコンに言った。

 

「そんなに心配ならあの黒い奴をさっさと倒して援護に来てくれよ。頼りにしてるぜ」

「……御武運を」

 

納得したかどうかは分からないがコンはそう言って俺に背を向け、京子の黒い式神『黒楓』と向き合った。

 

「両者準備はええな?」

「はい」

「もちろん」

「良し。――では、始め!」

 

 

大友先生の鋭い号令で勝負が始まる。

コンは俺の言う通りに『黒楓』に向かっていく。

 

「よっしゃ!行くぜ!」

 

俺も白い方――『白桜』に向かって駆けだす。

 

着てみて気付いたが、この『モールド』は体にぴったりと密着するせいか重量をそこまで感じない。

なぜ俺の体のサイズに前々から作っていたものがぴったりなのかは、気づかないふりをしておこう。

 

「『白桜』・『黒楓』!行きなさい!」

 

京子の指示を受け、二体の式神も前へ出る。

白桜が俺に向かって日本刀を振り上げながら迫ってくる。

 

俺は『スタッフ』を構え呪文書式板選択器(スペルタグ・セレクター)から防御魔法〈デフィレイド〉を選択し無音詠唱(ダムキャスト)する。

 

「イグジスト!」

 

俺の発した撃発音声(トリガーヴォイス)で魔法――もとい、それに似せた呪術が発動する。

 

発動した瞬間、俺に切りかかってきた『迫桜』が見えない壁にぶつかったかのように、衝突音を響かせながら動きを止めた。

 

俺が放った〈デフィレイド〉は防御魔法。

迫ってきていた『白桜』と俺の間に呪力でできた透明な壁の様な物が出現し、それに『白桜』は激突したのだ。

 

 

 

 

「な、なに!?」

 

何が起きたか理解できず京子が驚く。

呪術でできた透明な壁なので良く視れば分かるのだが、動揺していて気付いてないらしい。

 

この好機を逃さず呪術を変更し攻撃に移ろうとした時、『モールド』の胸部から筒状の部品が弾きだされた。

 

「…え?……ま、まさか!?」

 

まさかと思い、大友先生のいる後ろを勢い良く振り返ると

「ああ、拘束度(デュラビット)数の制限もきっちりついとるで。さすがに魔族(メレヴェレント)化はせんけどな」

 

と、先生がどや顔で言ってきた。

 

「ふざけんな!先に言っとけ、アホ講師!」

 

俄然不利になったじゃねーか!

そんなところまで忠実に再現してどうすんだよ!

 

「アホとはなんや!アホとは!」

「アホじゃ無きゃバカ講師だ!」

 

クソ!これじゃあ後、基礎級呪文(ベーシック・スペル)を十二回しか撃てない。上級を撃つとしたらさらに減るじゃねーか!

 

 

 

「勝負の最中によそ見なんて余裕じゃない!」

 

大友先生と不毛な言い争いをしている最中、京子の声にハッとして振り返ると〈デフィレイド〉が解けたのか、『白桜』が眼前に迫っていた。

振り下ろされる刀を何とか横に転がることで回避する。

 

「チッ、やるしかねーのか!」

 

覚悟を決め、転がりながらも『スタッフ』を操作して術を変更し素早く体勢を整え、『スタッフ』を『白桜』に向ける。

 

「イグジスト!」

 

選択した術は〈ブラスト〉。

『スタッフ』の先から爆炎が発生し『白桜』を飲み込まんと襲い掛かる。

 

刀を振り切った体勢の『白桜』には避ける術は無く、命中すると思われたが

 

「その程度!」

 

『白桜』は爆炎に飲まれる瞬間、動けないはずの体勢から前方に凄い速度で跳んだ。

 

 

 

「マジかよ!?」

 

『白桜』が跳んだ瞬間俺は確かに視た。

『白桜』の足元に呪力が急激に集まり、弾けその衝撃で『白桜』は前方に跳んだのだ。

 

「そんな呪力の使い方もあるのかよ」

「あら?良く気付いたわね。でもまだ終わりじゃないわよ!」

 

すると『白桜』は先程の要領で、今度は俺に向かって突っ込んできた。

 

「は、速い!」

 

あまりの速度に〈デフィレイド〉は間に合わないと判断し、手に持っている『スタッフ』で『白桜』の攻撃を受け止めた。

 

しかし、受け止められたのは一瞬だった。

 

『白桜』自体の筋力と速度が合わさった攻撃は凄まじく重く、攻撃を止めた瞬間俺は後ろに吹っ飛ばされた。否、自分から吹っ飛んだ。

 

