東京レイヴンズIF~大鴉の羽ばたき~   作:ag260

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第三十三幕 タッグ結成

なんでこんなことになってるんだ?

 

教壇の前に立った俺は普段の自分では絶対にしない事、つまり皆の前に立って意見をまとめる委員長的な事をする羽目になっている現状にため息を吐いた。

 

そんな俺の内心を知ってか知らずか元凶の大友先生は、後は任せた、と言った表情で椅子に座り、本を読み始めてしまった。

 

丸投げしやがった。

本当に教師かコイツ?

 

「なんや、失礼なこと考えとるな?僕は生徒の自主性を伸ばすためにやな」

「なんであんたまで俺の心読めるんだよ!?」

 

まさか俺ってサトラレなのか!?

 

「まあ、そんな事よりさっさと始めんと時間が無くなるで?」

 

誰のせいだと思ってんだ!と言う叫びは心の内に留め、このままじゃ本当に時間が無くなってしまうので本題に入る事にした。

 

「コン」

「ははは、はい!」

 

俺が呼ぶと何もなかった場所から俺の式神、コンが現れた。

 

「悪いけど、書記係やってくれるか?」

「しょ、書記ですか?」

「ああ。意見とか出たらチョークで黒板に書きだして行ってくれ」

「かか、(かしこ)まりました!」

 

 

コンに指示を出した後、俺は皆の方へ振り返った。

 

「えー。今から喫茶店の詳細を決めていくんだが、まず陰陽術を使用するかどうかについて決めたいと思う。方法は多数決…で良いか?」

 

 

俺の言葉に特に反論も出なかったので、サクサクと進めていく。

 

「じゃあ、陰陽術の使用に賛成の人は手を上げてくれ」

 

俺がそう言うと皆が手を上げる。

 

 

俺はそれを数えようとして、止めた。

賛成に手を上げた人数は見ただけで大半を超えていると分かり、手を上げていない人数は両手で数えれる位しかいなかったからだ。

 

 

「賛成が半数を超えたから陰陽術は使用するで決定。次に喫茶店のどこに陰陽術を使うかだが、意見がある人はいるか?」

 

俺が皆に意見を求めると同時に

 

「はい」

 

と言う声と共に手が挙げられた。

俺はその手を上げた人物を見て、苦い顔になる。

 

「……まともな意見なんだろうな。冬児」

「当たり前だろ」

 

 

手を上げた冬児はいつもの笑みを浮かべながらそう言った。

 

うん。まったく信用できん。

 

だが、意見なのには変わりないのでとりあえず聞くだけは聞いといてやろう。

 

 

 

「で、どんな意見だ?」

「ウェイターを式神にやらせたらどうだ?」

「式神に?」

「ああ。ウェイターと言ったら、一番客と接するのが多い役割だ。そこを式神にやらせれば客も楽しめるし、何より陰陽師らしさが伝わりやすいだろ」

「…………まともな意見……だと?」

 

俺は唖然とした。

 

「なんだ、失礼なやつだな」

 

 

冬児は不満そうに言うが、夏目や天馬と言った冬児の性格を知っている人たちは、例外なく驚いている。

 

「で、どうなんだ?俺の提案は?」

「あ、ああ、コン。書き出してくれ」

「た、ただいま!」

 

コンも冬児のまともな発言に驚いていたが、俺の呼びかけにハッとして慌てて黒板に書きだしていく。

冬児はニヤニヤと悪戯が成功したような、しかしどこか含みのある笑みを浮かべている。

 

「他に意見のある奴はいるか?」

 

俺がそう聞いてもざわつくだけで新たな意見は出なかった。

 

「新しい意見も出ないようだから冬児の『式神のウェイター』を採用したいと思うが、賛成のやつは手を上げてくれ」

 

 

俺の言葉で生徒たちの大半が手を上げる。

これもさっきと同じく、数える必要もなく『式神のウェイター』は決定された。

 

