東京レイヴンズIF~大鴉の羽ばたき~   作:ag260

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第三十六幕 第一回戦!

『これより、タッグトーナメント第一試合を始めます!出場選手は所定の位置についてください!』

 

マイクを持った、見たことが無いのでおそらく先輩であろう、陰陽塾の生徒が大きな声を上げていた。

 

「所定の位置って此処か?」

「そうみたいね」

 

アリーナを四分割するように書かれた白線で各試合会場は区切られている。

俺たちの立っている所には『第壱』と書かれていた。

 

『試合が始まると、その白線から物理攻撃、呪術攻撃を完全に遮断する結界が張られます!アリーナと観覧席の間にも結界が張ってありますので、流れ弾の心配もございません!皆さんご安心ください!』

 

まあ、学校行事とは言え陰陽術を使う以上その位はするだろう。

元々イメージアップとPRが目的なのに、けが人を出したら元も子もないしな。

 

『試合の実況は、わたくし三年の沢木口。解説には呪捜官の経験を持つ大友先生と、陰陽塾塾長の倉橋塾長の二人に来ていただいています!』

『どーも、よろしゅう』

『よろしくお願いします』

 

「お、御祖母様!?」

 

…大友先生、いつの間にそんな仕事引き受けてたんだよ。

京子も塾長から聞いてなかったのか、目を丸くしている。

 

『お二人とも、今日はよろしくお願いします!さっそくですが、第一試合で注目選手はいますか?』

『そやね~。僕は一年生ペアの春虎クンと京子クンのペアやな。二人の担任としても期待してるで』

『私も同じく春虎さんと京子さんのペアに注目してます。個人的にも応援したいペアですからね』

『なんと二人そろって、土御門・倉橋の一年生ペアに注目!そんな二人の対戦相手は二年生ペアの中林・飯岡ペア!はたして注目の一年生ペアは上級生相手にどう戦うのか!』

 

 

「…ものすごい注目されてるな」

「…正直、居心地が悪いわ」

 

今の大友先生と塾長のコメントと俺自身の服装(執事服)のせいで、呪練場にいるすべての人が俺たちに注目していると言っても過言では無い状況だ。

 

「よぉ」

「えらい注目されてるみたいだな」

 

俺が自身を見てくる視線の多さに辟易していると、対戦相手の、中林か飯岡かどっちがどっちか分からんが、先輩たちが話しかけてきた。

 

一人は小柄でしかし、活発そうな雰囲気のある男子生徒で、もう一人は背の高い眼鏡をかけた、優等生然とした男子生徒だ。

 

「俺は中林雄太だ、よろしく」

 

そう言って小柄な先輩、中林先輩が握手を求めてきた。

一年生でこんなに注目されていると、相手の心証を悪くするかと思ったが、大丈夫なようだ。

 

「土御門春虎です」

「俺は飯岡琢磨。注目されてるみたいだが、手加減はしないぞ」

「倉橋京子です。望むところですよ」

 

お互いに自己紹介をしながら、握手を交わす。

 

「しかし、なんでそんな格好してんだ?」

 

中林先輩が俺の服装を指しながら首を傾げる。

 

「………俺も制服に着替えた――」

「宣伝のためです」

 

俺の言葉を遮るように、京子が言葉をかぶせてきた。

 

そのやり取りを見て、先輩たちは何かを感じ取ったのか、生暖かい視線を俺に向けると、

 

「頑張れよ」

「女の我儘に答えてやるのも、男の器だ」

 

そう言葉をかけて、自分たちの所定位置に戻って行った。

 

何か微妙にして壮絶な勘違いをされているような…。

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ!今より、第一回戦を開始します!』

 

実況の沢木口先輩がそう宣言すると、アリーナに書かれた白線から壁の様な物が発生するのが視えた。

これが結界か。

 

『では、タッグトーナメント第一試合バトルスタート!!』

 

 

 

「行くぞ!」

 

試合開始のコール直後、大柄な飯岡先輩が仕掛けてきた。

飯岡先輩は懐から紙の束を取り出すと、それを空中に放り投げる。

 

喼急如律令(オーダー)!」

 

放り投げられた紙の束は先輩が呪文を唱えると、まるで意志を持っているかのように動き、折り重なって、形を作っていった。

 

「あれは…鈴鹿と同系統の式神か?」

 

先輩の繰り出した式神は前に鈴鹿が使った式神と酷似していた。

鈴鹿の造りだしたものより、一回り以上小さく、数も少ないが、おそらく同系統の物だろう。

 

先輩の前には虎、獅子、鷹、狼、大蛇を模して紙でできた式神が並んでいる。

 

「行け!!」

 

先輩の号令と共に虎を模した式神が突進してくる。

背後でコンが叫ぶが、俺は焦らずに大友先生から貰った例の物を懐から取り出した。

 

 

パパァン!!