自分から後ろに跳ぶことで衝撃を緩和し、距離を取ったのだ。

 

 

「…器用なことをするわね」

「そりゃ、どーも」

 

しかし、衝撃を緩和したと言ってもまだ手が痺れている。

 

あの攻撃をまともに喰らったらマズイな。

 

相手に悟られないように顔には出さないが、心の中では苦い顔をしている。

しかしあの攻撃方法は足に呪力を溜め、それを弾けさせるため良く視ていれば察知しやすい。

 

しかも、直線的な動きしかできないためカウンターがしやすく京子にとってもハイリスク・ハイリターンの危険な技だろう。

 

横目でコンの方をチラリと見るが、コンはやはり俺の事が気になるのかあまり勝負に集中出来ていないようだ。

 

この分だとコンの援護も期待できそうにない。

 

 

 

「どんどん行くわよ!」

 

京子の掛け声とともに『白桜』が俺との距離を詰める。

しかし、今度の攻撃は先程と違って普通に切りかかってきた。

 

やはり先程の技は、京子にとってもあまり連発はしたくないらしい。

 

「あまり、舐めるなよ」

 

普通に切りかかってくるのであれば、反撃に要する時間はたっぷりと有る。

俺は素早く『スタッフ』を操作し、術を〈ブラスト〉から〈アサルト〉切り替える。

 

「イグジスト!」

 

『スタッフ』の先から呪力が衝撃波となって相手に襲い掛かる。

 

〈ブラスト〉と違い、呪力を透明な衝撃波として飛ばすので意識していなければ視えづらく避けにくい。

 

「くっ」

 

俺の予想通りに『白桜』は回避行動が遅れ、攻撃をもろに喰らった。

 

しかし、〈アサルト〉は内部にダメージを与える類の術なので『白桜』の様な式神には効果が薄いのか『ラグ』が発生するも少しの足止めしかできず、次の瞬間にはまたこちらに駆けだしてくる。

 

 

 

「チッ、効かねーか。」

 

〈アサルト〉が効かないと分かると直ぐに術を変える。

〈アサルト〉から〈ブラスト〉に再び変え、すぐさま発動させる。

 

「イグジスト!」

 

術を発動すると、爆炎が『白桜』に向かって飛ぶ。

 

「それを待ってたわ!」

「なっ!?」

 

俺が〈ブラスト〉を放つと同時に京子はあの急加速の技を使った。

爆炎が『白桜』を燃やし尽くす前に急加速によって炎を飛び抜ける。

 

そのままの勢いを利用した体当たりを今度は防御の術も体勢も出来ず、まともに喰らってしまった。

 

「ガハッ」

 

ろくな受け身も取れず、吹き飛ばされアリーナの壁に叩き付けられた。

 

「これで終わりよ!」

 

『白桜』が止めの一撃を加えようとこちらに駆けて来るのが見える。

俺は痛む体に鞭を打ち、なんとか『スタッフ』を構え術を変更する。

 

「イ、イグジスト!」

 

発動した術は〈フラッシュ〉。閃光と大きな音が辺りに満ちる。

 

俺は〈フラッシュ〉を発動したと同時に横へ転がるように移動した。

 

閃光と音のせいで俺を見失った『白桜』の剣が先程まで俺の居た場所に振り下ろされる。

 

 

相手がこちらを見失っている隙に十分な距離を取る。

眩んだ眼が治った京子はいつの間にか距離の空いた俺を見つけ、半ば呆れたように言った。

 

「…そこに居たの?しぶといわね」

「褒め言葉として受け取っておくぜ」

 

皮肉で返してみるもののこちらの圧倒的振りには変わりない。

 

拘束度(デュラビット)数は、残り八つ…。

 

さてどうするか……。

 

 

 

 

 

 

~~side冬児~~

 

「ああ、兄貴!どうしよう冬児君。兄貴がピンチだよ!」

 

俺の隣で天馬が喧しく喚き立てる。

 

「見てるから分かってるよ」

 

眼下のアリーナでは、春虎が吹き飛ばされ壁に叩き付けられていた。

 

あいつ、大分体が鈍ってるな。

 

付き合いが長く、あいつが喧嘩などをしている場面を何度も見ている俺には分かる。

春虎の調子があまり良くないと。

 

 

 

まあ、大連寺鈴鹿との戦いの後は陰陽塾への入塾試験の勉強三昧だったからな。

先日の不良との喧嘩も直ぐに片が付いちまったし。

 

 