「残るは役割分担か」

 

接客は式神がやるから良いとして、その式神を操る班、調理班、雑務班の三つってとこだな。

 

 

「今から、式神の操作、調理、雑務の三つに人員を分けたいんだが、それぞれの班の代表も決めたい。それで夏目と京子には式神を操る班の代表になってもらいたいんだ」

「ぼくと倉橋さん?」

「ああ、お前ら二人が一番できるからな」

 

 

 

一応、客に接する大事な役割だ。

全員陰陽塾の生徒とはいえ、得手不得手もあるだろう。

ミスがあったらいけないしな。

 

「代表って…いったい何やるのよ?」

「班員のシフトやウェイター用の式神製作とかの指揮と俺への報告だな」

「ぼくはやっても良いよ」

「そのぐらいならあたしも構わないわ」

「悪いな」

 

 

コンに指示をだし、二人の名前を黒板に書かせる。

 

「じゃあ、夏目たちで式神を扱うのが得意な人を選別してもらっていいか?」

「ぼく達で?」

「ああ、俺はまだ誰が何に優れているか、分からんしな」

「そういう事なら良いわよ」

 

そう言って夏目と京子で話し合い、十数名の人が式神を操る班に選ばれた。

 

 

「次に調理班の代表なんだが…この中で料理出来る奴いるか?」

 

陰陽塾に居る奴らは俺や冬児の様な変り種を除いて、良いとこの出が多い。

基本的にそう言う人はあまり料理などしないだろう。

 

 

 

料理が出来る人に挙手をしてもらうが、案の定数人の手が上がるだけであまり多いとは言えない。

しかし、挙手をしている人の中に悪友の顔を見つけた。

 

「冬児。お前料理出来たのか?」

「まあ、一人暮らし生活が長かったからな」

 

 

 

そう言えばそうだったな。

以前、霊災に巻き込まれて以来、冬児は一人暮らしを続けている。

 

まあ、それ以前も似たような生活だったらしいが。

 

 

「じゃあ、今挙手している人は冬児のところに集まってシフトやメニューを決めてくれ。代表者は冬児、頼めるか?」

「今度、昼飯奢れよ?」

 

 

冬児の返事を了承と取って、黒板に冬児の名前を書く。

 

「最後に残った人たちは雑務班をやってもらう。内容は店の内装、宣伝、とかだな。代表者は天馬、お前がやってくれ」

「ぼ、僕が?」

「見知った奴の方が連絡取りやすいしな」

「僕はいいですけど、兄貴はやらないんですか?」

「俺は各班を周りながら、色々手伝ったりしていくから、どっかの代表者をやるわけにはいかねーんだ」

「なるほど、じゃあ、精一杯頑張ります」

 

 

 

天馬を納得させ、コンに名前を書かせる。

 

「じゃあ、この後は各班で色々決めたり話し合ってくれ……で良いですよね?」

 

一応、大友先生に許可を求めると、

 

 

「ええでぇ~」

 

本から目も話さず、手だけ上げて気の抜けた返事を返してきた。

なんでこんな人が陰陽塾の講師になれたのか不思議でならない。

 

 

陰陽塾(ここ)ってプロの陰陽師の育成機関みたいな物だろう?

そんな国にとっても大事な場所の講師がこれでいいのか?