 

 

渇いた破裂音が連続して聞こえると、虎を模した式神の眉間に二つの穴が開いた。

眉間に穴の開いた虎は、体全体を何度か明滅、『ラグ』を引き起こすと、体を構成していた紙がほどけ床に散らばって行った。

 

突然の出来事に、相手の先輩たちはおろか、味方の京子たちまで唖然としている。

その中でいち早く回復した京子が、俺の得物について聞いてきた。

 

「は、春虎?そ、それなに?」

「ランチェスター大聖堂の銀十字を鋳溶()かして作った十三ミリ爆裂徹鋼弾だ。こいつ喰らって平気な式神(フリークス)なんかいないよ」

「い、いや弾の事じゃ無くて…」

「お、お前!なんで銃なんて持ってんだよ!?」

 

俺が白銀の銃を構えてしたり顔で説明すると、中林先輩が叫んでくる。

 

「ああ、大丈夫ですよ。これ本物じゃ無くて、大友先生が造った呪具ですから」

「あんた、そんな物どこで手に入れたのよ」

「朝に大友先生から受け取ったんだよ」

 

そんな俺たちの状況を目ざとく見つけた実況の先輩が声を張り上げる。

 

 

『おおお!!第壱試合会場、注目の一年生ペアの土御門君が、拳銃のようなもので二年生の飯岡君の出した式神を倒したぁ!何やら大友先生が造った呪具と言う事らしいがぁ!?』

『あ~。あれは僕の造った呪具で、使用者の霊力を固めて射出するんや。実弾は打てない設計やから安心してええで』

 

大友先生がどや顔で武器の説明をする。

その顔はとても腹立たしかった。とだけ言っておこう。

 

『こ、講師が一生徒に呪具を造って渡しても良いんですか?』

『問題ないでしょう。どうやらあの呪具はそこまで万能な武器では無いようですから』

『万能ではないと言うと、どういう事でしょうか塾長?』

『簡単な事ですよ。自身の霊力を固めて撃つのですから、連射すれば当然直ぐに霊力を失うことになる。特に初撃の様に威力の高い弾はそれが顕著に出ますし、集中力も使うでしょうから、あのような攻撃はそう何度も出来ないでしょうね』

 

 

うぐっ!

ズバリとこの武器の欠点を言い当てられちまった。

 

最初の一撃で高威力なのを見せつけて、牽制代わりにしようと思っていたんだが…。

 

「そういう事なら!」

 

塾長の開設を聞いた飯岡先輩が即座に全式神に指示を出す。

待機していた残り四体の式神が一斉に俺めがけて動き出した。

 

「チッ!」

 

俺は銃に込める霊力を抑え、威力の低い弾を牽制代わりに連射する。

しかし、威力を抑えた弾では、式神を止める事すらできず、わずかな時間を稼いだのみだった。

 

「なら、術者本体を狙うまでだ!」

 

突進してきた式神の攻撃をかわしつつ、照準を術者である飯岡先輩に向ける。

どうやら、複数の式神を同時に操るには集中力が必要なようで、照準を向けられても先輩は一向に動こうとしない。

 

良い的だ。そう思いながら引き金を引くが、

 

「させるかよ!」

 

 

俺の撃った弾は全て中林先輩が張った結界によって阻まれてしまった。

おそらく二人の戦闘スタイルは、飯岡先輩が式神で攻め、動けない術者を中林先輩の結界で護る。と言うものなのだろう。

 

その後も攻撃を続けるが、中林先輩の結界は固く、全て攻撃が遮断される。

 

攻撃が通らない焦りからか、俺は上空から襲いかかってきていた鷹に気づくのが遅れ、攻撃を食らってしまった。

 

直前で身を捻り、直撃だけは避けたものの、鷹の爪が右腕を掠め、俺はその衝撃で銃を落としてしまった。

 

「そこだ!」

 

それを好機(チャンス)と見た先輩は一斉攻撃を仕掛けてくる。

 

「は、春虎様!」

「『白桜』!『黒楓』!」

 