「もうっ。どうして冬児君はそんなに冷静なの?兄貴がやられそうなんだよ?」

「ん?あいつがやられるだって?……ああ、そういえば天馬や他の生徒は知らないんだよな」

「なにを?」

「春虎が地元の不良から何て呼ばれてたか」

「地元の不良に?」

悪鬼羅刹(モンスターオーガ)さ」

「オ、オーガって」

「俺はぴったりだと思ったぜ?」

 

なんせ、鬼の怖さなら嫌ってほど知ってるからな。

そして、春虎の怖さもそれに引けを取らないこともな。

 

「まあ、黙って見てろよ。あいつがそんな簡単にやられるはずがないからな」

「も、もちろんだよ!兄貴が負けるもんか!」

 

アリーナを見ると、春虎は京子の式神の攻撃をかわし距離を置いたところだった。

さて、そろそろあいつらしさが出て来るかな。

 

 

 

 

 

~~side春虎~~

 

 

京子の攻撃をしのぎ距離を取ってから大きく息を吐く。

 

「ふぅ~~」

 

息を吐き出しつつ体に残っているダメージを確認する。

まだ痛みは感じるものの骨などには何の影響も無かった。

 

「悪かったな」

「…なに?今更謝っても遅いわよ」

「違うって。お前の事を少し甘く見ていたのに対して謝ったんだよ」

「甘く見ていた?あなた、あたしの事舐めてるの?」

 

京子は不快そうに顔を歪めながら言った。

 

「だから見直したんだって。正直ここまでやるとは思って無かった」

「あなた分かってる?普通その台詞を言う立場にあるのはあたしなのよ?」

「いや~、お前がその台詞を言うのはお勧めしないな」

「…なぜかしら」

「負けた時、余計に恥をかくぜ」

「っ!言ってくれるじゃない!」

 

俺の言葉に激昂した京子が『白桜』を走らせる。

 

 

 

やれやれ、この手のタイプは本当に簡単に挑発に乗るな。

 

 

基本的に京子の様な秀才タイプはバカにされたことが無い者たちだ。

だから格下と思ってる相手に、少し挑発されただけで簡単に怒る。

 

俺はこちらに向かってくる『白桜』に慌てることなく、冷静に『スタッフ』を構える。

 

「イグジスト!」

 

放った術は先程と変わらず〈フラッシュ〉。

 

「くっ、また同じ術!?」

 

閃光と大きな音が辺りに再び満ちる。

しかし、さすがに同じ手は何度も通用しなかった。

 

〈フラッシュ〉の光は目は眩ませるものの、見鬼で視るのは防げない。

おそらく俺の霊力を見鬼で察知したのだろう。先程より『白桜』の立ち直りが早くこちらに向かってくる。

 

稼げた時間はそう長くは無かっただろう。だが、俺には十分だった。

 

 

稼いだわずかな時間に『スタッフ』を操作する。

 

「イグジストッ!」

 

撃発音声《トリガーヴォイス》を発すると同時に胸部から二つ筒状の部品が弾きだされる。

しかし、術を発動させたにもかかわらず周囲に何の変化も起きなかった。

 

「……不発?ふっ、残念だったわね」

「………」

「言い返す気力も無いの?じゃあ、これで終わりよ!」

 

京子は呪力を弾けさせ爆発的に加速するあの技を使った。

京子は勝利を確信した笑みを浮かべている。

 

しかし、次の瞬間その顔は笑みから驚愕に変わった。

 

「――なっ!?」

 

なぜなら京子が捕えていたはずの俺の姿が掻き消えたからだ。

 

 

 

「い、いったいどこに…」

「ここだ」

 

俺は『白桜』の背後に立っていた。

 

「い、いつの間に!?」

「遅い!」

 

京子は直ぐに『白桜』を振り向かせ攻撃を仕掛けるが、俺はそれよりも速く『白桜』の背中に拳を叩き付ける。

すると、大の大人が思いっきり殴ってもビクともしないはずの式神が『ラグ』を発生させながらアリーナの壁まで吹き飛ばされた。

 

 

「な、なんでそんな力が―――まさか!さっきの術は不発じゃ無かったの!?」

「良く気付いたな」

 

俺はニヤリと笑いながら言う。

そう。俺が先程発動させた術は不発では無かった。

 

俺が発動させた術は〈アクセラレータ〉。(某学園都市の超能力者じゃないぞ!)