 

 

「春虎クンは、もうちょい先生に敬意っちゅーもんを持つべきやな」

「……もう、心の声を聴かれても、驚かなくなってきた自分が嫌だ…」

 

俺が割と本気で落ち込んでるのをよそに、班分けされたクラスの面々は代表者を中心に話し合いを始めて行く。

 

とりあえずやることが無くなった俺は、適当に各班の様子を見ることにした。

最初はどこから周ろうかと考えていると

 

「春虎。ちょっと良いかい?」

 

夏目に呼びかけられた。

 

「なんだ?」

「ウェイターとして使う式神なんだけど、さすがに『北斗』は無理として、ぼく達が作る簡易式と倉橋さんの護法式を予定してるんだけど…」

「別に良いんじゃないか?てか、なんで俺を呼んだんだよ?」

「いや、出来たらコンにもウェイターをやって欲しいんだけど…」

 

なるほど、それで俺に許可を取ろうとしたのか。

ちなみのコンは、さっきからずっと俺の後ろを着いてきている。

 

 

ここで別に主である俺が決めてしまっても良いのだが、コンがやりたくないことを無理やりやらせるのもあれなので、一応コンの意見も聞いておく。

 

「コン。そういう事みたいだけど、どうだ?」

「はは、春虎様がやれとおっしゃるのでしたら」

「別にお前がやりたくないんだったら、やらなくても良いぞ。お前の事だ。お前が決めろ」

「で、では、正直に言いますと、あまりやりたくは―――」

 

ない。とコンが言おうとした時、

 

「ええーー!?コンちゃんやりたくないの!?」

 

いつの間にか近づいていた京子が、そんな言葉と共にコンに抱き着く。

 

 

「は、離せ!この無礼者!!」

「ね~。そんな事言わずにコンちゃんもやってよ~」

「だから、やりたくないと言って―――」

「でも、ウェイターをやってくれたら―――を――――で――――わよ?」

「っ!?」

 

必死に京子の束縛?から逃れようとするコンに、京子は何やら耳打ちをする。

するとコンは、驚いたように耳としっぽをピンと逆立て、急に抵抗をやめた。

 

 

何だ?京子はいったい何を言ったんだ?

 

抵抗をやめたコンはチラリと俺を見た後、恐る恐ると言った様子で振り返る。

 

「さ、先程の話、真実なのですか?」

「もちろんよ!」

「な、ならば…こ、このコンも給仕の真似事をしてやっても…良いです」

 

コンがウェイターを承諾すると、京子は「やったーー!!」とコンを振り回しながら歓喜の声を上げた。

 

その行為にさすがのコンも我慢できなかったらしく、実体化をといて、俺の背後に戻ってきた。

 

「良いのか?やりたくなかったんだろ?」

「えっと、その、……き、気が変わりまして」

 

果てしなく怪しい。

と言うか、その言い訳は無いだろ。

 

しかし、コンが俺にそんな見え透いた嘘を言ってまでも、心揺さぶられた物があったのだろうか?

まあ、脅されたようでは無さそうなので、深く言及はしなくて良いか。

 

 

「コンがやりたいって言うなら良いが、無理はするなよ?」

「ははは、はい!ありがたきお言葉!」

「じゃあ、俺は他の班も見て来るから、何かあったらまた声かけてくれ」

「うん。分かったよ」

「コンちゃん。よろしくね?」

 

 

畏まるコンに苦笑を漏らしつつ、夏目たちの班を後にする。

次は冬児たちの調理班に顔を出した。

 

「よお、冬児。調子はどうだ?」

「調子も何も、まだほとんど何も決まってねーよ」

 

まあ、そうだろうな。

材料費や班員の料理の腕前、その他いろいろな事を加味しなければメニュー一つ決められないのだから、そう簡単に決まるはずは無いか。

 

 

「やるのは喫茶店だからな。それらしいメニューで頼むぜ?」

 

軽食系のサンドイッチと言った物から、コーヒーや紅茶、定番のナポリタンにオムライス。

喫茶店と言うにはその辺りの物は出したい。

 

「その辺は立案者なんだ、任せておけよ」

 

元々、冷静に物事を考えられる冬児だ。

余程のことが無い限り大丈夫だろう。

 

「ここは大丈夫そうだから他の班に周るか」

「おう。…ああそうだ、春虎」

「あぁ?」

「当日は覚悟しとけよ?」

 

冬児はそう言うと、俺の返事も聞かずに、なぜか夏目たちの班の方へ歩いて行った。

覚悟しとけ?どういう事だ?