コンと『白桜』『黒楓』が俺のサポートに駆けつけ、鷹・大蛇・獅子の攻撃をそれぞれ食い止めるものの、狼がその防御網をすり抜け、俺に肉迫する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渇いた炸裂音と共に鷹を模した式神が爆散した。

 

「純銀マケドニウム加工水銀弾頭弾殻 マーベルス科学薬筒NNA9 全長39cm 重量16kg 13mm炸裂鐵鋼弾『ジャッカル』!」

 

武器を落としたはずの俺の手には、黒く輝く銃が握られていた。

 

完璧(パーフェクト)だ!大友(ウォルター)!」

『感謝の極み』

 

律儀にも解説席からきっちりと台詞を返してくれた。

服装的に言えば、俺がその台詞を言う方なんだけどな。

 

 

「な、もう一丁持っていたのか!?」

「先輩方、俺のあだ名を教えてあげますよ…二挺拳銃(トゥーハンド)だ」(第五幕参照)

 

先輩方が驚いている隙に、落としていたもう片方の銃を拾い、銃身で十字架を現すように構える。

 

『色々混ざりすぎだ』そんな冬児の声が聞こえてきそうだな。

 

二丁拳銃を手にしたその後の展開は一方的だった。

 

式神を二体倒され、手数の減った先輩たちの攻撃をコンと『白桜』『黒楓』に対処させ、その隙に俺は銃を術者に向けて攻撃を仕掛ける。

式神の妨害が無い今、俺は安心して銃に霊力を込める作業に集中する事が出来た。

 

そうして限界まで霊力を充填した二丁の銃を先輩たちに向け、

 

 

「圧縮粒子全面解放!ハイパーバーストモードッ!!」

 

 

一気に解き放つ。

 

解き放たれた弾丸が結界に接触した瞬間、結界は一瞬だけ雷光を散らしたがそれだけだった。

それなりの強度を誇っていたはずの結界は、弾丸が接触すると同時にまるでガラスが割れたような音を立てて、あっけなく崩れ去った。

 

 

結界が破られた先輩たちは一瞬呆然としていたが、すぐ我に返り、新たに結界を張りなおそうとする。しかし、その前に俺が一気に距離を詰め、二人の眼前に銃を突きつけることにより、

 

 

「…俺たちの完敗(まけ)だ」

 

 

試合は終了した。

 

 

 

 

『ここで第壱試合会場は勝負あり!勝ったのは注目の一年生ペアの土御門・倉橋ペア!上級生を破っての二回戦進出だぁ!!』

 

先輩たちが両手を上げて降参の意を示すと、すかさず実況から俺たちの勝利がコールされた。

 

 

「ありがとうございました」

「優勝とまでは言わないが、頑張ってくれよ」

「ええ。もちろんです」

 

試合終了後、中央で先輩たちと再び握手を交わす。

先輩たちは、負けたにも関わらずサバサバとした態度で去って行った。

 

その後、一旦控室に戻ってベンチに座って腕の傷の治療(かすり傷だが)をしていると、京子が顔を赤らめ、もじもじしながら話しかけてきた。

 

「あ、あのさ春虎」

「ん?」

「次の試合まで結構時間あるじゃない?」

「ああ、二時間近くあったっけ」

「そ、その、それまでの間、あ、あたしと一緒に『五芒祭』周らない?」

「ああ良いぜ。どうせなら他のみんなも――」

「だ、ダメ!」

 

 

皆も誘おうと携帯を取り出したら、なぜか慌てた京子に携帯を抑えられた。

 

「ほ、他のみんなは止めといたら?ほ、ほら、みんな喫茶店の方が忙しそうだったし、あたしたちの都合で誘ったら悪いわよ」

「そ、そうか?じゃあ俺たちだけで――」

「春虎様」

「うぉ!?」

 

いきなり背後から名前を呼ばれ素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「ど、どうしたコン?」

 

背後から現れたのはコンだった。

しかし、その表情は普段のと違い、なにやら不機嫌さを感じる。

 

「コンも居りますのでお忘れなく」

「あ、ああ。もちろんだとも」

「くっ、コンちゃんっ」

「…なにか?」

 

恨めしそうに睨む京子に対し、シレッと答えるコン。

 

「言っておきますが、コンは春虎様の護法ですので、ずっと春虎様のお側に居ます。ですから、『二人っきり』には絶対になれませんし、させません」

「………春虎も大変ね」

「なっ!?」

 

京子の呟いた一言に、今度はコンが京子を睨む。

 