 

肉体を極限まで強化させ、常人をはるかに上回る筋力と反射神経を得る術だ。

俺が『白桜』を吹き飛ばせたのもこの術のおかげだ。

 

 

 

しかし、この術にも欠点はある。

術の効果が数分間しか持たないこと。

 

術の効果が終わった後、反動で体が最低でも半日は動けなくなること。

この二つだ。

 

だからこの術を使った以上数分間で相手を倒さなければいけない。

なので俺は術の効果が切れる前に、まだアリーナの壁際で膝をついている『白桜』に向かって追撃をかける。

 

「かかったわね!」

 

しかしそれは罠だった。

『白桜』は膝をついていたのではなく、力を溜めていたのだ。

 

『白桜』は溜めた力を爆発させ、目にもとまらぬ速度で切りかかってくる。

 

 

しかし、〈アクセラレータ〉で極限まで高められた俺の目にはその動きすらコマ送りのように見えた。

繰り出された『白桜』の攻撃を最小の動きでかわし、その腕を取り、

 

「コン!伏せろ!!」

 

アリーナの反対側で戦っているコンに向かって叫ぶ。

 

「はは、はい!」

 

コンは俺の声が聞こえた瞬間、命令通りに素早くその場で身を屈めた。

それを確かめた俺は、『白桜』を力の限り『黒楓』に向かって投げつけた。

 

「うおおおぉぉ!!」

 

野球ボールを投げるよりも速い速度で投げられた『白桜』は『黒楓』にぶつかり、『ラグ』を発生させながらもみくちゃになって転がる。

 

「……え?」

 

いきなりの事に呆然とするコンの横を風のように通り抜け、倒れている『白桜』と『黒楓』に止めの一撃を繰り出す。

 

 

 

「我・法を破り・理を越え・破壊の意志をここに示す者なり・・・爆炎よ・爆炎よ・敵を焼け・敵を焦がせ・敵を滅ぼせ・我が勝利をここに導け猛き業火!・・・ベルータ・エイム・クイファ・クイファ!<マグナ・ブラスト>イグジストッ!」

 

撃発音声(トリガーヴォイス)と同時に胸部から三つ筒状の部品が弾きだされ、『スタッフ』の先から爆炎が発生する。

 

しかしその炎は〈ブラスト〉の比では無かった。

〈ブラスト〉と比べるとあまりにも強大な炎が二体の式神を襲う。

 

 

 

〈マグナ・ブラスト〉の炎が『白桜』と『黒楓』を飲み込む直前に、炎と二体の式神の間に人影が割り込んだ。

そして次の瞬間、〈マグナ・ブラスト〉の炎がいきなり霧散した。

 

「な、なに!?」

 

俺が必殺の一撃を止められ驚いていると、炎が消えその中から現れたのは大友先生だった。

 

「これまでや」

 

大友先生はいつもと変わらない飄々とした雰囲気で言った。

 

「この勝負、ここまで。勝者は春虎クン…でええな、京子クン?」

「……は、はい」

 

格下に見ていた俺なんぞにやられたからか、それとも大友先生が〈マグナ・ブラスト〉を簡単に止めたからか、おそらくは両方だろうが京子は呆然としながら頷き、負けを認めた。

 

その瞬間、アリーナが一気に喧騒に包まれた。

 

 

 

「はは、春虎様!みみ、見事な試合でした!」

 

いつの間にか隣にいたコンも賞賛の言葉を送ってくる。

 

「お前も良く頑張ったな」

 

俺はコンの頭を撫でながら言った。

実際にコンがいなくてニ対一だったら危なかったかもしれない。

 

「ああ、ありがたき言葉です!」

 

余程うれしいのか、尻尾が左右にパタパタ動いている。

 

「春虎クン、おめでとう」

 

大友先生も言葉をかけて来る。

 

「ありがとうございます。……さっきの俺の〈マグナ・ブラスト〉を止めたのは先生ですよね?」

「そうやで~。あのままやったら京子クンの式神が修復不能なレベルで破壊されとったからな」

「先生…いったい何者ですか?」

「…ただの陰陽塾の一講師やて。それより友達が呼んどるで」

 

大友先生はそれ以上言うことは無いとばかりに話題を変えた。

 

 

 

「兄貴ぃーー!」

「春虎ぁーー!」

 

観覧席の方からの声に気づきそちらを見ると、天馬や夏目がこちらに向かって手を振っている。

俺はそれに応えようと手を上げようとした瞬間、

 

「…………(バタン)」

 

〈アクセラレータ〉の効果が切れ、体が動かなくなりそのまま俺は床に倒れた。

夏目たちや大友先生の慌てる声を聴きながら俺の意識は消失していった。

 

 

 






今回はストジャネタを使ったのですが、マイナーでしたかね?
一応方針としては毎回バトルの際に春虎が使う武器は変える予定です。
何か良いネタがありましたら是非教えてください。

駄目だし・ネタ案・誤字脱字修正・常時募集中です。
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