 

冬児の意味の解らないセリフは放っておこうかと考えたが、去り際の冬児の表情がいつもの笑みだったから一応の警戒はしておこう。

 

 

 

 

 

「さて、最後は雑務班か」

「兄貴!来てくれたんですね!」

 

俺が行くと天馬がいつものテンションで出迎える。

さっきまで話し合っていた他の塾生も、天馬の俺に対する態度を知っているとは言え、普段とのギャップに若干引いている状況だ。

 

 

「天馬、進行具合はどうだ?」

「今はとりあえず、店の内装をどうするかですね。大友先生に聞いたら、第二視聴覚室が使えるみたいなんで、それを目安に検討中です。」

 

確かに、この階段状になっている教室じゃ喫茶店はやりづらいだろうしな。

第二視聴覚室なら、それなりの広さもあるし大丈夫だろう。

 

 

「店の内装については他の班とも話し合って、メニューの雰囲気に合わせるとかの工夫もしてみてくれ」

「なるほど!さすが兄貴です!」

「じゃあ、ここは頼むぜ」

「はい!任せてください!」

 

 

 

 

 

 

そしてその後、各班を適当に周りながらそれなりに時間が経った時

 

「夏目クン、春虎クン、それと京子クン。ちょっとええかな?」

 

いきなり俺たちは大友先生に呼びかけられた。

 

「なんですか先生?」

「いや、実は『五芒祭』のちょっとしたイベントが有るんやけど、君たちにはそれに出て欲しいやけど」

「イベントって具体的にはなんですか?」

「簡単に言うと、学年問わずの陰陽術を使用したタッグバトルトーナメントやな。一応希望参加式やけど、あんまり人数が集まってへんのよ」

 

 

大友先生の説明を聞いた時、疑問が浮かんだ。

 

「タッグバトル?それに出ろって言うのに、なんで三人集めたんですか?」

「ほんまは、春虎クンを夏目クンの式神として出場すれば、だいぶ有利になると思ったんやけどな」

 

なんてルールのグレーゾーンをついてきやがる。

お祭りイベントの試合にそこまで貪欲になるか?

 

「春虎クンの噂は他の先生や学年まで広がってて、『人間は式神として出場出来ない』ってルールが追加されてしもたんよ」

 

俺の噂ってどんなのだよ?

てか、他の学年や先生たちにまで、広まってるってどういう事だ?

 

 

「先生、じゃあ、なんでぼく達は三人で呼ばれたんですか?」

「最初は、夏目クンと京子クンのチームで頼もうかと思うたんやけど、春虎クンも戦闘力だけは侮れんしな」

 

 

『だけ』って、仮にも教え子に教師が言う言葉じゃないぞ。

 

 

「と言う事で、君たち三人で話し合いなり、なんなりで二人組のチームを決めて欲しいんや」

「なら、夏目と京子のチームで良いんじゃねーか?バランス的にも実力的にもばっちりだろ」

 

ぶっちゃけると、めんどくさいし。

 

「ちょ、ちょっと春虎」

 

俺が二人のチームを推すと、夏目が慌てたように俺の袖を引っ張り、コソコソと小声で話しかけてくる。

 

 

「(ぼくはそう言う祭り事で目立つのはまずいんだけど)」

「(なんでだよ?)」

「(ぼくは今、性別を誤魔化してるんだよ?そんな不確定要素の多い中に飛び込むのは避けたいんだ)」

「(…なるほど。分かったよ)」

 

「先生。やっぱり俺と京子で出ますよ」

 

めんどくさいが、夏目の正体がばれるのはマズイので俺が立候補すると

 

「え!?」

 

京子が驚いたように声を上げた。

 