「今の発言、どういう意味ですか!」

「別にあたしはただ四六時中近くにコンちゃんが近くに居たら、春虎だって疲れちゃうと思っただけよ?」

「こ、このコンが春虎様の負荷になっているとでも!?」

「それは……ねぇ?」

 

そ、そこで俺に振らないでくれ…。

 

「は、春虎様?」

 

涙目になりながら恐る恐ると言って風に訪ねてくるコン。

正直に言えば、俺だって健全な男子なわけだし、コンの様な少女?が近くに居たら困る事の一つや二つあるにはあるんだが……。

 

「………ぐすっ」

「そ、そんな訳無いだろ!コンが側に居てくれるとむしろ安心するほどだぜ!」

 

コンが泣き出しそうになったのを見てすかさずフォローを入れる。

 

「…ほ、本当ですか?」

「あ、ああ、もちろんだ」

 

そう言って頭を撫でてやると、コンは「お、お役にたてて光栄です」とはにかみながら尻尾をパタパタと左右に振る。

 

なにこれ癒される。

 

「春虎!さっさと行くわよ!」

「うぉっ!?」

 

そうしていると、京子がコンの頭を撫でていた俺の腕を掴み、強引に引っ張る。

 

「お、おい。急に引っ張る―――」

 

それと同時に、ふにゅんとした柔らかい感触を腕に感じた。

なんだ?と思いながらその感触を伝えてくる腕に目をやると

 

「きょ、京子!?う、腕を離してくれ!!」

「…なんでよ?」

 

心なしか京子の声音に不機嫌さが増す。

だが、今の俺にそんなことを感じる余裕は無かった。

 

「い、いや…そのだな…えっと…」

「理由があるならはっきりと言いなさいよ!」

「だ、だから…う、腕に……当たってるんだよ…」

 

 

今、京子は俺の腕を抱え込む様に引っ張っていた。

そうなると当然、京子の他の同年代の女子よりも突出した一部分が俺の腕に当たるわけで…。

 

「はぁ?なにが当たっ―――っ!?」

 

俺の言いたい事に気づいた京子はバッと俺の腕を離すと、自身の胸を隠すように腕を抱え、俺を睨みつける。

 

ハッキリ言って、俺を睨むその顔は羞恥で真っ赤に染まっていて迫力のかけらもないが、何故か俺の背中には汗が噴き出していた。

 

痴漢の冤罪で捕まった人ってこんな気持ちなんだろうか…。

 

「ま、待て京子!今のは事故って言うか、そもそも俺のせいじゃ無くてお前が自分からだな」

「春虎のっ………」

「え?」

「変態!!」

 

 

パァン!!

 

 

爽快な音と共に俺の頬に手の痕(もみじ)が付く。

その後、京子がさらに俺への罵詈雑言を吐きながら控室を飛び出すまで、俺は呆然としたままだった。

 

「…何なんだよ、まったく―――ん?」

「………」

「こ、コン?」

 

横から視線を感じてそっちを見てみると、コンが俺を半眼で睨んでいる。

 

そのコンの視線はまるで(けだもの)を見るかの様な視線だった。いや、本当の意味での獣はコンの方なんだが…。

 

「…春虎様」

「な、なんだ?」

「あのような破廉恥な行為はあまり感心できないと思います」

 

コンはそれだけ言うと、姿を消した。

 

「お前までそう言うのか…。あれは京子が無理やり俺の腕をって、聞いてるかコン?」

『……』

「……はぁ」

 

どうやら、俺の問いかけに応えないと言う事は相当怒っている、もしくは拗ねているようだ。

 

そりゃ、女子の胸に触れるって行為は古めかしい価値観のコンにとってはいただけない事かもしれんが、俺の意思で触った訳じゃ無いんだから、そこまで怒らなくても。

 

 

「…まだ『五芒祭』は始まったばかりだってのに」

 

俺はこれからの苦労を想像してもう一つため息を吐いた。

 

 

 

因みにその後、京子には今日一日『五芒祭』での費用を全部奢る事、コンには一週間のグルーミングで先程の一件をチャラにしてもらった。

 

………はぁ。




今回は初めて、オリジナル戦闘を持ってきました。
今までの戦闘と比べると、かなり短くあっさりとしてますが、一回戦と言う事なので意図的に短くさせていただきました。

今回の話で今年最後の投稿となります。
この一年間、自分の作品を見てくれた読者の方々、本当にありがとうございました。
よろしければ来年以降もぜひ応援の方をよろしくお願いします。

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