「ん?京子もこういうイベントは苦手なのか?」

「べ、別に参加自体は嫌じゃないけど、なんでペアがあたしとあんたで決定してるのよ」

「ああ、夏目とペアが組みたかったのか」

 

確かに俺より夏目と組んだ方が勝率は上がるだろう。

 

「い、いや、そうだけど、そうじゃないって言うか、その、あの」

 

俺の言葉を聞くと、なぜか京子は俺と夏目を交互に見ながら顔を真っ赤にしてそう言った。

 

「?」

「?」

 

京子の支離滅裂な言葉に俺と夏目は首を傾げる。

唯一、大友先生だけは、青春やなぁ、とニヤニヤとした笑みを浮かべている。

 

「は、春虎は夏目君とペアを組まなくても良いの?主従なんでしょ?」

「えっと…夏目はこういうイベントが苦手でな、出たくないって言うもんだからよ」

「そ、そうなんだ。ちょっと目立つのが苦手でね」

 

俺がそう言うと、夏目も合わせる様に頷く。

 

「……春虎はあたしとペアで出ても良いの?」

「俺は、むしろ俺で良いのかって聞きたいぐらいだぜ」

 

京子は俺の言葉を聞いて、少し悩むそぶりを見せたがすぐに決めたらしく

 

「分かったわ、出ましょう」

「おお、出てくれるんか。じゃあ、手続きは僕がしとくさかい、当日は頼むでぇ」

「もちろんです。出るからには優勝狙うわよ、春虎」

「上等」

 

 

そう言って俺と京子は拳を合わせ、フッと笑い合った。

 

「そうと決まったら今日の放課後から特訓よ!」

「は?」

「特訓よ、特訓!そのイベントは学年問わずってことは、上級生も出るってことよ?」

「それがどうしたんだよ?」

「良い?陰陽塾の上級生は言ってしまえば、セミプロみたいな人たちの事なの。二年からは座学よりも、実践的な実技の授業がメインになるし、実力のある様な人は陰陽庁からのスカウトも来てるんだから」

「ほう」

 

 

プロ。

 

そう聞いて、呪捜官や祓魔官と言った、陰陽術を扱うプロたちを思い浮かべる。

 

『十二神将』などは別格としても、見鬼になった今だからこそテレビなどで見るプロの陰陽師の凄さが分かる。

陰陽庁からのスカウトがあると言う事は、それに近い実力はあるのだろう。

 

 

「お前が特訓って言い出した理由は分かったが、当日まであと三週間も無いんだぞ。そんな短期間で何するんだよ?」

「確かに今からイベントまでの短い期間じゃ、個人の技量はあんまり変わらないわ。でも、今回のイベントはタッグバトルなのよ?」

「……つまり、俺たちの連携、コンビネーションを鍛えようって事か?」

「そういう事」

 

 

まあ、確かに複数で行う戦闘時の連携は重要だな。

それの有る無しでは戦況も大きく変わってしまうし。

 

 

「理由が解ったなら、今日の放課後から呪練場で特訓よ!」

「分かったよ。しょうがないお嬢様だ」

 

 

口ではそう言いつつも、俺は中々の使い手と戦えることに少なからず昂ぶっていた。

戦闘狂ではないつもりだが、純粋に強い相手と戦えることは嫌いでは無い。

 

 

 

 

 

そのせいか俺は気付かなかった。

俺と京子が話す後ろで、夏目がどんな表情をしていたのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~side冬児~~

 

 

 

何やら春虎、夏目、倉橋の三人が先生に呼ばれた。

大友先生の表情や様子を見ていると、どうやら面白いことになっているようだ。

 

 

しばらく静観していると春虎と倉橋が何やら話し合い、夏目が後ろからそれを見ていると言う構図になった。

俺は好奇心を抑えきれず、夏目に近寄った。

 

「どうしたんだ?」

「と、冬児。どうしてここに、自分の班は良いのかい?」

「ちゃんと他の奴に任せてきたさ。それよりお前は何やってんだ?」

「そ、それが――――――――」

 

夏目から大体のあらましを聞いた俺は、不機嫌な顔をしている夏目に内心の笑いを隠して話しかける。

 

 

 

「ふぅん。それでどうしてお前はそんなに不機嫌なんだよ?春虎がお前の代わりに立候補してくれたんだろ?」

「ぼ、ぼくは別に不機嫌なんかじゃ」

「まぁ、これで倉橋と春虎の仲は良くなるだろうなぁ」

「………え?」

「そりゃ、これから『五芒祭』までの間ずっと二人で特訓するんだ。多少は二人の仲は良くなるだろ」

 

俺の言葉を聞いた夏目は呆然とする。

その様子にますます面白くなり、俺はさらに言葉を続ける。

 

 

「古今東西、一緒に戦う男女の仲は深くなるってのが相場だろ。もしかしたらそのまま二人が付き合うかもな」

「そ、そんな!?」

 

 

面白いように取り乱す夏目に内心楽しみつつ、そろそろクールダウンさせようと思った時、

 

「…………決めました」

「な、夏目?」

 

底冷えする様な夏目の声。

 

嫌な予感がする。

春虎のように一時期それなりに荒れていた俺も、喧嘩やら何やらは結構やってきた。

 

それで培われた俺の直感が告げている。

 

地雷を踏み抜いてしまったと。

 

「さ、さっきのは冗だ――――」

「私も出ます」

「…は?」

「私もイベントに参加します」

 

ヤバい、素が出てる。

 

幸いにも周りに人はおらず、教室全体が騒がしいため聞こえているのは俺一人だが、危なっかしいことには変わりない。

 

 

「そ、そうか。じゃあ、俺はそろそろ自分の班に戻るわ」

 

この状況から逃げ出そうと試みるが、

 

「待ってください」

 

しかしまわりこまれた。

いかん。焦りのあまり思考が春虎みたいになってきてる。

 

「ど、どうした?」

「冬児君は私のパートナーとして参加するんですよ?」

 

どうやら、夏目の頭の中ではもう決定してるみたいだ。

 

「ま、待て。一体どうして急に出るなんて言うんだよ?目立つのはまずいんだろ?」

「そんなの、不埒な自分の式神(ペット)へのお仕置きのために決まってるじゃないですか」

 

ヤバい。

何がヤバいって夏目が自分の行動に何の疑問も抱いてない。

 

こういうタイプの行動を止めるのは極めて難しい。

 

「…そうか。じゃあ、俺よりもパートナーに相応しい奴がいるんじゃないのか?自分で言うのもなんだが、陰陽師としての俺は戦力にはならないぞ?」

「…そうですか。残念です。…………気を失った人って重いんですよね」

「よし、さっそくエントリーしに行くか」

 

 

駄目だ。無理やりにでも俺を巻き込む気らしい。

もう逃げるのは不可能に近い。

 

今の夏目は暴走中と言ってもいいだろう。

考えても見れば、この状態の夏目を他の奴と関わらせるのは危険すぎる。

 

どのみち俺が組むしかないのか。

 

「(スマン春虎。お前、死ぬかもしれん)」

 

俺にはもう心の中で友に謝る事しかできなかった。

 

 

 




学園祭の事に関しては完全に自分の想像で描いていますので、何かとミスがあるかも知れません。

何かしらのミスを見つけた方はぜひ、感想までご指摘お願いします。

さて、今回は前回の続きと言う事で詳しい出し物の案と新しいイベントについてです。

タッグバトルトーナメントの原案はバカテスの試召大会からいただきました。

最初は夏目と組ませようかと思ったのですが、京子と組ませた方が面白そうだし、春虎との相性も何気に悪くないと考え、京子と組ませました。

今後の展開は一応、考えてはいますがまだぼんやりとした物なので、次回の更新は少し遅くなってしまうかも知れません。

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